2018/11/15 のログ
■伊弦大那羅鬼神 > ━━━━何かを感じている。
それは、その造作で、何かを探すようにも見えるからだ。
……鼻を、すん、と鳴らして、ゆっくりと襤褸の奥。
赤い光が閉じて。
「━━━━━━━━グ、ゥ、ア。グ、ゥ、ア」
━━名前を呼ぶようにも聞こえて、襤褸はゆっくりとしゃがみこんだ。
その手で、襤褸の奥から伸びた、鋭い爪を持った手で、
床に、がり、がり、がり。
がり、がり。
がり、がり。がり。
「…………ゥ、ア、ア。…………ウウ」
■伊弦大那羅鬼神 > ━━刻まれた字は、何か字のようなものだった。
……字のようなものであって、字ではない。
規則性があるような同じ傷跡を、いくつも、いくつも。
がり がり がり。
がり がり。
「…………」
……傍らを、ネズミが数匹、駆けていく。
音に驚いて、物陰から物陰へと逃げていく。
外から吹き込む風に襤褸が煽られ、それが捲れる。
……振り乱した白い髪に、僅かな灯りで、赤い色が浮かんだ。
片目のない顔だった。ゴツゴツとした肌に、無数の傷跡があった。
口に収まらない長さの二本の牙があった。
…………細く開いた、赤い隻眼があった。
それは、人の形を朧に残した人ならざる者だった。
「……ゥ」
口が開く。牙の隙間から、ひゅう、と息が抜けていくのに交じるような、小さな声だった。
ご案内:「山奥・廃寺跡」にレイヴンさんが現れました。
■伊弦大那羅鬼神 > 『 ┃ / `/ >` 』
…………傷跡は、辛うじて、何かを示す。
字ではなかった。ただの、爪痕のようなものが、いくつも、いくつも。
「……ウ、ゥ、ア。…………ウウ、ゥ」
傷跡を、ゴツゴツとした手がなぞり、赤い隻眼が、閉じられる。
ごとん。
座り込んで、襤褸をゆっくりと被り直した。冷たい風を凌ぐためにか、差し込む光から少しでも身を防ぐためにか。意図の不明瞭な行為を繰り返していた。
ただ、そのどれもが━━或いは、寂しそうにもみえる。
■レイヴン >
(ある噂。
なんでも、山奥の廃寺に鬼が住まうという。
昔話の類かと一笑に付すには、この島は異質すぎた。
場所柄そうそう生徒が迷い込むとも思えないが、可能性がゼロではない以上、調べておく必要がある。)
――当たりくせぇな、こりゃ。
(ボロくさい廃寺の中から聞こえる呻き声と何かをひっかくような音。
鬼かどうかは知らないが、とにかく何かが居るのは間違いないらしい。
フラッシュライトを付けた拳銃を構え、扉をそっと開ける。)
誰かいるのか。
言葉わかるなら返事しろ。
(拳銃のフラッシュライトで屋内を照らす。)
■伊弦大那羅鬼神 > …………来訪者があることに、それが気付くのに、幾つかの間があった。
明らかに自然のものでは無い光が、自然の風ではない力が、中を照らして、扉を開けたのだ。
ぐる、と襤褸をまとった”それ”は、ゆらりと立ち上がる。
光に照らされるのを避けるように身を捩り。
「━━ヴァ、ガァァッ……!!」
威嚇するような声を上げながら、その方向へと振り返って、襤褸から伸びた手が光を遮った。
崩れかけた寺院の中に、襤褸を羽織った何かが居る。二足のそれは、辛うじて人型だ。
僅かに覗く肌は褐色か土の色か、人にはそうそうにない、血か赤いかも分からないそれだった。
そして━━光に照らされることで僅かに浮かび上がる。その顔は歪んでいて、片目が顰められ、向けてくる相手を嫌悪していた。
■レイヴン >
(唸り声と、照らされる異形。
あからさまに顔をしかめる。)
――大当たりだクソ。
(照らされたのはまさに鬼。
大まかな形こそ人のそれだが、明らかに人ではない。
明らかな人外を目にし、異端狩りとしての自分を奥底から引き上げる。)
言葉はわかるか。
わかるなら両手を広げてこちらに向けろ。
(見た目は話が通じるようには思えない。
彼?の行動を予測してみるが、情報が少なすぎるために想定されうる行動全てがリストアップされた。)
■伊弦大那羅鬼神 > ━━━━ぎし、と。床が鳴る。
…………ゆっくりと、そちらから離れる動きをとっていた。
光から身を引いて、暗闇に隠れるように襤褸を引きずり。
「ヴァ……ヴゥゥウウウゥゥ……っ!!」
唸り声、威嚇。手を前に出すまま、光から離れていく。
…………位置が移動したことで、その襤褸が隠していたものが、光に照らされる。
━━床一面に刻まれた、爪痕のようなもの。
それは規則性を持ったものであり、そして、決して字には見えないもの。
同じことを、何度も何度も示すようなそれらが、光で照らせば、床にも、壁にも、崩れ落ちた柱に至るまで刻まれている。
「……ウウ、ガァアっ!!」
声は常に上がっていた。威嚇を繰り返していた。それでも、……今のところ、攻撃を仕掛けてくるような動きは、無い。
■レイヴン >
ッチ。
(言葉は通じないらしい。
今のところむやみやたらに人を襲うといった感じではなさそうだが、そんなものはこいつの機嫌でいくらでも変わる。
様子を見るか、それとも今のうちに始末しておくか。
どちらが良いのか決めかねていたところで、鬼が動いた。)
――あ?
