2015/07/19 のログ
ご案内:「女子寮・アリスの部屋」にアリスさんが現れました。
アリス > お部屋でもう直ぐお休みタイム。

と言う感じでもなく、テーブルには紙、ペン、そして今までにこの島で出会った主だった人物の特徴の書かれたメモ。

それらを前に正座して、真剣な顔で考え込んでいた。

「どうしましょう……題材。
ウ=ス異本系か、それとも風紀に目をつけられないようにすべくKENZEN(少年誌レベル)か…いっそ全年齢ギャグ本か…」

とうとう、同人誌を書くつもりである。

アリス > 「まず、題材として重要なのは、完全に本人そのままの名前は使ってはいけませんが、特徴と名前を似せる事でこれ○○ちゃんっぽくない?と同人誌の内容と出会った当人とを重ね合わせる妄想素材にも出来る事…但しギャグ本は除く。」

漫画やアニメの二次創作でも悪くはないけれど、残念ながら、その辺りは島の外の聖戦組に敵うかどうかと言われると全く自信がない。

ウブそうで老成しているあの角のあった先輩…?が一番色々使えそうだけど、見た目で言えば氷架さんやクルケイアー先生、コゼット先生、後猫カフェで妄想素材にしそこねた女の子も捨てがたい。さて。

アリス > いや、忘れてはいけない人もいたではないか。佐伯先輩にエリナ先輩にあと海で助けてくれた…名前を聞いてない先輩っぽい人に。

「うむ。どの方向性でも素材そのものは十分。
竿役…いや、いっそ百合物でカップリングを…。」

しかし、カップリングを作る場合は関係性として身近な方が妄想を生み出しやすくてナイスだ。
その点、解っている範囲だと…氷架さんとクルケイアー先生と芙蓉ちゃんの三人の組み合わせが宜しいか。

その場合は…彼氏が浮気、或いはその疑いでおしおきとして零おにーさんには序盤で縛られて貰ってみている前で絡む…?…ひと捻り欲しい。

アリス > しかし、一捻りの前に先のネタだとまず間違いなく私がズンバラリンである。
…関係性を入れたネタは没にせざるをえないか。

次は…昨日猫カフェで出会った二人。
もしあそこで電話が来なければ、の続きを妄想で補完して…。
酔っ払った女性も巻き込んで…こちらならばばれてもズンバラリンは回避できそうだろうか。しかも猫に責められるシチュはなかなか良い。服の中で起きているから反応だけならKENZENですむ。こちらの案採用だろうか?

メモをカリカリカリ、と書いてネタを確保しておく

アリス > うん、いい気がする。生徒会のえんじょーじ先輩が生徒会の他の会員にまわされ系も閃いたけれど、生憎他の生徒会の誰かを知らない為廃案。

よし、じゃあ猫案で早速軽くシチュエーション部分だけネームを描いてみよう。

まずは猫カフェに入るシーンから…。
原稿用紙にまずは導入から…電話口の語り口から、最初はツンツン系、いや…不敵系?…こっちの方が映えそうか。ツンデレで猫にだけデレるのも捨てがたいけれど…

酔っ払ってた女性は教師っぽかったから呑みシーンから…金曜なのに飲み友達も無く、1人で居酒屋梯子してって言ってたし、使おう。絵柄は特徴だけ似せてデフォルメ多めに…

アリス > 軽くコマ割入れて大雑把に輪郭入れて吹きだし描いて、…

導入シーンを長めに取るかは難しい所だけど、猫カフェ前の日常を少ししっかりとって、猫カフェで変貌するギャップで引きこむ構成は悪くないと思うし、猫にぺろぺろセクハラされても強く出れない、猫プレイ中に店員さんにも言い出せない理由がはっきり出る。こっちで行こう。

そして猫と交流して癒されてるシーンも取って…。これは…二人ともがお互い猫と遊んでいるだけ、と印象付けておいて、後で猫プレイに入ってももう一人も居て恥ずかしい、とした方が、うむ。恥辱系のも入って宜しい。

さて、後は本命のシーン…。猫がまず女の子のジャージの中に入り込んで女の子が自分からジャージの隙間に受け入れるシーン……そして猫がぺろぺろし出す所は……恥じらいと戸惑い多めかな?うん、これで…

