2018/11/23 のログ
ご案内:「常世総合病院」に木里嶺 静織さんが現れました。
木里嶺 静織 > ━━━━怪我の容態や、包帯の交換。その他幾つもの項目で来ることになった病院。
慣れてきてしまったと感じながら、車椅子でころころと病院の外の自販機の前を彷徨いてた。
午前と午後に分け、今日の一日は身体の状態を見てもらう日だったからだ。


「…………勤労感謝の日なのに、なんで、お兄ちゃんはお仕事なんだろう……」

病院にまで送って来てくれた後、やっぱり今日は仕事を休んで傍に居たいという兄を叱り飛ばした時、結構な人数の他の患者さんに見られて恥ずかしかったのを思い出す。
━━がこん。と。片手を伸ばし、低い位置からでも操作が出来る自販機の操作盤で、ホットココアを買う。
片手しか使えないが、結構器用なのが自慢だ。

木里嶺 静織 > ……前に住んでいた街の病院から紹介状を貰って、ここで身体の定期検査を受けることになっていた。
前より格段に施設が最新のものだから、こちらでならもしかしたら今の身体が少しでも良くなるかもしれない。
そんな期待も無い訳ではなく。自然と来る都度が楽しみになってしまっていることを悩む。


━━此処に来るのは、治ることの無いことを再確認しながら、これ以上酷くならないためであるというのに。

「……」

……歯でプルタブを器用に起こして、そっと中の暖かいココアを一口。
口の中の甘さとほろ苦さが、心を落ち着かせてくれる。

ご案内:「常世総合病院」から木里嶺 静織さんが去りました。
ご案内:「常世総合病院」に木里嶺 静織さんが現れました。
木里嶺 静織 > 数刻後。

━━━━かろん。


「……………………はぁ」

━━時刻は”夕暮時”。ゴミ箱に捨てた空き缶が軽やかな音を立てる。
……追加の検査がある事が、つい先程に告げられ。
今日1日どころか、明日まで宿泊しての検査になると言われてしまった。
兄に先程メールで伝えて、返事が返ってくるより前に追記で、『お兄ちゃんは土日にちゃんとおうちのことをやっといて。私は大丈夫だから』と念を押しておいた。

木里嶺 静織 > 「…………あ」

…………病院からでてくる母娘を見た。
母と手を繋いで、笑いながら夜の献立について楽しそうに話している。

━━━━お兄ちゃんは、ちゃんとしたご飯を食べるだろうか。
自分が心配する側ではないことを分かってたって、心配なものは、心配で。


…………急に、胸の奥。締め付けられるような心地がして、胸を押さえる。
違う。違った。
もう、叶うはずのない光景に、忘れていたような孤独感を、強く煽られて。
……喉の奥で、溢れそうになるものを、ぐっと飲み干して。
幸せそうな家族を見送る。

ご案内:「常世総合病院」に一樺 千夏さんが現れました。
一樺 千夏 > 「はー まさか私がこんな所に顔を出すハメになるなんてねぇ」
苦笑いしながら、大柄な女が行く。
すぐに目を引くのは、その巨大な右腕。

歓楽街に遊びに行けば、堅気のような怪我人が出ていて放置プレイ。
まぁ、放置しても良かったけれどコインは助ける方を訴えかけて。
とりあえず急ぎの怪我人だと受付に放り投げてアレコレと質問されて解放されたのがつい今しがたである。

そしてその目端に、なにやら胸を押さえている人物が。

「ハローハロー。病院で心臓麻痺とかだったら笑えないわよー?
 誰か呼ぶ?」

木里嶺 静織 > ━━また一人、病院から出てくるのに気づいて。
しかし、次への心の移りが起こる前に、今度は向こうから話しかけられ、声の後にようやくその顔を向ける。
……寒さで少しだけ白くなった頬が、その容貌に少しだけ強ばった。

「うぁ……え、あ、あの、すいません……大丈夫、です」

右腕に向かう視線が、直ぐにそちらの顔へと向く。
ちらりと目が揺れるが、話す相手と顔を真っ直ぐに合わせる礼儀を守りながら、ようやくと言葉を告げて小さく笑みを浮かべた。

