2015/08/20 のログ
レイチェル > 「いや、最近はさっぱり……ファ、ファンクラブって何だよマジで。そんなの
 ある訳……」

そう呟いて、右手を眼帯の方へやって、幾度かトントン、と叩く。
左目は閉じて、意識を集中させる。
レイチェルの《右目》は、ネットにも繋ぐことの出来る端末である。
指による刺激と彼女の意思で操作をするのだ。
目を閉じてから十数秒後。
レイチェルの身体がびくりと跳ねたかと思えば、ぱっと目を開いて眼帯から手を
離し、見なかったことにするぜ、とだけ言い残した。

「お、おう? そうだな。じゃあもう一つ頼むか。じゃあお前の好きな奴頼めよ。
 さっきのはオレのオススメだっただろ」
気づかれてたか、と苦笑しながら、レイチェルはメニューの方を見やってそう言って。

「何だか聞くのも怖いが、すごいお返しって何だよ……」
と問いかけて、再び頭を抱えるのであった。

六道 凛 >  
「……ま、そういうこと。自分は思わなくても――
 人の思いはくるくる回る。それを無視するもしないも
 本人の勝手だし、ネットでは、別に電源落としちゃえばいいしね」

でも、観てくれるなら。それを望んでいた自分。
そのときでは出なかった言葉。
それに、ちょっと可笑しく思いつつも。

「――ま、がんばって」

他人ごとのように呟いて。ティラミスをひとつと、店員さんに注文。
クリームチーズをふんだんに使っているらしく、甘すぎないのをチョイスしてみた。

「……気持ちいいこと? いや、血液でもいいけど」

なんて、さらっと口にすれば。
店員さんが変な顔をして。なんだか周りもざわついたような

レイチェル > 「ネットの事になるといつもより饒舌になるな、お前。饒舌というか、強気というか。
 他人事みたいに言いやがって」
じっとりとした顔でそう言い放ち、ふぅ、と一息つくレイチェル。

ティラミスを注文すれば、店員は手慣れた様子でクレープの生地を焼き始める。
出来上がれば、それを六道に渡そうとするだろう。見るからに美味しそうで、
甘い香りが漂ってくる。

「……ま、そう言うとは思ってたが。六道、何かをして貰って、お返しをしたいって思った
 ならな。そういう時は、ただ『ありがとう』って言えばいいんだよ。
 それがお返しになるんだからな。言葉ってのは、案外いい贈り物になるもんさ」

気持ちいいこと、などとさらりと口にする六道に対して、まだまだズレてるな、などと
心の中で肩を落としつつ、気を取り直してそう返すレイチェルであった。

六道 凛 >  
「……だって他人ごとだし。得意分野だし」

事実を口にするかのように、返して。
さっと、ティラミスを受け取り。
さっとレイチェルに、向ければ。

「はい、あーん?」

さっき自分がしてもらったからそのお返しとでもいうように
差し出した。

「……言葉」

いつか、劇団の誰かがいっていた言葉と。
重なった、だれが言っていたんだったか……

「ん、じゃあ――」

それが、この社会のルールならば。
試してみるのがいいだろう。
お礼をいう時はどんな顔をするんだったか――
『笑顔』だったろうか

「ありがとう」

目を細め、ふわりと――
暑さを忘れるくらいの。まるで雪が溶けた春のような。
今までとは比べ物にならない”華”が咲いて

レイチェル > 「普通に寄越せよっ。ほら、先に半分食っていいから」

店員に金を払いながら、レイチェルはそう言い放つのだった。
流石にここであーん、などする彼女では断じてないのだ。


「そうか、それなら――」

ふっと微笑むレイチェル。
先までの顔つきと打って変わって、如何にも少女らしい笑みだ。

「――『どういたしまして』だ。案内はまだまだこれからだけどな」

そう言って、街の方を見やって、また大きく伸びをするレイチェルであった。

六道 凛 >  
「……え、なんで――?」

何かがダメだったらしいのでおとなしくモグモグと食べ始めた。
さっきやった時は悪くなさそうだったのに。
やられるのは嫌いだったのだろうかなんて思いながら。

「はい、半分……ツギはどこに行くの?」

大きく伸びをする彼女に。
なにか、満足そうな表情をする彼女に。
不思議そうな声を投げかけながら

レイチェル > 「何でって、そりゃ恥ずかしいだろ人前で、しかも別に恋人って訳でもねー相手に
 あーん、はさ」
もぐもぐと食べ始めた六道を見ながら、ふぅ、と三度腕を組むレイチェル。


「ま、とりあえずこのまま商店街回りだな。商店街は皆活き活きしながら、それぞれ
 の生活を営んでる。色んな生徒も居る。常世を知るにはいいとこだと思うぜ?
 それに、これから生活するなら店員さんに挨拶しといた方が、な?」
残りを寄越せとばかりに手をふい、と向けて。
レイチェルはクレープ屋を離れて歩き出すのだった。

六道 凛 >  
「そう? 気にし過ぎだと思うけど」

そういうもんかと、思いつつ。あ、でももう一人の
面接に来てくれた少年に自分もそんなことを言ったなぁと思いだし。

「ん、わかった」

クレープを渡して、一緒に歩く。
そして食べている途中で――

「そういえばあーんはダメだけど間接キスは良かったの?」

なんて素朴な質問を投げかけて。
ゆっくりと一緒に商店街を――

レイチェル > 「お前が気にしてなさすぎるだけだろ」

はぁ、と最後に一つ、大きく溜息をついて、肩を落とせば、黒いリボンがふわりと揺れて、
しょんぼりと垂れた。

「関節キスはまぁ……ギリギリ、マジでギリギリの許容範囲……だが……
 あーん、は何か駄目なんだって、あーんは! わかんねーかなー!」

だー、と両手を空へと広げるレイチェル。
実際のキスならともかく、関節キス程度でそこまで気にしても仕方ない、とレイチェルも
思っている、が。どうにも自分から口を開けて食べさせて貰う、という行動は、彼女の
中のプライドと羞恥心が許さないらしかった。
普段から粗野な所作を見せながらこの少女、変な所で乙女チックなのだ。


「ま、とりあえず行くぞ。五代先輩に心配かける訳にも行かねーし、あまり遅くなる前に
 帰らねーとな」

太陽の光を受けて輝く金の髪と、クロークを風に靡かせながら。
レイチェルは六道を連れて商店街へと歩いて行くのだった――。

ご案内:「常世島」から六道 凛さんが去りました。
ご案内:「常世島」からレイチェルさんが去りました。