2016/09/11 のログ
■寄月 秋輝 >
「いっ、たい!」
噛みつかれた。
さすがに人間との戦いで、首や腕ならともかく足を噛まれたのは想定外だ。
この密着状態で刀はほとんど生きない。
規模を抑えたとはいえ魔術を二発打ち込んだ、本日のストック分も考えるとこれ以上は撃てない。
あと頼れるのは体術のみか。
「う……っ!」
刀を納め、右手で額に向けて掌打を放つ。
■水月エニィ > 「いっ……た……ッ!」
真っ向から掌底を受ける。
額が割れ、頭を揺らされれば喉が膨らむ。
幸か不幸か、それ以上に登る事はなく膨らんだものは落ちる。
「……ぷ、はっ、こっちの台詞よ……ッ!」
そのまま勢いを付ける。
全体重を掛けて、ゾンビが如く足元から押し倒しに掛かる。
■寄月 秋輝 >
「うぐ……!」
こうなるともう技量も何も関係ない。
とはいえ、人間の限界を超えて鍛えた体、人とは少し違う筋肉。
押し返す程度わけない、はずだが。
(……あ、懐かしい)
少し、心が落ち着いた。
とたん、全身から力が抜ける。
まずいと思う間もなく、あっさりマウントを取られるか。
■水月エニィ > そのまま押し倒し、マウントを取ってしまえば――。
「っ……、わざと脱力したんじゃないんでしょう、ねッ!」
水月エニィは彼の何かを知らず。
手を抜いたように力を抜いたと思えば、駄々のように乱暴に拳を叩き付ける。
……実際駄々なのだろう。
■寄月 秋輝 >
「なわけあるか……!」
直撃を避けるために顔を逸らし、それでもダメージを受ける。
左手をエニィの腹に添え、魔力を放つ。
「ルミナスインパクト!」
破裂。
光を伴う衝撃、だが威力は低い。
■水月エニィ > 衝撃を受ければ押し出され、離れる。
……肉体的な損害が無ければそれ以上気にしなくもある のだが、それ以前に消耗している。
肩で息をしながら立ち上がり……
「はぁっ、はぁっ……この……!」
両腰に提げていた拳銃の一丁を取る。
ゴム弾でなく実弾で有る事も含め、普遍的な拳銃だ。
躊躇わずに発砲。
精度よりも速度を重視する。
とは言え、水月流としての操布術だけでは不十分故に会得した射撃技能に因る射撃。
言うほど外す事はない。
■寄月 秋輝 >
(……やばい、実銃……!?)
目では、異能感覚では察することが出来るが、回避は間に合わない。
シールド魔術を銃口の先に展開するが。
銃声。
それより早く届く、この目には見える弾丸。
着弾する瞬間がわかってしまう。
シールドを貫通して脇腹に直撃。
懐かしい激痛が走り、鮮血がほとばしる。
「っう゛……」
これは、さすがに耐えられない。
片手で脇腹を抑え、苦悶の表情。
本気で戦って、普通に負けた。
これが結末か、と歯ぎしりをしながら小さく笑った。
■水月エニィ >
「……」
彼が魔術を展開するよりも先に銃弾が届く。
ほんの少しだけ早く届いた銃弾は普遍的な銃弾だ。
そうでありながらも、人間の限界を超えて鍛えた体を打ち抜いた。
「決め手はこれ、か。
……平和を作るもの、そう呼ばれたものもあるけれど。
そう、なのかしらね。」
目じりを下げ、銃口から上がる硝煙に息を吹き掛ける。
そのまま腰のホルスターへと仕舞う。
「ええ、今は善しとしましょう。これは確かに力に成った。
…………勝ちは勝ち。負け犬ではない私だけれど、やっと勝てたわ。」
■寄月 秋輝 >
「いっ……つつつ……」
顔をしかめながら、溢れる血を手で押さえる。
銃弾を食らったのは何年ぶりか。
「……ほら、ね……
心がけ一つ……で……」
けほけほとせき込む。
腹筋が痛むと呼吸に支障が出る。
「……僕の月光は……もう、ほとんど効果切れだと、思いますけど……
もう、必要、無いでしょう……?」
苦悶の表情ながら、微笑んで見せた。
脇腹を抑えながら、膝立ちになる。
■水月エニィ >
「……いえ、
確かに勝ちは勝ちだけど。」
これでいいのか。
特異な形と言えど、勝利には違いない。
だが、苦悶に呻く彼を見る度に心は痛む。
「そうね。
どっちにしてもそれは要らないし、させないわ。」
ゆっくりと歩み寄り、抱え上げようと試みる。
「何処に連れて行けば良いかしら。
このままだと私は手錠を掛けられてしまうし、恨まれてしまうわ。」
■寄月 秋輝 >
「……十分な勝利、ですよ……
自信を持って……ってて……」
微笑みを浮かべながら、そう囁く。
「だって、そうじゃなきゃ……
負けた僕は、あまりに……無様、でしょう?」
勝者は、勝者としての立ち振る舞いがある。
それをしてくれなければ、敗者の価値がなくなってしまう。
「……あなたのこれまでの敗北も……
