2015/11/03 のログ
深雪 > 「欲しかったら、首輪買ってあげるわよ?」

ちょっと意地悪に笑いながらも、貴方に続いて歩く。
まぁ、七生の身長ではどう頑張ってもおおかみこどもが関の山だろう。

「確かにそうね……それに、七生が目立たなくなっちゃうかしら。」

楽しげに笑いながらも、七生につれられるままに衣装の店へとやってきた。
平凡な服とは別に、仮装用の衣装や小物が並べられたコーナーができている。

割とこの辺りでは中心的な店なのだろう、もしくは店主の趣味なのかもしれない。
ある程度のニーズに応えられそうなくらいに、品ぞろえは豊富だった。

「…黒の服が多いのね。」
なんて言いつつ、魔女のとんがり帽子を被って見せる少女。
銀色の髪は、案外と黒の帽子に映えるかもしれない。

東雲七生 > 「結構です!!」

まったくもう、と頬を膨らませたまま歩みを進める。
周囲からもくすくすと忍び笑いが聞こえる気がするが、気にしていてはやってられないのだ。

「目立つ目立たないの問題じゃないだろっ!
 絶対分かってて言ってるよな、もうっ。」

陳列された衣装をざっと眺めながら。
深雪が被ったとんがり帽子を見て、魔女かあ、と感嘆を零す。
魔女の衣装ならオーソドックスで良いかも知れない、と陳列された中から幾つか手にとってみたものの。

やたら裾が短かったり襟元のスリットが深かったりと、露出過多に思えるものが多かった。
きっと下にインナーか何かを着た上で着るものなのだろうか、と考えるほどには。

深雪 > 「あらあら、でも、楽しそうじゃない?」

そんな風に半ば冗談、きっと半分以上は本気で言いながら。
周囲の笑い声など気にする様子があるはずもない。

「ふふふ、ばれたかしら。
 街中で変身したら、きっと大騒ぎよね…。」

でも、やりかねない。
そう感じさせるに十分な余韻をもって…けれどそれは、眼前の魔女衣装への興味でかき消された。
………何というか、狙っているとしか思えない衣装が並んでいる。
もしかしたら、もう無難なものはあらかた売れた後なのかも知れない。

「……七生は私に、そういう格好させてみたいの?」

意地悪に笑いながら、問う。

東雲七生 > 「……俺にはそういう趣味は無いです。」

必要でもないし、と不満げに呻いた。
いつだってこんな調子だから、いい加減慣れてきている。
そんな自分がちょっと怖い。

「そりゃ、大騒ぎだろうけどさ。
 案外、時期も時期だし、異邦人街なら特に目立ちもしないんじゃないかな……」

変身魔法とかも、あるだろうし。
そんな風に言いながら、やはり少し感覚が麻痺してきているのを感じる。
それが良いか悪いかは、まあ置いといて。

「……え!? いや、ちがっ!……く、もないかもだけど!」

まるっきり関心が無いと言えば嘘になる。
が、それを正直に言うのも恥ずかしかったので、七生は顔を真っ赤にしながら声を荒げた。

深雪 > 不満そうな表情を見てか、残念ねぇ、と苦笑してそれ以上は言わなかった。
魔女の衣装を手に取って見たりしながら…

「…そうかも知れないわね。
 それじゃ、今度やってみようかしら。」

巨大な狼に変身し、興味本位で近づいた不幸な人間を弄ぶ。
そんな極悪非道の行いを想像しつつ、少女は可愛らしく笑んだ。
きっと、少女の頭の中を想像できるのは七生だけだっただろう。

「私は別に構わないわよ。
 七生が好きなのを…私に似合いそうなのを、選んでくれるかしら?」

そんな貴方の内心を知ってか知らずか、少女は貴方に全権を委任する。
きっとこの少女はどんな服装でも拒否せずに着てくれるだろう。
後は貴方が、勇気を出すかどうかだ。

東雲七生 > 「……お前なぁ。
 ほどほどにしとけよな、ほどほどに。」

やれやれ、と半ば呆れたように声を上げた。
何を考えてるのか、手に取るように、とまではいかなくとも解る気がした。
少なくとも、碌な事を考えていないだろうという事は判る。