「……ちょっと、寒さで……」

……どうにかなったとか言う訳では無いけど、仕草の理由を適当に寒さだと告げた。

一樺 千夏 > 視線を受けて、笑みを浮かべる。
とても強気な笑みだ。

「ふぅん……まぁ、最近はグッと冷えてきたからねー。
 ホント寒いのは大変なのよねー。冷え性ってわけじゃないんだけどさー。
 何ていうの、アレよアレ。
 人肌恋しい みたいなやつ? 独り身だと特にねー」

あっはっはと笑いながら、自分の着ていたジャケットを静織にかけた。

「無いよりマシでしょ、このまま戻っても退屈だからちょっと時間つぶしに付き合ってよ」

そう笑いかけて、いつもの癖で上着を―――

「その上着のポケットに煙草入ってるから取ってくれない?」

木里嶺 静織 > 意外なほど、容貌からは感じられなかったものがあって、そのまま話されるうちに少しだけ強ばりが解れたように優しく笑う。
……この人は、多分、やさしいひと。

「……あはは、分かります。寒いと、なんだか一人で居るのがしんどくなっちゃうと言いますか……」
素敵な男の人が傍に居たらなぁ。などと。
…………男の人。
飾る程度呟いた言葉に、薄らと顔が陰ったが。

ぱさ、と肩に掛かる上着に眼を見開いた。
「……あ、ありがとうございます」

仄かに香るのは、何か灰のような臭い。それの正体が直ぐに分かって苦笑いした。
なんだか、それが似合いそうだと思ったからだ。

「……えっと、はい。私なんかで良ければ」
左手を動かし、ジャケットのポケットからタバコを探り当てて、それを差し出す。
酷く細い指がタバコの箱をようやく握っていて、その差し出している手首から下━━袖の隙間から見えるのは、たくさんの電極と導線が、包帯で腕全体に固定されているものだった。
車椅子に座る理由にしても、それらは少し、目につくに痛々しい。

ご案内:「常世総合病院」に木里嶺 静織さんが現れました。
ご案内:「常世総合病院」に木里嶺 静織さんが現れました。
ご案内:「常世総合病院」に木里嶺 静織さんが現れました。
一樺 千夏 > しっかりと目を見ていれば、左右で微妙に色彩が違うのにも気がつくだろう。

「確かにねーいい男がいればいいのにって思うけど。
 たぶん、私は無理だわー。
 っていうか、どうにもそんな自分がイメージできやしないのよ」

あっはっは と笑うタンクトップだけになった女性。
寒さをとくに感じてはいないらしい。

「ありがと」

短くそう告げて、煙草の箱をでかい右手に落すように差し向ける。
そのまま落せば左手で握った後に軽く振ってそのまま一本を口に咥えて。
右手が赤熱していったと思えば、それで煙草に火をつけた。

「ところで、いい男に心当たりがあるのかしらん?
 恋人とかいたりするのかしらねぇ?」

若いって羨ましいわー なんてのたまっている。

木里嶺 静織 > ……色が違うのを、何となく綺麗だな、としか思わなかった。
じ、と視線は向いていたが、やがて柔く細められたりもする。
一方の少女はといえば、これまた片目を眼帯で覆っていた。
長く伸びた髪に隠れるように、それとは別、包帯が巻かれたりもしているが。

「……お姉さんは、逞しそうですし、むしろ守ってもらいたいって男の人とか、いるかも、ですよ?」

こういう女性に、そういう気持ちを抱く人もいそうだなと思いながら口にして。
寒そうな格好だが、気にもとめてなさそうな様子に少し安堵している。

そのまま、タバコに火をつけていく一連に、ほへえ、と小さく声が出る。最近の義肢というのはああいうのもあるのだろうかと興味を向けていたが。

「…………い、いえ。私の知ってる男の人は、お兄ちゃんしか……」

━━━━━━━━ゾッと。
脳裏に、”淡麗な女性のような笑顔”が蘇り。
その顔が一気に青ざめる。
ジャケットの下に温めていた腕が震え、うつむき加減になり。
「う、ぅ”ッ」

