2018/11/16 のログ
ご案内:「青垣山・伊都波家古道場」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
暗くなった道場に明かりを灯し、妹の準備が整えられるのを待つ

いつもより少しだけ高い位置で髪を結って、少し冷え込んできた昨今には厳しいけれど、素足
最近は滅多にしない道着袴姿で、道場の真ん中に静かに正座する

辺りは静寂が支配している
ほんの僅かに早まっている鼓動がうるさく感じる程に

ご案内:「青垣山・伊都波家古道場」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 > 「おまたせ」

まるでデートの待ち合わせのようにそう告げて
姿は、いつもの制服だった
道着袴、ではない――

「……寒いね。もう、冬」

はーっと手を温めながら

伊都波 凛霞 >  
「そうだね」

言いつつ、制服姿の妹を見やる
……色々と考え積りもあるのだろう

「その格好で、いいの?」

声をかけつつ、片膝ずつゆっくりと立ち上がる

伊都波 悠薇 >  
「だって、委員会でいくんでしょ?」

既に、悠薇の頭の中には行っている前提で。
その場所での動きというのを求められていると解釈している
だからこその――制服……

「もう、武道は捨てたのに。姉さん、強引」

 

伊都波 凛霞 >  
「一緒に行くのを、お姉ちゃんが認めたら…ね」

本音は、悠薇が決めた通りにさせてあげたい
それでも危険な場所に無防備で連れて行くわけにはいかない
……当然のこと、だと思う

「強引なのは悠薇。
 私についていく、なんて言うんだもん。
 悠薇と一緒に行っても大丈夫なんだって、私にちゃんと思わせてくれなきゃ」

伊都波 悠薇 >  
「だって姉さんが、行くのを止めないから。止めないなら、ついていくしかないでしょ?」

心配だ。何か胸騒ぎがする。だから止めてほしいと行ったのに、それでも行くという。
なら――妥協案を提示するのは、当然のことだと思う

「認める条件は? 姉さんと同じなんて、私にはできないよ。だから、学校での条件は私に不利すぎる。もっと、具体的に提示してよ」
 

伊都波 凛霞 >  
「悠薇が自分で決めたことに頭ごなしに理由もなくダメだなんて言えないよ。
 危険だからやめなさいって行っても、それはそのまま言い返されるだけ」

妹だって自分を心配しているのだ
同じことを言うに決まってる

「自分で自分の身を守れるかどうか。
 もちろん私は悠薇を守りきって見せるつもりだけど、最悪なコトっていうのはいつ起こるかわからない」

そしてその場所は、それが起こる可能性も高いのだ

「私の攻めを全部いなす、避ける、耐える…どれでもいいよ、私から一本とったっていい。
 私に『悠薇なら大丈夫』って思わせること。それが出来なかったら、連れていけない」

伊都波 悠薇 >  
「曖昧だね」

ふぅっと、息を吸う。
曖昧だ、全ては、姉の意思一つ。
いうなれば、これは姉に有利な条件だ――でも。

「……クスリの取引のとき、こんな感じかも」

相手が有利な条件を出してきて。それでもどうにかしないといけない。
そういうことも――きっとある。だから。

「わかった。とりあえず、やろう」

寒い……ひどく、寒い……”空”な状態に今の寒さは堪える

「――いつでもいいよ?」

構えは、なかった

 

伊都波 凛霞 >  
……なぜだろう
妹は、悠薇は妙にクスリということに拘っている気がする
たまたまなのか、それとも

知るはずがないことを知ってるのか……

「…いくよ」

小さく呟き、道場の床を踏みしめる
その動きに加減のようなものは全く見えなくて

あっという間に、悠薇の眼の前には長い髪を弓のように撓らせた姉の姿

姿勢を低くした強烈な肘打ちが、鳩尾に向かって迅って──

伊都波 悠薇 >  
「鳩尾、肘打ち」

告げて、受ける。
避けたわけではない、避けられるわけがない。
なにせ向こうは天才で。自分の分も上乗せされていた”技”だ。
異能がなくなったからと言ってその経験値、体感が消えるわけじゃない。
衰えるわけもない
だから――ずらした。
鳩尾から少し――右。
急所からずれれば、少し下がって、インパクトを和らげるだけで――

