2015/06/27 のログ
焔誼玖杜 > 「なんて言ったら……そう、ですね。
 自分がもう一人、そこにいるような……」

【曖昧な答えだったが、本人としてはそうとしか伝えようがなかった】

「だから、なんですけど。離れていても気配を感じることがあって。
 討伐されてなくて、まだ動き回ってるのがわかりましたから、まずはその事を伝えないとって、思ったんです」

【けど、必要なかったみたいですね、と溜息をつく。
 後は何を伝えればいいかと、頭の中を整理しながら、緊張を解くために一口ココアを飲んだ】

『玖杜に聞かれるわけにもいかないからな。
 ……しかし、その点に関しては、謝らせてもらおう』

【すまなかったな、と言いつつも、しかし、と続ける】

『今の映像は捏造ではない。捏造なら良かったのだがな。
 我が片付けられる事ならばそうしている。だが、我の力が及ぶのは、玖杜の近くのみ。
 ……娘をわざわざアレに近づけたいとは思わん。最悪、取り込まれかねんからな』

【娘、と云った時には、僅かに声が揺らいだか】

『一先ずの説明だ。詳しくはこれから話す。
 たしか日本という国には、神に二つの側面があるとしていたな。荒御霊と和御霊だったか。
 いうなればあれは、我の荒御霊に当たる。
 本来、どちらも玖杜の無意識によって抑えられているのだが、あの日玖杜は体調を崩していてな。
 その時にアレが外に零れ出たのだ。玖杜の持つ潜在的な欲求、魂の一部を喰らいつつな。
 我らの半身であるというのはそういう意味だ』

【そこで一度、様子を伺うように区切る。
 まずはこの関係性を知ってもらう必要があった。
 玖杜が今目の前で話しているのは、そういう意味なのだと理解させるために】

薄野ツヅラ > 「………そっか。屹度そう云うことならそう云うことなのねェ
 どうもありがと、生活委員とかにも話を回しとくわぁ」

にっこりと柔らかく笑みを浮かべる。
もう残り僅かになったチョコケーキを頬張りながら玖杜に目を向ける。

(解ればいいわぁ───……
 生憎ボクは神だろうが天使だろうが邪神だろうが興味ないけどぉ──……
 可愛い後輩が困ってるって云うことなら一肌脱がないこともないわぁ)

もしゃもしゃと最後の一口を口に運びながら、アイスコーヒーを流し込む。
甘いケーキの残り味が苦いアイスコーヒーに流されていく。
心地のいい苦味が広がる。
娘、と聞けば一瞬驚いたような表情を浮かべるものの直ぐに平然を取り繕う。
玖杜にのんびりとコーヒーのお替わりを促しながら、また瞑目する。

(ボクは具体的に何をすればいい訳ェ?)

にやり、口元を吊り上げた。

焔誼玖杜 > 「あ、はい。そうしていただけたら……。
 それと、私が遭遇したときに助けてくれた先生がいるんです。
 有澤零砂って先生です」

【と、そこまで話してから、コーヒーを入れに席を立つ。
 そのときの表情には、多少でなく安堵があっただろう。
 その姿を見送りながら《フサッグァ》は嘆息した】

『……助かる。
 貴様の事は、玖杜も随分と信用しているからな』

【そして何をすればいいかと聞かれれば、はて、と考えるように間を置いた】

『頼みたい事といえば、やはりアレの処理だ。
 我らでは、元が同じなために、接触すると何が起こるかわからん。
 最悪、玖杜の肉体や人格を奪われるかもしれん。
 だからこそ、信用でき、手段を持つ相手に接触したかったのだ』

【お前達は、一部とはいえアレを倒したのだろう? と、続ける】

『しかし、アレ自体はただのエネルギー体だが、知性を持っている。
 その上、炎や熱、人間を喰らう事で成長する。
 まあ、どういうものかは交戦したならわかっているだろう。
 放っておけば、アレはさらに力を知恵を持ち、危険性を増すかもしれん。
 今でもすでに、どの程度の力を持っているかわからん』

【恐らく、人間と同程度の知性は持っているだろう。
 そう付加えながら、《フサッグァ》は机を降り、ツヅラの前まで四本の足で歩いてくる】

『有効な手段は、それなりにある。
 物理的に破壊しようとしなければ、大抵のものは効果があるだろう。
 アレも玖杜と同様、寒さには弱い。大量の水をかければ弱らせる事も出来るかも知れんな』

