2016/08/09 のログ
ご案内:「第4病院」にベッドマンさんが現れました。
■ベッドマン > とある病院の屋上に車いすの少年がたたずんでいる
空は晴れ渡り雲一つ無い
だが真夏なのにそう熱さも感じない、不思議な感覚
もちろんこれは夢である
ただし他人のものであるが
この夢を見ている少年は病院から出たことがなくここ以外の景色を知らない
故にここには病院以外がなにもなく
そしてここから見える景色が全てであった
だが窓から見上げられ続けた空は誰の夢よりも深く青く
そしてそんな夢がひそかにベッドマンのお気に入りだった
夢に浸りながら気まぐれに【夢渡し】を試みる
病院付近におり波長の合うものならばこの夢に迷い込むこともあるかも知れない
ご案内:「第4病院」に伊都波 悠薇さんが現れました。
■伊都波 悠薇 > まどろむ、意識――
蒼、青、青。
目に入る風景はすがすがしいまでの、青――
なのに、曇天ともいえる心の空。
伊都波悠薇は――確実に、生気を失っていた。
かつてを知っているのなら――歪んではいた。
しかし、澄み切っていた。
綺麗な綺麗な――黄色い薔薇……
でも、今は――
「…………ここ、どこ?」
顔をあげれば――目から光は消えていた。
髪に表情を隠して――
ただただ、屋上にたたずむ少年に視線を移し。
自問自答のような言葉を口にする
■ベッドマン > ふらりと迷い込んだ少女の気配にきぃと車いすをきしませる
現世の世界の住人には、外見から夢の登場人物なのか
はたまた実際に生きているのか見分けがつかないだろうが
夢の中で感情を持つのは生きている者だけである
故に感情を読み取れるベッドマンにとって迷い人を判断するのはとても容易だった
『やぁ、おねえさん
どうしたんだいきょろきょろして
迷子かい?』
視線も向けず
空をじっと見つめたままたずねた
■伊都波 悠薇 > 迷子。そう迷子だ。
自分は今、迷子だった。
頭が、脳が。映像を映し出す。
走馬灯のように――”過去―えいぞう―”を。
それは確かに、はたから見れば絶望だった。
それは確かに、本当に何もなかったのなら不幸だった。
でも――それでも少女は、倒れなかった。
支えとなる人が、いてくれたから。
決して不幸じゃなかった。本当に一人じゃなかったから。
もう、お前は必要ないんだと誰かが囁く。
無価値だと、断言する内側からの声。
隣にいてほしいの――と、甘い声が聞こえる。
本当に? と疑う内側からの声。
もう、少女にはわからなかった。
今まであゆんできた道が、消えかかって。
あるんだと思ってた道が、入り組んでぐちゃぐちゃになって――
走ろうとしても、深海の様に息がしづらくて――
「――うん。樹海に、来ちゃったみたい」
下をうつむきながら、つぶやいた。独りごとのように、つぶやいた
■ベッドマン >
『病院で樹海だなんて縁起でも無い
―――やめてよね、おねえさん』
見上げていた視線をおろしふぅとため息をつくと
批難するような目で少女を見つめる
『・・・・・・
ふーん、なにか悩みごとがあるようだね
こんな身体でなにもしてあげられないけど
話くらいなら聞いて上げられるよ?』
ただ見つめられているだけで鬱屈した気持ちが和らぐのを感じるだろう
【漠々潜々】食事の真っ最中である
さりとて感情の源泉が涸れるわけではない
負の感情はこんこんと湧き続けるのだろう
■伊都波 悠薇 >
”感情―エネルギー―”を食べるという意味なら
今の少女は間違いなく、ごちそうと言えた。
いくら食べても食べても、その淀み、甘い甘い黒いものはあふれ出る。
「――そう? わりと、そういう風に。もうあきらめた人だって、いっぱいいるかもしれないよ?」
割と、諦めていないのは当人以外だけで。
病気になったものは、もうやめてくれと叫んでいるのかもしれない。
伝える勇気がないだけで――
「――それをごまかすために、あなただってここにいるのでしょう? まだ、まだという、希望を得るために」
空というものは、高いもので。
気分を晴れやかにする、嫌な気分を吹き飛ばす。
そんな風に自己暗示してるように少女には見えた。
いや、もう”そんな風にしかとらえられない”のかもしれない。
「話……? 話――聞いて、どうするの……?」
きいて――
「――誰を、見るの? なにを得ようとしてるの? 何を考えるの?」
裏を見る、少女。思慮深く――慎重で――そして……
■ベッドマン >
『そうさ
弱っているというのはそういうことだよ
絶望は死に至る病なんていうのは実際の意味とは違うけれど
だけど字面的にもあながち間違いではないよね』
細腕にはそれですら重そうに、ゆっくりと車輪を回して近づく
『弱れば耐えられなくなる
あきらめたくなる
たとえ当人が健常なら絶対にそう思わないとしてもね』
少年の体は明らかに健やかとは言いがたい
骨は浮いているし車いすに備え付けられたチューブが今も体についている
だがその意思はあきらかに死にそうなそれではなかった
『僕がここにいるのはここが好きだからだし
泣きそうな顔をしたレディをみつけたらどうにかしたくなるのが男の子だろう?』
何か変なことをいってる?
