2016/07/02 のログ
■レイチェル > 「握手にしちゃ強すぎるっての……!」
右手をぶらぶらと痛そうに二、三度振りながら。
左手に持ったマグナムの弾を、ありったけ放つ。
(狙うのは――狙えるのは、やっぱり爪か……あの部分だけは、しっかり実体化してるみてぇだな)
いくらかひしゃげる爪。確かな手応えを感じたレイチェルは、ふぅ、と一つ小さな息を吐く。
ほんの一瞬の休息。その間に、何やら手招きの如く空を掴み始めるワータイガー。
怪訝そうな表情を浮かべるレイチェル。
違和感を覚える。何か、やばい気配だ。
自然と、空いた右手をクロークの内へ滑らせる。
その瞬間に。
レイチェルの視界の端。
放った筈の弾丸が弧を描き始め――
弾丸が、螺子が、凄まじい勢いで。
レイチェルの頭部からつま先まで、余すこと無く風穴を開ける。
全身から血を噴き出しながら、少女は肉塊となる。
そうなって、当然なのだ。
超高速で、四方八方から発射される鉄片を、この少女が身ひとつで、躱すことができるというのか。
ただただ『この一瞬を受け入れる』のであれば、無理だ。
死は避けられない。だが――
――彼女は、『その一瞬を打ち壊す』。
「――時空圧壊《バレットタイム》!」
叫ぶ。高らかに、彼女に与えられたその異能の名を叫ぶ。
同時に。
周囲の時がその刻み方を忘れてしまったかのように。
急速に。
減速を。
始め。
その中で、少女だけがたった一人、しっかりと時を刻んで――。
「ったく、なんつー技を使いやがる……こりゃ銃はダメだな」
少女の命を奪う一瞬は、際限なく引き伸ばされてゆき――殺人的な勢いで迫っていた鉄片は、
今や緩やかに舞い落ちる柔らかな羽根の如く。
クロークから抜き出された黒い大剣によって、尽く弾かれる!
「……時間切れだ。第二ラウンドと行こうぜ」
自らの手の内に収まった魔剣切り札《イレギュラー》を構えるレイチェル。
そして少女の声と同時に、世界の時は再びその刻み方を思い出す――。
■ライガ > この速度、この攻撃範囲。並の手段では避けられまい。
待っているのは、ズタズタに引き裂かれ、ミンチと化した血塗れの未来であろう。
不気味な黄色い目が愉悦に細められた。
しかし、次の瞬間。
目の前の少女は、特に目立った傷を負うことなく、元気で立っていた。
いつの間に取りだしたのか、手には大きな黒い剣。
これが結果を変えたのだろうか?
一斉に襲い掛かったはずの金属片は、悉く叩き落とされ、半分は足元に、半分は虎の体を通り抜けていった。
黄色の目が、驚愕に見開かれる。
まだ、この悪魔では時を超越する力はない。
故に……コマが突然飛ぶように、それまでの状況から予想される展開とは全く別の結果になっても、干渉できるはずもなかった。
何か特殊な力を使い、八方からの投擲から逃れたのだろう。虎はそう判断した。
そうなれば、物質による攻撃は爪だけとなる。
大剣を構えた少女に呼応するように。
ふたたび両腕を顔の前で交差して構え、銀色の剣爪を同時に振りぬきながら、飛びかかった。
■レイチェル > 「……ったく、派手にやってくれるぜ、マジで……楽しいパーティーだよ、こいつは」
肩を軽く上下させながら、レイチェルはそう口にする。
時空圧壊《バレットタイム》はかなりの精気《エネルギー》を消費し、時間の法則を破壊する
大技である。絶え間なく発動できる技ではない。
呼吸を整えながら、ワータイガーの動きを観察。
魔剣を握る手に、力を込める。
「こっちも派手に、やってやらぁ!」
当然のことだが、十分に休息をとる時間は与えてくれないようだ。
剣爪を振りぬきながら突進するワータイガーに向かって、
レイチェルも疾駆。真っ向から斬りかかる姿勢をとる。
このまま行けば、切り結ぶ形になるか――。
■ライガ > 双腕の剣爪と、漆黒の大剣が衝突すると、火花を散らし、周囲に衝撃の余波が広がる。
角度が悪いのか、爪が大剣の重さに耐えきれず、曲がり始めた。
しかし、両腕は近接攻撃手段、あるいは遠距離攻撃の被害軽減。
銀色の斬爪からは、最初にテーブルを切り刻んだ黄色い光は見えない。仮に爪先から放てるならば、これまでに幾度も機会はあったはずだ。
それを、一度たりともしなかったのは。
