2016/06/21 のログ
五代 基一郎 > 「異能に合わせたものが必要になるかな」

実質そういった戦闘用……ダーティーワークとしての使いようがあるものではある。
日常にとその中で使っていただろうがやろうと思えばどうとでもそういう方向に転がせるのが異能だ。

「即席だけど、機械と訓練するより人と訓練したほうがいいかな。
 そういう空気や経験をで無理矢理にでも土台を作らないと追いつくのは難しいだろうし。
 そこは……うーん……こう、相手を探しておくから。」

もちろん危険には近づかない方がいい。
それはこの男もある程度は徹底している。
だがこれからと、というよりも本質的に言えば危険はどこにでもあるし
異能をとすれば危険から向うがやってくるなんて当然のようにやってくる。
故に武器となるものを、となるがその武器とは当然異能であり
異能もまたそういった力なのであるから使いこなすことが当然求められる。

しかし、そういった”理屈”の前にまず綾瀬自身で確認しなければならないことがあった。
物騒な、武器がどうとかナイフが刀剣が持ち運びがという前に
”それ”を知ってからでないと、いけないことが。

だからそのまま、綾瀬が応えるように手を出せば
スプーンを置いて……返すように右手を右手で優しく握る。
普通の、日常的に見ればこのような甘味処で男女が手を握り合う姿だが、それは

「このまま君の異能、使えるかな」

男自身ある程度自己に治癒能力が備わっていることは綾瀬自身も知っているだろう。
だが、それでもそれをやるということがどういうことか。
人に異能を使うことがどういうことに繋がるか予期させ教えるような……
全く外から見る姿とは違う、意味を
示す。

綾瀬音音 > 異能に合わせたもの、ですか……
(とは言っても具体的なイメージが出てくるわけではない。
基本的にそういうのはテレビやマンガ、創作での知識しかないのだ。
危険な異能に分類されるというのは一応は知っていたが、それ以上がない。
お風呂の温度を適切なものにしたり、とかそんな次元での使用である)

ぅ。土台は全然全くの更地なんですよね……。
……お願いします……。
(そこは素直に頭を下げるしか無かった。
そういうことは自分ではどうしようもない。

危険に関わる気がなくても、関わってしまうことはある。
それは一応は身を持って知っていることではあったし、その時に自分を助けてくれたのも――他者の助けもあったとはいえ、異能もその一つであったのは事実だ。
使いこなす――というよりも安定した出力が出来る、と言ったほうが正しいニュアンスの異能使い、なのは自身でも知らないことである。

だから。

手を握らて、まばたき二つ。
予想は無かったわけではないが、思った以上に優しく握られて驚いたようにそれを見ていたが、続けられた言葉には、え、とそれ以上に驚いた様に声が漏れた。

流石にそれが、手を温めてくれ、と言う意味ではないことくらいは解る)

や、それは使えますけど……。
使えないことはないですけど……
(とは言え、基本的に素直に従う、のが自身の今の方針ではあったので。
戸惑いながらも――異能を発動させる。
徐々に熱くなっていく――と言っても自身ではさほど熱いとは感じないのだが――手のひら。
流石に金属球相手のように瞬く間に上がっていく、ということはない。
それ以上に――)


――――――――。
――――――――――――――。
(彼の異能からして、怪我というものに対して治癒能力があるのは解っていた。
だから、多少の火傷位なら大丈夫なのは理解していても。



それでも――出来なかった。
どうしても、一定温度以上に上げることが出来ない。
火傷しそう、な温度にすら出来ない。


精神的なプロテクト。
人を傷つけてはいけないという、無意識且つごく“普通”の価値観。
自身には何のリスクがないことが解っていても、出来ないという事実。




今の自分は、決定的なほどに。



人を傷つけることは出来ないのだという、事実を漸く知った。



震えた。
ああ、そういうことか。
人を傷つけるということは、とてもとても怖いことなのだ――)