と言った顔でのぞき込む
■伊都波 悠薇 >
「――うそつき」
じぃっと見つめる。見て、考える。
この少年は、諦めているようには見えなかった。
いいや――まるで少女の反対の様で。
少女の求めている言葉を吐いているように見える。
だぶって見える。天秤の先――
「それに漬け込みたくなる、って言葉が抜けてるよ?」
思慮深い、少女はじぃっとまだ光のない瞳で見つめる。
ちゃらっと、携帯ストラップが揺れた。
「あなたはだれ? ゆめまぼろし? わたしがきたのはほんとうにぐうぜん?」
変なことだらけだと、告げて見せた
■ベッドマン > 鋭いのか疑心暗鬼なのか
すくなくとも彼女はこちらに疑念を挟んでいるようである
『そうみえるのかい?
ひどいなぁ
君は病院に担ぎ込まれて屋上に迷い込んだ
なにも変なことはない
それに僕は【ぼく】―――だよ』
疑えばその輪郭はぼんやりと歪んでいく
もしかしたらそこに何か既視感があったかも知れない
■伊都波 悠薇 >
「見えるよ。だって夢の中だもの」
天秤、都合のよい現実。
それよりも都合のよいのがこの世界。
都合のよさ。その絶望はさっき知った。
そして――
「――きみ、は……」
想像する。頭の中にあった、それを。
「――かげ、さん?」
覚えていたのはそれだけ。携帯ストラップ――
■ベッドマン > 瞬きした瞬間だろうか
気付けば車いすも少年もなく
かつんと馬のストラップがその場に落ちる
『おやおや
ばれちゃったみたいだね』
どこで発声しているのかそんな声がする
『以前もどことなく気付いていたね
君は明晰夢をよく見る方なのかな』
独り言のようにつぶやいた
■伊都波 悠薇 >
都合のよい、ことは今の少女にとって恐怖でしかない。
かつては、ただの勘。だが今日は――明確な疑念――……
「わかりません。夢は――そう、夢は一つでしたから」
妄想とはまた別枠。ただ少女が見ていた夢は一つだ。
いつ、いかなる時も。
だが、その一も――
■ベッドマン >
『夢破れ少女は現実を見る―――か』
ストラップがカタカタと揺れふわりと浮かび上がる
『君が倒れて運び込まれたのは現実
なにがあったのかは知らないけどね
とりあえずここは夢だから
叫んでストレス発散なり恨み辛みをぶちまけるでも
すきにすると良いよ
話し相手が欲しいなら相手にもなるし
聞かれるのが嫌なら路傍の石ころにでもなろう』
ストラップになってなお空を見上げる
悪く言えば無関心、良く言えば適度な距離間だろうか
■伊都波 悠薇 >
「――カゲさんは、夢は好きですか?」
つぶやく。小さな声で、小さく小さく体育すわり。
膝を抱え込んで、小さく小さく――
「都合のいいことって、好き、ですか?」
きっとほとんどはそうなんだろう。
ラッキーと思える、うれしいって思える。
「――理由がない、それって。すごく嫌じゃ、ないですか?」
帰ってくるのだろうかと思いながらただただ質問を続ける
■ベッドマン >
『変な質問をするね
僕にとって夢は自分の一部だね
だって夢の住人だよ?』
浮かび上がっていたストラップはゆっくりと下降し頭の上に着地する
『察するに相手の都合が良くなるように動いて拒否されたかな
それに、そうすべき理由か、そうなるべき理由なのかはわからないけど
それ諸共に否定された
ってところかな』
ふむむー?