【テーブルの上で、四つの足をかがめる。
 火の玉に浮かんだ、赤い瞳がツヅラを見上げるだろう】

薄野ツヅラ > 「ンー、伝えておくわぁ」

立ち上がる玖杜の背を見遣れば、ぼうと《フサッグァ》に視線を戻す。

(貴様とは随分失礼ねェ───……
 ………ええ、出来ないことはないわぁ。一時的にとはいえアレを退けたモノの欠片が此処に在る)

(───クロノスお嬢さんの、魔術の欠片が)

(知性が在ったとかないとか。そんなのは関係ないわぁ
 ただ、ボクはボクができることをやるだけだしぃ──……)

不敵に、あくまに不遜に嗤った。
寒さに弱い、と聞けば頭に叩き込んでいる公安のデータを引っ張り出す。
温度変化や、其れに準じる能力者の名前を思い浮かべる。
見上げる瞳を見下せば、一笑に付す。

(ボクを誰だと思ってる訳ェ──……?
 人間に害を為すなら、面白い事の邪魔をするなら慈悲なんて要らないしぃ)

焔誼玖杜 > 『……それもまた、焼け石に水かもしれんがな。
 閉じ込めるという方法も考えておけ。アレに溶かせず、逃げ出す隙間もなければ封じ込めも出来るだろう』

【そのままにしておけば勝手に力尽きるだろう、と。
 見下ろす瞳には、愉快そうな声を上げる】

『思った以上に、頼りがいのある娘だ。
 その調子で片付けてくれ。……ただし、死ぬなよ。玖杜が泣く』

【それは困るのだ、と言いつつ。目の前に小さな小瓶を召喚し、ツヅラに向けて転がした。
 小瓶の中には、細かく小さな炎がいくつも飛び交っている。
 そして丁度、そのタイミングで玖杜が戻ってきた】

「お待たせし――」

【ツヅラと対面している《フサッグァ》に驚き、危うくコーヒーを落しそうになった。
 まさか、ツヅラの前で動くとは思っていなかったのだ】

「……先輩、これはその、使い魔のようなもので」

【コーヒーを差し出しながら、席に戻る。
 ついでに《フサッグァ》の首根っこを掴んで、ベッドの上へと放り投げた。
 席について言い分けめいた事を言っていると、テーブルに転がった小瓶が目に留まった】

薄野ツヅラ > (こんなとこで死んでたまるもんですか────
 ええ、アドバイス通りにさせて貰うわぁ──……☆)