五代 基一郎 > 「別に一昼夜で何か作ろうとしているわけじゃないし、急がなくていいよ」

急がせるつもりもなければ急ぐこともない。
急ぐということは、何かに背中を押されることである。
それは綾瀬であるなら先のように……恐怖。
先への恐怖がそれを後押しするのだろうか。

だからこそ、この先をと思うならそれなりに備えを作ってからでも問題ない。
別に修羅の世界というわけでもない。飢えた獣の群れに入り鍛えていく必要などはない。
階段をいくつか飛ばすかもしれないが、自分の自信につながるようにできればいい。

実際この島のような場所では、異能がそもあること前提や
その異能に合わせた何かを作ることも研究されている。
それらをとすればまだ道程は短い。そういった世界を見ていなかった綾瀬には察しにくいところではあろうが。

だから、こうして愛しい女性に忠を宣誓するような極めて優しく握る手も
握る手から、握る手によって伝えることは。
それをしろと言われた時に察するに難しいものではあった。
無論こんな所で”肉の焼ける臭い”が漂えばそれだけで問題なのではあるが。

それ以上に綾瀬にこれは出来ないと分かった上でのこと。
綾瀬音音は現段階で……人に異能を使うことはできない。
特にこのように直に、他者に異能を使うことで何が起きるかわかる異能の場合は
どうなるかわかっているから……どうなるかわかって、できない人間であるならば
それを教えなければいけない。

それがいけないということではない。
異能を攻撃的に使えないのは使えない人材だ……ということには繋がらないし
そういう意図があったわけではない。
むしろここで直ぐ何の躊躇いもなく限界まで使う方が問題ではある。

綾瀬のまず元よりの異能を攻撃的に…暴力的に使うのならば
いくらでも攻撃的にできる。徒手空拳で、相手に触れて
相手を徐々に焼いていけばいい。焼けるような格闘術を身につければいい。

だがそれは直に人を焼くという行為に他ならず、綾瀬はそれを想像するに難しいが
それは、綾瀬音音にとって受け入れがたいものであることは推察することなど用意である。

自分に何かある、ということではなく。
自分が何をしているのかがわかるということは己の力を理解するに十分なことだが
それ以上に自分が如何なる暴力を行使しているか必要以上に実感するようなものであり。

であるならば目覚めたあの異能をとも思うかもしれないが
先の異能と同じく。根本的にそれらがそのままであるなら変わらない。
より、それらの実感が遠い分より凶悪であろう。

だからこそ、人を傷つけるかもしれない。
傷つけることに対してそれがどういう行為であり、どう自分に対してどう課すか。
どの程度がどうであるかという土台もまた、実力以上に作らなければいけない。
自信で制御できない力は暴力でしかないのだから。

「だから、なんだろうね。自分が何をするか。何が出来るか。
 どうしてするかをやりながら覚えたり考えたりしようよ。」

そうして、若干火照ったような手で……少し、汗か。異能の代償か。
……それとも別の理由か。冷えたその手を、手から安心させるように
二度三度握ってから、放し。
またアイスティーのグラスを手に取る。
アイスティーは冷たかった。

「人を傷つけることが正しいというわけじゃないから。」

綾瀬音音 > ――――――――。
…………………はい。

(急いている。
その自覚は多少ながらあった、が。

それがまじまじと目の前にあると解れば正直に落ち込みもする。
色々な感情が、渦を巻くのだ。
例えば、以前隣に居た少年なら。
問題なくやってのけたのだろう。
問題はそこではないのは解っている。
解っていても、比べる対象ですら無いのも解っていも、荒事といえば思い浮かぶのはそこであり――否、今はそのイメージしか抱けないのである。

目標としているわけではないが、比べてしまう。
無意識にその幻影を追いかけていたことに気づいて、視線をちらりと指輪に落として深く息を吐いた。
流石にそこに以前のような甘やかな感情がなくなっていても、自身を縛っているものは確かにある。
ああ、これは本当に早く捨てないといけないものだ、と改めて実感した。

