2016/07/02 のログ
ご案内:「貸家」にスアマ=東さんが現れました。
スアマ=東 > その家は、居住区の一角にあるありふれた借家の一つであった。

外観……こぢんまりとした一軒屋。
多分にくたびれてはいるが、独り暮らしをするには十二分だろう。
家賃……安くもなく高くもなく。
学園からの距離……多少あるが通えない距離ではない。
日当たり……まずまず。
幽霊その他……生活するのに不便するほどは出ない。

大きな可も無ければ致命的な不可も無い。
寮に暮らすことが出来ない一般生徒が暮らす必要十分な条件を満たした、どこにでもある小さな住まい。

多種多様な顔ぶれの主を迎え、そして見送ってきた
歴戦の勇士ともいえるその家には――現在、一人の小さな主が暮らしていた。

スアマ=東 > 「…………」

小さな家の片隅に設けられた、これまた小さな書斎。
文筆作業できる机と椅子。それに本棚を一つ置ければ十分だろうと思われるその部屋は、一種の異様な空間と化していた。

部屋の奥。窓際に置かれているのは作業机と椅子。
主の背丈に合わせてかサイズはやや小さいながらもしっかりとした作りであるようで……
小さな卓上灯と文房具を除けば、多種多様な本やノート、ルーズリーフこれでもかと敷き詰め、あるいは積み上げられながらも
しっかりとそれを支え、主の作業を補佐している。

そして――本や書類に殆ど塞がれた机の右手には、これまた本の山。
左手にあるのも、やはり本の山。

主の身長が低い為か、山の高さこそ低いものの……
その小柄な主が通ることだけを考えられて作られた本の間の道は、その小ささを示すかの様に細く、
大柄な人間が通ろうとするならば本を崩し、半身が埋まる覚悟が必要になるのではないかという有様だった。

ご案内:「貸家」に神納木紫鶴さんが現れました。
スアマ=東 > 「…………」

そして――そんな本に埋もれた空間の中で、その小さな影は黙々と作業を続けていた。

「…………ゴホッ」

灰褐色の癖毛に、目元には大きな眼鏡。
年齢に比しても華奢で小さな体をさらにちぢこませるようにして机にへばりつき、
自分の顔ほどもあろうかという大きく、そして古ぼけた書籍のページに目を通しては、
傍らに置いたノートに小さな手指で握ったペンを使い、何事かを書き付けていく。

「……コホッ コホッ」

スアマ=東。
華奢で背丈も小さく、また時折零れるやや声音の幼い咳からも、
彼が見た目どおりの年齢であることが分かるが……
しかし、目元に僅かに浮かんだ隈や少しかさついた手指の様子からは、
その年頃の子どもにあるべき活発さを感じることは出来ないでいた。

まるで、干からびた押し花か――あるいは、ドライフルーツか。
その姿からは、どこか危うい脆さが感じられた。

神納木紫鶴 > 「……ここですか」

地図を見て場所を確認。ここで間違いない。
ここにいる人が……自分の、ご主人様。

「さて、身だしなみに問題はありませんね」

ぱぱ、と身だしなみを確認し、整え、そして少し深呼吸。
そのまま、家のチャイムを鳴らした。

スアマ=東 > 「………?」

聞きなれない音に、本に向かっていた少年の顔が上がる。

この音は――そう、この家に備え付けられた玄関の呼び鈴の音だ。
長い間――それこそ、入居の際に動作確認をしてから――殆ど聞くことが無かった所為か、直ぐには思い出せなかった。

作業机から身を起こし、本の山の間をすり抜けつつ……
自分の喉元に手を伸ばし、そこに縛りつけられたマイク型の小さな機械――発声補助器のスイッチを入れる。

「…………『はい』『今いきます』」

喉の機械が、滑らかな声音でしゃべる。
短文しかしゃべることは出来ないが、
装着者の僅かな喉の動きや意図を読み取り、それを声として紡ぎ出す医療機械。
最初に見つけた時はその不思議な仕組みに驚いていたが、
今ではすっかりとスアマの声として、その生活を支える物になっていた。

殆どしゃべることがないとはいえ――全く喋らずに生活はできないのだ。

玄関によたよたと脚を運びつつ、しかし疑問に首を捻る。

ここには――それこそ、生活委員会が極まれに顔を出す以外、
来客が来ることはない。
講義にも顔を出しているし、特に風紀委員のお世話になるようなことも
――殆ど引きこもっているので、事件を起こしようが無いとも言う――まずない。

では、一体誰が……?