「……ていうか、俺じゃ不満なのかよ。」

ぽつりと、小さく呟いた声は店内に流れる軽快なBGMにかき消されたかもしれない。

「えっ、でも、その……」

手にした衣装と、少女を見比べる。
晒される素足も、肌蹴られる胸元も、どちらも少年の想像回路には宜しくない代物だ。
ぐるぐると思うように働かない思考を懸命に動かしながらこれからの事をシミュレートする。
ただ着せるだけじゃない。この後色んな店でのイベント事にも参加したい訳で。
つまり他の民衆の目にも触れる訳で。

他人に見せても良さそうな方、という選択を懸命に考えていた。

「とはいえここまで深く入ってるともう少し大きい方が映えるんじゃないかな……」

余計な考察まで零れ落ちるほどに。

深雪 > 「大丈夫よ、ここに住めなくなったら大変だもの、殺したりしないわ。」
きっと嘗ては好き勝手に暴れていたのだろう。
けれど、少なくとも七生が見ている限り、少女が何かを“壊す”ことはない。
どれほど口に出そうとも、それを実行することは無い。
言葉が冗談だからなのか、それとも力を失っているからなのか。

「あら…私に壊されてみたいの?」
それでも、狼の聴力がそれを聞き逃すはずもない。
少年の嫉妬心に満ちた声は、少女の笑みを僅かに深めさせた。

「…なに、どうしたのかしら?」

衣装を手に、こちらを見る貴方を見つめ返す。
明らかに布の面積が少なめな服だが、特に拒否することも無い。
周囲の視線など気にするはずもないし…相応に自信ももっている。
それ故に、余計な考察が聞こえれば…

「……そう、壊されてみたいのね、分かったわ。」

…にっこち笑うのでありました。早く決めてフォローしないと大変だ!

東雲七生 > 「なら良いけどさ。」

まだ少しだけ不満そうな顔で頷いた。
少女が七生に大丈夫、と言ったからには大丈夫だろう。
それは信用出来る。

「壊されてみたい訳じゃないけどさあ……」

他人が少女の気を引くのは、少しだけ気に入らなかった。
子が親の注意を引きたがる様に、口を尖らせて不満を露わにする。
きっとそんな姿も、深雪にとっては可愛らしいとしか思えないのだろうし、それは七生自身も重々承知の上だが。

「えっ、あ、いや!その!」

どうやら思考が漏れていたことに気付いていなかったようだ。
にわかに殺気立ち始めた少女の様子を見て、思わず手に持っていた衣装を差し出す。

「別に深雪のが小さいって言いたいんじゃなくて!
 その、これで!これでお願いします!」

いざという時の即断力はあったが、フォローは凄く下手な七生だった。

深雪 > 不満げな表情の七生を見れば、くすくすと楽しそうに笑う。
それから、自分の首筋…結び付けられたリボンをふわりと撫でて、

「逆に私に首輪をつけられるくらい、七生が強くなればいいのよ。
 そうすれば…私は逃げられないし、貴方だけを見てるわ。」

少しだけ挑発的に、しかしそれは決して冗談とも聞こえない響きで…
…少女は貴方にそうとだけ語る。今はまだ夢物語だろうが。

それから差し出された衣装を受け取って…ニコッと笑う。
「大丈夫よ、自分の身体のことくらい分かってるわ。
 でも、七生の好みが分かったのは…収穫だったわね。」
込められたのは怒りではない。けれど、決して無邪気な笑みでもない。
いずれにせよ、少女は試着室へと消えていった…そのまま着ていけるのも、この店の良い所だ。

「……これ、持ってて。」

試着室のカーテンからか細い腕だけが伸ばされ、制服のブラウスやスカートを七生に託す。
…いや、託すのはおかしいだろう。そう思うかも知れないが…きっと報復である。
ほら、女子高生の制服を抱えた男とか、周囲から見れば……きっと、怪しいことこの上ない。

東雲七生 > 「だーかーらー!
 俺は着けるのも着けられるのも、そんな趣味は無いの!」

もー、と愈々本格的に頬を膨らませながら抗議する。
そんな物が無くとも、逃げない様に捕まえておけるようになる……と、そこまで考えて首を傾げた。
何か、目的がすり替わってる様な。
ともかく、強くなるのは言われるまでも無い事だった。