当然ながら男の考えまでは思い至らない。

能力的に出来る、ということと実際に行使することが出来る、と言うのは全く違う、ということを知って。
それは正しいのか否か――出来るようにならなければ、結局は踏み時にじられるだけではないのだろうか。
何処にも行けずにただただ――――――――)

―――――――――――。
(唇を噛んで、じっと繋がれた手を見つめる。
傷つけることは出来ない、どうして良いのかも解らない。
体感では手のひらの温度はせいぜいが50度前後、大した温度ではない。
それがこの先輩であるから、と言う事実を差し引いてもあまりではないだろうかと、責められているわけでもないのに自分を責める。
悲しいのか悔しいのか、惨めなのか辛いのか。
よくわからないけれど、暗澹としたものがこみ上げてくる。

最初の明るい様子とは真逆の鬱々しい表情を浮かべながら、異能の行使を止める。
この位の温度変化であれば、代償と呼べるものは払っていないが、緊張と何かしらの後ろめたさから手が冷えていた。
そんな手と、真逆に暖かくなってしまった手に握られて、離されてから。
知らないうちに篭っていた身体の力を抜いた。

以前、他者を傷つけた。
だから、出来ると思っていた。
だがあの時は生命やら何やらが危険な時だ、それこそ、良心やモラルといったものが挟まる余地が無い状況。
それが挟まれば――一瞬でも挟み込んでしまえば、自分は力を行使するのを躊躇うのだろう。
はー、っと大きく息を吐いて少し目を閉じた。
軽い目眩がする感覚)

見通し暗いですね…………。
や、それを含めてのあれこれなんでしょうけれど……。
(何が出来るのだろう、と心底思う。
だからそこの急がなくても良い、ということなのだと解っていても、である)

……………………。
はい。
あー、いや、うん、ちょっと今混乱してます、色々と
(頷いたものの、それを訂正して正直に告げた。
この“先輩”に対して偽ることはしない、というのも基本的な自身の方針である。
偽っても仕方がない事のほうが多いのだ。
ならば素直になったほうが良い。
そのほうが、自分にも素直になれる。
スプーンを握り直したものの、それを少し持て余しながら)

五代 基一郎 > 「これは……なんだろうな。難しい問題なんだよ」

だから、そう落ち込まなくていい。
急がなくていいと暗に伝えながら

「寧ろ答えが直ぐ出るようなものでもないし……出すものでもないんだと思う。」

黄昏時であるから揺蕩うようにではない。
何がどうあれ、そうはなるしそれは……自分で答えを探すしかない。
割り切った考えではなく。

「なんだろうな。うまい例えが見つからないけど。
 人を治すために人を斬る医師と、それ以外に……まぁ、そうだな
 何がしらのために人を斬る者とは
 大きな……決定的な違いがあるとは思わないか。
 その違いというのは。自分で見出すしかないのだとは思う。
 もちろん手伝うけど、結局自分で出した答えや理由でしか自分は納得できない。
 そして頼ることができない……とさ
 まだ時間はあるから、ね」

人を変えるには一瞬で十分だ。
十分だが、それは変わってしまったと言わざる負えなくなる。
今のままではただ流されて、ただ恐れから力をとなれば……
きっと、闇の中だ。誰彼時を歩くのではなく、堕ちていくだけの……

「そうだね。なんだろう、まだわからないだけだと思うよ。
 それこそ別の世界の話だし。そうだな……俺はそれでもいいと言っているが
 これから先これでどうすればいいのか、という不安かな。
 人を傷つけられることができないなら……みたいなさ
 これを”大丈夫”なんて保障することはしたくはないけど
 自分の身は自分で守れるようにはなれるよ。
 最初からそうするすると出来るほうが頭のネジ外れているようなおかしいのだし
 途中であっても……まぁ、だいぶおかしいのだとは思う。
 あまりここでは話したくないし、さ」

