2017/04/07 のログ
伊都波 悠薇 >  
むせた姉を見て、悪戯を成功したかのように微笑み。

「ん、そうだね。――有効だったら?」

――どうだと思う?

なんて。
ことりとカップを置いて。

「……小雲雀って、なに?」

伊都波 凛霞 >  
「───……」

小悪魔的な妹の行動に思わず口ごもってしまう
顔が真っ赤になってるのは対面の妹には丸見えの筈で

「ゆ、有効だったら…………照れる」

ふい、と視線を外してそう応えた

視線を外したままに───
その次の言葉に、どこか寒気を覚えた

「なに……って、
 ほら、お気に入りの、いつもつけてたストラップで、名前とかもつけてて……」

忘れてる?
いや、あれを忘れてしまうなんてことがありえるのだろうか?

伊都波 悠薇 >  
「じゃあ、問題ないね。私は恥ずかしくないし」

――天秤。
この反応もまた、姉が恥ずかしがっているからなのか。
それとも――

「――あぁ、そういえば”そういうのもあった”っけ」

顎に手を当てて、何かを探すように。
んーっと、上を向く。

「――でも、そのストラップがどうかしたの? お姉ちゃんにも大事なものだった? ――もしかしてお姉ちゃんからもらったものだったっけ?」

後半は、ちょっと焦ったように

伊都波 凛霞 >  
"そういうのもあった"
そんな言葉が出るほど、小さなことだっただろうか…
どこか感じていた違和感はここにきて少しずつ、不安に変わってゆく

──今の妹は…
眩しい笑顔を見せ、明るく、自分の気持ちに正直に…
前向きで、───でも、なんだか……

「……ごめん」

コトリとカップを降ろす
妹の変わりように、喜んでいた自分もいた
それは一般的に見て、良い方向への変化だったから
でも………

「──"君"、だれ…?」

きっと向けてはいけない言葉
その言葉を口から紡ぐ姉の表情は不安気で、どこか…恐怖を感じているような

伊都波 悠薇 >  
「……だれって」

始めて見せた狼狽。
なにか違ったろうか、なにか怒らせたろうか。

「私は、悠薇だよ? どこからどう見ても、そう、でしょ?」

知っている。

「ほら、お姉ちゃんに助けられて。その日から、ずっと――追いかけてきて……」

あの日々を。全部全部知っているのだ。
だから証明のように――

”姉妹―ふたり―”の過去を口にする

伊都波 凛霞 >  
「………私は──」

まっすぐに目を見ることができない
俯いたまま、辛く息を吐くように…言葉を

「悠薇が前向きになってくれて嬉しかった。
 まっすぐに私へ好意を向けてくれるのも、物怖じしなくなったことも…。
 それは、私にとって優しい悠薇だったから」

一度言葉を切って、深呼吸をして前を向く

「でも、変わりすぎてる」

その声は小さく震えて

「私と過ごした過去を知ってて、同じ顔をして、同じ声で話すだけの───"別人"みたいだよ」

伊都波 悠薇 >  
「……――」

俯いた。肩を震わせて――
静かに地面を見る。

「……それはそうだよ。だって、お姉ちゃんが悪いんだよ?」

別人。それはそうかもしれない。
でも仕方がないのだ。振り向いてくれて、その視線をずっと。
ずっと、自分に向けてほしかった。

もう、そらさないで欲しかった。
だって、ようやくようやく――

”ワタシ”を見てもらえるようになったんだから。
だから――

「お姉ちゃんが、私を変えたんだもん」

だから、すねた子供のように。
そう”繋げた”