どんどんメモとネームを描きあげていく。

アリス > 酔っ払っている女性の方は酔いが回りすぎてこの際、ともう一人を一時的に忘れて慰めて貰おうとする感じだろうか。

一人ぼっちで辛くて癒しと慰めを性的にも求めてしまう教師……猫に。ふむ、あり。

こちらは壁に体を向けている分大胆に…店員さんも同情してそっとしておく感じで…

よし、いけるいける。

ここまでをしっかりネーム入れて…よし、多分悪くない。

このまま猫が舐めて下着をずらして直接…だとウ=ス異本ルート。下着がネコの唾液で濡れる程度ならKENZENルート、どちらが映えるだろう?

両ルートネームだけ描いて比べてみるのもいいけれど…万が一本が明るみに出るとウ=ス異本ルートはまずい?KENZENルートで描くか…ウ=ス異本ルートはKENZENルート描いて余裕があったらにしよう…。終わりは店員さんが時間で呼びに来て、猫プレイにはまってリピーター化か…この辺は下書きも入れて実際に読んでみてから考えよう。

今日はそっと片付けて、合間合間で仕上げれば…

さぁ、後はこれが仕上がって製本して、売り物として刷れた後、どこで売るか。
まだ決まっていない事が多いけれど、今夜はおやすみ、なさい。

眠る前に、思う。この島、夏の聖戦、あるのかな…?

ご案内:「女子寮・アリスの部屋」からアリスさんが去りました。
ご案内:「天津重工本社ビル」に『七色』さんが現れました。
ご案内:「天津重工本社ビル」から『七色』さんが去りました。
ご案内:「天津重工本社ビル」に『七色』さんが現れました。
ご案内:「天津重工本社ビル」に五代 基一郎さんが現れました。
『七色』 > 天津重工。日本が誇る重工業の一つ。
近年ロボット工学の分野で目覚しい成長を続けており
特にアンドロイド用のボディパーツでは他の追従を許さないとまで言われるほどであった。
……だが、その威光も今や昔。
違法演劇集団"フェニーチェ"の大口スポンサーであることが明るみに出たため、厳しい追求を受けることとなった。
解体か、吸収合併か。時刻にして夕暮れ18時過ぎ。
地下30Fロビーにおける経営陣の記者会見の席で、事は起こった。

『七色』 > 「ごきげんよう皆様。はじめまして。」
「私、フェニーチェの女優を務めておりました。」
「『七色』と申します。」

本来経営者が座るはずの中央に陣取って、彼女は続けた。

「最後に一旗あげようと思い、一念発起致しまして。」
「このビル最下層にエネルギープラントがあるのはご存知ですね? そうですね?はい。」
「日付変更を合図に、オーバーロードして粉微塵となります。」

突然のことにざわめく記者団。平然と中に割って入る銀髪の女。
中継用のカメラを掴み、その整った顔立ちで覗き込む。

「止める方法がないわけではないのだけれど……。」
「……それは少し無理かなと思うのね。」

突如として自らの首元にナイフの刃を押し当てて、一思いに引き抜く。
噴水めいて飛び散る鮮血のも中央で、女はくるりとまわり、嗤った。

「私が死ねば止まるのよ。」
「でも私は死ねないの。」

「この放送を見ている誰でもいいわ。」
「早く私を止めにいらっしゃいな。」
「金も名誉もいらないわ。」


「さあ、私に"死"を頂戴。」


女は中継が中断されるまで、狂ったように嗤い続けていた。

ご案内:「天津重工本社ビル」に『美術屋』さんが現れました。
ご案内:「天津重工本社ビル」にレイチェルさんが現れました。
『美術屋』 > その中継が終わるや否や、この会社が生みだしたアンドロイドが
動き出す。仕込んでいた無人のドローン。
それを、操作できるだけ。すべてを稼働させる。

