2016/07/02 のログ
ご案内:「青垣山近くの病院」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 > さて――いろいろありはしたが、ついにやってきた退院の日。
問題は山積みではあるが、ようやく学校に行けるといううれしさはある。

「……よいっしょ」

久々に着る、私服。
さらしをまいて、下着に足を通し。スカートをはいて。上を着る。

いつもの、地味でシンプルな奴だ。
馬さんは、今日は封印である。主に、着た時に限って人に見られて恥ずかしかったから。
あれは家用にしようと心に決めた。

「――ふぅ」

着るものを着て、準備OK。
ベッドにぎしっと、腰を落ち着けて。

ごくりっと、ペットボトルに入ったお茶を一口。

冷たくて気持ちいい。じめじめした気温、天気に良い清涼感があって――

「はぁ……」

年寄りくさく息を吐いた

ご案内:「青垣山近くの病院」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 > 病室の扉が開く

覗いたのは見慣れきった、その顔

「おまたせ悠薇」

荷物とかを入れて持って帰る用、だと思われる大きめのバッグを持って、
夏も近い季節薄着の私服で覗く肌も眩しくおねえちゃんの登場です

「父様達は先に手続きしてくるって」

伊都波 悠薇 >  
「ん、待ってた。お姉ちゃん」

ぴょんっと、立ち上がる。小物は詰めてあるので、あとは着替えとか。
阿曇から、もらった本なりDVDなり――そういったものは脇に固めてある。
ちょっと刺激的なものもあったりしたが、どれも面白かった。
スパイもののハニートラップは、あなどれない。はるかおぼえた。

「そろそろテストだから、ちょっと遅れたけど長引かなくてよかったぁ」

ほっと息を吐く。今度わんちゃんのような、女の子に
借りたものも返さないといけないのだ。

伊都波 凛霞 > 「特に大きなもの、ないよね」

はいっとバッグを手渡して
妹の状態もさすがに健常そのものに見える

…あれだけ取り乱した様子はウソのように

「あれから大丈夫?
 変な夢、とか見てない?」

伊都波 悠薇 >  
「うん、見てないよ。大丈夫」

妹の心のうちは晴れ晴れしい。
昨日、あんなに錯乱していたのに――
まるで、姉とは対称的だ。

「――ちょ、ちょっとだけ変な、ゆめ? ゆめというか、なんというかごにょごにょはみたけど」

ぼそぼそと、言いながら。ぱっと受け取って見られたくないものを下に詰め込む。
ささっと、詰め込んで、見えないようにもらったものを上に乗せようと。
動きは俊敏であった

伊都波 凛霞 > 「?」

なんだかごにょごにょする妹に首かしげ

まぁ、変な夢くらいなら見るだろう
精神的には全然大丈夫そうだし、それなら良い

「いろいろ、お見舞いにもらったんだね」

妹の詰め込む、増えている荷物を眺めて

伊都波 悠薇 >  
よし、気づいた様子はない。
春の本なんて見られたら大変である。大変である。
姉には絶対に知られてはならない。いや、家族には。

「阿曇さんがね、たくさんくれたんだ。お見舞いに、たくさん来てくれてね。ちょっとお姉さんっぽい感じで接してくるの。ちょっと、新鮮」

嬉しそうに顔を綻ばせる。
すごく心配してくれた。よい友人。
烏丸さんも頻繁にメールをくれたし、わん子先輩はテストの気遣いをしてくれた。
修行を手伝ってくれた、先輩もまたぶっきらぼうなメールをくれたし――……
うん、最近は携帯が手放せなくなりつつある。

