2016/06/18 のログ
■伊都波 悠薇 >
「――でも。稽古しないと、なまっちゃうよ。ただでさえ、未熟なのに」
帰ってきた言葉には不服そうだ。
見られれば恥ずかしそうに頬を染めて。
「――ちょ、ちょっとしか太ってないから」
聞いてないことを応えてしまう。
「うん、機会が合えば。また、一緒に」
頷いて、昔をちょっと思い出す。けれど。
最近のことを考えると、ちょっと不安だ。
実践をこなす度、思考が切り替わるのを感じてる。
スイッチみたいに。殺す、頭に――
「――稽古にならなかったら、どうしようね」
■伊都波 凛霞 > 「慌てなくても大丈夫だよ。
まだまだ私達大人にもなってないんだから、のんびりでもいいって」
ベッドの側まで移動して、見舞客用の椅子に座る
「あー、ダイエットはしなきゃね、病院のごはん、おいしい?」
くすくすと笑われる
気にするほど見た目が変化しているわけでもないけれど
「…ん?」
ならなかったら、という言葉に首を傾げて
■伊都波 悠薇 >
「そう、かな?」
どうだろう。大人になったら、なんて正直自分には考えられない。
のんびり? のんびりやって、後悔したら? それじゃ自分を許せない。
自分のせいで、今までも全部。全部――
「あ、いや……えっと。おいしいけど、それより、運動してないから」
姉と違って油断するとすぐに体形にでるのだ。そう、姉は、稀少なのだとたまにはわかってほしい。
恥ずかしそうに顔を伏せて。
「――傷、ついた理由、覚えてるでしょ?」
巫女は、殺す気はなかったし。こんな傷を負わせる気もなかった。
それをぶち壊したのは、自分の”殺気”
■伊都波 凛霞 > 「お医者さんに大丈夫って言われたら、思う存分体動かそ?
お姉ちゃんも付き合うから」
体型のことをしっかり気にかける
妹も立派に女の子している
髪型とかにももうちょっと勇気を出してほしいな、と思いつつ
「聞いた上で、だけどね」
妹の声の雰囲気が変わったのを察して、ギ、と姿勢を正す
■伊都波 悠薇 >
「お姉ちゃんは、頑張る必要なさそう、だけど……」
髪のカーテンの隙間から――じーっと見る。
どこにも、不備はなさそうな完全ボディでした。
まったく、なにも。お変わりありません。
「聞いたうえで、訓練、なの? 死合いになったりしないかな」
少し、声がこわばる。ならないとは言えない。
こと武術においては、姉と自分は”思考”が違う。
姉は活人。自分は殺人。
だから、こう言った時があった。姉が少し、戦い方を考えていた時に――
”もっと殺す気でやらないと”
と……
■伊都波 凛霞 > 頑張る必要がない、と言われれば そんなこともないけどね、と笑って返して
…たまに美味しいものの誘惑に勝てずに食べ過ぎた時とかはこっそり運動量を増やすものだ
「ならないよ」
笑顔で、それをきっぱりと断言してみせる
「はるかが、お姉ちゃんのこと殺そうとするなんて、絶対ありえないもん」
湛えた笑顔は自然のままに
妹に寄せる全幅の信頼が伺えた
■伊都波 悠薇 >
むぅっと、口だけとがらせる。
そういう話じゃないような気がするし。
実際になってみて、それが外れたらどうするんだろうかとか思ったりするけれど。
とても、その言葉には弱い。
そして、言えば姉は実行する。有言実行――
今までもそうだったし。そしてこれからも。
言葉にして、姉は追い込み、勝っていくのだ
「――ん」
前髪を整えて、視線をしっかり隠した後。
ゆっくりとうなずく。
稽古してもいいといった感じに。
「でも、私できるのって。一個だけ、だけど――」
それで組手になるかななんて、別の不安が宿る
■伊都波 凛霞 > 「一つ奪うためには複数の動きが必要不可欠」
ぴん、と人差し指を立ててみせた
父親が口癖のように、子供の頃から言っている言葉である
「例えば掌打。
使用する為には相手の得物を掻い潜る、フェイントをかけて態勢の崩れたところに飛び込む、
自分の姿勢を低く保って、相手が動く前に位置につく──
まず近づくだけでも、技なんだ。
もちろん近づいた後も、相手が即座に切り返そうとしたら入身で崩したり、
こちらから一度体<たい>を離したり……」
基礎の動き
子供の頃に二人で一緒に一番やったであろう武術のパーツ
「はるかが一つ攻撃技を使えるなら、
それらがちゃんと身についてる証拠だと思うよ。
だったら、他の技を覚えるのもそう難しいことじゃない」
だから不安そうにしないのー、なんて微笑みかけながら、その頭をくしゅくしゅと撫でた
■伊都波 悠薇 >
「ん――ちょ、おねえちゃ、髪崩れる……」
話者話者されれば、前髪が流れて素顔が出てしまう。
泣きぼくろ。魅了の黒子とか言われているが、まったく効果が出てないそれが見えて。
「――”毟り蕾”、だよ?」
使えるのは、危険度が高い。殺し技だ。業といってもいい。
心臓を衝撃で止めるそれ。
やっぱ、心配だ。姉に決まるとは思えないが。
試合となればやっぱ勝ちたいし、本気になる。