暴力を振るうのになんの躊躇いもないことこそおかしい。
おかしいが、おそらく綾瀬音音というまだ入り口に入っているような人間からすれば
それこそ出来ないことが恐怖に繋がるが故のだろう。
何せ先にはそれらが出来る者ばかりなのだから……
怖れないほうが、おかしいのもあるが。

温泉に手を入れたような暑さはあるが。
アイスティーの氷の溶ける速度が若干速くなったか程度では済んでいる。

「主題(メイン)はそんなところだし、今日はここまでにしようよ。
 折角来てるんだからさ。カレー食いたいし取る前に終わるのもさ」

綾瀬とは裏腹に空になった取り皿をテーブルの脇に退けながら

「とりあえず、ではあるけど。
 出来ないことを責めているのではないことは分かって欲しい。
 ね。」

綾瀬音音 > (話を聞いて、コクリと頷いて。
言外に伝えられた言葉を理解しても、表情は明るくはならない)

…………何でしょうかね。
早く、早く、って思っちゃうんですね。
ゆっくりでいいのは――解ってる、つもりです。
きっとソレが“答え”です、って言われたところで、今は何を言われても自分で一生懸命考えても、納得出来ないんです。
例えば傷つけるために傷つけると、何かしらを守るために傷つけるとでは違うのは解ります。
どちらが尊い、と言うものじゃなくて、信念的なものだとは思うのですけれど。
私はそれが欠けてるんですね、きっと。
やー、多分、それも今は探さないといけないもの、何でしょうけれど。
時間……結構な時間かかりそうな気がします。
それでも、待ってくれますか。
先輩。
(多分一番の問題は――問題というよりは課題、と言うべきか――は自身の精神のあり方だ。
強靭な精神を持っているわけでもなくて、確かな信念を持っているわけでもなくて、彼に進路を告げた時同様の曖昧に揺蕩う心の問題)

この前のでも思いましたけど、この先のことは本当に見通しが通らないというか――凄く、不安ですし怖いです。
傷つけたいわけじゃないんです、しなくて良いのならしないに越したことはないと思います。
―――――でも、自分の身を守ることっていうのは、そういうことでしょう?
暴力でねじ伏せられるのが嫌なら、その逆です。
ねじ伏せるしか無い。
そこに存在してるのは、純粋に力だけです。
でも…………うん、そうですね。
この怖いっていう感情は、今は大事、なのかも。
――――そうですね。
折角こんなに甘いモノがあるんですし。
(人を傷つけて平然としている人間にはなりたくないと、ぼんやりとした感覚で生きていた。
ぼんやりとしているが、それは一般的、と言う確かな規律とモラルに守られた感覚と思考であるからして、疑う余地はなかった。
――平然としている必要はないのかもしれないけれど、それでも必要だといずれは割りきる事は必要なのだろう。
少なくても自衛が出来る、程度には。
でも、それは今すぐには出来そうにはない。
それでも良いと言ってくれるのは、少なからず救いではあるけれど)

ん……そうですね。
折角来たんですもの、どうせなら楽しまないと。
先輩やっぱりカレー食べるんですね
(気を取り直すように、切り替えてくれるように言われた言葉に、笑う。
へらっと、いつもの笑いに少しだけ影の差す笑み。
持て余し気味だったスプーンを持ち直し、抹茶のザッハトルテに手をつけながら)

――はい。
ありがとうございますね、先輩。
いつも気、使わせてますね
(この言葉には、素直に頷くことは出来た。
それでも浮かべた笑みには申し訳無さや自分に対するちょっとした残念な気持ちから、少しばかり影が残るけれど――、それでも笑う。
理由は簡単で。
“笑っている自分が好き”なのだ。

少しばかり味が薄くなった気がするケーキを片付けたら、再び席を立ってケーキを、それこそ山のように持ってこようか。

だって食べるために来たのだもの。
気を取り直すためでもあるけれど)

五代 基一郎 > 「普通そんなものないからね」

そも人を傷つけるか傷つけないか、なんて考えること事態ズレていると言っていい。
だがそこからズレた世界の人間からならばそれがなければならない。
それについての何がしかが無ければ……
無ければ、ただの頭のネジが外れた何かだ。