『ゴロゴロゴロ……』
このまま引いても押しても、大剣によって両腕が破壊されるだろう。相手の武器のリーチもあり、まだ少し距離があった。
向き合うレイチェルを睨みつけ、ワータイガーが喉を鳴らす。
バチリ、と一つ目から黄色い電光が奔り。
虎の頭部が光の瞬間ゆらりと揺らめいて、黄色い目の左横、目玉2つ分くらい離れたところにもう一つ、目玉のようなものが見えた。しかしそれはたちまち掻き消え。
電光が瞬く間に“黄色い光の筋”となって、縦横に分かれながら放射される。
それこそが、先ほど見えた、斬撃を伴う、雷──
■レイチェル > 衝撃の余波で、レイチェルの髪が、スカートが、クロークが、激しく靡く。
ワータイガーの両の爪を、押し込めるように切り結ぶ。
目の前でひしゃげていく爪。このままであれば、押し切れる。
そう判断したレイチェルであったが。
意味ありげに喉を鳴らすワータイガーに対し、内心首を傾げるレイチェル。
そういえば。
最初にテーブルを切り刻んだあの攻撃、あれから放ってきていないが――。
そんな思考に辿り着いたまではよかった。
だが次の瞬間には、既にパチリ、と。
目の前で黄色い電光が迸っていた。
間髪入れず迫る、雷の斬撃。
「こいつは――!」
洒落にならねぇぞ、と。
そこまで口にすることなく、切り結んでいた力を抜き、
後方へと大きく飛び退ろうと――
「――時空圧壊《バレットタイム》! ぐ、あっ!?」
異能を発動する。
遅くなった時の流れの中で。
鮮やかな赤が、ゆっくりと迸る。
反応がほんの一瞬、遅れたのだ。
左の肩口が滅茶苦茶に斬り刻まれ、これにはレイチェルも、険しい苦悶の表情を浮かべる。
もし異能を使っていなければ、このまま全身がズタズタに斬り裂かれていたことであろう。
力強く床を蹴って、レイチェルは後方へ飛び退る。
今の一撃で、結構な血を失ってしまった。
引き伸ばせる時間は、長く無い。
そして次の一撃で、確実に奴を仕留めなければならない。
爪を破壊したところで、大した効果は無さそうだ。
ならば、決定的な弱点を狙わなければならない。
痛む左手はクロークの内に滑り込ませながら、レイチェルは目の前のワータイガーを
見やる――。
(あの目玉……一か八か、狙ってみるか……!)
狙えるチャンスは、ほんの一瞬。
タイミングを合わせて時間の流れを変えられれば、勝機がある。
失敗すれば、その時は――。
時の流れが、戻っていく。
呼吸を整えながら、レイチェルは魔剣を力強く構えた。
■ライガ > ふたたび、時の流れが引き伸ばされ。
しかし雷速の斬撃は、異能発動よりも一瞬早かったようだ。
電光の斬撃がゆっくりとした速度で、レイチェルの左肩を斬りながら通過し、後方へ奔り、消える。
射程自体はそれほど長くないが、鋭い剣爪ではなく、眼から発するというだけで、相当な不意打ちであった。
稲妻の後には、閃光と発熱により、ワータイガーの頭部がぼやけて。
先程チラリと見えたもう一つの目玉が、今度ははっきりと確認できるだろう。
其方は黒白の普通の眼球、黄色い目ほどの魔術的な効果はなさそうだ。
両の爪はゆっくりと砕け散り、粉々になりつつある。
こちらは脅威ではなくなったが、ふたたび目玉が靄の中に隠れる前に、決着をつけねばならない。
■レイチェル > 戻っていく時の中。
レイチェルは、右手で魔剣を横に構えた。
次いで、クロークの内から銀の装飾の施された小瓶を取り出し、その蓋を開ける。
中に入っているのは、聖水だ。勿論、急造のそれではない。
その聖水を、自らの魔剣の上へ流していく。
相容れぬ筈の聖と魔が、溶け合っていく――。
「Exorcizamus te,Immundus spiritus――《その悪しき魔の力、今ここに『我ら』が祓う――》」
魔剣は、聖水に触れた箇所から、蒼色の光を灯してゆく。
何とも、幻想的な光景であった。
前を見据える。
狙うべき物は確かに今、魔狩人レイチェルの目に。
「さあ、虎ちゃんよ。パーティーは――」
目玉に向けて、魔剣切り札《イレギュラー》を振りかぶる。
疾駆。
短い距離を、一瞬の内に。
「――此処で締めだぜ!」
そうしてレイチェルは、ありったけの力で以て、右手の魔剣を彼の目玉へと叩きつけた――!