驚く玖杜に、ふんわりと笑顔を浮かべる。
慌てて云い訳をする玖杜を見遣れば、ぷふっと噴き出す。

「随分と可愛いペットねェ?
 頭も良いみたいで羨ましいわぁ」

焔誼玖杜 > 『べふっ
 ……死ぬなというのは、アレに限った話しじゃないがな』

【ベッドに放り投げられ妙な声を上げた。
 そんな《フサッグァ》を振り向きもせず、困ったような顔を玖杜は浮かべる】

「なんだか、すみません。
 ……それは、もしかして」

【また妙な物を出して、と、ベッドに転がる《フサッグァ》を見る。
 はあ、と溜息をつくと、小瓶に視線を戻した】

「それは、炎の精(Fire Vampires)を閉じ込めた小瓶です。
 小瓶をあければ飛び出して、ちょっとした炎を起こしたり出来るんですけど……」

『お守りのような物だ。
 例の怪異とやらには利きそうにないが、物騒な仕事をしているようだからな。
 魔除け程度にはなるだろう』

【そう、今度は全員に聞えるように声を発して玖杜の言葉を引き継ぐ。
 そしてまた、直ぐに頭に直接声を飛ばした】

『我の眷属だ。お前に従うよう言い含めてある。
 それと最後に一つ忠告だ。
 名は知るべきではないが……《狂気と混沌》には気をつけろ』

【それだけ云うと、《フサッグァ》は必要な事は伝えたとばかりに黙り込む。
 そして玖杜はどうしよう、とツヅラを見た】

「……なんだか、重ね重ねすみません。
 けど、話を聞いてもらえて助かりました」

【申し訳なさそうに、けれど感謝しながら、小さく頭を下げたのだった】

薄野ツヅラ > 「どういたしましてよぉ───…☆
 ……お守り?あんまり非科学的なものは信じない性質だけれど──」

手に取って、幾らか小瓶を弄ぶ。
チラチラと輝く其れは、とても安心感のある炎で。

「ありがと、そしたらこの辺で」

小瓶をポシェットに仕舞いこんで、にっこりとほほ笑む。
置きっぱなしにしていた杖に体重を掛けて、ゆらり、立ち上がる。

「───長居しすぎたわぁ。
 もし何かあったらまた連絡して呉れれば。
 先輩に任せなさいな、なんて」

かつり、杖をつく。
にっこりと笑って、その場を後にした。

ご案内:「女子寮/自室」から薄野ツヅラさんが去りました。
焔誼玖杜 > 「はい、その時はまた、頼らせてください」

【そう答えて、寮を出るまで見送ると、自室に戻って《フサッグァ》を掴みあげた】

「……なにか、変な事言わなかった?」

『ただの世間話をしただけだ。
 お前と同様、あの娘が気に入ったからな』

【だからお守りか、と思いつつ。
 再びベッドの上に放り投げ、名残惜しそうに、後片付けを始めたのだった】

ご案内:「女子寮/自室」から焔誼玖杜さんが去りました。
ご案内:「落第街の一角」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 倒壊した『門』の周辺から化け物が湧き出した—
触れると危険な虹色の液体が広がっている—
凄まじい衝撃が発生したので人的・物的被害が予想されるー

そんな趣旨の事が、混乱した時系列の元に飛び交い、落第街は大騒ぎだった。
遠すぎず、近すぎないこの辺りの住民のほとんどはあの『門』から遠ざかるべく非難しているが…無論、例外がある。

「…まだ事態の確認が出来ておりませんの…一旦、避難した方がよろしいのではなくて?」

公安委員の腕章を付け、たまたま落第街に居合わせた彼女も…慇懃に、そういった人間(如何にも裏社会の人間ですと言わんばかりの黒服の男達である)に避難を勧めていたのだが…

『やかましい!その間に俺達のシマを荒らすってんじゃねえだろうな!』

彼らは、聞く耳を持たなかった。

クローデット > クローデットは落ち着いていた。
『力』の流れを探知する魔術を発動させていて、事態が収拾に向かっている事自体は理解出来ていたからだ。
一方で、聞く耳を持たない風の男達の顔色は思わしくない。
ここに彼らの居場所(ホーム)があるのだから当然といえば当然だが…恐らく、事態の流れを、少なくともクローデット並には読み取れていないのは明白だった。

「荒らす?どのようにですか?
あたくしが、落第街の物品を漁るような浅ましい人間に見えまして?」

羽根扇子を広げて、口元を隠す。
落第街に相応しくない服装、羽根扇子で口元を隠してみせるなどといった、「上流」を誇示する振る舞い。
…そして、これ見よがしに巻かれた公安委員会の腕章は、彼らの神経を十分過ぎるほど刺激した。

『とぼけんのも大概にしやがれ…!』

男達が、一斉に武器を手に取った。

クローデット > ある者達は多種多様な刃物で斬りかかり、他の者達は拳銃を抜き放ち—
銃声がこだまし、続いて肉を切り裂く音が聞こえるかと思われたが…

シャラン…

銃声の後に聞こえたのは、鈴が鳴るかのような、美しく、高く微かな音だけ。
クローデットには、銃弾が撃ち込まれた形跡がない。
それどころか、刃物で斬りかかった者達が斬りつけた後の姿勢になっているにもかかわらず、クローデットの身体には切り傷1つ、ついていなかった。

『あ…?』

男達が、唖然とクローデットの方を見つめる。
クローデットの口の端が、きゅっと上がった。

クローデット > 男達には、大した異能も魔術も備わっていないようだった。
せいぜい、肉体強化くらいだろう。

(…まあ、複数人で1人に斬りかかって問題無い程度の連携だけは評価に値するかもしれませんわね…警戒対象として)

