2015/08/13 のログ
ご案内:「雑貨屋「atria」」に須藤流人さんが現れました。
■須藤流人 > 8月も中盤に差し掛かると、7月の終わりや8月の初旬にかけて吹いていた熱波も大人しくなる
草木を見れば風が波立たせて、いっそ清涼感のある風景へ
場所は郊外。人も少なく、店が並ぶというよりは住居が多い
そんな場所の、空き地
昨日までは土管と土しかなかった場所に、一件の洒落た店が佇んでいた
「んん、漸く涼しくなってきたなあ……夏も長いよねえ」
あくびを一つしながらゆっくりと伸び
店先に並ぶ風鈴が、涼しげだ
■須藤流人 > 今日は日課のオンラインゲームもHotfix……メンテナンスのため、20時までプレイが出来ない
有り余った時間、散策していると見つけたよさ気な空き地
――ここならそんなに客も来ないだろうし、いいかな――
などと商売人にとってあるまじき考えのもと、胸に下げた「小瓶」から「店」を出したのが、3時間ほど前
それもあってか、住宅区に建つこの店は些か浮いており、ひそひそと気づいたマダムたちが何かを話し合っている
しかしそれを見つけるたびに柔和な笑みで手を振れば、ぽっと頬を赤らめたご婦人たちがいくつかの小物を買っていく
ありていに言って、普段よりも忙しかったのだ
「……場所、ミスったよねえ……」
こんな時は、あれだ。と、品物が並ぶ棚を物色する
■須藤流人 > 取り出したのは、何やら異国情緒あふれる、赤い瓶だ
細長く、それでいて底は広く丸みを帯びており、側面にはチューブが取り付けられていた
瓶を分解したかと思えば、底部分の瓶に水を入れ、再び組み立てる
――水タバコ、シーシャと呼ばれるものだ
「……ふぅ、労働の後の一服は雰囲気出るねぇ」
別に重度の喫煙者というわけではない、タバコが特段好きというわけでもない
単純に、シーシャというものが造形的に優れていたから吸っているに過ぎなかった
雑貨屋を始めるまではタバコなど吸ったこともなかったし、シーシャにしたって出会いは割と最近だ
しかしその独特の形状、水を使うという特異性から、最近は隙さえあれば吸っている状態にあった
■須藤流人 > 紫煙を吐き出しながら、この間「少女」から卸された魔法雑貨のことを考える
一つは、噛んでも噛んでも味のなくならないガム
どこぞの映画で見たような気がするが、だとしてもそれはなかなか有用ではないか、と喜んだ
しかし、違うのだ
ガムというのは、味がなくなるまで噛むからガムなのだ
味がなくなるまで噛んで噛んで噛み続け、全く味がしなくなったことに、満足を覚える
味がずっとするということは、ずっと味が変わらないということだ
つまり、飽きが来る。しかし味が変わらないとはいえガムはガム。一度吐いたものを食べるのは下品だ
結局のところ、普通のガムがいいんだなあ、と変な納得をしてしまった
2つ目は、サイコロだ
自分が出したい目が自在に出せる魔法のサイコロ……ではなく、変形して動物に変わるサイコロ
大きさは様々、何に変わるのかもランダム、さらに言えば何故サイコロを動物に変形させる必要があるのか
少女は「トランスフォームですよ、トランスフォーム! げきアツでしょ!?」
とのたまっていたが甚だ意味がわからない
■須藤流人 > 「……あのコ、本当に何なんだろうねえ……」
もう幾度となく考えた、少女の正体
真っ黒なツインテール。真っ赤な目。春夏秋冬着ている真っ赤なコート、緑のマフラー
年の頃は、およそ5歳ほど
頭には月のような色の、角
恐らく、――いや、確実に、<<門>>の外からやってきたのだろう
それも、自由自在に行き来する能力がある
「……悪魔、ってセンがやっぱり一番わかりやすいよねえ」
角も禍々しい形だったし、と付け加えた
ご案内:「雑貨屋「atria」」に相模原孝也さんが現れました。
■相模原孝也 > 「お…おしゃれなお店発見。ここでいいかな…?」
色々と考え事をしながら、目的に合致したお店がないかと探し歩いた今日という日。
口蓋まで歩いたところで、おしゃれなお店を見つけて、立ち寄ることに。
「すいませーん、やってますかー?」
かたん、と小奇麗な扉をあけて、店内を覗きこんだ。
■須藤流人 > 「……まあ、あんまり深く考えても無駄かな。彼女、全然教えてくれないしね」
ふう、と嘆息しながら再び水タバコに口をつける
別に疲労が取り除かれるわけでもないが、なんとなく、そうするのが適当かなと思った
と、感慨にふけっていれば来客。見たところ若い男性客
服装を見るに活発な少年なのだろう、珍しいタイプの客が来たものだ、と興味がわいた
「いらっしゃい、うん、やってるよ」
店内は、外から見たよりずっと広く、様々な雑貨が並んでいた
アンティークボトル、ブリキのロボット、陶器のプランター、小洒落た小物が、これまたおしゃれに陳列されていた
「今日はどうしたの? 何か入り用?」
少年とは初対面だが、実に気さくに話しかける
■相模原孝也 > 店内に入ると、中性的な容姿の男性が迎えてくれた。
おしゃれな店内に似合った、声を聴くだけで心地良い感じの良い人だ。
「ええっと。ポプリを探してるんですよ。
最初は花屋さんに行ったんですけど、扱ってなくて。」
店内に入り、カタンと扉を後ろ手で閉めた。
気さくなお店の人に、話しやすいのか、目元を緩めながら明るい調子の声を出す。
「こういう小物とか扱ってる所なら、もしかしたらと思って。
あんまり香りの強くない……夏っぽい、爽やかな感じの、ありませんか?」
■須藤流人 > へえ、と思わず声に出してしまった
なかなか可愛い物を探しているな、と少し口角を上げて
「花屋はリースとかならあるだろうけど、ポプリは確かにこっちの領域だね
しかし、香りの強くない、か。ポプリというのは、基本的には香りの強いものを乾燥させて作るからねえ
薄いものは、直ぐ効力もなくなってしまうから……定番といえば、ラベンダーかな」