――選別。派手な演出。背景。
――前座。

今回の美術は、七色の望みを叶える、望みを打ち砕く
戦士の選別。一番彼女が輝いて完成させるその――色を選ぶ。

すんなり通っても面白くない。
だから――

『彩るよ、舞台美術。だから、踊ってよ。ただの鈍色に呑まれない、輝きを、彼女にふさわしい輝きを放ってよ』

ビルの隔壁を起動させる。
落とす落とす。時間稼ぎ。
ぎりぎりのほうがお好みか?
それとも――

――さぁ、キミたちはどんな色を見る。それを彩ろう――

――人生は、舞台だ……

五代 基一郎 > 前日に届いた何者かによる風紀公安への招待状のような犯行予告文。
如何なるものか考えあぐねられていたが
それはその翌日、実体として我々の前に姿を現した。

夕方に突如起きたビルの乗っ取り事件。
要求がどうのという問題ではない。
これはもう凶行としか言いようがない者だった。
そう、今回の首謀者であるフェニーチェの演者『七色』の要求は
自らの死としか思えない発言。

前日の件があってか動くのは速かった。
案件が案件のため、風紀からは選抜された人間であるレイチェル・ラムレイと
特殊警備一課の人間が出動を要請された。
合同捜査ということもあって公安からも実働部隊が出されている。

予備的に指揮も執ることとなった第二小隊長五代は
今特殊警備一課が保有する硬式飛行船『マリア・カラス』の艦橋にいた。
隊員、レイチェルは既に大型の兵員輸送兼攻撃ヘリ『ベッコウバチ』に搭乗するような
抱えられる形で現場である天津重工本社ビルに向かっている。

通常の攻撃へリや偵察ヘリよりも大型であり、ガンシップよりも小型でもあるが
特殊警備一課が装備している特殊装甲アーマーの重量を加味すれば四人
一個隊がせいぜいの運搬となるわけだが。

『マリア・カラス』から発進した『ベッコウバチ』五機の中の一機に
『ブラスレイター』に搭乗するレイチェル・ラムレイの姿もある。
バイクの重量との兼ね合いもあり『ベッコウバチ』両脇に兵装ポッドが隊員の代わりに保持されている。

「レイチェル、聞こえるか。インカムの調整は出来ているようだな。
 ドロップゾーン、天津重工本社ビル屋上まで
 あと少しだ。作戦は簡単だ。風紀は屋上から突入。
 尚ビルの管理会社へシステムの明け渡しを要求したが何者かに乗っ取られたかでこちらからの制御は不可能だ。
 妨害は十分に考えられ、また『七色』以外のフェニーチェの団員がいると思われる。
 全員に伝えるが妨害、並びに脅威は実力を以って排除しろ。
 道中は臨機応変で対応。目標は最下層にいる『七色』、以上。」

ヘリのローター音が風を切り裂いてビル群の上を飛びすさぶ。
天津重工本社ビルに近づけば徐々に減速をはじめ、そして
隊員たちを固定していたリグを解放していく。
固定リグから解放された隊員たちは続々と本社ビル屋上へ降下、着陸していく。
レイチェルの乗るブラスレイター、そして兵装ポッドも降下というより
投下と言う形でビル屋上へ解き放たれた。

『七色』 > 「どうだ? I-RIS、中の状況は。」

≪駄目です。中の状況がまるで見渡せません。≫
≪恐らくは強力な異能力者が妨害しているのでしょう。≫

「そいつを無力化したらどうだ?」

≪無力化できれば問題ありません。≫

「よし。」

公安が誇る超性能AI、I-RIS。
彼女の性能を持ってしても、本社ビルへの介入は不可能だという。
隊長格の男は向き直り、軽く作戦のおさらいに入る。

「みんな聞いたか。サブオーダーが入った。」
「I-RISの介入を阻むほどの異能の持ち主が相手側にいるらしい。」
「恐らく制圧するにあたって、そいつも直接妨害を仕掛けてくる。」
「風紀の奴らとどちらが早いかってトコだが、俺たちもそれなりに荒事には慣れている。」
「目にモノ見せてやれ。"あいつら"にも、"あいつら"にもだ。」

立てた親指を上に向け、下に向ける。
隊長格の男の鼓舞に沸き立つ面々。
その中に常世学年一年生。ギルバートの姿もそこにあった。
彼の頭上には、『ベッコウバチ』が高く旋回する。
手元のPDAですばやくメッセージを打ち、突入準備へと走る仲間らの後を追った。