「うっ……だって、だってー……。」

その先が言葉にならない。
そもそも知られたからと言ってどうなるわけでもないのだ。
人間の体躯なんて、一朝一夕で変わる物じゃないし、そもそも深雪が七生の好みに合わせるだなんて想像もできない。

「あ、はい……。」

口を滑らせていたのは自分である。
結果、報復は甘んじて受け入れる覚悟はしていた。
まだ温もりの残った衣類を、どこに顔を向ければ良いのか分からないまま携えて、深雪の着替えを待っている。

深雪 > 「そういう事にしておくわ。
 …そうね、私も縛り付けられるのはもう嫌だわ。」

その時、過去を思い出して少女は遠い目をしていたのだが、
カーテンに阻まれて貴方からは見えなかった。
声に僅かな憂いが重なった程度の変化で、何処まで察せるのか。

「いいのよ…男の人は、みんなそういうものでしょう?
 けれど、あまり大きいと結構邪魔なのよ、胸って。」

そうとだけ言ったところで、さっとカーテンが開いた。
きめ細やかな色白の肌に、肩を完全に露出させた黒いキャミソール状の衣装。
黒のロンググローブを装着しているので、大人びた雰囲気が漂っている。

一方で、胸元もそうだが、スカートも相応に短い。黒いタイツを履いているのを、幸いと取るか、残念と取るか。

東雲七生 > 「でしょ。」

我が意を得たり、と大きく満足げに頷いた。
縛る心算は毛頭ない。居たいから居るし、居ても良いと思うから居させてくれる。その程度の関係で良いと思う。
カーテン越しに翳った声に、少しだけ眉を寄せて。

「なあ、深雪。……今度は、深雪の昔の事、話せる範囲で、話して欲しいな。」

ぽつりと、そう呟いた。

「いやっ、その、確かにそうだけどっ!
 ……あう、ううぅ……そうですか……。」

しんみりとした気分に浸る間もなく、耳まで真っ赤になって立ち竦む。
自分で蒔いた種とはいえ、流石に気恥ずかしい。凄く気恥ずかしい。
カーテンが開かれれば、少しだけほっとしたのか溜息を零して。
そして、現れた姿に少しの間見惚れた。
日頃もっとあられもない姿を見ているとはいえ、仮装した深雪の姿は普段よりも艶があるように見えたのだった。

深雪 > 靴を履く…が、制服に合わせたローファーではどうもこの服装には合わない。
少し考えてから、靴を選びに歩いていった。

「聞かなかった方が良かったって、後悔するかもしれないわよ?」

ヒールを眺めながらそう小さく告げて…それから視線を貴方へ向ける。
拒絶はしていない…ただ、貴方の表情を伺っているようだった。

そんな間にも、前屈みになればスカートと脚が。
真っ直ぐに立てば胸が、それぞれ、周囲の視線を釘付けにしそうなレベルで強調されている。

「これなんかどうかしら?」

シンプルな黒のヒールを手に取って、貴方に見せた。

東雲七生 > 靴を探しに行く深雪の後を付いていく。
託された制服は、店員さんのご厚意によって紙袋の中に仕舞われていた。その紙袋はしっかりと七生の手に握られている。

「しないよ、深雪のことだもん。
 それに、どんなことでも知りたいしさ。」

自分の過去が未だに闇の中であるからか。
他人の物であれ、過去というものに興味があった。真っ直ぐに深雪を見て、軽く微笑んでみせる。

とまあ、そんな余裕のある姿も深雪の視線がこちらを向いて居ればの話であって。
やたら人目を引く肢体をさりげなく隠したり、周囲を威嚇したり気が気ではない。
そして周囲よりも距離が近い分、見えそうで見えない均衡が崩れやすい為か更に気が気ではない。

「え、あ、……うん。良いんじゃないかな。似合うと思うよ?」

すらりと長い脚に視線を向けて。ついつい引き寄せられてしまっている事に気が付いて慌てて顔を上げた。

深雪 > 「そう……そのうち気が向いたら話してあげるわ。
 私の…友達の事も、このリボンの事も…………。」

やはり少しだけ、視線が遠くどこかを見つめて…それからふと、貴方へ向けられる。
貴方が少女の周りで努力し続けていることなど、本人は知る由も無い。
ローファーからヒールに履き替えるときに、また、七生に頑張ってもらわなければならないタイミングがあっただろう。