と、比較的近辺の棚から紫色の花弁が詰まった袋を見せる
「精神を落ち着かせる効果もあるから、運動なんかして疲れた時の休憩なんかにはいいだろうね
こんな感じの香りだけど、どう?」
袋を少し開けて、香りをそっと漂わせる
上品な、それでいて清潔感のある香りが、幸也の鼻腔をくすぐった
■相模原孝也 > 「女の子へのプレゼントなんですけど、あんまり香りが強いのは良くないかな、って思ったんですが。」
浅知恵だったかな。困り顔で、コリコリと側頭部を右手指でかく。
「ラベンダーですか。芳香剤のイメージですね。」
なんだか、自分が下手に動くと小物を壊しそうな繊細なイメージの店内。
慎重に動いて、店の方に近づき、ポプリを見させてもらう。
すっと鼻に入ってくる香りが、なんだか落ち着く気もする…。店の方の解説もあったからプラシーボもあるかもしれないが、良い香りなのは変わりない。
「うーん…いい香りですね。でも、プレゼントする相手は、あんまり運動しないんですよ。
でも勉強や読書はよくするみたいなので…。勉強の時に向いた香り、なんてさすがにありませんよね?」
■須藤流人 > ははあ、と。合点がいった
成る程、女の子相手に渡すならポプリは確かによい策だろう
芳しい香り、見た目の可愛さに加え、花言葉まで送ることが出来るのだから
「実に率直な感想ありがとう。芳香剤に何故使用されているかといえば、そういった効能があるからなんだよ」
くすくす、と囀るように笑った後、勉強と聞いて頷いた
「あるよ、そういうのにお誂え向きなのが」
次に取り出したのは、緑の葉が詰まったポプリ。彩りとして花もちらりほらりと混ざっていた
「これはペパーミント。集中力を高めるにはこれが一番だよ
……時に、無粋なことを聞くようだけど、その女の子のこと、好きなの?」
直球だった
■相模原孝也 > 「精神を落ち着かせる効能が必要な場所…。」
ああ、確かに。芳香剤として置かれる場所には、精神が落ち着くのも大事かもしれない……ぽんぽん痛い時は特に。納得の頷きをひとつ。
「ありますか。
ペパーミント…なるほど勉強っぽいですね。ペパーのあたりが。」
ペーパーにかけてみる。勉強と紙は切っても切れないことだろう。
彩りの方も、他の華も入ってるみたいで、地味さは感じないし……
「へっ?」
問いかけにまず、変な声が出た。
「んー……。
まず、友達ですね。」
数秒考えてから、最初の返事。
「気になるかというと、気になりますけど。
なんというか、いる社会が別なので、恋愛関係にはこう…お互い見れてないんじゃないかなって。」
■須藤流人 > 「わかったかな。まあ、ポプリっていうのは多かれ少なかれそういう効果があるものなんだけどね」
だからといって、トイレの香りと覚えないであげてほしいな、ラベンダーの名誉のために、と付け加えた
「? ペパー……あ、ああ。なるほどね。そういう意味ではないけど、まあ、うん
所謂ハッカというものだよ、これは。爽やかさだったらこれの右に出るものはそうはいないだろうね」
一瞬何を言っているのか分からなかったが、ツッコミはせずにおいた
ごく自然に出た言葉なのだろう、と信じて
「へえ、結構大人な考え方をするんだね。俺が君ぐらいの時なんか、自分のことで精一杯だったよ」
殊勝なものいいに思わず舌を巻いた。今日日の少年というのはそこまで考えているのか、と
「まあでも、好きは好きなんだね。このペパーミント、花言葉がいくつかあるんだけど
その中に、「誠実な愛」というのがあるんだ。
……君には、ぴったりじゃないかな?」
■相模原孝也 > 「次から気をつけます。」
ラベンダーさんの名誉のために。
敬礼っぽい仕草もしてみた。
「爽やかさか……うん、それならいいかもしれません。
生活習慣は知らないけど、多分こもりがちだと思うので。」
対策はしてないとは思えないが、自分の知ってる範囲ではありえなくはないと考えるこもりがち説。
それにはきっとそのペパーミントがちょうどよいだろうから、
「じゃあ、そのペパーミントの、買います。 包装とかは、香りが飛ばないくらいでお願いできますか。
プレゼント然としたのより、手土産として渡したいんで。」
お願いできますか?と首をかしげて問いかける。
「半分は照れ隠しですよ。
だって、初対面の人に、全部話すなんてできませんからね。」
にっ、と笑って人差し指を唇の前に立てて見せて、しーっ、と。
「………今日のところは、誠実って言葉だけもらっていくことにします。
青少年って、不純ですからね!」
■須藤流人 > 「君、結構かわいいって言われること多いんじゃない?」
背筋を伸ばして敬礼する様子にまたもやくすりと笑みを零した
「俺も結構籠もることが多いタチだけど、そういう時ハーブを嗅げば結構安らぐものだよ
かわいいグラスにでも入れて飾れば、インテリアにもなるしね」
包装は簡易なものがいい、と聞けば、英字の書かれた茶色い紙袋に大事にしまって、フリルレースが印字されたテープを貼った
「結構贈り物慣れしてるね? もう何度かアプローチはしてるってわけか
俺も、そういう女性がいればもう少しこの生活も彩りが増えたのかもねえ」
若いというのはいい、と零しながら、肩をすくめて
「そうかいそうかい。じゃあ、もう少しお近づきになれたら、その後の話とかも教えてよ
個人的に、興味があるから、さ」
内緒話のように、こっそりと、ひそひそ声で
ちょっと、楽しかった
「そう? 控えめだね。……でも、機を測り過ぎて逃さないようにね
――さて、それはどうかな。君の考えてる不純は、その実、とても綺羅びやかなものかもしれないよ?」
言いながら電卓をはじいて、この値段になります、とわざと敬語で数字を見せた
決して高すぎず、それでいて安すぎず、手ごろ感のある数字だった
■相模原孝也 > 「何故わかるんですか…!」
オレがお姉さんタイプにカワイイと言われることが多いと…!