「君の気が済むまで待つよ。君は別に世界をどうこうしたい、とか
 人々を悪鬼から守りたいとかそういうので始まったわけじゃないからさ。
 他の人よりよっぽど難しいんだと思う。」

だからこそ他のそういった類よりよほど困難で、堕ちやすいのではと思う。
綾瀬音音のこの世界に来た理由は生きるためだ。
消えてしまわないよう、自分の存在を確固たるものにするため。
生きるため……死なない為に。
それは自分がいた世界から逃げることとかそういうものではない。
より原始的に違い理由だ。であるならば、より……その、意志は
強くなりやすい。陥りやすい……なぜならば人間は自分が生きるためならば
他人を蹴落とすことなど、容易く踏み切れる。
だから、おそろしく綱渡りにも近いものだということは……わかる。

「それはとても単純な道理だよ。
 自分の身を守るという行為自体は、そういうものだ。
 でも行為には必ず原動的なものがなければいけない……と思っている。
 食べたいから食べる、寝たいから寝るみたいな……
 のとはまた違うからさ。とても単純な原理だけど、身を守るということは。
 本質的には傷つけることとして何も変わらないからこそ……
 
 うん、そうだな……まぁ、ゆっくり考えよう。
 答えのない問題かもだけど、答えを見つけられるさ」

そう。綾瀬音音のその、こちらにきた理由が生存という生命の源的なものであればあるほど
その単純な行為が、恐ろしくしっかりと当て嵌まる。
凹に対する凸のように。
生きるためならば、傷つけることなど厭わないと。
この黄昏の……何も守るもののもない、辛い真実のようなむき出しの世界で生きるのならば
より……一層に

「カレーもね、パスタもね。季節のものがあるんだよ……
 なんていうかな。甘い物だけだと塩辛いもの食べたくならない?
 ならないか……ならないだろうなぁ」

その、いつも気になる……綾瀬音音特有の、笑顔を見ながら
見て、目を伏せるようにアイスティーのグラスを空にして
立ち上がる。

「使うよ。これでも女の子には、気を使う方だから」

それが世辞なのか何なのかもよくわからない
微妙に外したことであることはわかっているが。
あまりそういうことが得意な人間でもないためにそうとしか言いようがない。
それとも気を使わないほうがいいのだろうかとも言おうかと思ったが
それは流石にやめておいた。そういう関係でもあるまいし。

そして気を切り替えるか、席を立ちバイキングエリアに行けば
カレーにパスタにと盛り始めるが……それこそ、ちょっと考えるに至らない
量を綾瀬が皿に盛りつけるのを見かけてしまえば
一体どこにそこまで入るのだろうかと
席につけばより綾瀬を何事かと見てはカレーを食うのだった。

ご案内:「スイーツキングダム」から五代 基一郎さんが去りました。
ご案内:「スイーツキングダム」から綾瀬音音さんが去りました。
ご案内:「ハンバーグ&ステーキハウス「タベタイガー」」にリビドーさんが現れました。
ご案内:「ハンバーグ&ステーキハウス「タベタイガー」」に真乃 真さんが現れました。
リビドー >  
 ――ハンバーグ&ステーキハウス「タベタイガー」。
 ふざけたような名前通り、カジュアルさを売りにする肉重点の飲食店。

 酒場とレストランを足して割ったような気軽さを感じる作りであり、
 軽く周囲を見渡せば男子学生の生徒も多く見る事が出来るだろう。
 一角へと目を遣れば、馴染みのあるサラダバーやドリンクバーの存在を判断できるか。

「待たせたね。」

 予約を済ませていたのだろう。
 フレンチメイドに似た装いの従業員が二人のもとに近付く。
 名前を確認すればそのままテーブル席へと案内するだろう。
 
 

真乃 真 > 「いえ、今日はありがとうございます!まさか本当に連れて来てくれるなんて!」

期待と希望に満ちた顔でそんなことを言う。
山で蕎麦を食べてたら、何かご飯を奢ってくれる流れになっていた。
あの時食べた蕎麦の味は普通にとてもおいしかったのだが誘ってくれるというのなら特に断る理由もない。
なんせ奢りであるし、ハンバーグである。

「それにしても…これは期待できますね!」

まわりの客が食べているハンバーグやステーキの量をみて更に目を輝かせる。
ああ、この日の為に普段より少し昼食を減らしてきたのだ!こうでなくては!