無価値ではないんですよ……」
抱えられそうになると、軽く手を払う。
震える手と足、なんとか立ち上がる。
「……大丈夫、ちゃんと遺書は……あなたに罪をかけない、よう……置いてきてあります……
でも、そうですね……とりあえず、病院で……」
脂汗滲む顔で、微笑んでみせた。
エニィはどうかわからないが、個人的にはとてもさわやかな敗北だった。
■水月エニィ >
「ええ、確かな勝利には思う。
……でもごめんなさい。そこだけは納得し辛いの。
貴方が手を拒む事もその証だわ。」
小さく首を横に振る。
彼の疵は手当の必要なものだ。
問答している余裕はあまりない。
「わたしがそうであったように、
遺書なんて、恨み辛みにそのようなものは無意味よ。
負けたのならば尚更よ。」
大きく溜息。
確かに勝てないと思うものは弱まった。
(烏丸さんの言う通りで、烏丸さんに言った通りね。
……ま、追々考えていきましょう。確かに私は勝てたし、
意図はどうあれ、勝てるような私でも認めてくれた。)
「……腕の良い医者を知っているわ。
そこに連れて行きましょう。」
いずれにせよ、そのまま彼を案内する。
……抱えられないが故に歩調を合わせなければならないもどかしさはあるが、
彼の状態がどうあれ、拒まれたのなら仕方がない。
■寄月 秋輝 >
「いや、そこは……
ただの男の意地、みたいな……
女の子に抱えられる、のは、恥ずかしいんで……」
そう言って苦笑い。
こんなときでも、ちょっとした意地が出てしまうものだ。
「……すみません、エニィさん……
先日はひどいことを言って……」
ゆっくりと歩みを進めながら、そう呟く。
炊きつけるためとはいえ、暴言を吐いたことは未だに胸につかえていた。
■水月エニィ >
「でしょうね。負けた貴方にも、負けていた私にも意地がある。
それを力づくで蔑ろにはしたくはないわ。そんなのは大っ嫌い。
……だから私はそうしない。
力づくをすれば勝者の様に振る舞えるのでしょうけど、そうまでして勝者でありたくはない。
でも、勝った所で意志を通せないなら空虚な話ね。」
苛立たしげに睨んだ後、目じりを下げる。
……ただ恥ずかしいから。
それだけで傷を負った彼を運ぶ事すらできやしない。
「……良いでしょう。この場は私が折れるわ。
だけれど、1週間後に無事な姿を見せて罰ゲームを受けなさい。
それすら拒むなら、これは勝ちではないわね……。」
負けた上でアレも厭だこれも厭だ。
そう拒んで、言外に力づくでやってみろと謳うならば。
これは決して勝ちとは呼べない。
意地を掛けた勝負の先で、勝者の善意の行動ですら意地を以って拒むのだ。
少なくとも、意地を張った意味はなくなる。
それはきっと、酷いことを言われるよりも残酷な仕打ちだ。
水月エニィはそう認識する。
……故に凹んだ。踵を返し彼から離れようとする。
■寄月 秋輝 >
「……別に、運ばれてもいいんですけれど……
まぁ、出来れば、で……」
些細な理由であり、小さな願望である。
押し通されても問題ないとは思う。
「……そういえば、メイド服とか、なんとか……
それは甘んじて……受けますが……
何をさせる気、ですか……?」
離れようとするエニィに問いかける。
痛みが広がってきた。
貫通銃創のようだが、それはそれで痛む。
■水月エニィ >
「言われた以上、私は出来ない。
そんなことをされるのが厭だから勝てるようになりたかった。
けれでも進んでそうしたい訳ではないわ。矛盾を孕むけれど勝者だからしない。」
熱意を込めて断言する。
『できない』から『しない』に切り替わったからこそ強く云える。
「認められたいけど、力づくで押し通すなんてまっぴらごめん。
……中身は落ち着いてから考える。無駄口叩いて貴方を死なせる訳にはいかないもの。
だから、さっさと行く事にするわ。死んだら承知しないわよ。
罪を負ってでも生き返らせてやるんだから。」
風の如く走り去る。
既に彼女の姿は此処には無い。
ご案内:「転移荒野・白夜の地平」から水月エニィさんが去りました。
■寄月 秋輝 >
「……ふ、ふ……」
疲れたように笑う。
どこまでも、女性の扱いが下手だ。
けれど、彼女があれだけ言葉の強さを持てたことが嬉しかった。
もう、彼女は敗者などではない。
ふらふらと歩き、途中で宙に浮いて病院へ向かう。
のだが。
(……やべ、意識が……)
激痛と失血、疲労と体調の悪化の始まり。
全てが重なって、大分ヤバい。
空中を飛んでいく間、必死で意識を保ち。
多分、病院の前らへんで力尽きて不時着した。
ご案内:「転移荒野・白夜の地平」から寄月 秋輝さんが去りました。