2016/05/18 のログ
ご案内:「島にある大きすぎない病院」に伊都波 悠薇さんが現れました。
■伊都波 悠薇 > あれから、父と母が息を切らしてやってきて。
心配そうな声をかけられる。
あそこは大丈夫か、ここは大丈夫か。
体に痛みはないか。などなど、質問攻め
「……あれ、お姉ちゃんは?」
ようやくひと段落したころ。当然一緒だと思っていたから
そういえばと声を返す。少し遅れてくるくらいだと思っていたのだけど。
『電話に出なくてねぇい。もう少し、したら来るんじゃないかな?』
電話に出ない。
最近多いな、と思う。会えなかったり、電話に出なかったり。
それは。さっきのお話上手な男性の――
――……よくない、と思う。
だから、さっさと寝てしまおうと。
「ちょっと、横になるね」
そう告げて、ゆっくり意識を闇に――
映像が
頭を
よぎる
■伊都波 悠薇 > 女が啼く。
どうして?
きしむ、音
道はない
走るのをやめられない
随分と先
誰よりも
誰よりも
忘れるな
お前は
止まれば
何にもなれなくなることを
■伊都波 悠薇 >
「――っ!!!?」
ぜっ、ぜっと、息が息が、粗い。
なにか、すごく嫌な夢のような――
周りを見渡せば、両親はおらず。
時間は、日が暮れるくらいに、なっていた。
「……のど、かわいたな」
ご案内:「島にある大きすぎない病院」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 > 最初に聞こえてきたのは、きっと廊下を走る音
続いて、それに注意する声、それに応えるゴメンナサイという、よく知る声
やがて足音は近づいて
勢い良く病室のドアが開く
そこにはやっぱり、見知った顔が
ただしその表情は、不安や色んな物が入り混じった、あまり見たことのない顔だっただろうか
「はるかぁっ!」
ぜぇぜぇと息を切らして、両肩を揺らす
妹の顔を見ると、少しその表情は安堵したものになって、深く大きく息をついた
珠になった汗が頬をつたい顎から落ちる
…もしかしたら学校から此処まで、全力ダッシュを継続して来たのかもしれない
■伊都波 悠薇 >
「――……」
目をぱちくり。何事かと思った。
すごくいい匂いが病院に広がる。
好きな、お姉ちゃんのにおい。
でも――
「……ここ、病院だよ? お姉ちゃん」
苦笑を一つ。
そんなに慌てて、どうしたのか。
妹は随分と、落ち着いているように見えた。
さっきまで、あんなに落ち着かなかったのに。
――天秤が頭によぎった。
「今日は、委員会のお仕事? それとも、友達とちょっと遊んでたり、助けてたりしたの?」
両親は、いない。
さっき携帯をみたら、先生に挨拶してきますと書いてあった。
お見舞いの品の整理とか、体をぬぐってくれてたりとかいろいろしてからいった様で。
「……おはよう、お姉ちゃん」
■伊都波 凛霞 > 苦笑する妹、その顔やその声に安堵する
早足に駆け寄って、ベッドの上の妹の華奢な身体にしがみつくようにして抱く
「…良かったよぉ…はるか、いきなり倒れるんだもん……うん…おはよう…っ」
自分たちが診ているから、お前は学校に行きなさいと、
父と母は自分を気遣って学校に生かせてくれたものの…
講義中もさすがに身が入らず……
抱きしめるママに出る声は、泣いているような声で
「ごめんね、はるか。もっとはやく来たかったんだけど…遅くなっちゃって…」
遅くなった理由は、言わない。言えない
それについては、口を開けばウソをつかなくてはならなくなるから
■伊都波 悠薇 >
こういうときは、なんて言ったらいいのかわからなかった。
もともと、コミュ障というのもあるが、なんでかなんて返したらいいのか、本当に浮かばなかった。
「あはは、なんか、ごめんなさい?」
だから茶化すように。
わぷっと抱きしめられながら、珍しいなと思った。
姉が、こんな声を出したり、態度に出すのはそうそうみられるものじゃない。
自分の前では特に
「ほんとだよ。すごーく、待った。心配してくれてないのかなー。見放されたのかなー、ダメな妹だってとかまで考えた」
ちょっとだけ、真実の混じった冗談。
見放されたは、ほんとにほんの。少しだけ考えた。
あんなふうに、あきらめかけた弱い悠薇なんてと。
一人の時に考えなかったわけではない。
そして、遅れた理由については……
踏み込むか、ちょっとだけ。躊躇った
■伊都波 凛霞 > 「ばかっ、心配しないわけないよ!」
細い両肩を優しく掴んで、少しだけ距離を離して対面する
妹の目からすればそれはもう珍しい、姉の泣き顔
「どんなことがあったって、はるかが何をしたって見放したいなんかするはずない!
