2015/07/31 のログ
■ビアトリクス > もう何もかも見なかったことにしてタブを閉じようか、
と思ったがビアトリクスにも野次馬根性はあった。
こんな貴重すぎる生放送次はいつ見れるかわからないしタイムシフトもあるかどうか。
ヘタしたら風紀の手が入るかもしれないし。
ミュートも解除して、ちょっとだけボリュームを上げる。
「……」
・男である可能性、の示唆
・どこかで見たような顔
・女装をしている疑いが限りなく強い知り合い男性
首を振る。
「ないわ」
何に対する否定なのか。
■ビアトリクス > 熱狂するコメント欄。エスカレートする配信者。
それらとは対照的に、化石のような瞳でビアトリクスは眺めていた。
「あーこれは完全に自慰ですねー」
無感動に野球解説者みたいな口調でつぶやく。
そうしているとディスプレイの隅にポップアップが表示される。
ビアトリクスあてのドリームランドを介したメッセージの通知だ。
数少ないフレンドのものからである。なんだよこんな時に。
Tokoyo school infirmary >>
いえーいビア君いまめっちゃ面白い放送やってるよ~! 見よ見よ~ www.live.tokotoko ~
『知っとるわこのビッチ!』
と書いて返信した。
* school infirmary:保健室
■ビアトリクス > 成人向けサイトならともかく。
ホシノカミの放送という未成年も観るメジャーコンテンツで
こんな卑猥なことやって大丈夫なのか、と今更。
「……」
卑猥と言えば、ちはやはこの間まで売春婦のことを知らなかった。
うっかりこんな放送見てやいないだろうな。見ていたらいろいろと歪みかねない。
まあ、あの携帯電話では生放送なんて満足に見れないだろう、多分。
■ビアトリクス > 放送の内容がクライマックスに至る直前で、タブを閉じる。
もう充分だ。
「どいつもこいつも色情に溺れたサルだ……」
昨日の自分のことは完全に棚に上げていた。
明日ドリームランドが忽然と消えてなくなってたりしなければいいが。
今見ていたのは悪い夢であった。そう思いたい。
ご案内:「ドリームランド」からビアトリクスさんが去りました。
ご案内:「《ドリームランド》」に緋群ハバキさんが現れました。
■緋群ハバキ > 抑えた照明の部屋の中、ノートPCから流れる映像を眺めながら一人の少年がスマートフォンを操作していた。
マットブラックのボディには刻印の一つも無い。画面に通知される飾り気の無いメール画面には、丁度紙飛行機が飛んで行くアニメーションが表示されていた。
煩わしげにそのスマホをマットレスが敷かれたのみのベッドの上へと放る。
ソレは安いスプリングでバウンドした後――既にベッドの上に置かれていた、彼が私用で使っている高耐久を売りにした端末にぶつかり、硬質な音を立てた。
「定時報告はこの間済ましたってのに……なんか焦ってんのか?」
先程返信したメール――日付と時刻だけが指定されたソレを思い返し、頭を振る。
『上』が何を考えていたとしても、ただ自分は己の仕事をこなすのみ。思い煩うのは己と己の周りの危機を察知した時のみとせよ。
幼少期より叩き込まれた鉄則は、少年の中で息づいている。
■緋群ハバキ > まぁ、今はそれはどうだっていい事だ。
チェックすべきは――
「……」
――改めて、少年はノートPCへと視線を移す。
島内SNS《ドリームランド》管理人の恒例となる生配信。
そのタイムシフト映像を見ながら、思わず少年は口の端を歪めた。
何処か皮肉げな色を見せる表情、モニターからの光を緋色の瞳が照り返す。
”ホシノカミ”の生配信の映像を見るのはこれで三回目。
回を追うごとに過激さを増す内容は、利用者たちに大きな反響を呼んでいる。
流れるコメントもそれに比例し、”ホシノカミ”本人への性的なそれの比率はうなぎのぼり。
「しかしまぁ……爛れてんなぁ」
場所は判然としない。豪奢な調度品を見る限り、どこぞの高級クラブの一室かホテルのスウィートか。
声を上擦らせながら切なげに制止を求める声――”彼女”の痴態を、記録映画の1シーンを見るような無感動な目で見ながら、そう呟く。
■緋群ハバキ > 過激さを増すパフォーマンス。