疑問を感じつつも、玄関の鍵を外し、扉をあける。

そこには――

神納木紫鶴 > 「お初にお目にかかります、ご主人様。
旦那様の仰せにより、神納木紫鶴、メイドとしてご主人様にお仕えに参りました」

メイド服の裾を掴んで優雅に一礼。
連絡はしておいた、と言う話は聞いているので、これで通じるだろうと考えてのことだ。
……だが。
そのご主人様を見て、唖然としそうになるのを堪える。
幼いから、ではない。そんな事は最初から分かっている。
問題は……その、不健康さ。
余りに不健康、病気になっていないと言ったらウソであることをまず疑うような状態。
これは……流石に、想像以上であった。

スアマ=東 > 「…………」

目の前の少女の姿とその言葉に、スアマの思考がピシっと固まる。

メイド? ご主人? この人は一体何を言っているのだろうか。
自分よりも年上の女の人に頭を下げられることも無ければ、
本物のメイド服を着ている人も、メイドと名乗る人とと出会ったこともない。

本を友達に引きこもって研究を続けてきた少年には
――その存在を知識として知ってはいたとはいえ――
硬直するなというには、些か酷な状況であった。

しばらくの硬直の後――それでもなんとか持ち直し――
喉の発生補助機に手を触れ、何とか声を紡がせる。

「…………『あの』『人違いでは』『ないですか?』」

何故か相手もこちらを見て驚いているが――
これはつまり、人違いだったということではないだろうか?
少なくとも、メイドさんの知り合いは自分にはいない

神納木紫鶴 > 「……おや?旦那様からお手紙がいっておられませんでしたか?」

目の前の少年の容姿は、間違いなく渡された資料の少年と同じだ。
多少経年変化があるものの、流石に見間違えようがない。
だが、万一と言うことも、無いわけではない。念のため名前を確認しておく。

「スアマ=東様でございますれば、私がお仕えするご主人様で間違いないのでございますが」

スアマ=東 > 「『はい』『ボクの名前は』『スアマです』」

名前を呼んだということは、このお姉さん……メイドさん……?
が探していたのは、自分であっているようで。

でも、心当たりは――

「…………『手紙』『ですか?』」

鈴の鳴る様な声音で告げられた言葉に、無いと思いかけた心がひっかかる。

手紙。手紙。

そういえば、少し前に郵便受けを覗いて作業部屋に戻ってから、
何時もの様に研究をしていて――その後、気づいてた寝ていたりしたけど、もしかして……

背中をむずむずするような冷たい予感が走るのを感じつつ、
そーっと玄関脇に設けられた郵便受けに視線を向けると……
そこには、受け取られても確認されていなかった手紙たちが、
恨めしそうな空気を発しながら詰め込まれていた。

「……………………」

何を言ったらいいか分からない時は黙っている。
優秀な発声補助機である。

神納木紫鶴 > 「……成程、そう言う事でございますか」

納得。手紙に目を通していなかっただけだ。
だとすれば、取り敢えず一から説明した方がいいだろうか。

「それでは、改めまして……神納木紫鶴、と申します。旦那様……ご主人様のお父様に依頼され、ご主人様にお仕えすべく参った次第でございます」

改めて、裾を摘まんで優雅に一礼。
ご主人様……スアマ=東の父親に息子が心配だからと派遣されたメイド。
それが、神納木紫鶴であった。

スアマ=東 > 「……!」

父親。その言葉を聞いて僅かに肩が跳ねる。

「……『その』『―-e』『――』『おとうさんは』『どうして』『あなたを?』」

喉の動きと意志を汲み取り、使用者の声を伝える機械。
それであるが故に、その動揺もまた、音ならぬ音となって漏れてしまっていた。

そして、スアマにとって父親の名前が出ることは、
色々と大きな意味をもっていた。

もしかして……何か、心配をかけてしまったのだろうか。
父や母を不安にさせるようなことを、してしまったのだろうか。

漏れ出た不安、動揺を隠すには少年はまだまだ幼く――
僅かに揺れる瞳に、不安の光がともっていた

神納木紫鶴 > 成程、と、その反応を見て得心する。
自己を抑圧する癖と言うのは、要するに親に心配をかけたくないから発生した物だったのだ。
年齢不相応に優しく、危ういご主人様。
まずは、気を緩める事を覚えて頂くべきであろう。