それに全然ダメなんかじゃない!はるかは私のたった一人の妹だもん!!」
ひとしきり、立て続けに口にして再び強く、その身体を抱く
ちゃんとそこにいることを、心臓が動いている鼓動を、感じるように
「でも、一体どうして?悪い病気とかじゃなかったんでしょ?
父様と母様は?先に来てるはずじゃ……」
しばらくして落ち着いたのか、少し離れて涙を拭って、色々と質問してしまう
■伊都波 悠薇 >
すごく、泣いていた。
けれど、どこか冷めた感情がある自分が少し気持ち悪かった。
どうして? すごくうれしいし、すごく待ち遠しかったはずなのに。
なんで急に、こんなに心が凍るのか。
『注意してみてあげてね?』
――違う。
そんなつもりは、ない。姉には姉の考えがあるって納得してる。
だから、”棘”がうずいているわけではないのだと言い聞かせて。
「うん。ねぇ、お姉ちゃん?」
何度も何度も、言われたことだった。
だから――
「それ、私もだって。忘れないでね?」
姉の手を取り、自分の胸に当てる。
とくんとくんっと、脈打つ。静かな鼓動を伝えるために。
「ん。今、先生のとこに行ってるって。お姉ちゃんが来たら――」
両親が説明を受けているであろう場所を示す。
そこでお姉ちゃんが来るのを待っていると。
「私も一緒においでって」
■伊都波 凛霞 > 「……うん、そうだね。私もはるかだけの、お姉ちゃんだよ」
妹の鼓動を確かにその手に感じながら、微笑む
先生のところへ、と聞けば…
「ん…それは大丈夫だけど、歩けるの?無理しちゃダメだよ?
しばらく意識が戻らなかったんだから…」
心配そうな顔をする姉
こういう時にどうしても過保護になってしまうのは悪い癖なのかもしれないが
■伊都波 悠薇 >
「うん」
うなずく。どこか、やっぱり寂しい。
追いつけてない、気がする。言葉の価値が、重みが。
それをぐっと、中に落とし込んで。
「平気。みんなくるまでぶらぶらしてたんだから」
ちょっと、ナースさんに怒られたけど。なんて付け足して。
ゆっくり、立ち上がる。
「私も、なんでかは気になるし」
■伊都波 凛霞 > 「じゃ、ゆっくり歩いて行こうね」
一足先に立ち上がって、妹の手をとる
足早にならないよう注意して…歩幅を合わせて、
示された場所へと進む
ナースステーションの近く、
個室のような、患者の様態等を患者の家族に説明するための部屋
それらがいくつか並んだ廊下へ
■伊都波 悠薇 > 姉の手を握り、ゆっくりと歩いて目的の部屋へ。
わりとしっかりした足取り。そして――
「遅くなりました」
ゆっくり扉を開ける。
『あぁ、お姉さんも来たんだぁねぇ。よぉっくききったねぇ……まぁ、すわってぇ、すわってぇ』
両親と、先生。
ほんの少し空気が重かったのは気のせいか。
先生の、ほんわかとした口調がどこかそれをうやむやにしたような。
姉が無事に着いたことに、”両親”はどこかすごく安心したようにも見えた。
『それじゃあ、説明しようかぁねぇ』
■伊都波 凛霞 > お願いします、と一礼して、家族と並んで椅子に座る
父と母の雰囲気の重さは、凛霞も感じ取った
押し殺した不安が再び戻ってくる
もしかしてひどい病気?
それともなにか、障害でも?
なんではるかにかぎってそんな
押しつぶされそうな不安
ぎゅ、と両手を握りこんで、話が始まるのを待つ
…本当は一番不安なのは妹
妹の手を握って落ち着かせてあげなければいけないのに
■伊都波 悠薇 >
『まぁ、ずばりいいますと……』
すぅっと、息を吸って。
『原因は、不明だぁねぇ』
結果は、最悪ではないが、悪いことには違いないもの。
先生の手前に移った、電子のキーボードをはじけば、目の前に
カルテ、検査結果のようなものが表示される。
『脳に負荷がかかってる。これは間違いない。脳波の異常は検知済みだ
だけど――その原因がここじゃわからない』
大きくはない病院ということもあろうが、なにより。
「この負荷のかかり方は普通じゃない。たとえるなら。全力疾走を続けて酸欠を起こした
にもかかわらず、そのまま走り続けた。そんな感じさ」
説明は簡単、原理も大体は理解するが。
根元が抜けていると、医者は告げる。その説明の最中、間延びした言葉は一切なかった。
『似たような症状といえば、過剰な魔力消費後。回路や、貯蓄場がずたずたにされた直後ってところか。けれど、妹さんには魔力を使った痕跡は見られない。
資料をみれば、異能の発現も見受けられないし。体はいたって健康だ』
お手上げと、首を横に振る。
『研究区で精査もありかもしれないが信用できるアテを探ってからのほうがいいかもね』
■伊都波 凛霞 > 「不明…って……」
あまりにも頼りないその言葉に、さすがに不信感を募らせる、が…
その後の説明はそれは納得せざるをえないもので…
…妹が不安がってはいないかと、ちらりと横目で視線を送る
「(やっぱり、はるかも何か異能を……)」
疑念は強くなる
父も母も、自分の異能者
妹だけが、家族の中で発現していない
にも関わらず、ここまではっきりと身体への負荷が現れるなんて
■伊都波 悠薇 >
悠薇はといえば――
「…………」
あくまで可能性の話と、受け止めていた。
無いに、ほぼ全振り。あったらラッキーくらいの。
でも、その受け止め方は――
口端が
若干
歪んでいて
『――まぁ、そういうことで。変に処置して今のバランスが崩れたら大変だから。現状は、何日か入院で。大丈夫そうなら退院……申訳、ない』
そして姉が妹を注視している中。
両親の体は、どこかこわばっていた。
■伊都波 凛霞 > 「あ、あのっ…もう少し大きい病院で見てもらったら何かわかる可能性とかないんですか?
