2016/07/01 のログ
■伊都波 悠薇 >
いない……知ってる。
信じてなんても、いない。
検査をするというのも、納得がいく――でも……膝が折れた。
それだけは――
「お姉ちゃん」
じっと、見下ろす。
動揺してる、涙。
でも――
「――大丈夫だよ。だって、お姉ちゃんがいるもの」
信じてるのは、”ただ一点のみ”
「――どうしては、ほら。私が未熟者だから。だから、私の自業自得」
また、背負わせる。また、幻視する。
いつもみたいに――
「でも、負けないよね?」
自分が負けても、姉は必ず勝ってきた。
だからきっと、立ち上がって――
「――大丈夫だよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんは、私の。お姉ちゃんだから」
ほほえんだ。これくらいしかできないけれど。
でも――
姉が自分のせいで負けるのは、許せないから。
だから、未熟者を隠して――ほほえんだ。
隣に立てない自分を――
未熟者
そう、罵りながら
■伊都波 凛霞 > 姉は応えなかった
へたりと座り込んで、俯いたまま
やっと絞り出した、声は咽び泣くような声色で
「……負けちゃうよ…」
嗚咽が、混じる
「大丈夫じゃないよぉ……
悠薇がいなきゃ、お姉ちゃんはダメなんだもん……」
親友、高峰司という新しい支えはできた、でも
どちらか片方が欠けて良い、というわけじゃない
「悠薇が幸せで、元気で、笑っていてくれないと、私───」
未熟で、無力で、役立たずなのは自分のほうだ
大事な友人も守れず、たった一人の血を分けた大切な妹も守れなかった
得体の知れない、未知のウィルスに蝕まれていく二人をただただ見守るしか──
■伊都波 悠薇 >
「負けないよ」
笑った。元気とはいえないが、泣く姉に対して、笑う妹。
さっきとは全く逆だった。
「いるよ。ずっと、後ろで見てるから」
だから――
「お姉ちゃんは、負けないよ。私が見てるとき、負けたこと、ないもん」
今は、弱くてもいい。でも、最後は絶対に。
「お姉ちゃんのこと、信じてるから」
だから立ってと、言外に告げて。
ぎしぃっと、ベッドに座った。
「――最後は絶対に勝つって」
そして――
「――お姉ちゃん」
今、幸せですか……?
”のろい”のような言葉が、病室に反芻する
■伊都波 凛霞 > 「…私は、悠薇が思うほど強くなんかない……。
友達も…大事な大事な妹にも、何もしてあげられないんだよ…?」
無力感
何もできない
前も向けない
完全に、足は立ち止まって
「…悠薇のこと……助けられない───」
確証があるわけではなく
それでもそれは確かな、不安、嫌な予感
高峰司と、妹…それらの、身の危険
妹が、親友が
得体のしれない存在へと少しずつ変貌していってしまっても
自分にできることは、根拠のない励ましくらいしかない
どうして妹達にこんな不幸が訪れるのか
妹には幸せに笑っていてほしいのに、こんなにも、不幸が
妹の幸せが、自分の幸せ
なら、妹のこの不幸は─── 私の不幸だ
■伊都波 悠薇 >
心が、震えた。
あぁ、あぁ――と、胸が打ち震える。
それは怒りか? それとも――
「そうだね、そうしてるうちは、そうかもね」
否定はしない。助けてくれない。
今の姉は自分を助けてはくれないのだ。
助けないと、そう今はっきりと宣言された。
あぁ――
「……じゃあ、これから一緒に何もしないで、過ごす?」
これから。
もしかしたら、訪れるかもしれない終末を。
ただただ何もせずに、思い出に残るように。
なにもしないで――ただただ――……
「ねぇ、”姉さん”」
もう一度。
「それが、姉さんの幸せ? 今の、その、助けられないって言葉。事実がそうなの?」
■伊都波 凛霞 > かけられた声に、ゆっくりとあげた顔は、どこか怯えたような───そんな表情で
「だって───」
何もできない
こうやって、フードの男に親友を奪われ、妹を奪われて
いやだ、そんなのはいやだと心が叫んでも
それ以上にできることは今の自分にはなくて
「───」
声にならない、まるで妹の言葉が、
脅迫のように聞こえてしまう
違う、そんなのは私の幸せなんかじゃない
ぶんぶんと、左右に何度も首を振った
ただ、誰かに助けて欲しかった
■伊都波 悠薇 >
「……なら、姉さん」
絶対の信頼を込めた瞳で。妹は告げた。
「幸せに、なろうよ」
慈愛のこもったまなざし。家族に対する愛情か。
それともまた別な感情か。
そうなれるんだって、この妹は、姉のことを信じ続けてる。
そう、いつもと同じように。
「私じゃ、何もできないかもしれないけど話なら聞いてあげられる。一緒に悩んであげられる」
だから――
「私は、姉さんを助けられないけれど。こうはいってあげられるよ」
あぁ、そんな姿は嫌だな。だって。
「負けちゃうのは簡単だよ」
それは自分が知ってる。
すごく簡単だ。歯を食いしばって、負けないようにするのが自分は精いっぱいだ。
だけど――
「だけどぜんぜん、ぜんぜん――似合わないよ、お姉ちゃん」
姉にはやっぱり、勝利が似合う。
凛とした、華が。高い高い場所で咲くように――
「だから、勝ってよ。幸せになってよ」
■伊都波 凛霞 > …なんて、強いんだろう