画面を埋め尽くすコメントを非表示にして、ため息混じりに身をくねらせる”彼女”を観察する。
脳裏に浮かべるのは一人の友人の顔であった。
自身に《ドリームランド》を薦めた少年。
数年前、日本本土で発生した大規模電脳ネットワークテロの重要参考人とされる人物。
未成年による犯行という報道も一時期はあったが、潮が引くかの如くその報道は沈静化した。
その去就を誰もが話題にすることが無くなり――彼は、常世島に来ていた。
たまさか出会った彼の顔。身体つき。骨格。そして声。
『仕事柄』、そして彼の経歴を知っていたが故に。その全ては概算だが概ね記憶している。
その記憶と、画面の向こうであられもない声をあげて情報配信と言う名の自涜に溺れる”ホシノカミ”は相似形を描いていた。
「爛れてんなぁ」
しみじみと、もう一度呟く。
無論、確証はない。”ホシノカミ”は己の身柄が詳らかとなるような愚を配信中に犯しているとは言い難い。
が、これまでに見た二度の配信に於けるギリギリの際を試すかのように所作。
そしてコメントの反応からの類推は、かなりの確度でその相似形がイコールを描くのではないかと、少年に告げている。
■緋群ハバキ > 画面の中では、”ホシノカミ”が甲高い声を発しながら《ドリームランド》設立にまつわる経緯を語っていた。
その言葉に嘘があるとは思えない。
が、小刻みに痙攣するその身体と僅かにマイクが拾った言葉は、間違いなく”彼女”が見られながらの絶頂を迎えた事を示唆してる。
少年は、なんとも言えないため息をついた。その手の趣味が無い人間でも掻き立てられるものがあるのは否定しない。
ましてやこれをリアルタイムで見ていた視聴者たちは何をか言わんや、だ。
さて。
「どーすっかな」
最早これは録画であり、過去に堆積した事物だ。
今更どうするという事も無い筈なのだが。
少年は、思案げに首を捻る。
己の『仕事』にとっても、個人的な目的にとっても。
この映像から類推された事実は、大きな利用価値があると言える。
■緋群ハバキ > 問題は、今後この痴態が埋もれ、日常という堆積物の奥底へと隠された後。
それを暴き立てるという行為の是非であった。
道義や倫理で考えるならば、己にそんな権利が在ろうはずもない。
そんなことは分かっているし、自身も友人にそんな事をしたいとは思わない。
だが――
「エージェントの獲得も急務なんだよねぇ」
ぼそりと、独りごちた言葉は。
夜闇に不意に照り返した、刃の煌きにも似た冷たい響きがあった。
■緋群ハバキ > ともあれ悩ましいのも確かであった。
少年は思考する。自分はほとほと、この手の行いに向いていないと。
冷酷なまでに情を切り捨てられる人間であれば、どれほど――
頭を振る。
自虐に染まりつつあった思考を振り払い、いつの間にかループ再生が開始されていた映像を見るともなしに見つつ。
「……これ、誰見てんだろな雄くん」
”ホシノカミ”の視線は時折カメラを外れていた。
その奥、つまりカメラの向こう側に誰かが居たと推測出来る情報は映像中そこかしこに存在する。
その”誰か”。
恐らく、映像を盛り上げる為――否、”ホシノカミ”自身を昂ぶらせる為に指示を出していた人間については、もう一つの気がかりと言えよう。
その正体を明らかにするのは容易なことでは無いだろうが、それを見極めるまでは下手に動くのはあまりにリスクが高い。
■緋群ハバキ > 憂鬱の種は消えず。
気掛かりな事は余りにも多い。
背負った錘は肉に食い込むのではないかと錯覚するほどで。
己に課した報いはいつになれば払いきれるというのか。
それら全ては、きっと自業自得なのだろう。
自らを嘲り笑いながら、モニターの光が薄暗く照らす部屋で少年はいま暫く、嬌声を聞いていた。
ご案内:「《ドリームランド》」から緋群ハバキさんが去りました。
ご案内:「ドリームランド」に薄野ツヅラさんが現れました。
■薄野ツヅラ > だらん、と脱力して。
華々しい2年目の学園生活の夏休み1日目は公安委員の仕事で潰されてしまった。
その憂さを晴らすように、随分と生活感の溢れる落第街のホテルの最上階で彼女はごろんとベッドに寝ころんでいた。
「ンッンー……これまた中々面白いコトしてたのねェ」