とうなっている
『どちらにせよ主語が曖昧でこたえようがないね』
■伊都波 悠薇 >
「違います」
きっぱりと断ち切る。
「自分に都合がよすぎる世界は、絶望でしかないって話です」
都合のよい世界。
そこには自分しかいない。自分だけしかいない。
自分の価値は、そこに本当にあると、言えるのか――?
「周りに価値は見いだせます。でも自分に――自分の価値を、誰が証明してくれますか?」
この夢だってそう。
自分にとっては――良いものという価値を持ったなにかだ。
それは夢じゃないから言えることで――
「私は、理由があるってすごく安心しました。すごく落ち着きました――でも――それが逆になることもあるんですねって話です」
ほとんど自己完結してるような物言い。
少女は前も、そうだった。
他人に聞いているようで、自分の世界が出来上がってる。
その本質は変わらない。ただ――
■ベッドマン >
『変な物言いだね
わかっていることを他人に聞いたりなんてしないものだよ』
君は意固地だねと付け加える
『そうやって価値観を他人に問うときはその確信に揺らぎがあるからだ
普遍的なものならそれを否定されたからだ
―――本当はわかってるんじゃないのかい?』
表情は変わらないがやれやれと言った風である
『それに君の言葉を聞いて確信に変わったよ
君が信じる価値を否定されたんだね』
■伊都波 悠薇 >
――硬直する。
あぁ、そう。自分の世界。
閉じた世界、それにヒビが入ったのを確かに感じてる。
もしかしたらもう地面から砂のように溶けているかもしれない。
これが――ただの他人であったなら、まだましだった。
否定されても崩れない。そんな世界が少女にはあった。
だけど――
その世界を構築した、神にも等しいものに否定されてしまったら?
「――すべてが無駄だといわれた気分です」
泣きはしなかった。笑った。
嗤った。自業自得なんだと、未熟者めと言いながら――
「――生きてる価値なんて、無いんです。私には、もう」
■ベッドマン > 顔で笑おうと全ては筒抜け
彼女は心で泣いていた
『君の涙を拭う手がないのがもどかしいね』
この通り前足しかない
とおどけてみせる
『生きている価値がないか・・・・・・』
目の前に霧を纏った少女が不意に現れた
まったくもって唐突に
少女とわかるのは華奢な脚と膝まで伸びた髪のシルエットがうっすら見えるからだ
頭の上のストラップが消えていることには気付くだろうか
「生きている実感すらないぼくからしたらとても贅沢な悩みに思えるけどね」
すこし怒ったようなそんな語感
『ともあれ君が樹海にでも逃げ出したいと言う気持ちはわかる』
それほどまでに彼女から感じる絶望は深い
『そこで僕なら君に二つの道を提示して上げられるよ
聞くか聞かないかは君次第だ』
■伊都波 悠薇 >
「……実感があるから幸せとでも?」
嘲笑。初めて見る、まるで魔女のような笑い方だった。
可笑しそうに狂ったように、笑う。
「”本人以外からみた幸福”を私にあてはめないで下さいよ。もう、それ、うんざりなんです」
怒りにも似た、それ――
「苦しいのは、私のものです。悲しいのも私のものです。なのに、そんなものは、ぜいたくだと貴女が決める。おかしくないですか?」
イライラする。この前だってそう。
幸せ。それらをすべて”周りの常識”とかいう認識で不幸だの言われ。また今感じてる不幸を幸せだとか言われる
あぁ、そんなことをいう資格がお前にあるのか。
お前は私に何をしてくれて、私の何を知ってる。
嫉妬が燃える。怒りが揺れる――
でも、それはすぐに隠れて――
「それが鹿毛さんの、本当ですか? そんな風に怒って――私も怒らせて――喧嘩でもします?」
じぃっと見つめて――
「――わかる? ほんとうに? なんでわかるんですか」
他人なのに――
「――……」
提示と聞けば口を閉じた。聞く姿勢をとるように
■ベッドマン >
『だれが幸せだなんていったんだい?