「そう…? ふふふ…それじゃ、これに決めようかしら。
 あとは、ほかに何か足りないものがあって?」

ヒールまで装備した状態で、両腕を軽く広げて、七生アピール。
だんだんと店内に人が集まり始めているのは、偶然ではないだろう。

東雲七生 > 「うん。待ってるから。」

余計な事は言わず、ただ小さく微笑みながら頷いて。
にべも無く断られるかと思ったが、そうではなかった事を嬉しく思いつつ。
靴を履きかえようとする気配を見せれば、即座に立ち位置を変えて周囲の視線を遮った。微かな舌打ちが聞こえたが、聞こえないふりをしてやり過ごす。

「他に?何か?……えっと、いや、大丈夫……かな?
 ああ、あとそうだ。何かカボチャっぽいアクセサリとか……」

カボチャに関してもある程度の説明は済んでいる。
周囲の人だかりに気が気じゃないが、何か小物を、と提案した。
このままでは七生の小さな体では防ぎきれなくなってしまうだろう。

深雪 > ヒールに履き替えれば、元々大きかった身長差がさらに広がってしまう。
…それこそ見下ろすような長身の少女は、貴方を見下ろして…

「……カボチャ?
 この黒い服に合うのかしら……。」

胸元を隠す結果になるか、それとも逆に強調するか。
いっそこの際、防御できる小物を見繕ってやるべきかもしれない。
もしくはいっそのこと、見せつけるつもりで野に放つべきかもしれない…。

「……で、この衣装を着て…どうしたらいいの?
 狼男を懲らしめればいいのかしら?」

ヒール込みの高身長から見下ろされると、それなりに圧迫感があるかもしれない。

東雲七生 > 身長差はこの際考えないことにした。
考えていたらキリがないし、気にして背が伸びれば苦労は無い。
そして何よりも今は相対的に上がってきた開けた胸元が否応にも視界に入ってくる事の方が一大事だ。

「大丈夫!似合う!どんなでも深雪なら似合うって。」

確証も根拠も無いが、そんな事はどうでも良い。
似合うったら似合うのだ、と自分に言い聞かせるように声を上げる。
しかしどういった小物にするか、と再び見切り発車を思い知らされてしまった。
周囲の視線が集まるのは良い気がしないが、幸い本人はまるで気にしないだろうし、と考えていたら。

「こ、ここ懲らしめる!?って、え、俺何かした!?」

思わず顔を上げて、丸くなった目で深雪を見上げる。
すぐに言い知れぬ屈辱感に襲われたが、先に言った通り、気にしない。気にしてはいけない。と自分に言い聞かせ。

深雪 > 確かに、実に見事な高さである。
具体的には、そのまま、こう、顔を埋められるような高さだ。
もっとも、当の本人はそれに気づいていないし…この場合、気付いていないのが幸いであるのだが。

「何だか適当ね……あ、でも、これなんかどうかしら?」

手に取ったのはシルバーのネックレス。
ジャックオーランタンがモチーフになっていて、味方によっては可愛い。
胸元にアクセサリーが来ることで、十分とは言えない大きさの胸が…少しだけ、強調されて見える。
結論から言えば、周囲の視線を遮る効果は皆無である。

「何もしてないけれど、狼男って言ったら、悪役じゃない?」

ふー、と息を吹きかければ…凍えるような冷たい空気。
けれどそこにも、僅かだが深雪の香水の甘い香りが混ざる。
くすくすと笑って、それから、改めて鏡を見つめ、自分の服装を見る……

「…こんな服装、生まれて初めてよ。なんだか、不思議な感じね…。」

きっと、七生が居なければ、絶対にこんなことはしなかっただろう。

東雲七生 > お陰で目のやり場に困りきっている七生が居る。
半端に色々知っている所為か、視界に入るだけで余計な思考が呼び起されてしまうからだ。
深雪がネックレスに気を取られている間に目を逸らして、大きく深呼吸をする。

「ああ、そういうの良いかもな!
 ……えっと、うん。良いかもなあ……。」

反射的に同意してから、実際確認してちょっと後悔した。
しかしまあ、この際気にしていても仕方ない。こんな事で精神力をすり減らすのはちょっと我ながらどうかとも思えた。
いっそ、周囲より距離が近いという利点を最大限に使って堪能すべきかも、という考えすら過る。