このお店の方は……見ぬく眼がある!戦慄する少年である。
「いえ、こういうのは初めてですね。
前に一度ケーキ持って行きましたけど。その時も手土産って感じでしたし。
なんと言うか……そうですね。対等が良いんじゃないかと、思うんですよ。」
だから手土産です、とゆるく笑って応え。
「そんなこと行って、店長さんもイケメンじゃないですか。まだまだイケますって。
上手く行ったらまあ、お話するのもやぶさかじゃないですけど。
店長さんもそのイケボで誘惑した話しくらい披露してくださいね。」
にんまり笑って、ちょっとしたお返し。そんな話をしている間に終わった包装は、見目には地味にも見えるけど、フリルのテープがカワイイ。確かに、手土産にはちょうど良さそうだ。
「大胆不敵になるのは、まだ早いなと。
15才の不純はきらびやかというより、青臭さの目立つキャベツみたいなもんだと思いますよ!」
ロールキャベツ系男子か、それともオールキャベツなのか。自分でもまだわかってないので、冗談めかして言葉を返した。
見せられたお値段は、うん。少年の感覚ではちょっとお高めだったけど、丁寧な対応に品質の良さそうな品には、満足できると思うので。即金でお支払い…調度良く小銭も足りたので、ぴったり丁度の支払いで済んだ。
「じゃ、ありがとうございました。おかげで明日が楽しくなりそうです。
色々うまく行ったら、次はお話しに来ますね!」
支払いが終わった後、紙袋に入ったポプリを受け取れば、それでは、と扉をあけて店の外へ。ちょっと浮かれたような軽い足取りで、お店から離れていったようだ。
ご案内:「雑貨屋「atria」」から相模原孝也さんが去りました。
■須藤流人 > 「……期待してるよ、少年」
明るい足取りで去っていく少年を少し眺めた後、再び奥のカウンター内へと腰掛ける
今の子は大人だなあ、と考えると、羨ましいと同時に大変そうだなあと思う気持ちもあった
「……ま、久しぶりに楽しい接客ではあった、かな
次会える時が楽しみだな」
そうとだけ呟いて――その日は、店を閉めた
ご案内:「雑貨屋「atria」」から須藤流人さんが去りました。
ご案内:「青垣山近辺の平原」に四十万 静歌さんが現れました。
ご案内:「青垣山近辺の平原」にエルピスさんが現れました。
■四十万 静歌 > エルピスと共に、平原までやってくる。
――態々狙いやすく目立つ場所に2人できたのはもちろん、
とある人物と会うためである。
危険な行為なのは分かっているが、
その表情には恐れも怯えも浮かんではいない。
――ただいつも通り平然と。
待ち合わせより早くたどり着く。
――出来れば、援軍を呼ぶ前に決着をつけたいが、
はたして、どうなるか。
さしあたっての問題は――
「――来る、でしょうか?」
そう、エルピスに問いかける。
あなたはどう思いますか?というように。
■エルピス > (青垣山近辺の平原……)
此処を静歌お姉ちゃんが選択した理由については、推測出来なくはない。
"狙いやすく目立つ場所"であるのは勿論のこと、人気が少なく、"一応は"周囲に被害に出ない場所である。
それでいて、近い――そしてそれに付随するメリット・デメリット・リスク。
それらを加味した上で、この場所を選んだのだろう、と。
「……来る、と思うよ。」
緊張はない。が、表情そのものはシリアスなそれだ。
スマートフォンを開き、返していなかった貴子へのメールを読み返す。
(……それを知らない訳じゃない、よ。)
瞳を伏せてメールを読み返す。どうにか返信しようと思ったが、現状では文面が浮かばない為、保留する事にした。
■四十万 静歌 > 「――無茶をさせてごめんなさいね。」
そう、ふわりとエルピスへと微笑みかける。
「ならば、後はゆるりと待ちましょうか。
ここなら――
込み入った話をしても、
聞き耳を立てる人もいませんし。」
いたら、見えますしね。と微笑みながら、
とんとんと、円を描くように歩き回る。
まぁ、いうなれば保険、というものだ。
「――向こうが仕掛けるまでは、
“護ることに専念をお願いします。”」
■エルピス >
「大丈夫、ボクが望んだ事でもあるからね。お姉ちゃん。」
小さく、頷く。
大丈夫だよ、問題ないよ。と。
「……うん、少なくても、分かってはいるから。」
思う所はあるけれど。
その言葉は飲み込んだ。
分かっては、いるのだ。
……気を紛らわそうと、考え事を始める。
彼の事を、自分の事を、お姉ちゃんのことを、副主任の事を。
そして、一つの言葉を零す。副主任が、彼を評した言葉。
「"Libido"、かぁ……」
■四十万 静歌 > 「ありがとうございます
――私の話が終わったら、
後は言正君が好きにしていいですから。」
そう、微笑み――
「――因縁じみた言葉ですよね。」
呟いた言葉に。思わずぽつり、と。
■エルピス >
「……」
"Libido。"
性的欲求や性衝動の意味合いとして使われる事の多い、"様々の欲求に変換可能な心的エネルギー"を指し示す言葉。
ボクの副主任は、彼を・彼を突き動かす欲求をそう評した。因縁じみた言葉といえば、そうだろう。
……言葉は返さない。
ただ、黙って待つ。
ご案内:「青垣山近辺の平原」にシインさんが現れました。
■シイン > 今まで空を嫌ってた自分が、空を自由に動けるようになったのは、なんとも言えず。
だが感謝はしているのだ、"赤き龍"に。
「―――行くか。」
彼は足を地に付かさず、されど地中深くに潜ってる訳でもなく。
背から生やす、炎で形を成した一対の黒翼を羽撃かせる。
そして、遥か上空に浮かぶ彼は、地上の二人を見つめて。
気配を悟られない程にまで離れておきながら、会話を交わす二人も目視で捉えてるのだ。
彼は、ゆったりと、ゆっくりと空から地表へ降り立つ。
着地地点の場所は、彼等二人から然程離れてない距離に。
降り立つ最中でも、彼等を視線から離さずに、延々と。
瞳に映し続けるだろう。
■四十万 静歌 > 「――」
降り立ち、近づく様子が
ある程度した所で分かる。
「――来ましたね。」
特段何をする訳でもない。
ぎゅっと手にもった手提げ鞄の持ち手を握り締める。
逃げ出したくなる気持ち、
叫びたくなる気持ちを抑えて――
じっと、シインを真っ直ぐと見据えるだろう
■エルピス >
「――」
庇える様、静歌の隣を維持したままシインを見据える。
言葉は発さず、大きな盾を構えたまま二人のやりとりを注視することに努める。
……幾重にも鉄板が重ねられた大きな盾を軍事技術に造詣の深いものが見れば、
爆発反応装甲技術を転用して造られた盾であることが分かるだろうか。
鱗が如く重ねられた鉄板にも、意味がありそうだ。、
■シイン > たいした時間も経たずに、彼は空から大地に、降り立った。
降り立つと同時に"何か"を呟いく。
「――――」
いくら聴覚機能が優れていても、聞き取れることは厳しい。
だが、もし聞こえたならば"シイン"と自分の名を呼ぶ声が確かに聞こただろう。
名を呼んで間を置かずして、彼の纏ってた黒炎は風に流され、火粉となって消えたのだ。
姿を覆い尽くす炎が消えた後に残ったのは、腰まで長さを持つ赤髪を持ち、黒衣を纏った姿だ。
炎が消えてから一秒、二秒と間を置いて、彼は再び前へと向き直る。
そこには、静歌の姿とえらく様変りしたエルピスの姿。
「…どうやら徹夜をしただけはあるようで。」
エルピスに向かっての言葉。
病院で出会った時よりも重装備と言った所だ。
戦闘の準備は万全なのだろう、そして"大きな盾"に注目した。
細かく、細部までの材質までは読めないが、同じ様な物は拝見したことがあった。
対炎か、対衝撃か、どちらにせよ、厄介な代物に代わりはない。
戦いになれば激闘は避けられない、だが戦いに来たわけではない。
■四十万 静歌 > 「――それ、で。」
じっと見据えながら首を傾げる。
「何をされにこられたのですか?」
そういいながら、
エルピスの影になるような位置にいる。
流石に矢面に立つ訳にはいかない。
少なくとも、まだ。
「――生憎、私を狙っても、
何も出ませんよ?」
■エルピス >
「……先に伝言を言っちゃおうかな。
『キミのことはボクなりに理解しようとしていてね。
こんな形ではあるが、これがボクなりの表現だ。』だって。」
自身へ言葉を発されれば口を開く。
自身と言うよりも、この場に居ないリビドーへの言葉だろうか。
そう思いながらも、用意されたメッセージを伝える事にした。
■シイン > 「表現か、とんだ表現だな。
やっぱり一度は頭を小突いてやらないとな。」
盾だけではない。
背中のボンベにレッグホルスターの中身。
隠し球がどれだけあるかわからない、それに比べて私はといえば。
「――たかだが"軍人"にやり過ぎとは思わんのかね。」
自分を蔑むのだ。勿論、心から本気での発言ではないが。
そして、エルピスの影で此方を見据えている。
目当ての相手に言葉を向けた。
「そもそも、だ。
――静歌。君が呼んだのだろう?」
愛用している携帯機を懐から出して、静歌に画面を向けた。
それなりに離れている故に、目に映すのも辛い距離ではあるだろう。
だがその画面には、送られてきたメール。そして内容が記されている。
■四十万 静歌 > 「何のことでしょう?」
悪戯めいた微笑みを浮かべる。
「ですが、まぁ――
逃げていても終わらないと思ったのも確かですね。
殺すつもりはもうないのでしょう?」
それとも、まだ殺すつもりがありますか?と微笑む。
「そして――
呼んだのが私だとしても、
用があるのは間違いなくシイン先生、
あなたのほうですよ。」
そうでなかったら、捨て置くでしょう?