伊都波 凛霞 >  
「じゃあ…わかった」

すぅっ、はぁー…ともう一度深呼吸
妹からどんな言葉が出てきたも大丈夫なように…心を決めておく

「何がどうなって、今の悠薇なのか。
 一つも隠さず私に教えて、曖昧な言葉で濁さないで全部ぜんぶ…」

物分りのわるいお姉ちゃんだけど、と一言加えて、椅子の上で姿勢も正す

自分のせいなのだというのならば、
それははっきりと受け止めなければならないこと

悠薔の口から、その全てを聞く必要があった

伊都波 悠薇 >  
「……なにがどうなって?」

何を説明しろというのか。
説明、この感情を? 芽生えたものを?
この場所で? なんて鬼畜な姉なのか――
でも――

「それは……」

ぎゅっと服の裾をつかんで。

「それは……」

伊都波 凛霞 >  
──ひどい姉だと思う
妹は、きっと今日を楽しみに楽しみにしてきてくれた

けれど直感にも似た不安が、覆いきれない

ずっとずっとおかしいとは思っていたこと
決定打となったのは小雲雀への、妹の言葉

あれではまるで───

「(……お願い、私の不安を全部否定して。バカなこと言わないでお姉ちゃんって、怒って──)」

伊都波 悠薇 >  
「――それは、私が恋をしたからだよ」

さて――その私は。

「私が、お姉ちゃんを好きになったからだよ」

一体。

「あの日。一緒にいてほしいって言われた時から」








伊都波 凛霞 >  
「───……わかった」

妹の言葉を受けて、姉は少しだけ寂しげにそう呟く
我慢しなければ、少しだけ涙が出てきそうなくらいに、その言葉は重かった

「私は、悠薇のことが大好き。
 自分の何を犠牲にしてでも、絶対に護りたい大事な妹。
 ずっと一緒に育ってきたし、やっぱりこれからも一緒に過ごしていたい……。
 でもね悠薇……───私のその気持ちは恋にならない」

伊都波 悠薇 > すごく、気まずい空気が店内に訪れる。
あぁ、すごく――すごく。

すごく――

「うそつき……」

分かっていたことだった。
あぁ、やっぱり。やっぱり、お前も――

「一緒にいてほしいって、言ったのに」

あの言葉は、嘘だったのだ。
喜びから落とす。

やっぱり、やっぱり――


食い違い。
勘違い。

「……お姉ちゃんの、”うそつき”」

昔、告げた言葉とは意味の違うものを、ぶつけて

伊都波 凛霞 >  
「勘違いさせちゃったのも、訂正するタイミングが遅くなっちゃったのも…私のせいだね。
 ごめんね、嘘をついてたつもりはないんだよ?
 一緒にいてほしいって言ったのは本音だったしね、……甘えてたんだろうね、私を好きだって言ってくれる悠薇に」

自分を慕ってくれる人間に対しての拒絶の言葉
なんて勇気がないことかと自嘲したくなるほどの、臆病者

「ほんとは気づいてたんだけどね。
 "食い違ってること"に……。
 だから、ね……戻って欲しい、昔の…昔の悠薇に───」

言う資格があるのだろうか?
一番変化を望んでいたのは自分だというのに
その我儘に嫌気すらさしてしまう
口を噤むべきなのだということは、わかる

──いや、さっき決心をしたばかりだ
後戻りはしないのだと

「でも、償いをしようと思う。私を……
 ウソツキと罵って引っ叩いたっていい、
 こんなダメなお姉ちゃんでいいなら、悠薇の気持ちに応えられるように頑張る
 許せないなら……頑張って、それも受け入れるよ」

妹はこの言葉になんと応えるのだろう
何も応えず去ってしまうのかもしれない
その結果自分は一番大事なものを失ってしまうのかもしれない
けれど、それでも目の前の"妹"が別人に見えてしまっている今は…それが何よりも、辛く

伊都波 悠薇 > なるほど。
もとにということを、望んでいる。
つまりは、そういうことだ。
望んでいる側と、望まれている側。
 
「……――」

つまりは、この天秤は。
使用している側の”望み通り”にはならないということだ。

――思ってたより、今の依り代の”天秤”は随分と歪んでるね……

困ったと、零して。

さて。

あぁ、どうしよう。また、”この想い”は叶わないのか
いや違う。この人じゃなかったのかもしれない

「――……人間は難しいね」

そうとだけ零して。

「戻る? 戻るなんて無理だよ。
 過去の私がいいなら、彼を探しなよ。私は、”伊都波悠薇”だから」

立ち上がり、溜息一つ。

「……自分勝手な人。キミの”伊都波―いつわ―”はなんだろうね」

去りもせず、応えもせず。
ただいるだけとなり果てる。

恋、その感情が抜けたとたん――
彼女は、前よりも”無機質”になった

伊都波 凛霞 >  
"人間は難しい"