「大丈夫でございます、ご主人様。
旦那様は、一人暮らしをなされているご主人様の補佐として私を遣わせたにすぎません。
旦那様は、ご主人様なら立派に頑張ってくれているだろう、とおっしゃっておられました。
だからこそ、親として何かしらの形で支えたいのだ、とも」

にこ、と優しく微笑んで、嘘を教える。
本当は、彼を一人で学園にやったことに関し、深く心配していた。
大丈夫だろうか、負担になっていないだろうか。そんな不安で顔色が優れていなかったのをよく覚えている。
だが、それを伝えては、このご主人様は自分を受け入れず、更に無理をする可能性がある。
だから、ここは嘘を。心を解きほぐす為の嘘を。

スアマ=東 > 「…………『―-』」

それは優しく告げられた嘘。
しかし、それを見破るほどには人馴れしていない……
否。親を含めて、慣れるほどに人と触れ合うことがなかった少年にとっては、
それを嘘と見抜くことも出来ない。

誰を慮ってのことか――それが、自分に対するものと分からぬまま、
ただ両親のことを案じ、そして小さく安堵の息を漏らす。

「……!!」

少し気を抜いたところで、しかし慌てて姿勢を正す。
目の前にいる……メイドさん、神納木紫鶴さんは、自分を補佐する為に、両親に言われて此処に来たという。

「…………『えっと』『わかりました』『よろしく』『お願いします』」

丈長のローブをひきずるようにしながら、ぺこりと頭を下げる。
両親の気持ちに応える為にも、そして来てくれた相手の為にも、
しっかりしないといけない。

いけないの、だけど。


「……『えっと』『どうしたら』『いいんでしょう』」


流石に、少年にメイドさんに手伝ってもらうという経験はなかった。

本人にしてみれば、一応、自分のことは自分でやれているという見当違いな自覚があるだけに、なおさら疑問があるようであった。

神納木紫鶴 > 「よろしくお願いいたします、ご主人様」

微笑んで、優雅に一礼。

「そうですね、差し当たっては」

じ、と少しばかりご主人様の状態に目を凝らす。
栄養は偏り、恐らく出来合いの物を適当に食べているだけ。
睡眠も不足の様子、生活リズムが崩れている可能性が高い。
メンタル面のケアも大事ではあるが……。

「ご主人様には、ご休養いただきたく思います。
今ざっと見ましたところ、ご主人様の体調は、目に見えて悪くなっておられます。研究は少しおやすみになって、休養を取ってくださいませ。
私はその間に、荷物を入れてお食事を用意いたしますので」

生活の基盤。
そこからまず、整え直すべきだろう。

スアマ=東 > 「…………『休み』『ですか?』」

その言葉に、首を傾げる。
島に来たばかりの神納木さんが疲れている、というのなら分かるのだけれど……

「『ボク』『は平気』『ですよ?』」

その内容に、少々困惑してしまう。
少し前まで研究をしていた分、小さな疲れは感じるけれど、
それはいつのもことだし――
研究を休まないといけないような、大きな病気などにもなっていない。

――あるいは。その無自覚と認識の甘さこそが、
スアマの体を危機に陥れている原因のひとつと言えるかもしれなかった。

僅かに観察するだけでも――その体にどれだけの問題が蓄積しているのか。
ある程度の知識があるならば即座に理解することが出来るだろう……そして、それが放置されてきたことも。