あて先はレイチェル・ラムレイ。
内容は "Good luck =)"
酷く単純なものであったが、それだけで十分だ、と天高く突き立てた親指を掲げた。

レイチェル > 「あいよ、シンプルな仕事は嫌いじゃねーぜ」
そう言って、インカム越しに五代へ向けて応答する。
「何者かに乗っ取られた……ってことは、それなりの技術者が控えてやがるな。
そいつが此処に居るかは分からねーが……ま、ここは何せあの天津重工本社だ。
とんでもねぇお出迎えが待ってるかもな」
そう口にしながら、手元のリボルバー拳銃を眺めて構えたりなどしながら、降下を待つ
レイチェル。


「まるで戦争映画だな」
特殊装甲アーマーを纏った風紀委員特殊警備一課の面々の様子を見て、そんなことを
呟くレイチェル。彼女自身は普段通りの、制服とクローク姿の為に非常に浮きだって
いるように見えるに違いない。彼女は重苦しいものを着て立ちまわることを好まない。
自前の異能や、再生能力もある。過剰な装備は逆に足手纏になるだけなのだ。





屋上への降下はスムーズに行われた。全ては事前の計画通りに。

ブラスレイターと共に屋上へと着地を行ったレイチェルは、素早く機体から降り、
ブラスレイターに搭載されている武装を自らのクロークの内に仕舞いこんだ。

「必要だったらまたこちらのシステムから呼び寄せる。とりあえずはここで待機、だ」
そして最後に、自らの愛機に向けてそう呟いた。

■AI>「ラムレイ様、ご武運を」
無機質な機械音声が、人間の青年の声を模した無機質な機械音声が、建物内部への
突入を開始するレイチェルの背後からかけられた。


建物内部へと突入する直前、機械化されたレイチェルの右目に、空中に浮遊する
メッセージ着信画面が映る。

「こんな時に何だよ……」
意識すれば、メッセージ内容がレイチェルの右目の視界に直接表示される。
送信元は、ギルバートのPDAからだ。

『Good luck =)』

レイチェルは肩を竦めて、特殊警備一課と共にそのまま建物内部へと駆けていった。

五代 基一郎 > ■隊員>「こちら一班、そこかしこの防壁が下りてます。」

時間稼ぎのつもりか、焦燥させることに意味を持たせているのかという具合に
防災用の隔壁が道を塞いでいる。

■隊員>「排除できる障害ではありますが、これに時間を取られてはみすみす爆破を許してしまうな……」

隊員二人が隔壁等破壊、強行突入用の斧にて隔壁を両脇から殴り
破壊して蹴破って進むも一区画ごとにこれをやられているのだ。
丁寧に一枚ずつはがして地下30階まで行こうものならその間にこのビルが無くなっている。

■第一小隊長>「施工当時の設計図のままなら、その一つ先の区画にエレベーターがある。それを使いましょう。」

報道機関に対する報道管制の通達を終えて、艦橋の指揮所に戻れば
第一小隊長と共に管理会社から取り寄せたビルの施工図と
デジタルで管制された隊員らのビーコンが重ねられた
データマップを前に指揮に戻る。

「聞こえたか、レイチェル。その次の区画にあるエレベーターシャフトで地下30階まで降下だ。
 エレベーターは使わず、エレベーターシャフト内を降下することになる。
 中々ない体験だ、気を付けてくれ。そこにも何かいる可能性は否定できないからな。
 何せ逃げ場がない。」

レイチェルを先導する隊員が隔壁を破れば、エレベーターが二つ併設された
区画にでる。
隊員が磁力を発生させる特殊な取っ手器具をエレベーターのドアに貼り付ければ
そのまま左右に開くように引っ張り、エレベーターという箱がない
地下三〇階まで直通の一本道が顔を出す。

■第一小隊長>「一班から突入、決して銃は手放すな。」

「ビルの施工図から割り出した階層予測と現在位置の高度から階層を割り出す。
 三〇階まで一気に下れ」

一班、二班が向かって左側のエレベーターシャフトに入り込み
エレベーターワイヤーを掴み、滑りながら降下を始める。

三班、四班は右側のエレベーターシャフトへレイチェルを先導するように入り込む。
三班の一人がワイヤーとの連結したカラビナとザイルをレイチェルへ投げて渡し
降下を促しつつ滑って行った。
ザイルを腰回りに巻き付け、器具で止めれば降下するに十分なものとなるだろう。