■ライガ > 時が本来の速さに戻る前に、目玉にたたきつけられた蒼光の衝撃。
それはただの刃ではなく、聖と魔が融合した、在り得ぬはずの剣。
電光の斬撃がレイチェルの左肩を襲った時、一つ目の虎は軌道修正をするために次の雷撃を充填するところだった。
あの黒い大剣、それに未だ確認できない回避行動。
虎は、急ぐあまり冷却をせず、そのために大きな隙を自ら晒すことになった。
やがて、元通りの正常な時が刻まれはじめる。
次の瞬間、ワータイガーが見たものは、2つに分割され、徐々にずれていく視界だった。
その意味を理解する前に、聖なる力によって黄色い目が急速に光を失ってゆく。
黄と黒の靄が散り散りになって消え、数秒遅れて水晶玉のようなものがぽとりと落下する。
それは床にぶつかると、パキンと音を立てて割れた。
音に続くように、周囲のゆがんだ空間が元に戻っていく。
部屋はどんどん小さくなり、やがてしっかりとした、四角い洋間に戻った。
部屋の片隅には、木くずと化した家具の残骸。しかし先程の金属片や、放った銃弾はどこにも見当たらない。
と、足音が近づいてきて、扉口にライガが現れる。
相変わらず目はしょぼしょぼしているが、最初よりは幾分か楽になったように見えるだろう。
「どうやら、終わったみたいだね。建物の構造も元に戻ったようだ。
レイチェル、悪魔はどうしt…… うぉっ!?」
視線は、赤く染まっている左肩へ。
■レイチェル > 「一件落着、と……」
ワータイガーを斬り伏せた魔剣は、レイチェルが血振りの形で振るえば、その蒼の輝きを失う。
そのまま彼女はクロークの内に魔剣をしまい、砕けた水晶球を見やった。
そしてすぐに、異界化し、狂った空間が元通りになってゆく様を、右肩を竦めながら見やる。
壊した家具はそのまま。当たり前であるが、そうそうご都合主義のように事は運ばないのである。
「……ああ、ちゃんと祓っておいたぜ。ん? 何だ? そんなにじろじろ見て。
腕の怪我なら気にすることはねぇよ、放っときゃ治る。結構ズタズタに
されちまったし、血も使っちまったから、今すぐに再生、ってな訳にはいかねぇがな」
頑丈さがウリだぜ、と付け加えつつ。
■ライガ > あちこち、無残な姿の家具が転がっているが、整理は後ででもいいだろう。
心配無用と言わんばかりのレイチェルの態度に、目を伏せ、困った表情で返す。
「いやいや、こっちにとって大事だよ。
取り決め通り、報酬は出すけどさ、戦闘の詳細、後で教えてくれないか。
もしかしたらこっちの調査不足かもしれないから。医療費上乗せも考えるし」
ライガが捕獲を試みた当初は、斬撃といえば爪によるものだった。
それだって、あんなにギザギザな傷口はあり得ない。
何か見落とした要素があるかもしれず、その為に苦労を掛けたのであれば、何かしら増額はすべきだろうと考えた結果であった。
ともかく、この件は解決した。
報酬諸々の話は、後日になるだろうし、まずは応急処置のために、清潔な場所を探そう。
肩を必要とすれば、喜んで貸すだろうが。
■レイチェル > 「了解。奴の事については、また詳しく話すとするぜ。
また飯でも食いながら、な?」
医療費上乗せするくらいなら制服代だな、などと返しつつ。
「……肩は貸さなくても結構だぜ? っと……」
と、ライガの表情を見て悟ったのか、そう口にするレイチェル。
足元に落ちていた愛銃に気付き、それを右手で拾い上げる。
「次にやる時は、また色々準備が必要そうだぜ……聖水だけじゃなくて、な」
クロークの内に愛銃をしまい、最後にレイチェルはライガに右肩を竦めて見せたのだった。
