2017/01/13 のログ
谷蜂檻葉 > 「……悠薇。 伊都波 悠薇。」

名前を呼ぶ。

ゆっくりと彼女を落ち着かせながらしっかりと名前を呼ぶ。

「伊都波 悠薇は、たった1つの心配をしなさい。」

彼女に、ゆっくりと言葉をかける。

「どんなに迷惑をかけたっていい。
 誰かのために生きるのなんて、止めなさい。

 ”自分の為に”誰かを言い訳に使うの。 それは何も恥ずべき事じゃない。

 だから教えて。 ―――何故、あなたが消えるの?

 私は私のために、貴女を失いたくない。 ゆっくり、解ることを一つずつ教えてちょうだい。」


檻葉という少女が芯を持っているように見えるとすれば、

それは彼女の掲げる『自己中心主義』の賜物だろう。

「生きる」という意志の後押しに、これほど適した考え方もない。

伊都波 悠薇 >  
泣き声はそのままに。

「私は、受け入れたんです。あの人たちを。天秤を、取ろうとした人たちを」

そうだ、そう。思い返せばあの時からだ。
記憶が混濁し、いろいろいろいろと”らしくない”ことばっかりで。

「最初は変わったと思ってたんです、でも違って――」

そう。
そこから、”変わった自分”が出てくるようになって。

「天秤は、私のモノじゃないから。だから、本当の持ち主が、って推測をして――」

そこまで考えて。
だから、誰が自分を、”盗ろう”としているのか。
だれが”取り返そう”としているのか

「――そこまで、考えて」

考えて。

「――私は、私が怖くなって。私は、内側にいる誰かにおびえるようになって」

だから。

「私は、私だって証拠がほしくて……先輩に、私だって、言ってほしくて。だって、先輩は、私の”友達”、だから」

姉だってきっと言ってくれる。
家族だから。でも姉の前にはいきたくなかった。
姉の前では誰であるか自分は不確かだったから。
だから――そうじゃない友人の前で、吐露、したかったのだ。

「せんぱい、わたしはいつまで、わたしでしょうか」

支離滅裂。もう、悠薇にもわかっていないのだろう。
自分の中にいる誰か。
天秤の持ち主が、いつ自分を上書きするかなど――

「どうやったら”自身を保てるでしょうか”?」

谷蜂檻葉 > (”別側面の人格”-アルター・エゴ- ……と、断じてしまうのが楽だけれど。)

さて、彼女に掛ける言葉は何を選ぶべきだろうか。

幾つかの選択肢が檻葉の前に浮かんでは消えていく。



―――基本的に、檻葉にとって彼女に起きる様々な過程というのは『どうでもいい』。
   泣いても笑っても、檻葉にとっての価値はない。
   では、これをどう言葉にするかともう一度噛み砕いて、


「……さっきも言ったけどね。

 貴女は、貴女でしか無いの。『貴女自身が疑おうと』、私にとっての伊都波 悠薇は貴女しか居ないわ。」


だから、大丈夫よ。
そういって、もう一度強く抱きしめた。

その言葉の裏は、

『偽物だろうが檻葉にとって伊都波 悠薇はその偽物が”本物になる”』

という、あまりにも身も蓋もない事実だが、檻葉は勿論その言葉は口に出さなかった。

伊都波 悠薇 >  
「――せんぱいは……」

その言葉を受けて、ぐすっと。泣き止んで。

「先輩は、”先輩”ですね」

一生懸命笑い顔を作って、そう告げた。
彼女は、嘘はつかない。
ただ、いつもいつも”ずるい”言葉を持っていると思った。

だって、こうやって落ち着くことのできる言葉を投げかけてくれる。
たとえ、身のふたもない事実であろうと、その事実は悠薇にとっては”本物”だ

「ありがとうございます、先輩。少し、落ち着きました」

話はこれだけですと、告げて。体を離す。

「――相談に乗ってくれてありがとうございました」

谷蜂檻葉 > 「もう少し、優しい言葉でも持ってればよかったのだけれど。」

谷蜂檻葉という少女は、認めた相手にはやたらに辛辣なところがある。
それは彼女なりの「甘え」であり、遠慮のない言葉を向ける『信頼』でもあった。

「そう。

 ……次はもう少し、話をまとめてから教えてちょうだいね♪」

最後は、また少しおちゃらけて。
「またね。」と声をかけて彼女は帰路についた。

ご案内:「伊都波家 妹の部屋」から谷蜂檻葉さんが去りました。
伊都波 悠薇 >  
「はい――……」

おちゃらけた言葉には微笑みを返して。
そして、見送れば――……

「また、先輩。もっといろいろ、教えてくださいね」

――■■のことを

そのつぶやきは、風に消えて――……

ご案内:「伊都波家 妹の部屋」から伊都波 悠薇さんが去りました。