と静かに眼を眼で射抜くだろう。
■シイン > 「何かを勘違いしてるようだな。
私は殺すつもりはなかった、ただ最初、一番最初。」
それが指す言葉の意味は、公園での出来事。
「あの時だけは、私は"静歌"君を殺そうとしてた。
それに関しては謝ろう、すまなかった。」
表情はさして変わらずに、鉄仮面を被ったごとく。
深々と謝罪の礼をするのだ。
三秒、四秒と時間にすれば短い間。
頭を下げた彼は、再び頭を上げて言葉を紡いでいく。
「ま、其の通りだな。
実際に用事があるのは私だ、君自身は用がない。」
赤い髪を自然と靡かせながら、彼は思う言葉を口に出す。
■四十万 静歌 > 「ええ、殺すつもりが最初からあったのなら……」
風がふく、
風に流れる髪を軽く手で払って、
その際軽く閉じた眼をゆっくりと開き――
「引き戻そうとはしませんでしたよ。」
静かに冷たく言い放つ。
「――とはいえ、
その気がまだ無いかどうかに関しては、
私は知る由はないので。」
謝罪をすると、謝罪はいいです、と軽く首をふり、
改めてじっと目をみて尋ねるだろう。
「――それで、御用事はなんでしょうか?」
■シイン > 「謝罪は不要だったか、それは失礼した。」
それは許さないと捉えられるか、言葉では要らないと捉えられるか。
果たしてどちらだろうか、と無駄な考えはせず。
「そうだな、まずは話さないか?静歌。
それも私の一方的な話、君は頷くだけでいい。
時折に言葉を返すだけでいい。」
どうだ?と提案したのだ。
■四十万 静歌 > 「構いませんよ。
幸いにも、
いざという時は護ってくれるナイトがいますし……」
傍に一人、他にもいる。
そういってエルピスをちらりと見た後、
「話くらいならば私でも出来ますからね。
いくらでも聞いて、
そして――」
人さし指を口元へ、ウィンクして少し笑って――
「言葉を返しましょう。」
それが必要な事だと思えば。
■シイン > 「ふっ、立派な騎士様に護られて羨ましいな。」
冗談でもなく、それなりに本気の言葉だった。
彼女を強く想っている騎士様なのだ。
そうでもなければ、襲撃した時にあそこまで抵抗を示さない。
期待通りの返事に笑みを見せた。
カフェで見せた、自宅で見せた、入り江で見せた。
其の笑顔を。
「――ありがとう。」
笑みを見せながら礼の言葉を贈る。
そして、まずは、と。そう言って切り出した。
「一人の女性が居た。誰にも好かれて、誰にも笑顔を振り撒いて。
その女性は天使やら女神やら、男性にはそのように呼ばれていた。」
「その女性は一人の男性に出会った。
赤い長髪に、赤い瞳を宿し、特徴的なのがハイヒールを履いてたことだ。
一見すれば女性に見えるが、男性だった。」
彼は静かに口を開いて話し始めた。
聞く限り、男性はシインのことだと察せるだろう。
だが女性は?それはまだわからない。
■四十万 静歌 > 「――」
微笑を返し、静かに清聴する。
今は口を挟むべきところではない。
それにしても、そんな完璧な人が世の中にいるんだ、
あってみたいな
なんて、益体ない事を考えてしまって。
考えを振り払う為にちょっと首をふって、
それでというかのように首をかしげた
■シイン > 「その二人が出会った理由は、職場の移動時期が被ったの理由。
別にそれ以外は何の理由もない。
女性は同じ職場となった男性に挨拶を交わした。
そして男性は素っ気ない様子で返事をした、本当に素っ気なく。」
「それが女性には何か頭に来たのだろう。
女性は男性に言ったのだ、大声で。」
"挨拶する時は笑顔で、ですよ?"
「男性が最初に思った第一印象、それは厄介そう、お節介焼き。
事実、彼女は何かあれば直ぐに出しゃばって困ってる所を助けに行こうとする。」
それが例え利用されてるだけだと知っていても。
「男性は溜息をついた、だが、笑顔で挨拶をしなければまた言われる。
そんな確信を持ったのだ。
何度も何度も言われるぐらいなら、最初から笑顔を見せて挨拶をしよう。
そして、彼女に挨拶を、二回目の挨拶をした。自分が知っているとびっきりの笑顔で。」
■四十万 静歌 > 「……」
まぁ、挨拶は大切ですよね。
と何か妙なシンパシーを抱きつつ、
私には真似できないなぁ、なんて思っている。
いや、自分に出来そうな範囲ならするけど。
なんていうかほほえましいエピソードなので、
頬が緩みそうになるのはくっと食いしばる。
気合いれたらこんな甘いエピソードきいたら、
きっと誰でもそーなる。
■シイン > 「そして女性は男性のとびっきりの笑顔を見て、ふふっ…なんと言ったと思う?」
自分で笑ってる時点で、もう自分の話だとバラしてるようなものだが。
そんなのは気にしない様子で話は続いて。
「"はい!素敵な笑顔です!"と、彼女は言った。
自分自身もとびっきりの笑顔を見せて。
男性は今まで知り合ってきた人物とは違い過ぎる女性に戸惑った。
が、嫌悪感は抱かなかった。寧ろ、好みだったのだ。」
「その日から男性と女性の奇妙な関係が続いた。
奇妙と言っても、男性と女性の周囲から見れば、"妬ましい"やら"死ね"やら"爆発しろ"と阿呆らしい言葉ばかり聞こえた。
そして、お似合いカップルとの言葉も聞こえてきた」
■四十万 静歌 > 「――」
あー、っていう顔になる。
確かに、シイン先生の笑顔素敵ですしねー。
などと思いつつ。
凄く明るい人だったんだろうなぁなんて思いながら、
確かに羨ましいだろうね。なんて想像も出来た。
美男美女の完璧カップル。
うん。
物語にしかないような感じですよね。
と納得顔――
――とりあえず、口を挟むのはお話が終わって、
こちらに話をふられてからでいいか、と腹をくくるだろう。
■シイン > 「男性は正に完璧な仕事ぶりで有名だった。
知識・実力・能力の全てが一線を画していた。
同じ部署の者達と比べて何倍も何倍も力量の差を見せ付けてた。
更に言えば、容姿も悪くなく、寧ろ良さ過ぎた。
その所為で、言い寄ってくる女性の数は知れず、ついでに男性には妬まれる。」
「だが男性は寄って来る女性に目も向けることをなかった。
そこら辺に転がる石程度しか認識してなかった、何故だと思う?」
それは"自分を"見ていないから。
「あくまで女性達は容姿に惹かれ、知識に憧れ、実力に惚れてただけ。
外見部分しか見ずに、中身を一切と見ないのだ。
そんな者を好こうとも、関わろうとも、触れたいとも思わなかったのだよ。」
当然の考えだったのだ。
自分を見ない者に、自分を理解して付き合える者が居る訳ないのだから。
■シイン > 「――対して女性は男性と比べて普通だった。
一般の者達と何も変わらなかった。だが女性は他の者達と違った点がある。