……喉の奥の、酸っぱい味に顔を顰めながら堪えていた。

一樺 千夏 > 眼帯や車椅子については、特に言及しない。
するつもりもない。

「守るのはいいんだけどねー。アタシ家事が一切ダメなのよねー。
 そっちやってもらわないと生活できないわ」

ケラケラと笑うダメな大人。
本当に駄目な大人。
ううーんと軽く伸びてから、煙を空に吐き出した。

「大丈夫?
 そのお兄ちゃんとやらに、何かされた?」

木里嶺 静織 > 「……っ、そ、ですね。家事、できる、男の、人…………」

……治まるのに少し時間を掛けてから、首を振った。

強く、強く、振り払うように振って。


「……お兄ちゃんじゃ、なくて。…………この前に、学校の、帰り……歓楽街の、道で……」

━━━━滲む。痛みが。思い出す。笑顔が。向けられる。光が。
震えがおさまらず、痛みに呻く。
……痛みなんてない。思い出すだけで、あえぐ。

「……なん、でも、なくて」

一樺 千夏 > 「そう?
 なんでもないならいいけど。
 ……その態度は、なんでもないってとってもらえないわよー?」

溜息と共にやっぱり煙草の煙が宙を舞う。
左手をポンと静織の頭に乗っけて。

「歓楽街で何かされたのねー。どんなやつだったのかしら?
 あの辺ってアタシも利用してるから気をつけたいのよねー。
 言いたくないなら、別に言わなくてもいいわよ?」

しゃがみ込んで視線を合わせる。
真剣な顔で言葉を待つ。。

木里嶺 静織 > そうだろうな。と、自分の今の状態に呆れる。
今相手から見た自分は、きっと酷い顔をして、今にも吐きそうな様子なんだろうと。
乗っかった手の重みに、僅かに静まる鼓動。

……ゆっくり口をひらいて。

「……物を、盗られそうに、なりました。……断ったら、蹴られて……」

いたい。

「……服を、切られて…………動画を、撮られて……」

こわい。

「…………っ、凄く、綺麗な顔で、女の人、みたいな、男の人……だけど、私……取り返そうとして、異能を……」

━━━━あの瞬間。どれだけ、つかうことに使ってしまった勇気を無駄にしたんだろうと。
瞳が揺れて、光を傾かせる。

「……そしたら、私が、異能で、傷つけようとしたって、叫ばれて…………私、そんな、つもりは、なかった……無かったのに……」

一樺 千夏 > 「ふぅん……災難だったわねぇ。
 そんな“三下”に絡まれるなんて」

ニッと笑って、よくできました とばかりにワシワシと撫でる。
その仕草はガサツの一言に尽きる。

「持ってる以上、使い方には気をつけないといけないもんねー。
 そうところ、面倒よねぇ。
 でも、譲れないところがあったんでしょ?
 だったら胸を張ってなさいな。悪い事してないんでしょ?」

アタシと違って との言葉は口に出さないが。
そのままぐいっと引っ張って自分の体で受け止める。

「ここでぜーんぶ吐き出しちゃいなー。少しは楽になるからさ」

木里嶺 静織 > 三下。夕方の青春不良ドラマでしか聞いたことの無いような言葉に、思考が”今”に戻ってくる。
わしわしと頭を揺らす手は、少しだけ硬くて、けれど、今安寧を与えてくれる手として、これ以上ないくらい、有難かった。
……無意識だろう。その手に少し、頭が寄るのは。

「……危ない異能だ、って、先生に注意を、されてたんです…………使ってしまったら、怒られるだろうなとは……。
……でも、お兄ちゃんから持たされてた、大事なもの、だった、から」

━━━━それでも、使わずに逃げることも出来たかも、しれなかったんじゃないか?
なら、いっそあのまま。
いいや。いいや。いや。いや。いや。

━━━━渦を巻いていた思考は、そこで。体で受け止められることで止まった。
そして、

「…………う、ぇ……っ」
蓋が外れて。

「━━━━っいた、かった……こわかった……っ!!くやしかった!!つらかった!!お兄ちゃんのこと、おどすって、いわれて!!大事なものをとられそうになったからなのに!!怒られて!!あの人は、何も、なにも!!たったひとりの、お兄ちゃんのこと、ぜったいいじめないでって!!だから、私……っ!!!」