『美術屋』 > ―――その光景を。
仮面をつけた、一人の男が。
どこか薄暗い部屋で。
起動した、電子機器の音が鳴るその場所で。
ただ”視ていた”……
もうひとつの世界から。そっと……


見たのはエレベーター。そこから下りてくる……

――トラップが起動する。
仕掛けていたのは、機銃。
熱感知。そこから連射されていく――
玉数は無数。速度を落とさず降り切れば
無事、一番下にも降りれるかもしれないが
一瞬でもためらえば、この舞台では動けない傷を負う。

そして、もうひとつは人の耳に障る高音の超音波。
蝙蝠型の奇機獣。
耳に残るそれは、一気に下りる行為を阻害する。

その”勇気”がないものはここで脱落だ。


そして一方。エレベーターではなくフロアのほうにももちろん
ドローンは展開されている。その数はひぃふぅみぃ
数えるだけでも面倒だ。そのすべてが武装されており
当然時間稼ぎを狙ったものだ。

――誰かが残って、小数を先に進めるか
――強行突破か
――それとも――

考える思考時間すら時間稼ぎになる。
ここは、風紀、公安の”現場”の判断力が試される。

さぁ――どうする?

『七色』 > 「ウォォォォ、祭だゼェ!」

カートゥーンめいた大腕の男が、馬鹿げた重機関銃を抱えて弾丸を吐き散らす!
タイプライターよりも大味で、ド迫力の効果音!

「ゴーゴー!」

      「バスクの後に続け!」

   「ハハハハ!」

「行くぜ行くぜ行くぜーッ!」


「「「「ウオオオーッ!!!」」」」


暴力的な"ノック"が、正面玄関の自動ドアを粉砕!
待ち構えていたドローンごとあっという間にスクラップの山と化した!
アリの巣に水を注いだかのように、更に現れる無人ドローンの群れ!
夜景よりも眩くて、喧騒よりも騒がしく。
一連の光景は全てリアルタイムでTV中継されており、繁華街の高層ビルの巨大モニタのいくつかは、大々的に情勢を伝えていた。

レイチェル > 突入と同時に、自らの右目に搭載されたネットワークシステムをオフラインにする。
ビルのシステムを乗っ取るような人間を相手取ることになるのだ。念には念を、だ。


小隊長の提案に頷き、エレベーターシャフトの前まで辿り着いたレイチェル。
五代からの通信には、ふっと笑って返す。

「いいじゃねぇか、昔から一度滑り降りてみたいと思ってたんだが、
 その夢が今叶ったぜ」

覗きこめば、まさに一寸先は闇、である。
その虚ろな穴を見ながら、レイチェルは腰に手をやった。

時は一刻を争う。一課の面々と共に、ザイルを伝って、降下を開始した。

暗がりの中、下へ、下へ、下へ。滑り落ちていく間に、レイチェルは右目の視界を
暗視モードへと切り替え――同時に、複数の機銃が彼女らへと向けられていることを察する。
同時に、超音波を発する蝙蝠型の奇機獣も襲い来る!
超音波に足止めを喰らい、滑り降りるのを躊躇えば、一瞬にして肉塊となるのは火を見るより
明らかだ。
周囲の状況を確認するレイチェル。機銃を全て破壊するのは、恐らく不可能だ。
現実的なのは――。


レイチェルは、自らが便りとしていたザイルを、抜き放ったリボルバーで撃ち抜いた。
ふわり、と。一瞬身体が浮くような錯覚を覚えた後、彼女の身体は凄まじい勢いで落下
を開始する。

「時空圧壊《バレットタイム》――!」
本来ならば、一瞬の内に、地面に吸い込まれるように落下していく筈のレイチェル。
しかしながら。
彼女の落下は、ゆっくり、ゆっくりと。
その速度を落として――