それは人の本質を、外見だけで判断せずに中身を見るという点。
その女性は、今まで男性が見てきた中の人間で初めての事例だった。
初めて会ったあの時から、見てたのは外ではなく、中身だった。」
「だからこそ彼は自ら進んで女性に関わった。
昼休みを迎えて、共に料理を食べたり。
ご飯が作れないことを知ると、自宅に押しかけて料理を作れるように指導までして来た。
そうして互いにお弁当を作って交換したりもしてた。
互いに味の評価をしながら"美味しい、美味しい"と。笑顔で溢れてた。」
「大きな仕事が終えた時は、疲れたと言って男性に寄り掛かり
仕事場で寝てしまう時もあった。
男性は仕方ないと、溜息をつきながら女性が起きるまで抱きしめつつも一緒に寝たりした。」
■シイン > 「そんな幸せな日々、いつまでも続けばいいと願った。
ずっと続けばいいと心から願った、男性に女性、どちらもが。」
だが現実というのは無情にも上手く行かない。
そんないい事ばかりが続く世の中ではない。
それが"この世界"というものだ。
「ある日のこと、夜の23時43分の時刻に事件は起きた。
男性と女性は寮暮らしだったのだが、……ちゃんと性別で分けられている寮だぞ。」
勘違いがないように、この常世学園での寮と同じ様なもんだと説明。
「その別々の寮に何十の歩兵が侵入して来た。
歩兵と言っても"敵"ではない、味方の歩兵だった。
避難訓練なのかと男性は思ったが違った。
そう、何故なら味方と思わしき歩兵達は、寮で寝ていた者達を無差別に銃器で発砲をしてのだから。」
■シイン > 「男性が所属してた"軍"という名の組織。
それは各国が持つ軍という形を模倣してるだけで全くの別物。
階級など似せれる所の出来る限り似せてるが、本質は全く違う。」
「発砲の理由、それは襲撃を想定した訓練という名目の間引きだ。
今でこそ、そんな事は行われてないが、過去はそのような事が起こされていた。
大数は不要、少数で良いという考えから、今まで育ててきた者達の力量を測り生き残った者を昇格させるという狂気の沙汰。」
決して許されないのだ、そんなことは。
鉄仮面で固められた表情は、怒りで染まり、歯軋りを鳴らす。
それは後悔と自身の力の無さを呪っての行動。
「幸いに早期に気付いた男性は、なんとかして切り抜けることが出来た。
日頃の訓練の成果と、頭の回転の良さで。
他の仲間と協力して切り抜けていったが、殺されてる者が何人も既に出てた。
どうしても、死者を出さずに切り抜けることは不可能だった。」
■シイン > 「襲撃者を凌いで、殺した歩兵の武装を丸パクリして変装をしながら不意討ちでなんとか凌いだ。
それでも、最善の道を辿っても、生存者五十から四十七を引いて生き残ったのは三人だった。」
それが男性寮の話。
生き残った三人の内の二人は既に戦意喪失状態だった。
「だから男性は一人で女性寮に向かった。
それが、それが、無茶と無謀と言われても、女性のことが気掛かりだったから。」
■シイン > 「男性が女性寮に辿り着いたのは襲撃から27分後だった。」
その時には既に女性寮は静けさに包まれていた。
「女性寮の前では何人かの歩兵達が居た。」
数にして六人。全てが男性だった。
両の手で顔を包み込み、ぼやけた声で続きを語る。
「歩兵達は女性寮の者達を犯していた。蹂躙していた。弄んでいた。」
そして
その中には
「男性は泣き叫んだ、泣き叫びながら軽機関銃の引き金を引いた。」
女性寮の者達も必死の抵抗をしたのだろう。
だからこそ六人という数にまで減らせた。
その六人が殺さずに生かしてた者を陵辱して、蹂躙して、好きに弄んで。
一人目の生存者は、泣いて叫び助けてと喚き散らす女性。
二人目の生存者は、声も出せぬように喉を斬られた女性。
三人目の生存者は、四肢を切断されて達磨の穴にされた女性。
そして最後の生存者の四人目。
笑顔が素敵な彼女。料理が美味しい彼女。男性の中身を見てくれる数少ない彼女。
胴体と首を切り離されて、胴体だけが犯されてる彼女。
■シイン > 「これが男性と女性。
バロム・ベルフォーゼ・シインと"静花"と呼ばれた者の最初の出会いと最後の別れのお話。」
それ以上は話さずに、顔面から両手を退けたシイン。
黒い液体を目尻から流して、それは涙と彷彿させるか。
■四十万 静歌 > ――なんと、いえばいいのだろう。
壮絶な話、ではすまされない何かである。
幸せが続けばいい。
でも、そんな――そう、
狂気の沙汰だ。シイン先生のいうように。
少なくとも、静歌の感想はそうだ。
合理的、少数精鋭といえば聞こえはいい。
聞こえはいいが――
銃、というものは元々人の力の差をなくす為のものである。
“当たれば死ぬ”
ならば、有能無能の区別無く、殺すだろう。
少なくとも異能も魔術も特別な力も持たぬ人であるならば。
そして、そんな狂気の沙汰で失ったもの、
失っただけならばまだ良いだろう。
失い、汚された。
それも味方の手によって。
どれほど慟哭し、どれほど――痛かったのだろうか。
想像するしかない。
でも、それは想像なんて出来はしないし、
出来てはいけないだろう。
――それでも、少しでも、痛みを想像して、
胸が痛むのは――同情なのかもしれないし、
偽善と嗤われるべきものなのかもしれない。 (続)
■四十万 静歌 > ――
奇しくも同じ響きを持つ名前。
静歌と静花。
私は、その静花という女性がどんな人間なのかは、
シイン先生の話から想像するしかない。
だが、凄い女性だと、思う。
私なんて足元にも及びもつかないくらいに。
隠し事ばかりで、卑怯な私とは違う。
ただ、名前が似ているだけの、それだけなのに、
どうしてだろう。
何故だろうか。
「――
私の中に、その人を見たのですか?」
そんな一言が思わず漏れて出てしまったのは。
オコガマシイ
ミノホドヲシレ
そんな事は分かっている。
でも、それでも――
「“いつか、その存在が、
他の誰かの手によって死を迎えるならば、
自分の手で。
誰かの手で不幸にならないように。
自分の中に理想のままに永久にとどめる様に。
――彼女を救えなかった自分が幸せになる資格がない故に、
気がついたらそうしていた。”」
そんな気がしてならなくて。
じっと真っ直ぐ瞳をみて言い切る。
そんな想いが、どこかにあったのではないかと。
私を撃ったその瞬間に。
■シイン > 「そうだ」
黒い涙を流し続ける黒衣の軍人は、ハッキリと答えた。
君の姿と静花の姿を重ねた、と。
「君は考えが冴えてる娘だ、正解だよ。」
何一つ間違ってない。
君の言う通りで、君の思うがままに、考えるがままに。
全てが正しいのだ。否定できる要素などない。