その、少しでもあるなら紹介状とか……」
話を終わらせようとする医者に、慌てて食いかかる
当然といえば当然、突然倒れしばらく意識も戻らなかった妹、
その原因を不明で片付けられて心乱されないほうが、おかしい
固執する妹のことであったからなのか
それとも精神を揺さぶられることが色々あったせいなのか
普段なら気づいたであろう父や母の様子も目に入っていなかった
■伊都波 悠薇 >
『できないことはないけど……』
姉の言葉に、医者は両親を見る。
普通の反応だ。そう。姉の、すがる様子はまさしく正しい。が――
一瞬、遅れて。父が
『はるかは、どうしたい?』
すごく複雑な表情で問うた。
初めて見る、父の顔。
「――……少し、考える。入院も、検査も。学校始まったばかりだし。長く休んだら、ほら」
――入りにくく、なっちゃうし。
そのきっかけも少し怖かったのも、ある。
けれど、納得してない姉とは逆に妹は、少し”満足していたから”。
「すぐに、悪くなるわけじゃないん、ですよね? 死んじゃう、とか」
『ないとはいえないけど、きわめて低いよ』
「なら、大丈夫だよ。お姉ちゃん」
■伊都波 凛霞 > 「…はるか…でも……」
不安げに、父と妹の顔を交互に見る
学校がはじまったばっかり
そうだ、妹はすごく頑張る決意を持ってこの春を迎えた
なかなか結果にはつながらなくても、その頑張る姿勢を見て、
自分も妹の頑張りに恥じない姉であろうと、頑張ってこれた
ここでブランクをあけさせてしまうのは…先日のことも含めて
妹のやる気wそぎ落としてしまうかもしれない、と思った
「…はるかが、そう言うなら……」
■伊都波 悠薇 >
「……ありがと、お姉ちゃん」
ふわりと笑う。その笑顔は、妙に明るくて。
元気な、妹のものとは少し違う、ものでもあった。
『説明は以上になぁるよぉ。あんま拘束してもあれだし
今日はこれくらいでぇ……おだいじぃぃに』
診察はこれで終わり。
外に出てぺこりと、外で両親が頭を下げ。
妹もそれに従って頭を下げた。
『病室まで送ったら、帰ろうか。凛霞』
母が、肩をなでるように手を置いて。
■伊都波 凛霞 > 「…うん」
いつもと違う妹の微笑み
その笑みに少しだけ、ほんの少しだけ心に刺さるものを感じる
廊下に出て、母から言葉をかけれれば素直に、こくんと頷く
「父様、はるかのことちゃんと見ててね」
いつもはどこか頼り気の怪しい父だけど、
こういう時ほど頼りになる一家の大黒柱はいないものだ
二人を病室まで送り、
最後に妹に向かって、元気出そう、と笑って…
その日は母親と一緒に、自宅へと帰るのだった
ご案内:「島にある大きすぎない病院」から伊都波 凛霞さんが去りました。
■伊都波 悠薇 >
『まっかせなさい、娘のことなら目に入れてもいたくないですからね、父様は』
どんっと胸をたたき、ここぞというときに頼りになる父。
そして――
『凛霞。稽古を、今までより厳しくするから。そのつもりで』
そっとすれ違いざまに耳打ちをして。
「お父さん? 目には入らないよ……」
『やっべぇ、真面目かと思ったらここぞとばかりの変態発現……』
容赦ない突っ込みを食らいながら笑い声が響いて。
『二人の娘のことを思えば、それくらいの痛みなんてことないってことさ』
どこか悔しさをにじませる、男のつぶやき。
誰にも聞こえないくらい小さな声で――
いいや、愛する妻だけは聞こえてしまう弱音が。
どこか寂し気に響いた
ご案内:「島にある大きすぎない病院」から伊都波 悠薇さんが去りました。