「…………ケホッ」

小さく、咳が零れた

神納木紫鶴 > 「お願いいたします、ご主人様」

深々と頭を下げる。
きっと、無視しすぎて感覚がマヒしているのだ。
疲れているのはいつもの事、体調不良もいつもの事。
だから何の問題もない。
そう認識しているのであれば、大いに間違いと言わざるを得ない。
慢性化した疲労、体調不良を放置する。
それは、崖の上で綱渡りをしているに等しい状態と言っても過言ではないのだから。

「今咳き込まれたのもそうですが、例えば……お肌。乾燥し過ぎでございます。目の下に隈が出来ておられるのにお気づきでしょうか?
ご主人様の体は、私の見立てではかなり疲労がたまっておられます。
騙されたと思って、一度しっかり休んでくださいませ」

ここは少々無理矢理でも、休憩を覚えて貰わなくてはならない。
そうしなくては……このご主人様は、潰れてしまう。

スアマ=東 > 「『s』『その』『あたま』『あげてください』」

予想外にさらに予想外が重なり、スアマの頭は混乱で真っ白になってしまう。

まさか出会ったばかりの相手に、しかも初めてのメイドさんに、
ここまで深く頭を下げられることになるとは思わなかった。

今まで両親に不安をかけないように、
人にも迷惑をかけないようにとしてきた少年には、
誰かに頭を下げられた経験と言うものは存在しない。

それだけに、目の前にされたこの行為は酷く落ち着かないもので、
なんだか申し訳なくなってしまい、どうしたらいいのか分からなくなり――

「『わかりまし』『やすみます』『から』『お願いだから『頭をあげて』」

とにかく、自分が一度休まないと納得はしてくれないということは予想がつく。
だから、とにかく一度は休まないと、もしかしたらこのままなのかもしれない。

自分の調子に気づけない少年は、
とにかく頭を下げるのを止めてもらいたくて、こくこくと頷き、休むことを約束していた。

神納木紫鶴 > 「ありがとうございます、ご主人様。無礼をお許しくださいませ」

顔を上げる。
最初は仕方なくでも、休憩と言うことを一度しっかり体験していただかねば。
それで、休憩の持つ意味に気付いて貰えればいいのだけれど。

「……しかし、そう言えば、ご主人様は私が来ることをご存じなかったのでしたね。
となれば……部屋の空きは、ございますでしょうか?」

場合によっては野宿をする必要が出るかもしれない。
気になる事、確認したい事はまだまだあるが……これは、目下最大の問題であった。

スアマ=東 > 頭を上げてくれたことに、ほっと胸をなでおろす。
自分が雇い主としてみられる経験などしたことがない少年にとっては、
どうにもこういう態度は居心地が悪く感じるものであった。
もう少し普通な方がいいのだけれど

(でも、真面目そうだ……)

きっと、言っても断られる気がする。
どうしたらいいのかなあ、とうーんと頭を悩ませて、
しかし答えが出ないことにため息一つ。

「……『部屋』『ですか?』」

答えのない質問から逃避する様に、問われた内容に意識を向ける。

「『いくつかあるから』『大丈夫』『です』」

スアマが借りているのは、小さいとはいえ一軒屋である。
書斎と寝部屋以外あまり使っていない少年の生活パターンゆえにか、
他にも幾つかある部屋については、殆ど空き部屋同然という有様であった。

神納木紫鶴 > 「ああ……よかった」

ふぅ、と一息。流石に野宿は少しハード過ぎる。
と、言った所で、少し困った顔をしているご主人様に気付く。
ああそうだ。急に押しかけてこれでは、対応に困るのもやむなしだろう。