一応頭の中に書き留めておいて…斬りかかってきた者達の中で、一番近い場所にいた男の肩口に手を伸ばした。

「光の剣(エペ・ドゥ・レイヨン)」

すると、その手の先からレーザーのように光が発し、手を伸ばしていた方向にいた男の肩口が射抜かれた。

『あ…ああっ!?』

肩を射抜かれた男が、苦痛に崩れ落ちる。

「…『物理的な」荒事が苦手な人間の戦闘能力が低いなどと…よりによってこの島で考えるのは、浅はかにもほどがありましてよ?」

くすりと、羽根扇子の下で笑う。
魔術に長けた者が見れば…ゴシックロリィタという戦闘に不向きにもほどがある風情の彼女の服飾には、これでもかというほど魔具が仕込まれているのは一目瞭然だったはずなのだ。

クローデット > 男達が一斉に距離を取って身構える。
魔術師相手に距離をとっても仕方が無いが…物理攻撃がこの女には通用しないし、その理屈も未だに分からない。
その上、ほとんど詠唱無しで使える攻撃用の魔術を持っている相手に、下手に攻撃をして隙を見せるわけにはいかなかったのだ。
男達が固まって動けないままでいたところで…

「………まあ、今日は非常事態に免じて見逃して差し上げましょう。
またいずれ、公式に「お話を伺いに」あがりますわ。

…ここ数日は、落第街に委員会の出入りが増えるでしょうから、それまで大人しくなさる事をお勧め致しますわね?」

そう、花の綻ぶような場違いの笑みを浮かべて、クローデットは悠々と男達に背を向けた。
男達は、呆気にとられてその様子を見ている。

クローデット > (…男達が見張っていた表口に魔術が使用されている形跡無し、見張りの男達も大した異能・魔術を持っておらず、魔術に対しては無知も良いところ…
裏はどうかは分かりませんが、少なくともあの施設については「外れ」ですわね。

…それに、あんな「非常事態」とほぼ同時に大規模な荒事は出来ませんし。)

『門』が開いていた場所を見上げる。
騒動の現行犯は、行使された術の性質からあたりを付けてはいるが…調査は、また後ほどにしておこう。

(…まあ、「公式に」「正当な手段で」締め上げてこそ、煽れる憎悪もありましょう)

とりあえず、外れの部類とはいえ1つ持ち駒が手に入った。
足がかりにはなってくれるだろう。

クローデット > 男達の、得体の知れないものを見る不安な顔つきと…その奥に見える、ほかならぬ憎悪の目を背中から受けつつ…それを気にしない風で、クローデットはその場を後にした。

(その「憎悪」、せいぜい「拡散」しなさい。
…何倍にもして、返して差し上げますわ)

「憎悪」をぶつける先を増やすのは、もう少し先…。
期待に笑みを止められぬ口元を、羽根扇子でしっかりと隠しながら。

ご案内:「落第街の一角」からクローデットさんが去りました。
ご案内:「商店街」にサリナさんが現れました。
サリナ > ─ 商店街の広場 ─

(早く来過ぎたかな)
懐中時計を眺めながらそんな事を思っていた。
そういえば人と待ち合わせをしてどこかに出かけるというのはいつ振り以来だろうか。
少なくともこの世界に来てからはなかったような。

今私は、少し前に駅で再開した少女と待っていた。
列車の中で色々話して…それからどこかへ行く約束を取り付けたのだ。

しかし、彼女は終止おどおどしていたような、不安がっていたような…
もしかしたら迷惑だったかもしれない。もし来なかったらどうしようか……

ご案内:「商店街」にさんが現れました。
> きょろっと、辺りを見回す。
予想通りの不安を表情に貼り付けながら、誰かを探しているような様子。

こちらも、同じように来ているかどうかの葛藤と戦っているのかもしれない。

両手を組みつつ、徐々に待ち合わせ場所に近づく。
見知った顔を見つける。
嬉しそうな、安堵したような表情。
そこから、ぺこんっと、勢いよく頭を下げた。

サリナ > 時計の針は待ち合わせの時刻、丁度に差し掛かった辺り。
その時、目の前に待ち人が来た。

「椚さん、どうも」
彼女の礼に合わせてこちらも頭を軽く下げた。

「道に迷ったりはしませんでしたか?」
時間通りに来たのだからそんな事はないと思いつつも聞いてみる。
社交辞令?いや、これはどちらかというと心配とかそういう感じのものだったかもしれない。