「"静歌"の笑顔が"静花"に似ていたから、"静歌"の表情の変わり具合が"静花"に似ていたから。
私の、いや――僕の料理を食べる"静歌"の姿が"静花"に似ていたから。
僕に見せた笑顔が、忘れられない彼女を思い出させたから。」
一人称を素に戻して、隠し事はせずに。
静歌に全てを重ねてしまった、と。
助けることが出来なかった彼女に。
■四十万 静歌 > ――似てなどいない。だが、
その女性を重ね合わせた理由は、
少し判る気がする。
――でも、それは欺瞞だ。
特徴の無い顔であるが故に、
そこに理想を希望を幻想を。
重ね合わせて私を見る。
絶対にとはいわない。
何かが心に触れたときにそうなってしまう。
それは別段私だけではなく全ての人に言えることだが、
特徴のない私の顔は特に顕著だ。
でも――そうでは、ない。
そうではないのだろうとも思う。
「私は、“静花”さんではありません。」
お互いに分かりきったことを確認するように口に出す。
中身を見ていた彼女にひかれたが故に、
きっと、シイン先生がみていたのもまた、
彼女の内面だ。 (続)
■四十万 静歌 > だが、おこがましくはあるが――
私にも彼女に繋がる何かがある。
それはなんなのかは私には分からない。
でも、だからこそ――いえる事だってあるのだと思う。
「ですが――
一つだけいえる事があります。
私は、
シイン先生に幸せになってほしいと思っています。」
死した者を救う事は出来ない。
そして、撃たれた事はなかった事にできない。
「――だからこそ、あえて。
言わせて貰います。
――私は“静花”さんではない。
だけど、重ね合わせたその私ですら幸せを願っているのです。
ならば、
救われなかった彼女もまたきっと――
幸せになって欲しいと願ったと、思いますし、
――信じたいです。」
それでも、
きっと、これだけは確かな事なのだと――
伝えるくらいは許されてもいいのではないだろうか。
傲慢といわれてもいい。
■シイン > "静歌は静花ではない"
そんなことは分かっている。
理解すらしている、頭で、身体で、全てで。
言われなくても、そんなことは分かっているのだ。
僕が追っていたのは、幻影。姿を被せてただけの幻影に過ぎない。
心に空かれた隙間を埋めようと、見せた幻影なのだ。
それでも、それでも僕は、幻影と本人じゃないと分かっていても。
"欲しかった"
「僕は――寂しかった。
どんな女性でも。
どんなに好意を寄せてきた女性でも。
あれから僕の空いた隙間を埋めてくれる人は現れなかった。」
寂しさは永遠と、埋まらない隙間は埋める人を探し続けた。
「幸せになって欲しい。本当にそう思うのなら。」
どうか僕の願いを聞いて欲しい。
泣き掠れた声で、か細い声で、呟いた。
その姿は、あまりにも弱々しく。
その姿は、あまりにも力なく。
とても無情で非情な機械とは思わせない、人間としての姿を見せて。
■エルピス >
「――」
――シインの過去を聞き、二人のやりとりを見守る。
胸中に感情を秘めながら、ただ其処に居る。
■四十万 静歌 > ――ここで、受け入れれば、
全ては丸く収まるのだろう。
だが、それではダメなのである。
“それだけは、絶対にしてはいけない。”
「――空いた隙間を埋めて欲しい。
ですが、私を手に入れたとしても、
絶対にその隙間は埋まりません。」
所詮は、代用品でしかない。
もしも、そこに“もし静花なら”等というズレが生じたら、
一気に、崩壊していくだろう。
もちろん、崩壊せずに埋めて幸せになるかもしれない。
でも、それでも今、必要なのは突き放す事だ。
「隙間は埋まらないんですよ。
シイン先生。」
だから、繰り返して告げる。
その残酷な、言葉を。 (続)
■四十万 静歌 > 「――そして、その隙間は、
少なくとも今の私では、
埋めてはいけないと思います。」
それは抱えていくべきものだ。
「それは救えなかった悔恨であり、
――シイン先生の、
静花さんへの想いそのものだから。
だからこそ――
“代用品”ではダメなんです。」
そう、と人さし指を立てて口元へと運び。
「――私は、“静歌”は“静花”の代用品でしかありません。
少なくとも、今のシイン先生にとっては。
代用品ではない誰かでしか、隙間は埋められない。
――人はね、シイン先生。
もちろん静花さんは違ったのでしょうが、
最初は外見をみて判断するんです。
そして、そこから内面を見ていく。
勿論見ない人もいますけど――
長い、長い時間をかけて、培っていくんです。」
想いを刻み培って、お互いの内面を知っていく。
「――長く辛い時間かかるでしょう。
それでも、私は……
そうやって想いを培って隙間を埋めて欲しい。
――人を。知って欲しい。」
静かに眼を見据えて、もう一度いうだろう。
「――それでも、私に寄り添って欲しいと願うなら――」
そうですね、と少し考え。
「――今は、友人が精一杯ですよ。」
そんな私に、何を願いますか?と首をかしげるだろう。
■シイン > この娘は"そういう娘"だった。
決して雰囲気で流されようとせず、嘘偽りを見せず、正直に立ち向かう。
公園の時もそうだった。
だからこそ、前の経験からして、期待してた答え通りだった。
所詮は代用品にして類似品。
本物には敵わない、本物には届かない。
例えば、本物に近かったとしても、いつしか綻びが出てしまう。
その時に、僕はどうするのか。
正しく瞳を向けられるのか。
答えは見つからない、誰も答えてはくれない。
涙を流す瞳の色は真紅から漆黒へ。
黒き瞳は真っ直ぐと向けられた、"静歌"へと。
「そう、君は代用品でしかならないのだろう。
君の内側を知らず、中身を知らず、そんな者が君を欲しがっても意味が無い。」
弱々しかった瞳は、確かな力を取り戻して。
「君は僕を人間より人間らしいと言ってくれた。
それなら僕はこうも思う。
人間らしい"機械"でも、人を理解して内面を見ることは可能だろうか、と。」
か細い声は、芯を通したハッキリ聴こえる声に戻り。
「――長く時間はかかるだろう、僕よりも先に寄り添える者が現れるだろう。」
ソレでも構わないのだ。
(続)&ダイス判定 [1d6→3=3]
■シイン > 「どうだろうか、僕と友人からの交際を始めてみないか?」
黒衣の軍人が静かに願いを告げた。
散々と彼女の会話の中で、告白だなと。
冗談に口にしてた事もあった。
だがコレはどうだろうか、冗談?答えはNO。
本気の言葉だ。
■エルピス >
「認めない。」
言葉の刃で、会話を断ち切る。
複雑な感情が内心で渦巻く。
それでも、簡潔に表すとするならば、
この言葉以外に考えられなかった。