「さあ、どれにしましょうか!」

席に座ってメニューを開く。
いや、ハンバーグにすると決めているのだがそれでもメニューをみれば決意は揺らぐのかもしれない。

リビドー >  
「嘘は言わんし、キミのような有望な生徒は好ましい。
 この位はするさ。」

 少々得意げに言ってみせてから、メニューを開く。
 値段は『ニラナイカナイ』などのファミレスよりも少し高く、
 ハンバーグの量を増やせば増やす程100g値段が下がっていき、
 800gほどを頼めば(グラム換算)でファミレス程度の値段に落ち着くような購買欲をそそらせる形式だ。
 デザートなどもきっちりと充実している。

 ハンバーグやステーキの種類やソースなども、一通りのものはあるだろう。変なものもあるが、不味いものは置いていない。
 尚、セット形式で頼めばドリンクバー・サラダバーは自動で付いてくる。

「ふむ、ボクはハンバーグとカットステーキの盛り合わせセットにするか。

 リビドー自身はほんの少しの逡巡を見せてからさっくりとメニューを決めてしまう。
 一度メニューを閉じて、横に置く。  

真乃 真 > 「有望だなんて…そんな。ありがとうございます!」

少し照れながら言う。
でも、前回特に有望さなんて見せてなかった気がする。
しいて言えば山籠もりに失敗して落第街に行ってることがばれたぐらいである。
有望ってなんだ…。

「すいません!えーと、ハンバーグセット一キロのやつでソースはデミグラスで!あっライスの方でお願いします!
 あと、先生はハンバーグとカットステーキの盛り合わせセット…でいいんですよね?」

真の方もメニューが決まったようで店員を捕まえてさっそく注文をし始める。
とりあえずそれでお願いします!

リビドー > 「ま、これからも頑張りな。
 誠実且つひたむきな姿勢は応援したくなるものだ。」

 ――堅実に鍛えて続けているであろう肉体。
 ――失敗してめげないひたむきさ。
 ――危険と判断すればすぐに退く判断力。
 落第街への出入りは推奨されぬものの、今ままで無事に帰還しているであろう事は能力として評価できる。

 下手に失敗を知らぬ天才よりはよほど有望だ。
 故に、有望と評したのだろう。
 
「ああ。それで頼むよ。
 折角だから注文はお願いしようか。」
 

真乃 真 > 「はい、頑張ります!」

どこが評価されたのかはともかく評価された事には違いない。
今日からはこのハンバーグセットと先生の期待分もプラスで頑張っていこう!

「…はいじゃあそれでお願いします!」

店員への注文を終えてあとは待つだけである。
一キロという大型のハンバーグであればそれを焼き上げるには結構時間がかかるのではないだろうか?