> 「は、はいっ。大丈夫です」

緊張で息が上がっているのか、片手で胸元を押さえて、もう片手で手を振る。
待ち合わせの時間にたっぷり間に合うように、寮を出てきたのだ。
それがぴったりの時間になってしまったのは、不安と葛藤のせいだろう。

サリナ > 大丈夫との声に頷いてはみたが、よくよく見ると息が上がっている?
もしかしたら走ってきたのだろうか?少しここで休憩してもよかったが、どこかの店に早く入った方がいいかもしれない。

「では、行きましょうか。何か食べたいものはありますか?」

> そばまで行くのは気恥ずかしいのか、少し距離がありながらも、促しの言葉にうなずく。

「ん、と。今回は、先日のパンのお礼をしたいんです」

立ち並ぶお店を見回しながら、サリナへと視線を向きなおした。
ずっとずっと、守りたいと思っていた約束だ。
優しくされて、嬉しかったから。

駅で助言をくれた、あの先輩の言葉にならって、お店をひとつひとつチェックしていこうかと思っていた矢先の再会だった。
これはもう、率直に聞いたほうが早い。

「……サリナさんが食べたいものって、何ですか?」

サリナ > (パンのお礼…)
帰ってきた返事に思案する。菓子パン二つ分のお礼となると何がいいだろうか、
やはり同じパンでお返し?いや、よくよく考えてみると…

《ぐぎゅる~~》
お腹が鳴った。今日はまだ何も食べていないのを思い出す。
だったらがっつり食べられるものがいい。がっつり食べられて、お礼にもなるもの…
ラーメン…、ラーメンが食べたい。ラーメンが食べたい…が、ラーメン一杯ではパン二つの礼と釣り合わないだろう…

いや、釣り合う。いい事を思いついた。

「私、今、すごく、ラーメンが、食べたい、です」
なんとなく、有無を言わさぬ感じになったのは言った後に気付いた…

> 思案する姿に不安になる。
へんなことでも言っただろうか。

そわそわと、顔色を伺う。
と――
響くその音は……

ぱちくりと目を瞬かせた。
いや、笑ったらダメだ。
可愛いと言う感情から生まれる笑みであってもダメだ。
オンナノコにとっては、恥ずかしいことだろう。

聞いてませんでしたよ、とでも言うように視線をそらすと。
気迫のこもるラーメン希望。

そういえば、あの時も……
脂っこい物……ラーメンと、言っていた記憶がある。
好きなのか。
ならば。
こくんとうなずき、了承する。

サリナ > なにか、目の前の少女の顔がびっくりしたような、信じられないようなものを見た顔になった気がする。
もしかして、私の腹の音が聞こえたのだろうか…なんか気を使わせてしまってるみたいなので追求はしない事にする。

「よし、行きましょう」
とにかく了承は得た。いざゆかんラーメンの地へ…私達は歩き出した。
とりあえずは商店街の路地に入る。この辺のラーメン屋は行った事ない所も多いが、
今日は自分が食べた事のある店にしよう。

「この辺、ラーメン屋が多いんです。椚さんは普段ラーメンとか食べます?」
そういえばラーメン屋というのはあまり女性が出入りしていない気がする。
椚さんもそれに当てはまるのだろうか?

> てってこてってこ、サリナの後ろをついていく。
商店街自体も、通学で必要時に歩くだけ。
路地に入ること自体、ありえない。
おっかなびっくりと、不安と好奇心の含んだ視線で辺りを見回す。

「ラーメンは…………インスタント、くらいしか」
一人でお店に入れる勇気はない。
幼い頃、両親に連れられて入ったことがあるくらいだ。

サリナ > 「なるほど、インスタントラーメンを食べるんですね?私も好きですよインスタントラーメン。
最初にそれを食べる機会が訪れた時、お湯を入れて3分でできるという事に私、少し感動してしまいまして…」

と、ラーメンを食べに行く道中にカップ麺の話で盛り上がってしまう。
…もしかしたら私が一方的に喋っていただけかもしれないが、
そんなこんなで目的のラーメン屋にはすぐについた。

── 博多らーめん吉門 ──

「つきました。入りましょうか」
返事も待たずに躊躇なくさっさと入ってしまう。なんというか早く食べたかったのだ。

> よほど好きなのか、サリナの語りはとどまることを知らないようで。
それは、自身にとっては嬉しいことだった。
あまり話すことは得意ではない。
その分、人の話を聞くのが好きだったから。