どんどん暗くなる。なんでこの技を覚えたのか。もとい
これしか身につかなかったのか――
「身についてたら、ちゃんとよけられてると思うなぁ」
おなかを撫でつつ。よいしょしてくる姉にけん制。
「――甘くしすぎですよ、”姉さん”」
■伊都波 凛霞 > 「あ、ごめんごめん…」
顔、わざわざ隠さなくてもいいのにと
これだけは何度言っても聞いてくれそうにないのが残念なことだ
──技の名前を聞けば、一瞬だけ驚いた表情になる
あれは難しい技である
徒手空拳によるリーチもさることながら、正確に相手の筋肉や骨格を把握していなければ、
まともに衝撃を伝えることもできはしない
……技が完成していれば、妹は殺人を侵していたことになる
「一つだけ…」
少し、憚られるような表情と共に零す
「どうして、その技にしたの…?」
ご案内:「青垣山近くの病院」に伊都波 凛霞さんが現れました。
ご案内:「青垣山近くの病院」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 悠薇 >
「え……?」
どうしてと聞かれれば。
答えは、一つしかない。それ以外ないのだ。
「”それしかできなかったから”」
そう、一個だけ。何をやってもできなかったのに。
それだけは、できた。できた。うまく、きっと姉よりもうまく。
姉は、殺す気にならないから毟り蕾を”極めてない”
対して、妹は――
「何をやっても、基本でさえ、素人だとか言われたのに。それだけうまく、できたの」
ほほえむ、できた喜びを覚えてる。危ない技。わかってる。
でも――
うれしかったのだ
その時は純粋に。姉のようにできなくても。
一個だけしか、できなくても。
それだけは――
■伊都波 凛霞 > 「でも、そんなのって───」
微笑む妹に、不安を覚えた
毟り蕾───
あれを父様へ完璧に打ち込めれば免許皆伝にも等しい、そんな技が
それが出来て、他の技ができない道理がないのに
道理が…ない?
「………」
何か、言い知れぬ胸騒ぎを感じる
妹の習熟性は、人と違うところは感じていた
それは単純に要領が悪いだとか、才能がないだとか…頑張りが足りないだとか…
そういうものでは、ない?
「(じゃあ──何? どうしてはるかは、こんな───)」
困惑に包まれ、言葉を失ってしまう
■伊都波 悠薇 >
「……お姉ちゃん?」
首を傾げる。流れる前髪、覗く瞳。
揺らめく。
ほめてもらえるって思ってた。そう、実際。
あの時も極まったはずなのだ。だから死の淵なのにうれしかったし。
ちょっと成長したよと、報告できると思ってた、なのに。どうして――
……ほめて、くれないんだろう。
今日は、いっぱい甘やかしてくれるのに。
そこだけは厳しくて。
だから――
「……それだけじゃだめだよね。もっと、がんばらないと」
戸惑う姉に対して、妹は真摯に受け止めて。
まっすぐに決意して。
「早く治すからね?」
■伊都波 凛霞 > 「あ…う、うん……そうだね、早くなおして…一緒に」
笑顔を作る
……バラバラだったピースが朧気に嵌っていくのを感じる
今湧いて生まれた不自然を筆頭に、
誰よりも努力をしていたのに、一年間で何も成長がなかった"不自然"
父親が、突然妹に何も稽古をつけなくなった"不自然"
……アタリが、ついた
父様は、もしかしたら母様も…何か知っている
でなければ、この病院に妹が担ぎ込まれた経緯をあの父が根掘り葉掘り聞かないわけがない
それでいて"毟り蕾"の存在に気づかないわけがない
なのに父様は狼狽していた様子すらもなかった…知っていたからだ
知っていたならば、今自分が感じている違和感は既に、織り込み済みだったということ
立ち上がる
「そろそろ帰るね。また明日来る。
何か欲しいものない?買って、もってくるよ」
精一杯、自然な笑顔を向けた
■伊都波 悠薇 >
どうしたんだろうと、思う。
けれど、姉は必死に笑った。だからなにも聞かなかった。
もちろんそれは――
妹だって、姉を信じているからだ。
「ううん、お姉ちゃんが無事に帰ってきてくれたらそれでいいよ」
きっと、まだ姉の戦いは終わってないはずだから。
そんなあっさり終わる問題なら。姉は大業物をこっそりもっていったりしないから。
「……負けないでね? お姉ちゃん」
満面の笑みで、見送った
■伊都波 凛霞 > 「誰にも負けないよ」
ぐ、っと腕を折り曲げて握りこぶしを作って見せて
バタン、と病室のドアが閉まる───
妹は、一人になった
ご案内:「青垣山近くの病院」から伊都波 凛霞さんが去りました。
■伊都波 悠薇 > 独りになれば、妹は静かに息を吐いた。
「――どうして、ほめてくれなかったの」
本当は――
『よく頑張ったね。これで一緒に戦えるね』
そう、言ってほしかったのに。
「未熟者、悠薇の、未熟者」
悔しさに握りこぶしを作って。
薔薇は、空を、見上げるだけ
ご案内:「青垣山近くの病院」から伊都波 悠薇さんが去りました。