「…!先生!ジュース何か入れてきましょうか!?コーラ!コーラで良いですか!?」

店員が早速持ってきたドリンクバーのグラスを持ってそう問いかける。
一キロというハンバーグがまっているというのに炭酸でお腹を埋めるという暴挙にでる。

リビドー > 「食べきれなくなっても知らんぞ、まったく。
 ……ん、そうだな。ボクの分はレモネードがある筈だからそれで頼む。」

 微笑ましいものを眺めるかのように僅かに口元を緩めつつ警告する。
 とは言え、あの若さなら恐らく食えるだろう。
 
 ――1㎏ともなると焼き方の都合上厳しいのか、500g*2でやってくる。
 とは言えそれでもデカい事には違いなく、それ故にぼちぼち時間も掛かるだろう。

「さて、そうだな。
 月並みな話題でもあるが、此処の所の調子はどうだい。
 最近は少しだけ物騒らしいが……」
 

真乃 真 > 「分かりました!」

と言い切る前に声が遠くなって行き。

「入れてきました!」

と言いながら声が近づいて来た。
片手にはレモネードともう片手にはコーラである。
忠告を聞いたのかコーラは若干少なく見える…気がする。

「そうですね…特に…。あっ!最近今年初めてのスイカを食べましたよ!良いですよねスイカ!」

特に何もなさそうだった。
物騒な事にはあまり関わっていないのだ
懇親会以降変わったことは特に起きていない、真の周囲はとても平和である。

「先生は何かありました?ほらあの蕎麦屋さんの事とか!」

あの神って言われてた蕎麦屋の事である。
結構色々言っていたのであの後も何かあったのかもしれない。

リビドー >  
「お、有難い。あまり気を遣わなくて良いとも言いたいが、
 同時にこのような若い風貌でも敬ってくれるのは素直に嬉しくもある。
 とは言え、疲れない程度にな。」
 
 差し出されたレモネードを受け取り、軽く口を付ける。
 ……真の方のコーラがほんの気持ち少なく入れている 様に見える。
 アレは確かに欲望と戦った痕だ。勝敗はともかく。

「おや、もうスイカの季節か。
 そろそろ食べてみるのも良さそうだな。
 どうにもスーパーや青果店には立ち寄る機会がなくてね。」

 つまるところ、遠まわしな"自炊してません"発言。
 決まりの悪さを誤魔化すような仕草もあったかもしれない。

「ああ、今の所はおおむね平和なんじゃないかな。
 少々ダイナミックだが、考えないお姉さんではないからな。
 ……考えない訳でもないから危うい側面もあるが、なんとも言えんか。」

真乃 真 > 「先生は先生ですからね!それに、これぐらいで疲れてたら僕は常に満身創痍ですよ!」

こんな事ぐらいでは疲れない。
あと三十往復は余裕で出来る!

「僕もたまたま持って来てくれなかったらあと一月はファーストスイカが遅れてましたね!
 たまに普段いかない店も行ってみたら面白いですよ!」

さすがに一人で一玉買って食べるほど好きではない。
いや、カットしたやつでもわざわざ買うほどではないのだが。

「まあ、でも誰かを助けるためにやったことみたいですし…。悪い人ではなさそうですよね!」

病院の蕎麦とか…詳しい事情は知らないけれども…
蕎麦もおいしいし悪い人ではないと思う。

リビドー >  
「おや、誰かに貰ったのか。成る程。
 ――ふむ、そうだな。久々に色々めぐってみるのも悪くない。」
 スイカでも買って、職員室にでも持ち込んでみるか。」
 
 生もの故の悩ましさこそはあるものの、痛む前に誰かが食べるだろう。
 ――そう考えている辺りでリビドーが注文したハンバーグとカットステーキの盛り合わせセットが届く。
 鉄板の上で湯気を立てて肉と香草の香りを広げるお肉の盛り合わせ。
 それはもう、強烈に食欲をそそらせる。

「そうだな。悪い人ではない。
 とは言え、一人を助ける事が一人に迷惑を掛けないとも限らない。
 ……って言っていくとキリがない話か。」

 其処まで言った辺りで真のハンバーグセット(一キロ)も届く。
 山のようなハンバーグが2つ、デミグラスソースの香りと共にやってくる。
 写真と違わず、見る者を圧巻しかねないボリュームだ。
 