相槌を打つだけで、逆に退屈させてしまうのではないかという不安もあったが。
いつの間にか店に着いたようだ。

先に入ったサリナを追いかけるように、店に足を踏み入れる。
熱気と……ラーメン屋独特の香り。
お店で食べるのは、いつ以来かなぁ……などと考える。

サリナ > 店内は狭い通路を挟んでカウンター席とテーブル席がある。
いくらか人は居るが、テーブル席が空いているようなのでそこに目星をつけつつ、入り口の横にある券売機の前に立つ。

「ここのラーメンはですね、豚骨ラーメンで麺が細いんです。他に塩とか醤油とか味噌もありますね
…私のおすすめはつけ麺ですけど、これは醤油と塩が選べまして、麺は太くて結構量があるかも」

とりあえず、つけ麺とライスの券を購入する。そして先程のお返しという言葉に対する返事も用意していたので今言う事にした。

「そういえばこの前のお返しなんですが…餃子、というのはどうでしょう?ラーメン一杯じゃ釣り合わないかと思いまして」

> サリナの説明を受けつつ、お勧めというつけ麺に心が揺れたが、量が多いということで、さらに揺れる。
出されたものは残さないようにと、家に教えだ。

んー…と唸りを上げていたところに、パンのお礼である餃子の件を出される。

「え……? 良いです、大丈夫です」
ぷるぷると首を振る。
「私一人じゃ、こんな風にお店にこられなかっただろうし……
誘ってくれたこと自体が嬉しかったので」

サリナ > 「では…お願いしますね」
肯定と受け取って券売機の前を譲って先にテーブル席を確保する為に歩き出した。
ああ、にしても早く食べたい。お腹が空いてもう死にそうだ。

そういえば椚さん、一人じゃ来られなかったと言っていた。
もしかしたらラーメン屋というのは女性が一人で入るのは躊躇してしまうものなのだろうか。
自分の常識は大体この世界に馴染んだと思っただけに些か衝撃だった。

> アレ、肯定と取られた。
ニホンゴムツカシイ。

首をことりと傾けて。
まぁ、また何かあれば。
と。
色々と悩んだ末、豚骨ラーメンにした。

> それと……餃子の券。
んーと、と、指先を動かす。

どのくらい食べるんだろうと、サリナの後姿を追う。
大目といいながら、つけ麺とライスを購入したはずだ。
案外食べる?

6個入りの餃子の券を購入。
足りないだろうか。

サリナ > 「椚さん、こっちですよ」

券を買ったのを見て取り、手招きする。
店員がテーブルに近づいて食券を取っていく…ついでに椚にも近づいて食券を受け取ろうと近寄っていった。

> 「は、はい!」

足りなければ、買い足せばいいか。
そう思い、呼ばれる方向に駆け寄り、店員へと自身の食券を渡す。

「ごめんなさい、手間取ってしまって」
サリナのお腹の音を思い出せば、相当お腹がすいているだろうに。

サリナ > 椚さんが席に座るのを確認すると水で喉を潤す。
さて、待っている間ちょっと暇なのでお話でもしよう。

「そういえばこの前聞きそびれましたが…椚さんはどういう授業を取っているんです?」
一般教科だろうか、異能学という線もありそうだ。家庭的な授業も取っているかもしれない…

> 同じように、水を口に含む。
問いには、一瞬考えて、
「……一般教科、ですね」

自身の異能の制御については、図書館でこつこつと調べる程度だ。
まだ何もつかめてはいないのが現状なので、いつかは取ろうとは思うのだが。
制御できなくとも、普段はこうして生活できるくらいには困っていない。

暴走……
という線も、ないわけではないが。

サリナ > 「なるほど、私もいくらか一般教科を取ってますが…成績は全然ですね。
この世界の勉学はレベルが高いです。科学には結構興味があったりしますが…」

思ったとおり、一般教科という言葉が出てきた。もしかしてそれだけだろうか?