ご案内:「異邦人街 異界化した個人事務所」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「異邦人街 異界化した個人事務所」からライガさんが去りました。
ご案内:「農業区 小屋」に雨宮 雫さんが現れました。
ご案内:「農業区 小屋」に鞍吹 朔さんが現れました。
■雨宮 雫 > 朔を匿ってそれなりに経っているが、まだ呪いは解けていない。
様子見しているだけでは無理か?そろそろどーにか考えるべきか、と考えながらご飯を作る。
そんなことを考えながら、キッチンでご飯を作る。
米をよく研いで水気をきり、米に油を入れてコーティング。
水気を切ったお米に、サラダ油を少量入れて、まんべんなく混ぜたら塩入れて、さらに混ぜる。
水を多目に入れた大鍋の中に米を入れ、先に水で戻してほぐしておいた干し貝柱を入れて強火にGO
大鍋が沸いて沸騰してきたら蓋をして、弱火にして約40分間しっかり炊き上げ。
米粒がひび割れて形が凸凹に崩れた状態になったら完成。
米のデンプン質が溶け出し、とろみのある美味しい中華粥になるのであった。
器に入れて、ザーサイとか乗せれば完璧。
あとは少し焼き魚とかオカズにして、お盆に乗せてー。
■雨宮 雫 > 「朔ちゃーん、ご飯だよーだね、だねー。
そろそろ具合もいいし、しっかり動けるようになろうだねーだねー。」
朔の居る部屋のドアをノック、然る後に華麗に開けて登場。
片手にご飯の乗ったお盆、片手に薬類の乗ったお盆。
どうやってドアを開けたのかは謎だが、とても楽しそうな笑顔を浮かべていた。
■鞍吹 朔 > 「すぅ……う、ん……」
寝息を立てる朔。時折うなされている辺り、安らかな眠りとは言い難そうだ。
眠りが浅くなっていたのか、ノックの音が聞こえればぼんやりと目を覚ます。
「……げほ。……あ、雫さん…?
………ん、しょ……」
姿を見ればぐっと体を起こす…が、途中で力が抜けて少しバランスを崩した。
どうやら結構参っているようだ。目の下にクマが出来ていたり、少し肌が荒れているようにも見える。
辺りに漂う匂いに、すん、と鼻を鳴らした。
■雨宮 雫 > 「…………あーら、良くない夢でも見たのかな、かな。
体は良くなってきてるんだけども。」
毎日診察しているので、体の具合は分かるのだが。
最近どうにも夢見が悪いのか、治り切らないようで。
魚と中華粥のいいニオイをさせながら、いつものようにベッド脇のデスクにお盆を二つとも置き、朔の顔を覗き込む。
睡眠不足のせいだろう、体の疲労が取れないようだ。
「風邪のせいなのかな、よく眠れないのは。
それともずっとこうなのかな、かな?」
■鞍吹 朔 > 「………少しだけ。すみません、早く治さないといけないのに。
どうしても、真夜中に起きることが多くて。」
そう言うと、何とか体を起こして座る体勢へ。
頭が少しゆらゆらしている辺り、結構な睡眠不足なのだろう。
「……風邪を引いてから、ですかね…。結構、毎日です。
そろそろ慣れそうですから、あまり問題でもないでしょうが。」
■雨宮 雫 > 「ボクは朔ちゃんのお世話できるのは嬉しいし、ココもたまには使わないと淀むからいいんだけどね。
治らないという観点からだと良くないかな、かな。
ご飯、自分で食べれるかな、かな?」
体が弱ると眠りにも悪影響があるのは分かる。
それとは別に、呪いのせいではなかろうか?という心配もある。
悪魔が悪夢を見せるなんてのは容易に想像できる話であるので……
「悪夢に慣れるってのも健康的ではないかな、かな。
どんな夢か聞いてもよければ、話してみる?