「邪魔くせぇぜ!」
両腕を伸ばし。二挺のリボルバーを蝙蝠型の奇機獣へ向けて全弾撃ち放つ。
曇った銃声が、シャフト内部に響き渡る――。



――そして、世界は時の刻み方を思い出す。


レイチェルの身体は、再び殺人的な速度で以て地面へと落下していく。
目前に迫る終着地点《デッドエンド》。叩きつけられれば、幾らダンピールのレイチェルとて
無事では済まない。
レイチェルは、掌を翳す。地の底へ向けて。

「衝撃《ブラスト》――!」
彼女が使う唯一の魔術。衝撃を操るその力で以て、まさに叩きつけられんとしていた床を撃った。
彼女の身体は上方向へ軽く吹っ飛び翻筋斗打つが、受け身は簡単にとれる。

「さて、あいつら大丈夫か……?」
蝙蝠の対処はした、筈だ。後は、そのまま滑り降りれば問題は無いだろうが……。
他の者の様子を窺う為に、レイチェルは上を見やった。

五代 基一郎 > エレベーターシャフト内部は一瞬にして処刑場に変わった。
密閉空間に近い中で機銃と、体内器官に訴える超音波を放つ無人兵器。
ただ突入する人間であればひき肉になるのみだが。

レイチェルを含む隊員達に浴びせられる機銃。
レイチェルがザイルを斬り放し、迎撃している瞬間。

隊員達はエレベーターシャフトのワイヤーから手を離す。
構えていたケースレス大型自動拳銃を両手で持つ。
自らを支えるもののないまま体をひねり、視線の先にある罠に向ける。
それはそれぞれ別の方向に向いている。誰がどの方に向ければよいかと体が覚えている。

そして、また機銃の雨の中で冷静に撃ちぬいていく。
機銃の弾丸がその体を穿とうとするも一瞬の明滅が起これば弾かれる。
特殊警備一課が専用に採用している特殊装甲。全身を包むそれは
対衝撃、対刃性で言えば対人火器を寄せ付けないものだがその特徴はシステム。
エネルギーシールドにある。それはエネルギー兵器や熱量、実弾をも一時的に弾くものだ。

もちろんバッテリーの浪費もある故に許容量もあるが、
自動的なリチャージ可能なためある程度把握していれば
自己管理が可能だ。

加えてフルフェイスヘルメットが外的に障害となる音、光なをど自動的にシャットアウトする。
攻撃行動が認められた瞬間にそれを弾く。

ワイヤーから手を離されて自由落下のままドローンを迎撃しつつ
目標近く、地下三〇階に近づけば壁を蹴り各々減速していく。

そしてレイチェルに続くように地下三〇階のエレベーター口に近づけば
壁を蹴りつけ止まり、エレベータードアを殴りつけてその入口を確保した。

■隊員>「クリア。地下三〇階に突入します。」

三班、四班がレイチェルに頷き
一班、二班が先導する。


一方飛行船『マリア・カラス』では事態の状況を掴みに掛かっていた。

■第一小隊長>「報道管制、どうなっている?この島全体に流れているぞ」
「報道機関には全て伝えて了承は取ってある。つまりそれ以外だな。」

それ以外。つまり我々の目の届く、いやそれ以外のものが何か関与している。
ドローンや機関銃の罠に関する管制もある。
『七色』の工作か、『七色』以外の団員……今回の工作を手伝ってる者が
この島では管理しえない……有り得ない、公的なもの以外の報道を可能にしているというのだろうか。

突入部隊との無線はオフラインになっている。
妨害を考慮してだが、どうなっているのか……

『美術屋』 > 朽ちていく、減っていく。
どんどんどんどん、時間とともに。
公安は強行。しかしその突貫力は絶大。

ドローンがオトリの一人に気が向けば
連携で動きを封じられる。

計算された動き。
荒事に慣れた指揮の動きだ

時間稼ぎにと置いたものは紙のように通過され
選別はなされず、まだ十二分な人数が残っている。

――ならばと、出したのは大型。

重工の最新技術と、最新火器を備えたそれで迎え撃つ。
そこにくわえて、魔術が作動する。

『What a piece of work is a man』

観客が、見たいと願った。
美術屋が描きたいと願った。
その、”感情”を糧に生みだす。
その傑作――

きっとこれは公安と、最高のショーを奏でることだろう。
抜ければ、最終目標までの道のりでここ以上の難所はない。
ならば――ここが一番の……


風紀の作戦指揮は素晴らしいものだった。
そしてその勇気もまた。
”知恵”と”勇気”……
あとは――

    ”実力”だ。

獣型――ライオンのような機獣。
数は、20そこらか。
仕掛けるのは、それが限界だった。
残ったメンバーで、何人が、どれだけの時間で抜けれるか。
背景を整えるのは、それが。限界だ。