「いや、悪役って……そうなの……?」

実際のところ狼男に関する知識が豊富なわけではない。
敵対した時の対処法を授業で教わってる程度、である。
僅かに怪訝そうに首を傾げたところに、深雪の吐息を掛けられて視界に靄が掛かった様な感覚に慌てて頭を振った。

「制服か、下着姿か、水着姿しか見たこと無かったし、俺も新鮮な気分だけど。」

ついでに一糸まとわぬ姿も知っているが、思い出すともれなく顔に出てしまうので無意識下で記憶に蓋をした。
そして、似合ってるよ、と鏡越しの深雪へと微笑み掛ける。

深雪 > 少女は、思いのほかにこの衣装を気に入ったようだった。
銀の髪と色白な少女の肌に、黒い衣装は対照的で良く映える。
この季節には寒すぎるだろうデザインも、寒さに強いこの少女には丁度いい。
そして、もし自分1人だったなら、絶対に手を出してはいないだろう。

「今の発言、周りに聞かれてたら…貴方が変態にしか聞こえないわよ?」

下着姿とか平気で言っちゃうところも、この少年の可愛い所だ。
きっと、自分でそれに気づけば真っ赤になるのだろうところも。

「ありがと…それで……お祭りに行くのよね?」

この後どうしていいのか、本当によく分かっていない様だ。
首をかしげて、七生を見る。
普段からペースを握られてしまっている七生にとって、これはチャンスかもしれない。
…エスコートしてあげなければ、少女には何もわからないのだから。

東雲七生 > 普段よりも楽しげな、健全な意味で楽しげな深雪の姿に七生の頬も緩む。
自分をからかって楽しんでいる姿も嫌いなわけではないが、こうして一般的な楽しみ方を満喫している彼女を見るのも悪くない。
誘って良かった、と心からそう思えた。

が、

「……! あ、いや、その……!
 なし!今のなし!なーしー!!」

たちどころに顔を赤くして慌て始める。
幸い周囲の意識は深雪に向けられていたが、七生自身はもう茹で上がりそうなほどだ。
少しだけ時間を置いて、冷静さを取り戻してから、

「うん、これから明日の朝まで、色んなお店が割引なんだ。
 学祭の屋台とかもあるからさ、見て回ろう。」

それがメインだったはずなのである。
少し落ち着きを取り戻し、顔から赤さも抜けた七生は紙袋を持ち直して、空いてる方の手を深雪へと差し出した。

「大体のルートは決めてあるんだ。
 だから今日は最後まで深雪はただ楽しめば良いの!」

深雪 > 思った通りに顔を真っ赤に染めた貴方に、くすくす笑いながら見守る少女。
けれど、急かしたり、頬を撫でて煽ったりすることはなかった。
ハロウィンという祭りも、こんな恰好をすることも、学園祭などという行事も、
正直に言えば何の意味があるのか分からない。
けれど、それでも、何かが楽しいと感じられているのは…

「…そうね、道案内、貴方に任せても良くて?」

…きっと、この可愛らしい少年が、楽しませようとしてくれているからなのだろう。
差し出された手を、黒のグローブにつつまれた右手が握る。
今日は全てを貴方に任せよう。
……貴方をからかうよりも、その方がずっと楽しいと思うから。

「それじゃ、つまらなかったら全部七生の奢りね。」

まるで人間の学生が言うような言葉を告げて…少女は、無邪気に、笑った。

東雲七生 > 「──もちろん!」

満面の笑みで頷いて、握られた手を引いて歩き出す。
まずは店のレジへ、そして店の外へ。
周囲の人の視線を極力意識の外へ追い出しながら、日が沈み始めた異邦人街の商店街を練り歩き始めた。

「そこまで高価な買い物とかするわけでも無いし、元から俺が持つ心算だったけど。」

少しだけムス、と顔を顰めるも
すぐにまた笑みへと戻して肩越しに振り返る。
そして一晩中、七生は深雪を、ハロウィンで活気づいた商店街を連れ回したのだった。

ご案内:「異邦人街・商店街」から深雪さんが去りました。
ご案内:「異邦人街・商店街」から東雲七生さんが去りました。