リアルタイムでは見逃したとある生放送をタイムシフトで視聴しようと、手慣れた様子でタブレット端末を操作する。
接続するのは『ドリームランド』、常世島内の情報収集には最適なSNS。
管理人が可愛らしいことにも定評があり、定期的に行われていた生放送は何度か視聴したことがあった。
■薄野ツヅラ > 開幕はごくごく普通の生放送に見えていた。否、普通だった。
時間が経過していくにつれて、段々と過激さを増していく放送。
始めは普段から愛用しているヘッドフォンをタブレット端末に繫いで聴いていた。
「…………、どういうプレイな訳ェ……?」
若干引いたような声音で、女の子が切なそうに、いじらしく喘ぐ様───ドリームランドの管理人、ホシノカミの姿。
「……公開アンケートならぬ公開───」
並ぶ言葉はドリームランド設立に関するもの。
随分とごもっともな言葉を、彼は理想を訴えかけてくるが、流れるコメントは其れを無視した内容。
其れは管理人のこんな姿を目の当たりにすれば話の内容なんて誰も聞かないでしょうに、とまたひとつ寝返りを打つ。
■薄野ツヅラ > はあ、と深く溜息を吐きながらタブレット端末の画面を眺める。
画面に広がっていたのは、ホシノカミのあられもない姿に声。
年頃の少年ならば目を惹かれるものであり──こう、中々にいいおかずにでもなるのではないだろうか。
自分が女でよかった、と思いながら仰向けになって両手でタブレットを持ち上げる。
「………風紀ガン乱れだけど問題ないのかしらぁ」
ぼんやりと画面を見つめる。
明らかに乱れまくりな風紀──乱れているのは画面の中の管理人もだが──を見遣って、ひとつ特徴的な笑みを落とす。
サイバー方面の犯罪、と云う訳ではないが。
犯罪と云うにもこう、怪しいグレーラインの放送の記録を見て、また溜息を吐く。
■薄野ツヅラ > 自分も中々な性癖をしているとは自覚しているが、此処までの露出癖と云うか───は相当の猛者だなあ、なんて。
実質夏休み一日目をこんな自堕落に過ごしていいのか、と思いながらもタイムシフトを流し続ける。
パフォーマンスが進み、段々と過激さを増す中でも表情を崩さずにただ眺める。
「………人に迷惑は掛けてないし、まァ」
ごろん、とうつ伏せに姿勢を変えて。
「いいのかしらねェ………先ずボクは面白いからいいけども」
此れを他の委員会の人間が目にしたらどうなるのか、と。
特に頭の固い委員会の連中が見たらどうなるのかしらねェ──と、どうでもよさそうに。
あくまで自分には関係ないこと。管轄外。
ただ面白いものを配信する人間が一人減ったりしたら厭だなあ、なんて思いながら。
ヘッドフォンを頭からゆっくりと外した。
■薄野ツヅラ > 「知ーらない!」
外したヘッドフォンと傍らのタブレットをぽん、とダブルベッドに放る。
夏休みも始まったばかり。頭の固い考え事をしている時間は勿体ない。
折角の夏、一日たりとも無駄にしてたまるか、と意気込みながら。
「………明々後日くらいから本気出すわぁ」
気だるそうにひとつ、呟いた。
ご案内:「ドリームランド」から薄野ツヅラさんが去りました。
ご案内:「カラオケ」に四十万 静歌さんが現れました。
ご案内:「カラオケ」に沈目言正(エルピス)さんが現れました。
■四十万 静歌 > 「ううん……」
どの曲を歌おうか。
それが問題である。
どれ歌おう、どれ歌おうと、
リストをみながら、
頭を抱えて考え込んでいる。
「言正君のほうは何歌うか決まりました?」
なんて、困った顔で問いかけるだろう
■沈目言正(エルピス) > 「ボクもまだかも……」
似たもの同士。
同様に選曲に悩んで考えている。
尚、タイムFreeもといフリータイムなので、時間に関しては余裕があるか。
■四十万 静歌 > 「うぅん。そうですね。
じゃあ、私から軽い曲でも入れましょうか。」
そういって曲番号を入力する。
流れてきたメロディにあわせて
「~~♪」
静かに軽やかに歌い始める。
歌う曲は恋の歌。
すぐ傍にいる大事な人へ恋心を届ける歌。
「~~♪」
ちなみに必然的に言正君が傍にいるわけだが。
■沈目言正(エルピス) > お姉ちゃんの歌声は、とても綺麗だと思う。