「こほっ、けほっ」

軽微で、済む。まぁ、一発だけれど

「――ねえ、姉さん。あのさ……風紀委員になったのって、理由、あるの?」

言葉を口にしながら

 

伊都波 凛霞 >  
「──!」

急所を外した…わけじゃない。ずらした
それにあの呟きは、攻撃が事前に読まれていたことを示している

…長年、一緒に鍛錬を熟していたのだから、見られていたのだから
癖を見抜かれた、その可能性もあるけれど

「…喋ってると、舌噛んじゃうよ」

肘打ちの姿勢のまま身体を半回転させ、続けて放たれるのは、足刀
しなやかな脚が遠心力を得て、襲いかかる
───が、これは仕込み
受ける・逃げる、どちらを選択しても本命は逃げた方向、受けた方向と逆位置の、腕
腕取りからの絞めと極めを複合する、古流武術伊都波の技の一つ…絡み十文字
……悠薇の眼の前で使用するのは、初めてのはず、の技──

伊都波 悠薇 >  
「”絡み十字”」

名前は識ってる。何故か?
”調べてたから”だ
姉のこと、伊都波の技、業。あれから何もしなかったわけではない
人より、何もできないのなら。人より動けないのなら、人でできることができないのなら。
せめて、知識だけを得た。そのための――”空白期間”

でも――

(”過去”より、練度が高い!)

どうしたらいいかなんてわからない。でも――

どちらを選んでも、キマるのなら。

あえて”受けた”

「――カッ」

息が一気に腹から抜けるでも――しゃべるのは止めない。

「風紀委員じゃなきゃ、できないことでも、あった?」

 

伊都波 凛霞 >  
「(──何で、知って…?)」

蹴りは妹の薄いお腹を捉えて、くの字に曲がった身体の、その右腕を捉える
足刀から戻しの脚を肘へと絡め、その肩を極める

──このまま体重をかければ、圧し折れる

「──ふっ」

小さな息遣いと共に、妹の身体は宙に舞う
技を極めて尚関節を破壊しない、木の葉のように、板張りの床へと投げ飛ばした

「……理由は、きっと一つじゃないよ」

投げた後の姿勢を但し、立ち上がる
そこに拘りを見せる妹の言葉
多分、きっと
自分で気づいていない何かに、気づいている…そんな気がした

「なんで、そんなこと聞くの?」

伊都波 悠薇 >  
「――ふっ……」

極められた。あぁでも――そう。
きっとそこで終わりじゃないけれど――

これで、自分に肩は折れた
もう、右腕は”使わない”

――プランっと、右腕を脱力させて

「きっと色んな理由があるのは、わかるよ。でもさ、姉さん」

――姉さんは、普通じゃいけないところに、行きたがってるんじゃ、ないの?

そう告げてから。
また構えもなく、立つだけ

「――姉さんが、心配だから」
 

伊都波 凛霞 >  
「っ…!?」

右腕を脱力させる様子に一瞬カラダを強張らせる
折れてはいない、折ってはいない筈
──違う、折られたことにしたんだ、と気づくのに僅かな時間を要してしまう

「……考え過ぎだよ、悠薇。
 勉強も一段落ついたし、元々そっちの活動に興味もあった。
 この島で生きてきた人間として落第街の方面の治安はどうにかなって欲しいし。
 理不尽に死んじゃう人には、やっぱり減って欲しいから」

そこまで答えて大きく深呼吸をする

「……心配いらない、って言ってもダメなんだろうけど。
 私は悠薇が私についてくるほうがずっと心配……。
 攻撃を読めても対処できないんじゃ、落第街じゃ、きっと危険な目に遭う……。
 大怪我をするか…もしかしたら……」

命を、落としてしまうかもしれない
"次の攻撃"は放たれず、妹…悠薇と相対するように、立ち尽くしていた

伊都波 悠薇 >  
「ううん。違うよね。それは”建前”、じゃないの?」

そうなってほしいと思うのは――

「――イヅルにぃ」

――そう、一番心配するのはそこで。
そして、立ち尽くしているところに、追撃の一言

 