誰かに話すだけで楽になる場合っていうのもあるのだね、だね。」
■鞍吹 朔 > 「大丈夫です、頂きます。少しふらふらするだけですから、体自体は……」
そう言うと、中華粥を冷ましながら食べ始める。
少し熱そうな顔をしたが、大きく反応はせずに食べ続ける。でも多分舌とか火傷した。
「…………。私も、覚えてることはぼんやりしてるんですが……
白いんです。……黒い世界に、白い穴が空いてて。
私が今まで殺した人たちが、その白い穴に飲み込まれて。……黒を、削り取るように白が広がって。」
かちゃ、と音を立てて中華粥をお盆に置き、自分の手を弄る。
その手は、少し震えているように見える。
■雨宮 雫 > 「朔ちゃん、熱い時は冷まして食べなきゃ駄目かな、かな。
強引に食べても体に良くないからね。」
そんなコトに気を遣う余裕もないのか、と思うと眉間に皺が寄る。
余りいい傾向ではない。
「黒い世界を白く塗っていくような何か、と。
そこには朔ちゃんと、殺した人以外は出てこないのかな、かな。」
震えている手に視線を向ける。
んー と考えながら、その手に自分の手を重ねに行く。
ひんやりとした手で、朔の震える手を握ろうと。
■鞍吹 朔 > 「……すみません。」
ぼそりと謝って、目を伏せる。
普段の朔からは想像もできない態度である。
「……はい。私と、私が殺した人以外は、誰も。
私はどうすればいいんでしょうか。……どうして今更、こんな……」
そっと手を握られれば、両手で包むようにその手を握り返す。
温かい、普通の女子の手である。あまりにも普通だ。
「……呪いのせいなんでしょうか、これは。」
■雨宮 雫 > 「なーんにも謝る事はないからね。
朔ちゃんは、なーにも悪くない。今までも、これからも、何も悪くないから。」
手を、優しく握る。
握って、安心させるためにやんわりと笑う顔を浮かべて、言葉を続ける。
「大体は全部、呪いのせいかな。
呪いのせいで風邪を引いて、弱った体に引っ張られて心が弱って……
それで、普段は大丈夫なことが大丈夫じゃなくなって、夢に出ちゃった、とかかな、かな。
普段は気にしてないコト、何とも思ってないコト。
そういうのって実は心の底にドロっとした感じで溜まっていくものだからね。
そういうモノは、心が弱った時に上の方に浮かんで来るコトもあるからね。
夢に出てくるのは一番、多いパターンという診方もあるかな、かな。
朔ちゃんの罪悪感とか、そういうのだったりとかね。」
■鞍吹 朔 > 「………。いえ、悪いのは私です。……私なんです。
私は……。」
ぎゅっ、と手を強く握り返す。少し悲しそうな顔で、優しい笑顔を見つめ返した。
「……罪悪感…。そんなもの、今更何の役にも立たないのに。どうして……
……何だか、心に穴が空いたような気分です。今まではこんなことなかったのに。
……ごめんなさい。雫さんにこんなことを聞かせてもどうにもならないですよね。」
悲しそうな顔を再び伏せて、握った手を少しだけ緩める。
■雨宮 雫 > 「言いたい事があるなら、吐き出しちゃえばいいんじゃないかな、かな。
溜め込んでもいいコトはないからね、もう、辛いなら辛い、苦しいなら苦しいって言うだけでも、いいかな、かな。」
緩められたら、その分握る手に力を篭める。
傍にいることを主張するように、こちらに意識を向けるように、と。
心底、心配しているという顔で、朔を見る。
「前も今も、ずっとあったけど、浮かんできちゃったのなら。
掬い取って捨てるか、また沈めるしかないからね。
空いた穴は埋めるか塞ぐかしないといけないね……でも、とりあえず思ってるコトは全部もう、吐いてもいいと思うかな。
朔ちゃんは今は、一人じゃないからね?」
■鞍吹 朔 > 「…………。……わ、たし、は……」
ぼんやりと顔を上げ、宙を見る。
瞳は灰色に濁り、色のない色付いた世界を見つめている。
「………怒れないんです。
あの一件で、ものすごく怒って。生まれて初めて、本気で声を荒げて怒って。
……それ以来、怒れないんです。怒りは湧いてくるんですけど、どこか遠くて、ハッキリしなくて……」