とある個室で、尋常じゃない汗をかきながら
少年は、熱のこもった脳に命令を送り続ける。

「七色……キミの望んだ背景は、描けたかな?」

じっとりと蝕む汗に。
選ばれた者たち以外が、この先にいかないよう
さらにプログラムを走らせていく……

それにしても……

”死者”を出さないようにコントロールするのはなかなか、骨がいる。
でもやるしかない。そのための舞台美術だ

『七色』 > 地下10F。依然として先行突入した公安委員が、的確に場を収めていく。
隊員からリアルタイムで反映される情報が、I-RISを中心に公安・風紀両委員会の司令塔へと還元される。
3DCGで描かれたミニマップには、絵の具がキャンパスに広がるように、勢力図が塗り替えられていく。

「……頃合かしらね。」

レイチェルが隔壁を抜ければ、出迎えたのはエレベーターガールやホテルマンなどではない。
事の首謀者。銀髪の大女優。『七色』の姿がそこにあった。

「や、ごきげんよう。」
「あなたはどうか知らないけれど……私は、あなたに会いたかったわ。」

監視カメラが二人の姿を捉えて放さない。
その光景もまた、リアルタイムでの配信がなされている。

「風貌良し。気勢良し。おまけにこの島で生き抜くには、実力も申し分なし。」
「あなたなら、素敵なヒロインになれると思うの。」

色のない通路に色のない外観。
ただそこにいる『七色』だけが、有り余るほどに色を放っていた。
それは大女優だけが持ち得る風格か。
以前レイチェルが対峙した劇団員よりも、その圧は遥かに強かだ。

「どうかしら?」
「素敵だとは思わない?」

レイチェルの顔を覗き込むようにして、口元を妖しく歪ませた。

レイチェル > 「流石は警備一課、ってとこだな。噂通りの実力と装備って訳だ」
警備一課の動きを見れば、心の底から感心したのかそんな声をあげて、顎に手をやる。


やがて隔壁を抜ければ、レイチェルの眼前には一人の女性が立っていた。
先ほど見た映像にも映っていた、フェニーチェの『七色』であった。
映像越しに見た顔ではあるが、実際に見るのは彼女にとって初めてだ。

「……ヒロイン?」
手に握ったリボルバーを、いつでも抜き放てるように意識しつつ。


「何を言ってるのか分からねーな。フェニーチェへの勧誘のつもりか?」
妖しい美貌がレイチェルの顔を覗き込んだ。
対し、レイチェルは眉をしかめながら、視線は合わせずただ目の前だけを見ている。

五代 基一郎 > レイチェルと隊員達がそうして降下した先には
フェニーチェ最大の演者『七色』そしてライオンのような機獣。

『七色』がレイチェルに語りかければそれは指名なのか。
隊員らが動けば、機獣もまた動く。どうやら特殊警備一課の人間に当てられたようだ。
『七色』の邪魔をさせないための配慮か。ならばと
ゆっくりと『七色』から剥がすように動き……レイチェルへ隊員が手で伝える。

機獣はこちらで対処する、『七色』は任せると。
ライフル銃を背部のアタッチに回し突入用の斧を構えたり
ナイフのみに持ちかえたり
各々強化装甲の拳を固め始める。閉所での近接戦闘を想定したものへと変えて
別の区画入口近くまで分散させるように動いていく。
機械獣との閉鎖戦闘、しかも移動しながらで同数、それ以上の連中と戦うのは骨が折れそうだがやるしかない。

故に、一人が駆けだせば他の者らも戦闘態勢を維持したまま移動戦闘へ切り替えていく……