伊都波 凛霞 >  
「………やめよ。やっぱり、悠薇を危険なところには連れていけない」

目を伏せて、結った髪へと手を伸ばしてしゅるりとリボンを解く
長い髪がさらりと、重力に従って揺れる

「死んだ人のことを惜しんだって、悔やんだって帰ってこないよ。
 忘れることができるわけじゃないけど……。
 ……なんで急に、彼のことを?」

伊都波 悠薇 >  
「――思い出したんだよ」

ただそれだけ。でもこのタイミングということが不安だった

「だめだよ、姉さん」

――言葉はそのまま

「お寺に行こうとか、考えて、ないよね?」

辻褄が、合うのだ。あそこは禁止区域。風紀委員なら行けるようになる――
合法的に。そして――

「姉さん。姉さんを、私も危険なところには連れていけない。だって――今だって甘いもの」
 

伊都波 凛霞 >  
「……それは悠薇の考えすぎ」

小さく肩を竦めて、苦笑する

「お寺に行ったって、なんにもないでしょ?
 行こうと思ってたらもっと早くに行ってるんだから」

…甘い、と言われれば少しだけ困った顔
それは仕方がない、見極めようとしたとはいえど、相手は大切な妹なのだから

「だって悠薇相手だもん。頑張ろうと思ったけどやっぱり本気で技を極めたり、できないよ」

伊都波 悠薇 >  
「だといい。でも、ここは常世島だから。絶対とは言えないもん」

静かに、静かに――

「……クスリ。それ使えば、異能の力が膨れ上がる……」

それを使えばもしかしたら

「考えすぎかもしれないけど! でも、それでも!! だからこそ……っ、私は姉さんの安全を確保したいの。少しでも!」

だから――

「姉さんの、隣に、絶対立つ!!」

”できない”その言葉が、欲しかった。
なら、自分にはできる。名残のようなそれでも!

左手を構えた。そう、それは――

”毟り蕾”

打てなくなったはずのそれだ

「――絶対、一人でなんていかせないっ」

踏み込んだ。
普通よりも少し上。鋭い――
左下――斜めに切り込んで――間合いに、入り込む。

伊都波 凛霞 >  
「っ…!?」

少し高く構えられた、左手
その構えが意味するもの、放たれる技は…知っている

僅かに怯んだ
僅かに遅れたその反応の内にその技は滑り込む

───

………

……



静寂

静寂の中で二人は静止している
まるで恋人のように、打ち込んだ手といなした手、それらの指を絡めて

"技"を編み出したならば、対応する"返し"が同時に作られる
それが暗殺にも使われた古流武術・伊都波が一子相伝で在る理由

「……参ったなぁ…」

頬を汗が伝う
皮膚が凍えるような、冷たい汗

「…わかった、約束する。根負けしちゃったよ。
 独りでは絶対いかないようにします。…これでいい?」

くるん、と絡んだ指を組み替えて、指切りの形にして揺すってみせた

伊都波 悠薇 >  
「……はぁ―……」

つないだ手はそのままに、ぺたりと座り込む

「――よかったぁ……」

安堵したように息を吐いて。そして――

「……ねぇ、姉さん」

静かに

「今度、お墓参り、いかない?」

そう提案した

伊都波 凛霞 >  
「…ただし絶対無茶はしないこと。
 私が逃げるって行ったら絶対一緒に逃げる、いい?」

へたりこんだ妹に視線を合わせるようにしゃがみこんで、少しだけ強めにそう言葉を投げる

「…そういえば随分行ってないっけ。…そうだね、じゃ、一緒に行こうか──」

気がつけば時間も経ったものだと思う
忘れていたわけではないけれど、妹の言葉でまた強く、思い出した
自分たち二人の側からいなくなってしまった、一人の人間のこと

「…さ、立って、道場は寒いんだから。風邪引いちゃうよ」

少し手を引くようにして…そろそろお風呂空いてるかな、なんて考えながら

「疲れたでしょ。今日はもう、お風呂入って寝よう?」

伊都波 悠薇 >  
「それはお互い様だよ」

ふぅっと、息を吐いて。
少し甘えるように裾を引いて

「ん……賛成……おふろー……」

ぐうたらな言葉を告げて――ずるずると這うように――道場の外に……
 

伊都波 凛霞 >  
「(…お墓参り、かぁ───)」

そこにいるはずがないのに、といつしか避けるようになっていた気がする

その日は、久しぶりに二人でお風呂に入って…
お互いの成長ぶりを確認したりなんだり、したのかも、しなかったのかも……

ご案内:「青垣山・伊都波家古道場」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「青垣山・伊都波家古道場」から伊都波 悠薇さんが去りました。