『友達100人! ワンちゃんあるで!』

ストラップが吠えれば。こくこくっと、悠薇は頷いて――

「――お姉ちゃんのほうは平気? お友達は、まだ調子悪そう?」

伊都波 凛霞 > 「そっか」

妹に親しくしてくれるなら、ありがたいことだ
退院したあとも仲良くしてあげてくれたらいいな、と思いつつ

「ん、あ、うん…少し難しい病気みたいで、なかなか」

少しだけ言葉を濁す
…同じウィルスに妹が侵されている、なんてことは

まだ、話したくない

伊都波 悠薇 >  
「――……」

言葉を濁した。ということは、きっとうまくいってないのだろう。
残念だ――が、姉ならば大丈夫。
だって、姉はいつだって、負けない。
負けるのは、いつも――……

「大丈夫」

頷く。妹が信じてる。
そう、そういうときの姉は――

「ちゃんと、後ろで待ってるからね?」

ふわりと笑う。自分だって”わけのわからないもの”を打たれたというのに。
その不安はみせず――いや、ないように姉を見つめる。
ただただ――信じて。

伊都波 凛霞 > 「───!」

はるかも、同じなんだよ?
噛み潰した言葉は、そのまま飲み込んで
表情に出すな、笑え、と
無理矢理に、姉として元気な笑みを浮かべる

「うん、大丈夫!きっとよくなるし私も支えてあげなきゃ」

さて、と立ち上がって

「そういえば、父様達とも話したんだけど、
 やっぱり悠薇のこと、もう一度ちゃんと調べてもらおうって、
 研究区にも前よりいろんな研究室が増えてるみたいだよ」

そう、あのあと父と話をした

───結論から言えば、父と母は妹の異能の発祥に気づいていた
けれどそれを黙っていたのは…自分たちのあまりにもな無力感からだったという
妹の成長を阻害する異能がどういうものか、検討もつかない
その可能性を娘に告げるのも憚られ…これまで時間が経ってしまった

「研究室によってはなんか機密があるらしいから、
 連絡はしてみたけど、私はもちろん父様達も一緒に行ってあげられないみたい……」

伊都波 悠薇 >  
「……?」

ほんの少し、いつもと違う笑顔、のような気がする。
が、気がするだけ。きっと気合いが入っているのだろう。

「……一人、独、かぁ」

むしろ、都合がいいかもしれない。
誰かといたら、自分は少し――いや、だいぶ弱い。
いなくても、弱いけれど。独りなら、歯を食いしばれる。
自分のせいと、何度も何度も言い続けられる。
姉といると、やっぱり甘えてしまうから。

「うん、頑張るよ」

だから、心配しないでと、さらに笑みを浮かべた。
無理のない、自然な笑顔。
どこか、異質さえ感じる――……

伊都波 凛霞 > 「研究区までは一緒にいってあげれるから」

ぽふ、と頭に手をおいて
髪の毛が乱れない程度に撫でてやる

「うんっ、はるかは頑張り屋さん。
 どういう結果が出るかはわからないけど、大丈夫」

その自然な笑みに、姉は異質な感覚を抱かなかった
なぜなら、とっくの昔に姉の中で、妹は強い存在として映っていたから

だからその自然な笑みが、"自分が創りだした笑み"だとは微塵も気づいていなかった

伊都波 悠薇 > 撫でられて、頑張り屋さんとかけられる言葉。
どこか、やっぱ胸がちくっとする。
ほめられてるのは間違いないけれど――でもやっぱり、後ろなのだと思う。