「……悪いけど、お姉ちゃんは認めても、ボクは認めない。
例え"お姉ちゃんを撃った"以外に一欠片の罪も犯した事がなくて、
この件が今回限りの気の迷いだとしても。」
睨む。
牽制するように、言葉で制す。
「形は違っても 動機は違っても、シイン先生が語った"襲撃犯"と同じように、
静歌お姉ちゃんを襲って殺して手に入れようとしたシイン先生を認められない、
動機を聞いたからこそ、尚更同暴力と死で静歌お姉ちゃんを手に入れようとした先生を認められない。
撃った動機にはなっても、撃って良い理由にはならない。お姉ちゃんは、優しいから許すと思うけれど。」
ボクのエゴなのは分かっている。それでも、言わずにはいられない
事件を起こした事により周囲へ掛けた迷惑や、常世学園ひいてや財団への損失や、
教師と言う肩書きがもつ信頼の失墜などを理由に出来ないし、盾にする資格はない。
あくまでも、ボクが嫌だからだ。そこは間違えない。
其の位は自覚出来ていると思っている。自覚できていないなら、余計に認められない。
そんな奴は絶対認めない。お姉ちゃんの側にも一時たりとも居て欲しくない。
お姉ちゃんには幸せになってほしい。家庭内暴力など見たくはない。だからこそ。
「――だから」
正義感とエゴの混ざり合った、混沌の言葉の刃を叩き付ける。
「友達になるなんて言う前に片付けて。
風紀委員に出頭して、全てを正しく償って。」
冷たく、突き放す。
「許されたからと自分のしたこと全てを無かった事にしてのうのうと生きようとする人に、
お姉ちゃんを幸せに出来ると思わないから。シイン先生がそうでないと信じたいから。
……だから、お願い。ボクはそうすべきだと思う。その一心の我儘だけど、シイン先生に言うよ。
風紀委員に出頭して、全てを正しく償って。」
■四十万 静歌 > 「――」
静かにひとさし指を顎にあてて、
その様子をじっくり見、
じっくり聞き届ける。
「――友人になる分には勿論構いませんよ。」
――平然と、エルピスの言葉を聞いた上で、
頷くだろう。
「内面を見ることは可能だし、
理解することも可能でしょうね。
そして、友となったその後、
どうなるかもまた分かりません。」
ですが――
「シイン先生――いえ、
シインさんにはやるべき事が一杯あります。」
そういってエルピスをみて、
エルピスの頭をなでようとするだろう。
「――失ったものは多く、
取り戻す事はできない。」
その労苦を苦難を。
「――そして、私は残念ながら、
撃たれた事を許す、とは今はいえません。」
それは、またやはり長き時間が必要だ。
「そして――シイン先生は私だけでなく、
もっといろんな人と友好を深めて、
その人達ともお互い中身を知るべきだと想います。」
そして――もとより、足りてはいない。
それでも、なお、静歌がいいと手を伸ばせるのか。
ハードルは多く道のりは多い。
だが――
「それでも今それを証明してみせるというのなら、
少なくとも――
言正君の信用の一つくらいは得てくださいますよね?」
■シイン > エルピスの言葉は元より、自分から出頭するつもりだった自分からすれば何も問題はなかった。
「"成すべきことを成す為に"
僕の成すべきことは今、終えた。」
それまでは出頭する気もなかったが、終われば話は別なのだ。
「今の僕には抵抗しようとも、その気すら全くない。」
龍やら機械やら、混ざりに混ざった存在だ。
永久の時すらも生きられるだろう。
もし出る時に彼等がこの世から亡くなってたとしても。
それもまた物語。
言葉だけでも救われた気持ちになったのだから。
「――――」
首に飾ってたシルバーチェーンのロケットペンダントを取り出して、中身を見て微笑みを見せた。
エルピスにでもなく、静歌にでもなく、彼女に。
ようやく進めそうだ。
前を向いて歩き、成長をし続ける者を好んでた軍人。
その軍人は、止めてた脚をやっと進めるのだ。
■エルピス > 「……本当、お姉ちゃんは甘いんだから。」
平然と受け容れる静歌には、苛立ちを見せる。
其の苛立ちが、何処から来るのかは考えたくない。
撫でられながらも、言葉を紡ぐ。
「……ボクはシイン先生が犯した全ての罪を償い終えるまで、
お姉ちゃんと友達になって欲しくないし、会って欲しくもない位だよ。流石にそこまでは、言えないけど。
それに、ボクだって話す前に先に攻撃された事も、四肢を焼かれた事を許してなんか居ないんだから。
そんな静歌お姉ちゃんばっかり見てて、他の人の事をどうでも良いなんて言う人を信じられない。
……ボクが言う前に、気付いて欲しかったよ。」
せめてそのくらいの筋は通して欲しかった。"ボクだって路傍の石じゃなくて、人間なんだから"。
撫でられながらも、苛立ち紛れに零す。……と言うか、拗ねてる。
■四十万 静歌 > 撫でるのを少しやめて
「――」
静かに、その背を見送りながら、手提げ鞄から
火打石を取り出して
カチカチと鳴らす。
「――シインさんの行く道に、
もう邪気はいりませんから、
せめてこの音で祓えますよう。」
そういって、息を吸い込み大きな声で告げる。
「ちゃんと、友達として会いにはいきますから!」
そして、火打石をしまい、
エルピスに微笑み、
「ごめんなさい、ね。」
と静かにそう告げる。
■シイン > 「僕の犯した罪か、果たしてそれまで君達が生きてるかどうか。」
まず話はそこからだった。
今に思い出したのだ、彼が今迄に行って来た数々の事を。
この場で言うことではないが、特例がない限り、外に出ることは叶わず。
「会わせたくなければ、会わせなければいい。
それが君の願いなら、願えばいい。
四肢を焼き焦がして、それで謝りもしない相手なんだ、当然の権利だろう。」
別にソレでも構わない、そう付け足してから。
「だから今に謝ろう。すまない、と。」
■シイン > 何かのおまじないなのか。
だが何も言わずに火打ち石が鳴らされた音を聞き遂げて。
「少なくとも、もう邪気はな…いや、…。」
どうだろうか。
懸念事項が二つ。
一つは、軍上層部の一人の人間。
報を聞きつけたら真っ先に飛んできそうだ。
そしてもう一つは、また会おうと約束した人物。
名も知らぬ道を示そうと約束した者。
言葉を止めたままに考えに入ってしまった、ソレは良くない。
「まぁ、そっちの弟が納得して許してくれたら来てくれ…。」
と、今は考え事を切り離して告げたのだ。
■エルピス > 「……」
謝られると、何とも言えない。
お姉ちゃんの事だから、考えなしにそうしているのだろうとは思わないけれど。
それでも、全ての意図が読めない所は有った。当然と言えば、当然だ、
「……"軍人"のシイン先生からしたら、