その言葉に、背筋が凍るような感覚を覚えた

けれど不安は確信に変わる
この悠薇は、悠薇じゃない
それはまるで何者かが成りすましているようにすら──
うすら寒いものを感じずにはいられなかった

「彼っていうのは、スラムの彼のこと?
 ねぇ、ちゃんと答えて!君は悠薇をどうしたの!?」

思わずあげてしまった大きな声、他の客が何事かと視線を注ぐ

伊都波 悠薇 > 「さぁ? 昔の私ならどこかで泣いてるんじゃない? だって、助けてって。何度だって、言っていたもの」

そして――

「それでも見て見ぬふりをしていたのは、キミでしょう? だから、私を受け入れてくれると思ったのに」

拗ねたように。口をとがらせて。

「彼のウィルスだか何だか、知らないけれど……それの作用なんじゃない? もともと、私は、私の”伊都波―いつわ―”だったんだから遅かれ早かれ、こうなっていたんだろうけれど」

伊都波 凛霞 >  
「どこって、どういうこと!?
 泣いてるって、やっぱり君は悠薇じゃないんだよね!?
 ウイルスって、ディアボロスウィルスのことを言ってるの!?
 ”伊都波―いつわ―”って、どういう意味───」

立ち上がり、身を乗り出すようにして説明を求める
否応なく周囲の視線を集めてしまうが、当の本人はそんなことを気にする様子もなく……必死だった

伊都波 悠薇 >  
「知らないよ。それに、周りに迷惑でしょ。静かにしたら? だから――もう、私は”伊都波悠薇”なんだって」

――それ以上の説明はできないよ

溜息まじりにそう呟いて。

「あぁ、そうだね。そんな名前のモノだったっけ」

そういえばそうだった。

「あれって、”誰かに上書き”されるものでしょう? それと合わさって。融けちゃった――ってことじゃないの?」

伊都波 凛霞 >  
言葉を受け、不用意に注目を集めてしまったことを一礼して謝罪すると、席へと座る

片手を額に当てて、俯く
落ち着け落ち着け、と自分へ念じて…

「ちょっと待って、整理させて……君は悠薇なのに、私の戻ってきて欲しい悠薇はどこかで泣いてる…?
 ウィルスは、彼の…ディアボロスウィルスで間違いがなくって………?
 融けた…融けちゃったって…?元の人格がとか、そういうこと…?」

頭痛が起こりそうだ
これなら複雑な関数を使った証明のほうがよっぽど楽ちんである

「君の言う”伊都波―いつわ―”っていうのは…結局なんなの…?」

伊都波 悠薇 >  
「――……」

さっきまでの表情、感情が消えうせたように。

「”伊都波”、は逸話だよ。先祖返りとか、そういうの。私は、私の”ルーツ”があるのよ。キミにも、あるんじゃない? そういうの」

伊都波 凛霞 >  
「………先祖、返り…」

その言葉を聞いて、なぜだか心臓が跳ねた
どくん、ととても大きく

「どういう…えっと、待って待って……」

つまり、目の前にいるこの妹の姿をした誰かは…

「悠薇に連なってる…ご、ご先祖様……と、悠薇が溶け合っちゃったみたいな感じのそういう…!?」

……青垣山のおうちに住んでいるとある程度オカルティックな話には耐性がある
が、それにしても…それにしてもである

「それはそれは失礼しました……ええと、
 そ、それじゃあどうしたらいいんでしょう…?」

困りきった表情で首を傾げる凛霞
180度想像していなかった方向からの奇襲だった

伊都波 悠薇 >  
「……さぁ?」

首を傾げた。気にしてないといわんばかりだ。

「どうしたらと言われても、根源に至った私を褒めるくらいしかできないよ。でも昔の私に戻ってと言われても無理。私は1001回目を始めるだけのことだから――」

伊都波 凛霞 >  
すっと手のひらを悠薇へと向けて、もう片方の手は再び額へ
本当に頭痛がしてきそうだ

「さぁ?って……、
 1001回目とかも、意味がわかんないよ…」

わからないことばかりだ
ただわかることは…目の前の悠薇が、決して偽物なんかではないこと
そして言葉を信じるなら…もうあの頃の悠薇には会えないのかもしれないということ───