正体のわからない薬を打たれて、とても不安なはずなのに
どうしてこんなに、自分のことを差し置いて、私のことばっかりを───
「……ごめん、ね。弱音…吐いちゃったね……」
袖口で涙を拭って
そうだ、一番泣きたい、不安なのは妹や司ちゃんだ
自分が支えてあげないといけないのに……
こんなにも簡単に搖らいで、折れかけて
本当に、自分は弱い……
呼吸を落ち着けて、椅子を直し、座り直す
「悠薇のこと幸せにするのが先、だけどね」
無理矢理に笑顔を作りなおす
■伊都波 悠薇 >
「うん、すごく似合わなくて、かっこ悪かった」
だけど、妹はずっと。ずっと姉を見ている。
見限ることなく、ずっと――
「じゃあ、お姉ちゃんが先に幸せにならないとね」
微笑み返して――
「――さぁ、仕切り直して。頑張って勝ってね、お姉ちゃん」
そして、かっこいい姉を魅せてほしいと。
自然な笑顔で返すのだった
■伊都波 凛霞 > 「───もう」
苦笑して、その頭をぐしぐしと撫でてやる
そして立ち上がって……
「……首、見せて?」
■伊都波 悠薇 > 「髪、崩れるってば……」
撫でられれば、困ったように前髪をまたパパッと治しつつ――
「……ん? いいよ」
そっと首を魅せる。
跡は、ない――が、それが逆にふあんをそそるような
■伊都波 凛霞 > 「………」
そっと、その首筋に触れる
特に痕跡に見当たらないが───
そのまま、妹の着ている病衣に触れる
"キンッ"
少しだけ『浅く』潜る
妹の話ではつい昨日、そこまで深く潜らなくても良い
サイコメトリーが発動すれば、閉じた瞼をスクリーンに、その映像と音声が映し出される
…間違いない
笑い方、声………間違いなかった
「………ふぅ」
手を離す
「…異能、か……やっぱり、ちゃんと異能の検査しなおしてもらったほうがいいね」
そこに、妹を執拗に狙う…フードの男の目的の手がかりがあるかもしれない
■伊都波 悠薇 >
「――嫌だとか、言ってられなさそう……」
しぶしぶ、苦笑しつつ承諾。
でもやっぱり、検査は嫌なイメージが強い。
「――異能だったら、どんな異能、なのかな」
ぽつり、つぶやいて
■伊都波 凛霞 > 「わかんない、けど……」
一泊おきつつ、椅子へと戻って
「悠薇は…薄々気づいてる…?
自分のこと…ふつうじゃないかも…って」
聞きづらいことだった
でも、聞かなければならないこと…
■伊都波 悠薇 >
「……?」
首を傾げた。
ふつうじゃない……?
「友達はできにくくて、コミュニケーションは苦手なぼっちっていうのはわかってるよ……?」
『ぉぅ、姉御……傷をえぐっちゃ、だめってやつなんだぜ……』
しゅんっとしょぼくれて。指をつんつん。
一応”違う意味の”風じゃない自覚はあったようで
■伊都波 凛霞 > 「そうじゃなくってさ」
もう、拗ねないの、ともう一度苦笑
でも…またマジメな顔へ
「……言ってたよね、頑張っても、全然結果が伸びないって…。
もっと早く気づくべきだったんだけど……やっぱりおかしい。
頑張りが足りないとは思わないし、単なる遅咲きなのかなって思ってたんだけど……」
それだけなら兎も角、いろいろな自称が───
「異能って、その人にとって良いものじゃないこともよくあるって聞くし…もしかしたら…」
■伊都波 悠薇 >
「全部異能のせいだってこと?」
まさかとおもう。だって、全部。
全部そうしたら、なにもかも無駄だったことになる。
頑張ったことも全部全部全部。
でも――否定しきれないのも、事実で――
「……そうだったら、嫌だなぁ」
全部、異能のせいという一言で。
悠薇の夢は潰える。それはすごく嫌だった
■伊都波 凛霞 > 「………」
今までの頑張りが全部無駄なことだった
そうなったら…それは間違いなくショックが大きい、でも…
「…でも、そうだったとしてもそうでなかったとしても…、
やっぱり、ちゃんと知っておかないといけない。
異能だったら…もしかしたら自分の意思で制御なんかもできたりするかもしれないし…」
気休めだということはわかっている
仮に成長を阻害する異能だったということがわかったところで、
抑制することに成功できたとしても……今までの頑張った時間は帰ってこないのだから
■伊都波 悠薇 >
「うん……」
こくりとうなずいて――
少しすれば看護師が入ってくる。
今日はもう面会時間がいっぱいで。
退院はまだできそうにないので明後日ということになったようで――
「……稽古、また延びちゃったな」
残念と付け足して――今日はこれくらいにしようかと姉にアピール。
「ありがとう、お姉ちゃん」
■伊都波 凛霞 > 「…うん」
椅子から立ち上がる
病院から出たら、一応父と母にも連絡をいれておこう
「何かあったら、メールでも電話でも、ちゃんとしてくるんだよ?」
いい?と念を押して
看護師に頭を下げると、小さく手を振って
バタン、と病室のドアが閉まる───
ご案内:「青垣山近くの病院」から伊都波 凛霞さんが去りました。
■伊都波 悠薇 >
「うん……お姉ちゃんも、ね?」
見送って、扉が閉まれば。
急に。心細くなって――
「勝ってね。お姉ちゃん」
泣きそうな声で、そうつぶやいた
ご案内:「青垣山近くの病院」から伊都波 悠薇さんが去りました。