先制攻撃は『仕方なく』で、
戦闘で怪我をする・させるのは『当たり前』。
それは、分かっているんだけどね。それでも……」
目的を果たす手段としては当然の事なのかもしれない。
焼かれた事も、対峙し結果としては必然の事なのかもしれない。
「……『仕方なく』だから、『当たり前』だから、『謝らなくて良い』なんて、思ってほしくないよ。
それも一つの精算だと、思うから。……会えたら、乱子お姉ちゃんにも言ってね。」
「そしてボクも、ごめんなさい。
シイン先生に傷が付いてなくとも、防衛でも、暴力を返した事は事実だから。」
それが手段として正当で当然でも。
それが報酬として当然で自業自得だとしても。
謝って欲しかったし、すべきことの範疇に含めて欲しかった。
多大なエゴと一抹の願いを込めて、ごめんなさいと頭を下げる。
ボクに向き合ってくれた以上、ボクもシイン先生と向き合って、認め始めなければいけない。
全てを許す訳では、ないけれど。
■四十万 静歌 > 「それでも、人は生きている。
私のような人だって、いるはずですから――」
だから、きっと願いはいつか叶うというように。
それは、人より長い命を宿したものの――特権だ。
そして、来てくれとの言葉に、
「はい!」
と元気一杯に笑顔で答えるのだ。
そして、エルピスの方をみて淡く微笑む。
弟の成長をみる姉ってこんな気分なのかな、
なんてちょっとお姉ちゃんぶったりしつつ。
■シイン > 「あぁ、龍の子か、わかっている。同じ様に謝るよ。」
事実として見れば、第三者から見れば、全て悪いのは自分なのだ。
彼が謝ることはないと、だがソレを言うのは無粋というものか。
だからこそ、素直に謝罪を受け取るのだ。
立派な考えを持つ者達だ、このような仔達が育ってくれれば世の中は平和で済むだろう。
あのような狂気の沙汰も、ソレを企てたようとも、無能な者も産まなくなる。
ふと、またペンダントの中の写真を覗く。
そこには笑顔の彼女が写っている。
ソレを見て久々に私自身も、作りではない素直な笑顔を見せることが出来た。
彼女に、"静花"に教わった時と同じ、良い笑顔を二人に見せれたのだ。
犯罪者だというのに、おかしな話もあるものだ。
だが、静歌に釣られて見せてしまった、仕方あるまい。
■エルピス > 「うん。……ボクからは以上だよ。
直接の自首がし辛いなら、貴子ちゃん辺りに話を通しておくけど、どうする。」
自分のすべき――否、"言いたい"事は終わった。
後は、シイン先生の問題だと、思っている。
■四十万 静歌 > 「――今までで最高の笑顔をありがとうございます、
また、その笑顔が見れますよう!」
最後にそういって、
にっこりと、笑顔で見送るだろう。
――後は私の言葉はいらない。
また会う日まで溜めておくのである。
■シイン > 「子供じゃないんだ、"話など通さずに直接自主をしにいくさ。
と言おうと思ったが、佐伯の事か。
それなら話を通してもらえるとありがたいか。」
それではお願いできるか、と頼んで。
黒炎を纏い始めた、表情はもう見えなくなってしまった。
だが、確かに最後まで彼は笑顔だった。
そこには、後悔もなにもない。
彼は再び歩み始められたのだから。
■エルピス > 「うん……自首しにに向かうって事、伝えておくね。」
短く返し、小さく頷く。そして、シインを見送るだろう。
スマートフォンを取り出して、メールの文面を作り始めた。
■四十万 静歌 > 「――」
もう、彼は大丈夫だ、
後は――
幸せになってくれるよう願い続けよう。
そして、メールを始めたエルピスに、
「レイチェルさんの連絡先知ってますか?」
とたずねるだろう。
■シイン > 二人の遣り取りを他所に、一人。
"龍"となった彼は翼を生やし飛び去ろうと。
思った矢先だ、折角だ、私には不要な物をを持ってても仕方ない。
徐ろに背に腕を回して二つの銃を取り出した。
今回の事件で使用してない証拠にもならない銃だ。
彼等には不要な気がするが、なんとなく持っていて欲しかった。
――だから
「エルピスッ!!静歌!!」
飛び去る前に、高らかと声を上げて二人に投げ渡すのだ。
一つは赤い色で塗装が施された拳銃。これを静歌へ。
もう一つは黒い色で塗装が施された拳銃。これをエルピスへ。
姉弟銃なのだ、ちょうど似合うだろう、と。
不要かもしれないし、扱えないかもしれないがそれでも、だ。
■エルピス > 「んっと……」
そう言えば――
「一緒にホテルのスイーツバイキング……ビュッフェかな。を、食べたりはしたけれど、
連絡先までは知らないんだ。だから、貴子ちゃんに送信するよ。多分、そこから伝わると思うし――。」
文面を作り終えれば、送信ボタンを押す。
『非公式だけど、シイン先生が出頭・自首するとのことなので、認識し、信頼できる人に伝えて頂ければ幸いです。
追伸:返事ができなくて、ごめんなさい。』
やや文面が固くなったかなと思いながらも、送信ボタンを押す。
「んっ――!」
そうした後に飛んでくる拳銃。驚きはしたが、確かにキャッチした。
……証拠品として提出しなくていいのかとも考えたけれど、
それは無粋かなと思えば、確かに受け取った。
「……確かに預かったよ、シイン先生。」
■四十万 静歌 > 「残念、それなら貴子さんに任せてしまいましょうか。」
と、クスリと笑い――
「わっ、ととととととととと!?」
思わず取り落としそうになるけど、なんとかキャッチ。
ええと、いいのかな、こんなの持ってて。
なんて想うけど、
これは受け取らないといけない。思い出の品になるから。
「ありがとうございます」
とふんわり笑い、見えなくなるまで手を振るだろう
■シイン > 無事に受け取ったのを確認して、直ぐに飛び去ったのだ。
そして黒炎は、静かに色を変えて、白く染め上げた。
白炎を纏った龍は、白き火粉を舞って、空へと消えた。
ご案内:「青垣山近辺の平原」からシインさんが去りました。
■四十万 静歌 > 「――いってしまいました。」
なんて、後ろ手を組んで伸びをして。
「それじゃ、私達も行きましょうか?」
と、クスリとエルピスへ微笑みかけるだろう。
■エルピス > 「うん、いこっか。静歌お姉ちゃん。」
銃をしまい、小さく頷く。
……なんとなく、ぴとってくっついてみた。
「えへへ……色々大変だったけど、お疲れ様、お姉ちゃん。
……あ、そうだ。今度の日曜日、良かったら遊びに行かないかな。
羽根も、伸ばしたいし……」
■四十万 静歌 > 「そうですね。
いきましょう。」
そっと頭をなでようとしつつ、寄り添って。
「――勿論構いませんよ。
それと、これから御飯一緒に食べましょうか」
と微笑みかけるだろう