「他には取ってます?何か変わった授業とか」

> 「私は……可もなく、不可もなく……ですね」
くすりと笑う。
誇るべき、地味な一般生徒。
人との間に、埋もれて目立たなければそれでいい。

「今は特に……」
ふるふると首を振る。
大丈夫。うそは言っていない。
こくりと、もう一口水を。

サリナ > 椚さんはここでは珍しく本当に一般的な生徒みたいだ。
しかしそれだけに留まるのは少しもったいないような…私としてはそう思ったので

「ふむ…ところで、魔術の授業とかに興味は?
私は色々そういう系統の授業を取っているので興味がありましたらいくらか話もできますよ」

と、ちょっと魔術に対する興味を引いてみようかなとそんな事を口走る。

> 「魔術……ですか?」

コップのふちを指先でなぞり、首を傾げる。

考えたこともなかった。
畑が違うということもあったが、目立つ行動を控えたいということもあって。
だって、人々の視線が怖いから。

「……例えば?」
なんとなく、話を合わせてみようかと問うてみる。

サリナ > なんとなくわかっていないような顔をしている。なら簡単な説明をちょっとしてみよう。

「例えば…獅南先生の魔術学概論とかは面白いですよ。この世界の魔術を学ぶ足掛かりにしましたね…
魔術がどういうものか、基本的な事等が学べるのがこの授業ですね。獅南先生は厳しい人ですが、為になりますよ」

言葉の途中で水で軽く喉を潤して続ける。

「あとはコゼット先生の元素魔術学もいいですね。元素魔術というのは火、水、地、風の力を利用した魔術でして…
ちょっと難しいかもしれませんがコゼット先生は優しくて、一人ひとりにとても丁寧な指導をしてくれるんです」

> 獅南先生と、コゼット先生……か。
広い学園の中で、まだ出会ったことのない先生の名前。

「サリナさんは、その先生たちを師事されてるんですね……」
説明するその瞳は、キラキラと輝いて見える。
眼鏡のことを話す時のように。

そうか、サリナは魔術を扱うのか。
今頃、気づいた。

眼鏡が好きな女性くらいにしか思ってなかったが。
だって、あれほど自分の眼鏡ですら丁寧に扱ってくれる。

「一般教科の成績がたとえ良くなくとも、何かひとつ……魔術が楽しければ、それは良い事ですね。
学ぶ原動力って、楽しいか、楽しくないか……それが一番重要な気がしますから」

サリナ > 「ええ、私、今が一番楽しいんです。知らない事ばかりで…
いつも、そのなんというかドキドキ?いえ、ワクワクでしょうか?そんな気持ちなんです」

椚さんは私と同じ気持ちになった事はないんだろうか?なんとなく、楽しくなさそうだった。
もしかして私の話がつまらなかっただろうか?それとも……

「椚さんは何か今、好きな、楽しい授業はありますか?」
口にした後で、なんとなく聞いてはいけない事のようにも思えた。

> 「好きな授業……」
意味もなく天井を見つめる。
あ、染みがある。

……いやいや、そういうことじゃなくて。

「特に考えたこともないです」
答えた後、なんとも面白みのない人間なんだろうと思ったが。
ふと思い出す。
「家庭科の授業は好きですね。
ものづくりって言うのか……昔から、一人でこつこつやるのが好きで…………でー……」
引きこもりでしたと公言しているようなものだ。

「あ、サリナさん、ラーメン、来たみたいですよ」
視線を泳がせていると、視界の端に注文したラーメンを持って店員がやってくるのが見えた。

サリナ > 考えた事もない、と言われ、本当にまずい事を聞いたかと思ったが、続く言葉で一先ずは安心した。

そうこう言ってる内に頼んだものが来たのでテーブルに目を移す。
話してて忘れられていたがかなり空腹なのだ。

「家庭科の授業ですか、椚さんは家庭的な方なんですね」
きっと、家では自分で料理をしているのだろう。
無精者の私は自分で作る事はほとんどないだけに尊敬できる。

「それじゃ食べましょうか」
早速冷たい麺を暖かいつけ汁に移すとずるるるッ!と勢いよく啜った。

> 「そこまででは……ない、ですよ」

気を使わせてしまった。
本当に、人付き合いが上手くないなぁと心中反省しきり。

「はい、そうですね。いただきます」
言うが早いか、サリナの食の勢いに圧倒されてしまう。
割り箸をもったまま、しばし見入ってしまう。

「あ、あの……これも、どうぞ……」
すす、と。
餃子の入った皿をサリナの前へと寄せた。