決して本職みたいな派手さはないけれど、自然と耳に入って頭に残ってくれる、優しくて柔らかい歌声。
それはボクがお姉ちゃんを知っているから、というのもあるかもしれないけれど。
……選曲にちょっとどきりとしたけれど、結構悩んでいたし、他意はあんまりない気がする。
歌いたいのを謳うがいいよね。
――くすりと笑いながら歌に耳を傾ける。少し楽しくなって、自然と身体が揺れる。
■四十万 静歌 > 身体が揺れるのを見てこちらも、
身体を揺らし身振り手振りも加えて歌うだろう。
「――♪」
やがて、歌い終えて一礼。
そして、
「やっぱり歌うのは気持ちいいですね。
こう熱唱しないといけないのでも、
落ち着いて歌っちゃうのは私の悪い癖ですけど。」
なんて、えへへと照れ笑いをして。
「次は言正君ですよ。
言正君の歌声聞きたいです。」
ね?と笑いかけるだろう。
■沈目言正(エルピス) > 「う、うんっ。お姉ちゃん程上手くはないけど……」
迷いながらも歌うものを決めた。
メロディが流れば、緊張を見せながらも歌い始めた。
……少し悲しげな、幻夢からの目覚め、夜を超える歌を選ぶ。
高めの音程に付いていきながら、しっかり声を張って歌う。
この身体になってから、高い声は出しやすくなった気がする。
「――♪」
そのまま、最後まで歌い切るだろうか。
■四十万 静歌 > ――心地よい歌声、だと思う。
女の子になったことで、
高音も心地よく響き、
思わず身体をゆらしながら、
頑張ってというように目配せをしつつ、
聞き届けて拍手する。
「上手上手、大丈夫ですよ。
凄く良かったです。」
とにっこり微笑む。
「もっと自信もって大丈夫ですよ」
とサムズアップである。
■沈目言正(エルピス) > 「も、もう……でも、ありがと、えへへ……。」
恥ずかしそうにはにかみながらも笑顔を向ける。
男性ボーカルの歌はちょっと歌いづらくなったけど、その分女性ボーカルの歌は歌いやすくなった気がする。
男性ボーカルの歌も、気にしないで歌っちゃうけれど……。
「それにしても、大分古い曲まであるんだねー……
最近の曲はあんまり分からないから、ちょっと安心かも。」
■四十万 静歌 > 「私もこれはもっと気合を入れていかないといかないでしょうか。」
なんて笑って。
「私も最近の曲はいまいち分からないんですよね。
中には好きな曲もありますけど、
――私には歌いきれませんし。」
なんていいながら曲を入力。
「ま、自分が歌って楽しい曲をいれていきましょう。
楽しむのが大切です。」
なんてふんわり微笑み、曲が流れてくるので、
「――♪」
やはり静かに歌い始める。
今度の曲は、
巨大な海洋哺乳類が名前になっている歌である。
切なく狂おしい曲。
――少なくとも静歌はそう考えて、
歌にそんな気持ちを乗せて歌う。
実際に恋などはした事はないが――
それでも、どうしてか、そんな気持ちが分かる気がして、
その想いを歌い綴る――
■沈目言正(エルピス) > 「あははっ、ボクも夏休みにお姉ちゃんと一緒に居た時に聞いた曲ばっかりかも。」
流れるメロディを聞けば、静歌お姉ちゃんの気合の入れ具合を理解出来た。
先程とは違った激しさのある曲を歌い切るお姉ちゃんが視界に映る。
気持ちを込めて熱唱するお姉ちゃんの歌声に、聞き惚れた。
曲が終われば、ふんわりと笑みを浮かべる。
「静歌お姉ちゃん、激しい曲を歌っても素敵かも。」
■四十万 静歌 > 曲を終えるとやっぱり一礼して、
ふんわりとした笑顔にほっと癒されながら、
マイクを渡すだろう。
「まぁ、それでも、精一杯力の限り歌えたら、
それでいいのですよ。
それだけで楽しいものです。」
ね?とウィンク。
「激しい曲を歌っても素敵とかいわれると、
その、照れちゃいます。」
なんて、赤くなったり。
「――力を入れて歌えないけど、
力を入れて歌う歌は好きなんですよね。」
なんていいながら。
■沈目言正(エルピス) > 「えへへ……ちょっと分かるかも。」
マイクを持ってば、予め入れていた曲が流れる。
流れるはとある蝶の名を冠する歌。
何処か憂いを帯びた歌詞ながらも、心を癒してくれる、優しい歌。
「――♪」