真乃 真 > 「やっぱりああいうのはみんなで食べるとおいしいですからね!」

そう、スイカとかは一人より多くで食べた方がおいしい気がする。

「迷惑をかけた人まで全部助けるのは流石に難しいですからね…。」

自分ももしかしたら誰かを助ける時に誰かに迷惑をかけてしまっているかもしれない。
だからといって人を助ける事をやめるわけではないけれども…。

「…来た!」

そんな不毛な考えを吹き飛ばすようなデミグラスソースの香り!
重さ500グラムのそれが鉄製のプレートに二つ乗っていた。いや、一つは少しはみ出している!
付け合わせのグラッセされた甘いニンジンや油で揚げられたジャガイモなどは窮屈そうにプレートの隅で縮こまっており
それを運ぶ過程でそのプレートの淵から落ちなかったのは奇跡とすら思える。
上から二つの肉を包み込むよにプレートを沈めるかのようにたっぷりとソースがかかっていた。

「やっぱり、ハンバーグはデミグラスですよね!」

その圧倒的な肉塊を目の前にして真は瞳の輝きを強くして
両手の平をあわせて一言。

「いただきます!」

リビドー > 「いただきます。」

 同じように手を合わせて食事を開始。
 読み通りの濃厚な肉の味をオニオンソースで味わいながら食べ進める。
 美味しそうに食べているであろう真の素振りも暖かい目で眺めている。

「ああ。あの濃さは直接舌に響いてくれるからな。
 ボクは他のも好きだが、それでもあの濃いソースと肉の旨さが混ざり合った感触はとても好みだよ。
 ……ふむ。」

真乃 真 > ナイフでかなり大きめに肉を切り一気に口に運ぶ。
荒挽きの肉の食感が口の中でほどけて甘い肉汁と少し濃い目のデミグラスソースがハーモニーである!

「もちろん他のも好きなんですよ!でもやっぱり王道!って感じじゃあないですか!」

口の中の物を良く味わって飲み込むと次の肉を切りながら答える。
そう、このソースが肉の汁と合わさった時の破壊力と言えば!
真っ向から行って真っ向からぶん殴るそんな感じ!

「はあ…おいしい…。」

ライスを口に運びながら呟く。
このソースの濃さであるライスを口が求めるのだ。
幸いな事にライスはおかわり自由なのでペース配分は考えなくてもいける!

リビドー >  食べる速度や料理へのリアクションは良いものを見せているが、言う程でもない。
 やはり興味は目の前の彼――真乃 真に寄っている。

「ああ。王道だな。
 並び立つような覇道や邪道や奇をてらったものも同様に美味しいが、
 王道には分かりやすく与えてくれる安心感、期待通りのものを与えてくれる良さがある。
 願いをそのままに叶える。望む欲求通りに応えてくれるってのは、王道の強みだよ。」

 この手の話が好きなのだろう。
 一通り得意げに語ってみせてから、小さく詰まったような声を漏らした。
 語りこんでしまったと自省する。

「実においしそうに食べるね、キミは。
 食事に誘った甲斐があると言うものだよ。」

真乃 真 > 「そうですよね!ハンバーグって言われたときに他の味を出されたら違うって…
 …なりませんね!例えば和風おろしとかでもハンバーグだしトマトのソースでもハンバーグですね!」

そもそもハンバーグ自体が絶対的な王道であるのだ。
王道からすこし逸れたぐらいでは、かかったソースぐらいでは少し味付けをかえたぐらいではまだ王道なのである。
ハンバーグであることをやめない限りそれは王道を歩むのだ!
ハンバーグ強い。とても強い。

「そうですか?ありがとうございます!僕もこの店は来た事なかったので良かったです!」

つけあわせのフライドポテトにソースをカラませながら答える。
ハンバーグはかなりのペースで食べ進められ残りは一口か二口かである。

リビドー >  
「ははっ、その寛容さは好ましいな。
 確かにどれもハンバーグだ。キミなら豆腐や鰯のそれも含むかな?」

 確かにハンバーグはハンバーグだ。
 愉快そうに笑っている事のは確かな肯定の表れだろう。

「どういたしまして……って早いなキミ。
 ボクの方はまだ2割残っていると言うのに。」

 ――迅い。
 あの少年、食べるのが迅(はや)い。