握った手を胸元に寄せる。
一瞬、じわり、と朔の周囲の色が白く滲んだ……ような気がした。
■雨宮 雫 > 「何か、朔ちゃんの逆鱗に触れるようなコトを言われたのかな、されたのかな。
それはいけないね、良くないね…… 朔ちゃんをいじめるのは許せない―――ぅ?」
朔の目が灰色に…… それを気にするのと同じタイミングで、周囲の変化にも当然、気付く。
まずは呪いで朔に危害が加えられたのか?という警戒。
次に、朔自身のナニカによる変化であったのか、という警戒。
精神不安定な状態で発生するナニカなど、ロクなことではないから、だ。
「怒り過ぎて、メーター振り切っちゃったのかな、かな。
突き抜けちゃって、ちょっと修理中なのかもしれない……
心の不調は、体を治すことで……ぁー……く、薬飲もうか、朔ちゃん。」
手にかかる感触に、目を閉じて眉間に皺を寄せる。
こういった情動は維持してはいけないものなので、薬を理由にやんわりと、ゆっくり、手を引いていこうとしている。
■鞍吹 朔 > 「………わかりません。あの時はなぜか、自分でも自分がよく分からなくて……
………?どうかしましたか?」
間の抜けた声に、雫の顔を見る。
どうやら、本人はこの異常を認識していないようだ。
そして、何か奇妙なタイプの魔力を感じるかもしれない。
少なくとも、常人が普通に使う魔法や魔術で感じるようなものではない。
「そんな物なのでしょうか。……他の感情も、こんなふうに消えてしまうのでしょうか。
…………。…あ、はい。薬……」
手をするりと離す。服装が服装なので直に当たったのかもしれない。
そんなことに気付くはずもなく、投薬を待機している。
■雨宮 雫 > 「どんなのでもそうだけど、感情が振り切れるとそんなものだと思うかな、かな。
だからそれ自体は正常なんだと思うかな、かな。
ぁ、いやうーん……とりあえずは何でもないかな、かな。」
何ぞの魔術の暴発か、にしてはおかしい魔力波長だったし、そもそも朔が魔術や魔法を使うというのは知らない話だ。
朔の異能やスキルについて細かく突っ込んだわけでもないので、ちょっと保留する。
調べるなら、寝ている間にでもすればいい。
手からナニカを振り払うように、2-3度振ると、いつものように薬を混ぜる。
意図しなかったが、手や胸元に触れて体温は測れたし、調合に不安はない。
ゴリゴリ、コリコリ、と乳鉢で準備してきた粉薬を混ぜていく。
雫の視線は薬にだけ注がれている。
「消えてはないと思うかな、かな。
時間をかけるか、もっと早くには原因を取り除けば、帰ってくるものかな。
もしくは、怒りっていうものをもう一回、強く意識する経験をするとか……あぁ、他の強い感情でもいいかもしれないかな、かな。
だからまぁ、朔ちゃんは壊れてるわけではないから、そこは大丈夫かな、かな。」
■鞍吹 朔 > 「……そう、ですか。
……変ですね、これだけ普通じゃない生活をしてきたのに、今更普通だと言われて安心するなんて。
私は結局、中途半端な存在なんでしょうか。」
薬を混ぜる雫を見ながら、先程まで握られていた自分の手を動かす。
ひんやりと冷たい手だった。そんな、とりとめもないことを考えている。
「帰ってくるのでしょうか。……本当に。
いっそ、帰ってこない方が良いのかもしれないです。私にとっては。
……私に、感情などという上等なものは……。」
■雨宮 雫 > 「ボクの診断する限り、朔ちゃんは普通の女の子かな、かな。
何をしてても、朔ちゃんは朔ちゃんだし……
んー、エライ人の受け売りだけど。
人間なんて、いや、妖怪もだけど、半端モノだから集まったり離れたり、まぁ、世の中が動くんだって言ってたかな、かな。
だからそんなの、心配しなくていいかな。
好きなように、やりたいようにすればいいかな。
それを、ボクは助けてあげる、幾らでも。」
混ぜ終わった粉薬をレンゲに乗せて、水の入ったコップも合わせて朔へと差し出す。
薄く笑いながら。
「それは困るかな、かな。
朔ちゃんには美味しいものを食べさせたいし、遊びにも行きたいし?