「だから頭撫でるのは、乱れるからやめ――みだ――むぅ……」

力加減がいつもより優しい。だから乱れるからやめてとはいいきれなかった。くやしい。

『おい、姉御! 卑怯だぞ!?』

伊都波 凛霞 > 「せっかくだし、整えてあげよっか?」

手を後ろにまわして、すちゃっと取り出したのは串と、ヘアウォーターである

「お世話になった先生とか看護婦さんにお礼言って帰らないといけないんだし、
 ね、ちゃんと顔見えるようにして退院しない?」

伊都波 悠薇 >  
「え、いや――え、顔? 顔っ!!?」

わたわたと暴れるが、姉のほうが早い。どこから出したのか
そのグッズ。いや優しかったのはそのせいかと、納得する。
しない? などといいつつ、動きは迅速。

『くっ、これが孔明の罠かっ』

流されやすい妹。姉には逆らえず――

伊都波 凛霞 > 姉は常日頃から全身いたるところに暗器や武器を隠しこむ古武術の継承者候補である
ドコからともなくアイテムを取り出すのはお手の物であった

「…もっと自信もってもいいんだよ、悠薇は。
 きっとみんな、可愛いって言ってくれるんじゃないかな」

前髪を漉き梳かし、ヘアピンで止めて、
不自然にならないように流す

ぱっちりした眼に、すっとした鼻筋、長い睫毛
自分よりは少しだけ幼い印象を与えるけれど、紛れもない…美少女である

「何も恥ずかしがることのない、私の自慢の妹だよ?」

言いながら、手鏡にその顔を映して見せるのだった

伊都波 悠薇 >  
「ぁ……ぅ――」

そんなこと言われても、と思う。
いつだって自分はおまけだったし。姉とつながるための前段階であったし。
そんなことする必要もないと思っていたし――なにより。
それを家族が、姉が知っていれば十分だと思っているし――……

「――ぅぅ、きょ、きょうだけ、ですからねっ?」

『べ、べつに流されて、いいかなぁとか思ってないですからねっ』

なんか馬も同調しちゃっているが気にしない。
耳も、顔も真っ赤である。恥ずかしい

伊都波 凛霞 > 「よしっ、それじゃ行こうか」

膨らんだバッグを肩に軽々とかけて、妹の手を引くようにして立ち上がる

「お世話になったのは悠薇なんだから、はい」

そう言って、その肩を押せる位置…つまり妹の後ろにまわった

伊都波 悠薇 >  
「えっ……えっ!!?」

まさかの全面、特攻である。

『ちょ、ちょちょとっちょ!!? 姉御、背後からの不意打ちは無礼千万座ますわよ!!?』

押される、押される。
退路なんてないし、ぐいぐいとおされればもう、すぐ目の前は戦地である。

「お、おね!? せ、せめてさくせんかい――」

そんなに遠くはない。小さな病院。
着いてしまった、ステーション。

『えー、ご乗車、あぁりがとうございます。凛霞号、まもなくまもなくー、看護師駅ー看護師ぃ駅―。お降りの方はー……』

あ、遊んでる場合じゃないで――ってあきらめてますね小雲雀!!?

内心で突っ込み。
もう、どうしようもありません。

止まって、数十秒。
悠薇にとっては体感十分くらい。
注目を浴びて、目を見開く看護師たち。
あぁもう、ほら……

「お、おせわになりましゅた!!?」

ほら! 噛んだ!! それに、びっくりしてるしっ。
と、姉に内心でまた文句を言いながらもぺこりとお辞儀すれば――

看護師たちは、笑顔で。かわいいね、ぺっぴんさんだぁと。
ほめながら、拍手で――

伊都波 凛霞 > 「妹がお世話になりました」

横に並んで、一緒にぺこりと頭を下げる

飛んでくる言葉は、当然世辞は混ざろうものの褒め言葉ばかりである

こんなに可愛い顔してたんだー、だの
こうやって見るとお姉さんそっくり、だの

きっと、赤くなって緊張している面持ちもまたその可愛さに拍車をかけていて

ちょっとした冒険を妹にさせてしまった姉は

「よくがんばったね」

と小さな声で、妹に囁いた

伊都波 悠薇 >  
「~~~~っ!!?」

もう、こうしてほめられるのは困る。
慣れてない、慣れてないっ……

「――おねえちゃんのばかぁ……」

目に涙をいっぱい溜めて、そう文句を告げた

ご案内:「青垣山近くの病院」から伊都波 悠薇さんが去りました。
伊都波 凛霞 > 「?!」

いけない、決壊寸前だ

「そ、それじゃあありがとうございました!」
慌てて妹の手を引っ張ってナースステーションから出て行く

待合室にて待っていた父や母にどうしたんだと問われる、ちょっとした珍事となったのでした

ご案内:「青垣山近くの病院」から伊都波 凛霞さんが去りました。