贅沢だと言ったんだ
当然贅沢が幸せとは限らない
君こそ持たざるものをなめているね
君の価値観で幸せを押しつけているのは君の方だよ』
本来持たざる者のことをわかっていたのは彼女自身ではなかったのか
もっともそんなことをベッドマンは知るよしもない
『ともあれ別に喧嘩がしたいわけじゃない』
やれやれといった風に肩をすくめているのが見て取れる
『わかるのは僕が夢そのものだからだよ
そしてだからこそ君の思い違いもわかる
君は誰かさんのためを思い君の価値観でもって都合が良いように取りはからった
さて
この都合が良いとは誰にとってだろうね』
彼女には霧の向こうに残酷な死神を見るかも知れない
『 君さ
―――君にとって都合の良い―――君が理解できる理由でね
そこに誰かさんの都合なんてものは存在しない
あれもそれも独りよがりだ
否定されるのも当然だね
さて仮定諸々が正解としてここまで言えばわかるだろう』
仮定といっているが確信を持って言い放つ
『君が取るべき道は二つだ
その一
今と同じように独り夢の世界に閉じこもる
これ以上世界が壊れないように
―――なんなら君が望む都合の良い世界を用意してあげよう
その二
今一度、否定される覚悟を持って誰かさんの都合を聞き話し合う
―――怖いのなら心を強く持てるようおまじないをかけて上げても良い』
さぁ選びたまえ
そう微笑んでいるような、そんな気がした
■伊都波 悠薇 >
まるで、鏡と話しているようだった。
だから、ワラウ。ショウジョハワラウ。
「ええ。そうですね」
そうすれば返してくれるだろうと思ったから、そういった。
なにせ夢だ。夢は叶えるためにある。
少女は、元から――
「知ってます。私は私以外を受け入れられない。
結局――お姉ちゃんを幸せにしたいと言ってながら、ただ――
恩を返して、すっきりしたかっただけなんだ」
自分中心、自分以外を考えられない未熟者。
だから――ずっと口にする。
未熟者――未熟者……
本当に幸せを見ているなら――
「鹿毛さんは――どうしてそんなことをしてるんです?」
前髪で表情を隠しながら――静かに、訪ねた。
うつむきながら――
「この夢で、カゲさんは――いいえ、貴女は私の何を、”持っていく”んです?」
目の前の少女は、天使ではない。神でもないあくまでもない。
人だ。人なら――求めるものはただ一つ。
世の中の法則。対価……
■ベッドマン >
『君は全てを君の理解が及ぶ範囲に起きたがるきらいがあるね
人には理解できない動機や理由がある
君が理解されなかったようにね』
とはいえそれだけでは信用できないだろう
『実は対価もすでにもらっている
後は君が選ぶだけだ』
それは彼女の苦悩、彼女の葛藤、彼女の欲求
その揺れ動く感情の全て
『それに僕はなにもしない
するのは君だ
僕は道を示したに過ぎない』
暗に言っている
一歩を踏み出せと
■伊都波 悠薇 >
「当たり前です。だってわからなかったら――」
――置いて行かれます
困ったように笑って――……
「――……」
踏み出そうとすれば。夢に出てきたのは天秤。
ぎぃごぎぃご――
「――…………」
口にしようとしたとたん、その世界から何かのバランスをとるように――傾いていた天秤が徐々に水平になり。
何か言おうとしたときに――
夢から、書き消えた。
その空間に天秤だけを残して
ご案内:「第4病院」から伊都波 悠薇さんが去りました。
■ベッドマン >
『おや』
急にたちきえる少女
今までにも何とも見てきた夢からの覚醒
だが通常の覚醒とは違う何らかの外力を感じ取った
異能の類いに干渉された感触がする
しかし彼女以外には夢の主しか存在を感じない
つまりあの天秤こそが彼女の異能なのだろう
『天秤か平衡、つりあい
それとも罪の測量かな?
まぁいい―――
こちらが対価を渡し損ねたという方が気になるかな』
そういってしばらく青空を見上げ車いすを揺らす
その姿はいつのまにか夢の主たる少年の親友の姿になっていた
ご案内:「第4病院」からベッドマンさんが去りました。