それで楽しいとか美味しいとかも無かったら、寂しいからだーめ、だね、だね。
朔ちゃんは自分に価値がないと思うかもしれないけど、ボクはそうじゃないの。
だから、それは駄目かな、かな。」
■鞍吹 朔 > 「………………。はい。
…ありがとうございます。少しだけ、気が楽になりました。
……もう少し早く会いたかったですね、本当に。」
そう言って、レンゲと水を受け取る。
落ち込んでいるには変わりないが、それでも少しはマシになったようだ。
……また、ちらりと白い魔力が見えた。
「う。
……どうして、私にそんなに価値を見出だせるんですか?
友人だから、とは言っていましたけど…私が友人でもいいのでしょうか。
もっと友人にふさわしい人がいるのでは……」
薬を飲んで顔をしかめる。苦かったらしい。
そしてそのまま、自分を卑下し始める。悪い癖のようなものだ。
■雨宮 雫 > 「しっかり寝れるように、安眠できるお香でも焚いてあげようかな、かな。
あんまり香りのきつくないのあるから、後で持ってきてあげる。
怖い夢見たら、夢でもボクが助けてあげるから、穴を塞ぎにいってあげるからね。」
薬を飲む時に見えた白い魔力に目を細める。
しっかりと寝れるように手配して、今日は、眠った後に横についていようと思う。
悪夢を見るなら、その間にも変化が出るかもしれないし……魘されるなら、手でも握ってあげよう。
「そんな恥ずかしいコトを聞かれても困るのだけども。
トモダチになるとか、なりたいとかに理由とか要らないとか、きゃー、そんなこと言わせないで欲しいかな、かな。
朔ちゃんをどう思うかはボクの自由だし、トモダチになりたいのもボクの自由かな。
後は、朔ちゃんがそう思ってくれるかって話で、そう思って欲しいのがボクの願望かな、かな。」
きゃーやだーとか言いながら、わざとらしく顔を楽しそうにしつつ体をくねくねさせる。
絵にすると(>▽<) こんな顔である。
■鞍吹 朔 > 「………。ちょっとそのセリフはクサすぎるのではないでしょうか。
お香は……大丈夫なんですかそれ?そういう薬で眠らせた後にこっそり……というのはありがちだと思うんですが。」
大丈夫かなぁ、と目を細めつつも拒否する気はないらしい。
表情は相変わらずいつもの無表情のままだが、ちょっと嬉しそうではある。
「……………。
なんですかその顔と動き。別にいいですけど。
………私も、雫さんを友人だと思っていいのでしょうか。
でも、私は……面倒な性格ですし、顔も特別いいというわけではありませんし……」
■雨宮 雫 > 「まさかの駄目だし。
ボクはショックを隠しきれない、頑張ったのに。
何って言われても、恥ずかしいのを我慢してトモダチに心情を吐き出すトキにはこんな動きでもするしかないかな、かな。」
くねくねを止めると、やや真顔になった。
やや、だが。
「トモダチだと思ってくれるならボクはとても嬉しいかな、かな。
顔とかそんな気にするトコロではないと思うけども、ボクは朔ちゃんの顔も性格を悪いと思ってないから。
あと、朔ちゃんをどーこーしようと思ったらもうとっくにやってるかな、かな。
ボクはトモダチにはそーいうコトはしない、いい子だからね?ひひひ。
食べ終わったご飯と、薬を片付けながら、だからまぁ、とついでのように付け加える。
朔の顔を見ないようにしながら。
「辛い時や困った時は、いつでも頼ればいいかな。
どこにでも、助けにいってあげるからね。」
■鞍吹 朔 > 「恥ずかしがってるようには見えないんですが。……まあ、いいです。」
ふぅ、とため息を吐く。
「……ありがとうございます。
……その、何と言うか……よろしくお願いします、で良いんでしょうか。
…良かった。内蔵を取られたら今度こそ動けなくなりますから。」
こっそり=内蔵摘出手術らしい。ロマンスとかそういうのがない。
「そうですか。……頼らせてもらいます。
……ところで、何で顔を見ないんでしょうか。」
ふと浮かんだ疑問を放り投げてみる。
■雨宮 雫 > 「照れ隠しというヤツなので、今日は寝る前に憶えておいてねかな、かな。
はーい、よろしくお願いしますかな、かな。
朔ちゃんにそんなコトはしませーん。
解体するなら他をあたるから、安心してくださーい、 ひひひ。」
冗談を、返しているつもり。
朗らかに笑っているが、他をあたるという部分は冗談ではないけど。
「ぇ。
あー、うん。
これでも一応、ボクも感情がある健全な子だからね?