(床から壁から柱までびっしりと付けられた傷。
一見マーキングのようにも見えたが、自身の異能と異端狩りとしての経験が違うと告げた。)
字……?
(読み取ることは出来ない。
だが、よく見れば一定の規則性を持って付けられている。
それが地名か名前か、もしくは何か訴えたいことなのかまでは判断が付かないが、それは明らかに文字。)
■伊弦大那羅鬼神 > 『 ┃ / `/ >` 』 『 ┃ / `/ >` 』
『 ┃ / `/ >` 』
『 ┃ / `/ >` 』 『 ┃ / `/ >` 』
『 ┃ / `/ >` 』
━━━━全て同じ形をした傷跡だ。
「……ウウ、ウウゥゥ……ッ!!」
いよいよ光から遠ざかる動きは壁際まで至り、背中をつけて、手を前に出すまま、威嚇の声だけが響く。
床を踏みしめる鋭い爪のある足は、膂力のありそうな、岩にも似た肌。
……しかし今は、その足までも、照らされる灯りから引いている。
━━傷跡の規則性は、さながら、字の破片のようだった。
様々な作り方を試したように、傷つけた深さや傷跡の感覚は違うが。
━━読み取るとするなら、三文字。何かを刻み続けている。同じもの、同じこと。
記憶するようなものなのか、忘れないようにするものか。
刻む数だけの、それへの執着が滲んでいる。
■レイヴン >
(何かが書かれていることはわかる。
それが三文字だと言うこともなんとなくわかる。
だが何が書かれているのかはわからない。
一つを抜き出してあれこれ考えればわかるのかもしれない。
だがあまりにも数が多すぎるし、重なっていたりしてひどく判別しづらい。
時間をかければあるいは――)
――そこまでさせてくれやしねぇよな。
(鬼から目を離すわけにもいかない。
しかし貴重な情報だ。
鬼に注意を払いつつ、廃寺の壁に沿いながらじりじりと移動し、文字へと距離を詰める。)
■伊弦大那羅鬼神 > 「……ッ!!」
どつん、と。
近づかれることで、壁に体を打ち付けるように距離を取っていた。
……何かがおかしかった。威嚇を続けるのに、一切近寄ろうとはしない。
光を極端に嫌がるようにも見えるが、或いは光が照らすことを避けているようにも見える。
……傷跡を探ろうとしていることに気づいたのか、
「ガアッ!!!!」
一声、更に大きく吠えた。
……………………。
……『 ┃ / `/ >` 』
『 '/ `/ ┳┓』
『 '/ `/ ×』
……奥まった場所に、僅かに形の違うものがあった。それだけが傷跡の中でも、特に細く浅い。
━━明らかに、カタカナの字だ。
■レイヴン >
(文字を探る。
筆跡はバラバラだが、場所によって微妙に違う。
奥まった場所のそれを見つけ、)
ソ……いや、――ッ!
(読み取ろうとしたところで、フラッシュライトが点滅する。
バッテリーが切れかけているのか。
理由はわからないが、こいつは光を極端に恐れている。
そこで光が切れれば、)
――ッそが!