静歌お姉ちゃんに、会えて良かった。それだけでボクには希望が満ちる。
奇跡にも近い幸運に精一杯の感謝と尊敬を込め、思いを伝えようを歌う。
上手く歌うよりも、思いの丈を伝えるように。
綺麗に歌うよりも、自分の気持ちを乗せるように歌う。
(――本当に、静歌お姉ちゃんに会えて、良かった。)
■四十万 静歌 > 「――」
歌声を聴きながら、
思わず涙が一筋頬を伝って流れ落ちる。
理由は分からない。
分からないけれど――
それはきっと、歌声に乗せて、
会えてよかったという想いが、
とどいたのだと思う。
なれば、当然、歌が終わった後の反応は――
ただ、一言、静かに告げる。
「――ありがとう。」
その言葉を。
そして、拍手を送るだろう。
■沈目言正(エルピス) > 「――ううん。ボクの方こそ、ありがとう。静歌お姉ちゃん。」
眼を伏せながらも身を寄せるように、甘えるように。
抱きしめようとし左手腕を回そうとしながら、右手でマイクを渡そうするだろう。
「――。」
視線を上げて、ただ純粋な感謝と喜びを浮かべて、微笑む。
■四十万 静歌 > 「――」
抱きしめられれば抱きしめ返し
すぅ、と受け取り、息を吸う。
ならば、私は何を歌うべきだろう。
曲を入れる。
異能の全てを解除して、
自分のもてる全てを振り絞って――歌う。
「――♪」
ありのままの自分を。
少なくとも今この一瞬は。
歌の通りに。
ありのままの自分を好きになれるように、
信じれるように――
それは自分に向けた言葉で、
言正への言葉でもあるのかもしれない。
■沈目言正(エルピス) > 「……」
離れて歌を聞く。
向けられた全てに、心がざわめく。
――ありのままの自分を好きになれるように。
強い思いが込められているその歌を、一つもこぼさぬ様に、聞き入る。
――自分を好きになれるように。信じられるように。
ボクはありのままの静歌お姉ちゃんを好きになれるし、受け容れられる。皆に受け容れられると思う。
(ボクは――)
どうだろうか。強い気持ちに心を揺らされれば、自問する。
(ボクを、好きになれるのかな――)
■四十万 静歌 > 「――♪」
やがて曲が終わり、一礼し、
再び言正を抱きしめて頭を撫でるだろうか。
「――」
言葉はない。だが、
私はどんな言正君も好き、
そう告げているような感じがするかもしれない。
■沈目言正(エルピス) > 優しく頭を撫でられる。
縋る様に、抱きしめ返した。
「……あり、がとう……静歌、お姉ちゃん。」
震える声、伝う涙。気が付けば、泣いていた。
気を取り直して、笑ってみせる。
身体は造りものでも、自分の気持ちだけは、造りものではないと、信じられた気がする。
「……えへへ、ちょっと喉乾いちゃったね。
少し休憩して、何か飲む?」
■四十万 静歌 > 「――」
いつくしむように微笑み、撫でる。
優しく、優しく。
私に出来ることは多くはないけれど――
心の救いに少しでもなれたら、なんて願いつつ。
そして、何か飲むと聞かれると。
「――そうですね。
ちょっと休憩しましょうか。
私は、クリームソーダにしますけど、
言正君は何を飲みますか?」
なんていいながら、小首をかしげ笑いかけるだろう。
■沈目言正(エルピス) > 「うーん、ボクはブルーハワイにしようかな。
ブルーハワイがある所って、珍しいし……」
応えるように無邪気な笑みを見せる。
楽しげに笑ってみせてから、注文を決めれば備え付けの電話で飲み物を注文する。
「少し飲んだら、また歌おっか、静歌お姉ちゃん。
……うん、遊んでくれてありがとう。えへへ……」
■四十万 静歌 > 「ブルーハワイがあったとは、
今度カキ氷食べましょうか。」
なんていいつつ、
「ええ、まだまだ歌い足りませんし、
一杯歌いましょ?
また、遊びましょうね」
なんてウィンクするだろう。
■沈目言正(エルピス) > 「うんっ。また海にも行こうね、静歌お姉ちゃん。」
かき氷から海を連想したのだろう。
楽しげに笑いかける。
――その後はジュースを飲んだりしながら、再びカラオケを楽しんだだろう。
ご案内:「カラオケ」から沈目言正(エルピス)さんが去りました。
ご案内:「カラオケ」から四十万 静歌さんが去りました。