そう思うと、ぽろりと涙が溢れた

「そっか」

取り返しのつかない選択肢はいくらでもある
それでもやりなおしたいと願った報いだろうか

「……そっか」

涙声で潰れた言葉を呟いて、そのまま黙り込んでしまう

伊都波 悠薇 >  
「――まぁ、なにはともかく。彼を探したらどう? もしかしたら、ワクチンとかでなんとかなる、かもしれないよ?」

――ぽつり、つぶやいて。

「それはつまり”私”を殺す、ということだけれども。それでも、そうしたいなら――」

泣かれるのは困る。
一時期でも、好きだった人に泣かれるのは困るのだ。

「どうぞ、ご勝手に? でも、それまではよろしくね、”姉さん”」

伊都波 凛霞 >  
「泣いてないよ」

ぐっと袖で拭う、目は赤い
けれど泣き声だけは出さずに否定しよう、嘘でも強がりでもいい
妹が見ているのだから

「──此処は常世の島だからね。
 不思議なことが一杯ある……そうだね、もしかしたら……」

少しだけクールダウンした頭の中、よく考えてみれば、そうだ

「悠薇と悠薇を分離させて、君に新たな器を用意することだって、できるかもしれないよね?」

前向きで躍進する自分を、見せなければ

「まぁ、虫の良い話かもしれないけど……
 私の事を好きだった人のことをこう、殺すなんていうのもね……、
 素直に言えば、私は悠薇にそう言われてどきどきしたし…嬉しかったその気持ちは本当のものなんだから」

とはいえ前途多難、ひとまずどうしたものか

「…とりあえずこのあとどうしよう?」

もう一人の妹との付き合い方や距離を見定めるためにも、デートの続きをするべきなのか

伊都波 悠薇 >  
「さぁ? どうしようといわれても。私としては、らぶらぶな恋人と過ごすくらいの甘いひと時を送るつもりだったんだけど――」

肩を竦めて。

「どうやら、お相手さんはその気がないみたいだし? まぁでも――」

そうだと、思いついたように。

「償い、するっていったよね?」

にんまりと、妹がしないような。
小悪魔的な笑顔で――

伊都波 凛霞 >  
「冷たい言い方したのは悪かったけどー、
 あれは君がそのへんの事情説明してくれなかったし私は妹の状態に確信もてなかったしー」

こちらもこちらで肩を竦める

「……でも敵意があるモノに乗っ取られてるとかじゃないってわかったしね」

言い分を全て信じるならば、だけれど
生憎とこの姉は大体の人の言うことは信じてみてから考えるタイプだった
ふぅ、と小さく息をついて、胸元に手をあてて言葉を続ける

「い、言ったよー、君のこと傷つけちゃったならそれが本意じゃないって示す必要があるもの」

問い詰めたのも、確信を得たかったからのこと
その結果がこういう話になってしまったのならば、それで…

伊都波 悠薇 > 「――なら、簡単だ」

うんっと、頷いて。

「――らぶらぶな、デートの続きと行こうじゃないか」

そうだ、

「振り向いてもらえないことには慣れているんだ。今回もまた、振り向いてもらえるようにするのもわるくない」

そういって、手を取れば。

非情にあまあまな、ばかっぷるのようなデートをさせられたのは言うまでもない

伊都波 凛霞 >  
「あっ、え、ちょっと──」

そう来る!?
なんて少し慌てふためきながらその手を引かれる

これまでは手を引っ張る側だった姉が、妹に手を引かれて…
困った人かもしれないな、と内心苦笑しつつも、その感覚は妙に新鮮で…

妙に、懐かしかったような

不思議な感覚を覚えたままに、主導権を握られたままあまあまなデートの1日を過ごしたそうな

ご案内:「学生街」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「学生街」から伊都波 凛霞さんが去りました。