「ご主人様……何か、私にご要望などはございますでしょうか?」

聞いてみる。
抑圧してしまうかもしれないけれど、反応観察で指針にはなる。
素直に言ってくれれば、出来る限りそれに従おう。

スアマ=東 > 「…………」

一体何を想像していたのだろうか。
幾つか気になる部分もあるけれど、しかし聞くのは少し怖い気がする。

まだまだ他人に慣れていない少年としては、
メイドさんでお姉さんに質問をするのは、少々ハードルが高いようであった。

「…………?」

要望。してほしいこと。

「…………」

うーん、と首を捻り、眼鏡が僅かにずれる。
今まで、誰かのしてほしいことを考えることはあっても、
誰かにして欲しいことというのは、考えたことがなかった。

高いところにあるものをとって欲しい――というのとは、違うだろうし。

うーん。うーん。


「…………『そうじ』『手伝ってほしい』『です』」

結局、そんな当たり障りの無いことを言うことしか出来なかった。

一部のその筋の好事家の方々から見れば血涙ものの勿体無さであろうが、
少年がその価値に気づくのは果たしていつになるのだろう。

神納木紫鶴 > くす、と微笑む。
様子を見るに、そもそも人に頼むと言うことに不慣れなのだろう。
所謂『命じ慣れ』している人はたくさん見てきたが、こういう人は新鮮だ。

「かしこまりました、ご主人様。荷物を入れ次第、早速お手伝いさせていただきますね」

だが、それでもご主人様から任された大事な初仕事である。
完璧にこなさねば、と気合を入れるメイドであった。

スアマ=東 > 「『よろしく』『おねがいします』」

何故か微笑まれてしまった。
……もしかして、仕事が好きなのだろうか?
でも、仕事が好きっていう人は、もっとビシビシする人というのが本に書いてあったし……

首を傾げつつ、神納木を玄関から家に招き入れる。



――そこで待ち受けていたのは。

ゴミや汚れこそないがうっすら埃がつもる床に、
まるで長い間放置されていたかのような……停滞し、淀んだ空気。

綺麗ではあるが、それが使用されたことが無いからだと一目で分かる台所。

洗濯や掃除はされているが、最低限寝るだけしか考えられてない様な有様の寝室。

完膚なきまでに放置されているが故に、全く何もない空き部屋。

そして、最もよく使われているであろう、本の巣窟と化し、
悲惨極まりない状況と化している書斎。



微笑ましさとは全く無縁の者達が、無言でメイドさんをお出迎えしていた

神納木紫鶴 > 「……………………」

数瞬硬直。
だが、これは想定してしかるべきだった。
11歳の子どもが一人暮らし。身の回りのことをしっかりできている方がおかしいのだ。
だから。

「……ご主人様。この神納木紫鶴、失礼ながら気力に満ち満ちてまいりました」


だからこそ。
支え甲斐がある。人の手を必要としている人だからこそ、メイドの存在が輝くのだから。

「しばしお待ちくださいませ。まずは寝室を快適にいたしますれば。その後は、寝室にておやすみになって下さいませ。その間に他の部屋を掃除いたします。
書斎に関しましては、恐らくご主人様に確認していただかなければならない事柄が多いと思われますので、ご協力をお願いいたします」

ふふ、と思わず少し挑戦的な笑みを浮かべ。
まずは寝室を、どのように手早く掃除するかのプランを考え始めた。

スアマ=東 > 「!?」

なんだかよく分からないが、隣のメイドさんから今まで感じたことがないような怖さを感じる。
自分に向けられているものではないけど、押されるというか、
そんな変な空気をひしひしと感じる!!

少年は、この時初めてやる気に満ちた人間の圧力という物にさらされたのであった。
この経験は、後々にきっと役に立つであろう……多分。

「『w』『わかりました』『じゃあ』『よろしく』『お願いします』」

ガクガクと頷きながら、紫鶴の言葉に頷く。
何故か、先ほどとは別の意味で逆らうことができなかった

神納木紫鶴 > 「かしこまりました」

言うや否や。
す、と虚空に手をかざし……少しして何かを思い出したかのように溜息。
その後、鞄から簡易的な掃除用具を取り出し始める。
そして、てきぱきと寝室の掃除を始めた。
見る見るうちに寝室が整理され、綺麗になって行くだろう。

スアマ=東 > 「?」

ふしぎな仕草に、一瞬首を傾げる。
が、その小さな疑問は、テキパキとこなされる紫鶴の掃除術の前に、
片付けられる埃と一緒に押しながらされるのであった。

……寝室が片付いたその後に、スアマが布団の中で久しぶりにぐっすりと寝入ることになるのは、また別の話である。

ご案内:「貸家」から神納木紫鶴さんが去りました。
ご案内:「貸家」からスアマ=東さんが去りました。