(咄嗟に手を突き出し、転移魔術で大剣を呼び出す。
床に突き刺すように、鬼と自身を隔てる壁のように。)
■伊弦大那羅鬼神 > 「━━━━ヴッ!!」
……光が弱まった刹那だった。
バカンっ、と床をけたたましく踏み抜く音。
一瞬で、ぼろをまとったそれが距離を詰めてきていた。
目の前に突き刺さる大剣によって阻まれた動き。
それは━━━━。
「グゥアアァッッッ!!」
━━その剣の向こうにいるそちらへと伸びた、開かれた手。
叩きつけた剣が軋むような重みと、みしり、と音を立てる床。
……その剣に、『掴みかかっていた』。
■レイヴン >
(自身が剣を呼び出した瞬間、床を踏み抜く音。
ほんの僅かな間を置かず、剣をつかんだ右手に衝撃。
そのまま弾き飛ばされ、床に押し倒された。)
ぐ、ぉ――!
(まるで抵抗も出来ない。
人間と異端の膂力の差があるとはいえ、こうも簡単に弾き飛ばされるなど。
そういう、異能か。)
く、そが!!
(左腕を動かし、彼の腹へ銃口を突き付ける。
拳銃の引き金を躊躇いなく引き、数発の5.7x28㎜弾を叩き付けた。)
■伊弦大那羅鬼神 > 「━━━━━━━━グ。」
バキンッ ガキンッ。
……数回の金属音のような音、そして「火花」。
至近で撃ち込まれた銃弾は、間違いなくその腹部に命中していた。
━━命中していたが、それらは腹部にめり込むようにしてひしゃげて、幾つかが、着弾して少し経って、足元へと転がり落ちる。
「……ヴ、ゥウァァ…………」
……低い声が上がる。掴みかかっていた剣へと力を込めながら、何かを。
━━ぐい、と。
床に押し倒した相手を、剣ごと掴んで、その膂力のままに。
……………………寺の外へ向けて引きずろうとしていた。
視線はそちらから外れ、ただ寺の外目掛けてそちらを攫っていくことだけを考えているように。
■レイヴン >
ばッけモンが……!
(至近距離で放たれた銃弾は、しかしその皮膚すら削ることなく地に落ちる。
文字通り化け物じみた強度に悪態を吐く。)
出てけ、ってか……!
(自身の体ごと引きずられていく。
ここから追い出したいのだろう。
だが。)
――なめんじゃねェぞ!
(銃を捨て、後転するように足を振り上げる。
同時に大剣を転移。
右手から、左手へ。
その勢いのまま、)
オォラァ!!
(剣を後頭部へと叩き付ける。)
■伊弦大那羅鬼神 > ━━━━ごしゃあっ。
「ッ!!……グ、ヴァ…………っ!!」
━━鈍い音が響いて、その後頭部に刃がめり込む。
流石に屈強な体躯を持つこの鬼であっても、その一撃は応えたのか。
苦痛の声を上げて、ふらりと前によろめく。
ぼた、と、床を汚す雫があった。
…………が、それに対する行動は。
「…………グ、アアアッ!!」
ぎろり、と、その隻眼を向けながら吠えることだけ。
離れられれば、位置取りが変わる。
寺の出口へと其方を結ぶような場所へと足が動き、再び吠える。低く姿勢を変えて、襤褸の奥の目がまたたく。
…………寺から追い出す為の行動としては、恐らく次の一撃が相当大きなものであることを、最後通告するように。
■レイヴン >
(銃弾は止められても、大剣の質量はさすがに受けきれないらしい。
ならば、戦える。)
は、丈夫なこった。
(出口は塞がれた。
しかし逃げるつもりもない。
狩れずとも、深手ぐらいは負わさなければ。
生徒がこいつに襲われる前に。)
来いよ、鬼っコロ。
異端狩りを舐めんじゃねェぞ。
(大剣を構える。
鬼の低い姿勢。
限られた情報から次の一撃を予測すべく、思考と異能をフルでブン回す。)
■伊弦大那羅鬼神 > ━━動く気は無いと認知したらしい。……その一瞬、赤い目が、明らかに。
『この後の行動へと躊躇を見せた』、ような。
…………低く構えた姿勢から、更に、口を開けて。
「ゥ、オオオォ…………っ」
━━━━ざわ、と。寺院の中の空気が揺れた。
と言うよりは。
……その鬼が、大きく。息を吸い込み始め、その襤褸の奥、胸部が膨らんでいっていた。
━━━━そして。
━━━━。
■伊弦大那羅鬼神 > 「ガァ”アアア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ヴウウゥ”ゥ”アアアアアアアアアアアアーーーーーーッッッッッッッ!!!!!!!」
■伊弦大那羅鬼神 > ━━━━離れるにしては、それを受けるにしては、距離は足りない。
目に見えて空気が揺れ、世界が歪み、風が吹き荒れ、そして。
暴力的な大音量の咆哮が、真正面から炸裂する━━━━!