一樺 千夏 > 「その異能ってあんたのプライドより大事なもの?
 きっと違うわよねー。
 大切なお兄ちゃんを守りたかったんだよね」

よしよし と背中を軽く撫でる。

「おねーさんが、いい言葉を教えてあげるわ。
 『背中に気をつけろ。ためらわず撃て。弾を切らすな。ドラゴンには絶対、関わるな。』
 敵だと思ったら容赦しちゃダメよ。次の瞬間にはあんたやあんたの大切な人が危ないんだからね」

そのまま泣き止むまで背中を撫でながらジッとしている。

木里嶺 静織 > 「っ……お兄ちゃんのこと、大切で、大好きだから!!」

━━━━熱が強く篭った声で、搾り出すような声が、高く叫ぶ。
背中を撫でられながら、この数日間、論理的で理屈的な思考の奥にずっと燻っていた、子供の心のままの理不尽への怒りが、燃えて、燃えて、少しずつ、消えていく。

━━熱が静まり、耳に届く不思議な諺。結構に本を読んできたけども、聞いたことの無い諺。
撃て。弾。ドラゴン。色々なものが混じりあった言葉から、意味を汲み取ることは叶わなかったが、その後の言葉でその意味を理解の元に手繰る。

そうしてようやく、彼女の隻眼が、ゆっくりと其方を見据えた。

「……ありがとう、ございます……」

一樺 千夏 > 「大切な人がいるのっていいわねー」

お礼に対しては、何かしたかしらん みたいな顔をしている。
今までのことは何も無かったという事にしたいのだ。

「よっし、マシな顔になったわね。
 おねーさんこれから歓楽街で遊んでくるわー」

そう言ってから浮かべた笑みは、控えめに言って物騒なソレだった。

木里嶺 静織 > ……こういう性格な女性に、惚れこまない男の人がいるのかな。なんて思うくらい、その仕草や溌剌としたものがある声に、憧憬のような眼を向けて。

━━━━━突き抜けるようなお次の一言で、顔を引き攣らせた。
その顔もまた、さっきまでの思考全部を撤回して『確かかにこれは近寄れない』という評価が炸裂する。

「だ、ダメです!!あの、あの人は!!たぶん、すごく悪い人で!!お姉さんのことも、悪い人だって言いそうだし!!」


━━━━けれど。

思ってしまう。その逞しい義肢の右腕が。もしも。
自分の右腕をこんなにした相手に突き刺さるとして。
100%の憐れみだけで、それを見てられるかなんて。
きっと、ほんの少し、ほんの少しだけ…………”報い”を欲してしまうような。
自分への嫌悪に、顔が歪んだ。

一樺 千夏 > 「あっはっは、心配してくれるの?
 優しい子ねー 飴ちゃんあげたくなるわー もってないけど」

あっけらかんと告げれば、貸していたジャケットを羽織る。
デカイ右腕で着るのに慣れているような動きで。

「……いいわよねぇ、悪い人。遠慮なくぶん殴れるから大好きよ。
 とっても“熱く”なれそうじゃない?
 それにね、アタシはここじゃあ2級生徒ってことになってるから。
 もうこれ以上落ちる評判がないのよねー だから全然、大丈夫」

言いながら右の掌がドンドンと熱を帯びていく。
そのまま新しい煙草を咥えて。

「じゃあ、縁があったらまたどこかでね。車椅子の天使ちゃん。
 風邪引いちゃだめよー」

左の掌をヒラヒラさせながら、振り返りもせずに歩き去っていきました。

ご案内:「常世総合病院」から一樺 千夏さんが去りました。
木里嶺 静織 > 100%の心配と、120%の驚愕。
そんな思いも、飴ちゃん贈呈の評価と、肩から離れるジャケットの重みと共に吹き払われていく。
唖然とするまま、その口から聞こえてくる言葉全部を、異世界の言葉のように受け止めて意味を咀嚼して。

……理解の終わる頃。自分を天使と呼んで立ち去っていく背中に。

「━━━━おきを、つけて!」

……それしか言えず、タバコの残り香が無くなるまで、その後の、看護師からの呼び出しがあるまで。
そこで肩の温かさの余韻を感じて佇んでいた。

━━━━冬の寒さを忘れていたぶりかえしは、くしゃみをした事で思い出したとか。

ご案内:「常世総合病院」から木里嶺 静織さんが去りました。