恥ずかしいから顔を見せられないケースだってあるかな、かな。
あ、じゃあ、お茶でも入れて、お香も取ってこようかな、かなっ。」
よく見ると、普段白い顔に薄ら朱が刺しているのがわかるかもしれない。
本当に薄く、だが。
それを見られたくないから、お盆を両手にしてそそくさと離れていこうとする。
■鞍吹 朔 > 「照れ、って……。まあ、何もしないなら構わないですけど…。
………。感情、あったんですね。」
ちょっと驚いたような顔をする。本気で意外だったらしい。
結構ひどい認識である。
「あ、はい。いってらっしゃい……。
…………。」
ぽけーっとしながらその背中を見つめる。
そして、こてん、と首を傾げた。
■雨宮 雫 > 「さっきから朔ちゃんがボクに酷いことを言うかな、かな。
ボクを冷血無情の解剖大好きマシーンだとでも思ってたのかな、かな。
あぁ、そうですとか言われたら泣くから止めてかな、かな。」
駄目だしからの二連撃に、もう泣いてもいいんじゃないかという顔。
口元が笑ってるが。
「今日、お香でよく眠れたら、明日は部屋を移動しようか。
学生街とかそっちの方にも部屋、用意できるから……
ぁ、ボクの部屋は寮に居る男子の嫉妬で抹殺されかねないのでゴメンしてねかな、かな。」
付けたしに、今後の軽い予定など口にしつつ。
白い長い髪の毛を揺らし、ガチャガチャと音をさせながらお盆を両手で持って部屋から出て行ったのであった。
■鞍吹 朔 > 「では黙秘します。」
そうですと言っているようなものである。
セメント対応もここまで来ると石棘レベルといったところである。
「はい、分かりました。
流石にここにずっと居るわけにも行きませんからね、情報収集にも不便ですし。何から何までお世話になります。
……嫉妬、されるんですか?」
朔にとっては疑問である。悲しいくらい自己評価が低い。
部屋から出て行く後ろ姿を、その背に揺れる髪を目で追う。
綺麗な髪だな、と感じた。
■雨宮 雫 > 部屋から出て行った後でちょっと泣いたかもしれない。
いや、嘘だ、こんなことでは泣かないが。
お湯が沸いたら、お茶と香をセットにしてお盆に乗せて帰ってくるだろう。
美味しいお茶を入れて、少し話して、リラックスできる香を焚いて……
眠るまで、眠った後も、傍にいるだろう。
■鞍吹 朔 > そんな気持ちもいざしらず、結局気にすること無く雫が戻ってくるのを待った。
その後、眠りについた夜。
少しうなされたが、雫の手を握ることで落ち着いたようだ。
結局、その夜は久しぶりに朝まで快眠した。
寝ている間に、特にうなされている時に、白い魔力がよく出ていることにも気付いたかもしれない。
ご案内:「農業区 小屋」から雨宮 雫さんが去りました。
ご案内:「農業区 小屋」から鞍吹 朔さんが去りました。