■レイヴン >
――。
(隻眼に、躊躇いを見た。
異能が予測する。
こいつは、異端ではない。)
!
(が、次の鬼の行動を目にし、目を見開く。
予測せずともわかる。
咄嗟に床へ大剣を突き立て、せめてもの壁に。
回避など出来るわけがない。
文字通り音速で叩き付けられる衝撃。
抵抗も出来ずに吹き飛ばされ、後ろの壁を突き破って廃寺からはじき出された。)
■伊弦大那羅鬼神 > 「━━━━━ヴ、ガフッ……ッ」
…………叫び切って、未だその大咆哮の木霊が遠くで聞こえる中。咳き込むようにして、口から黒く飛沫く。
低くした姿勢から、背中側へと崩れ落ちるように座り込み、吹き飛ばされた相手の彼方を睨む。
…………外から中を覗き込むことでもあれば、隻眼が、また先のように。しかし今度は威嚇の声もなく、ただ睨むように向けられる。
……或いは。
自身へと近付くものへと、自身そのものを伝え、引かせるような。
自分の力による影響を知るように、最後まで反撃を取らず、ついぞ爪や牙を立てなかった。
■レイヴン >
(視界が揺れる。
自分が立っているのか倒れているのかわからない。
音もなにも聞こえない。)
――、く――
(それでも、立つ。
剣を支えに立ち上がる。)
……よ、ォ。
(そのまま歩いて自身が開けた壁の穴へ手をかけ、声をかける。
中には立ち入らない。)
お前、なんか探してんなら、ガッコこい。
手伝ってやる。
(自分がちゃんと喋れているのかわからないけれど。
けれど、伝えなければ。)
困ったことあんなら、センセイに頼っとけ。
■伊弦大那羅鬼神 > ━━━━また入ってくるつもりなのかと身構えていた。
だが、それはその前で立ち止まり、自分に声を掛けていた。
目を僅かに見開いて、初めて見せた、驚くような顔だった。
「……………………ヴ」
口を開ける。牙を見せて、それは、僅かに。
「………………ウ、ゥ、ア。……ヴ、ゥ、ア」
三つに分けて、二度繰り返していた。
それをどう貴方が取るかは分からないが。
探しているなら、という問いかけへの、三つの音は、恐らく。
……さっきの傷跡を、読んでいたのだろう。
二度繰り返して、暫くの瞑目から。
━━━━ずしゃ、と、奥で音がして。
襤褸を被り直すようにして、鬼は横になった。
…………寝息が、それから間もなく聞こえ始めていた。
鬼は戦う気も追い払う気も失せたように、そのまま眠り始めていた。
━━そちらを外敵だと判断しなくなった故、なのだろうが。その姿は、些か呑気なくらいのふてぶてしさだった。
■レイヴン >
――ハ。
(こんな鬼でも驚くような顔をするのか。
視界がぐわんぐわん揺れて音も何も聞こえないけれど、その顔がなんだかおかしかった。)
まずは日本語からだな……。
(とりあえず何を言っているのかを分からないことにはどうしようもない。
次来るときはあいうえお表でも持ってきてやろうか。
そう考えて笑う。)
次来るときァ、お前の名前も探しモンの名前もキッチリこのレイヴンセンセーが聞き出してやっからな。
覚えとけよ。
(寝てしまった鬼へそう語り掛け、踵を返す。
が、ふと思いついたように振り返る。)
――あァ。
さっきの大声、ほかのやつに浴びせんなよ。
ケンカァよくねェ。
(そして今度こそふらふらと揺れながら廃寺を後にする。)
ご案内:「山奥・廃寺跡」からレイヴンさんが去りました。
ご案内:「」に伊弦大那羅鬼神さんが現れました。