2016/10/10 のログ
東雲七生 > 中々の壁の高さに心が折れそうになる。
まあ、こればかりは相性、天候や地形に左右されるのは仕方の無い事と割り切ろうとしても、中々腑に落ちない。

もっと何か出来る事があるのでは、自分の力が足りてないのでは
そう考えてしまって、七生は次第に表情を険しくしていった。
思考が暗くなれば、今まで考えないようにしていた事も次々と湧き出て来るもので、
異能の鍛錬にかまけて頭の片隅に追いやっていた、「自分は何者なのか」という疑問が久し振りに鎌首を擡げる。

ただの超常的な能力を持ってしまった普通の人間だ、と言い聞かせてはきたものの。
異能を行使すれば行使するほど、自分の中の尋常では無さを否応にも自覚せざるを得なくなる。

「はぁ~……あー、もう。」

東雲七生 > 自分が何者なのか。

経歴なんてものはある程度調べれば、普通の生徒であれば幾らでも出自に辿り着くだろう。
しかし、七生はどうしても自身の出自に辿り着けなかった。
そもそも経歴を辿る為の記憶が無い。思い出せないと言うよりは、元から無かったかのように抜け落ちてしまっている。
はっきりと憶えているのは、この学園に入学した日から。

「あの頃から足は速かった気がするし、ジャンプ力もあったし……
 てっきり本土に居た頃からそうだったんだろうって思ってたけど、その記憶は崩れてったし……。」

思い出すだけで寒気がする。
東雲七生は、自分の記憶が消えて行くのを体感したことがある。

東雲七生 > 学園に来るより前、生まれ育った町の記憶や、通っていた学校の思い出。
それらが全て、メッキが剥がれ落ちる様に消えて行くのを七生は体感した。
その時抱いた途方もない虚無感はどうやっても説明する事が出来ないし、
説明するたびに思い出しそうになってしまって言葉が出なくなる。

びくり、と小さく震える身体を自分で抱き締めて、七生は降りしきる人工雨の中で身を起こした。
当然のように、この場には自分しかいない。
──いや、自分が居るのかどうかすら、怪しいものだと思えた。

東雲七生 > ざあざあと水滴が床を叩く音に包まれる。
どこか懐かしささえ覚えるその音は、いつ聞いたのかすら思い出せない程昔に聞いたものかもしれない。
少しだけ眠くなって、七生は再び床に寝そべった。

(──何処で産まれて、何処で育って。)

今、自分は此処に居るのだろう。
そんな誰でも知っている様な事だけが、七生には分からない。
いっそこの気持ち悪さ全て、異能共々水が洗い流してくれればいいのに。
そう思いながら、七生は僅かな微睡みに身を委ねることにした。

ご案内:「訓練施設・プール」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「常世グランドホテル42F レストラン『Guy Savoy Tokoyo』」に烏丸秀さんが現れました。
烏丸秀 > Guy Savoy Tokoyo。
本土でも有名なレストランの常世支店であり、超高級レストランとしても有名だ。
烏丸は目の前の少女をうまい事口車に乗せ、このレストランへと招待した。

「気に入ってくれると良いけど」

目の前にはカキのコンカッセとキノコ・トリュフ入りブリオッシュ。それにフォアグラとアーティチョークの前菜が並んでいる。
普通のコースで良いと言ったのだが、久しぶりに訪れたせいか、シェフがはりきってくれたらしい。
まぁ、ありがたく頂く事にして、フォークをすすめる。

ちなみにワインを頼むかは、目の前の少女次第である。

ご案内:「常世グランドホテル42F レストラン『Guy Savoy Tokoyo』」に水月エニィさんが現れました。
水月エニィ > (流石に普段の装いでは、つまみだされると思っていたけれど……) 

 
 普段のゴシック色のある制服ではなくセミフォーマルな姿。
 露出もそこそこに抑えているものの、ノースリーブ且つ胸開きの装いは彼女があまりしないものだ。

「……お行儀よくしたつもりだけれど、必要なかったかしらね。」

 変わらぬ着物姿の彼を見て、苦笑気味に口元を緩める。
 ワインは自分からは頼まない。
 

烏丸秀 > 「ん、普通で良かったのに」

どうせ個室で、こちらは常連だ。
平日ではこんな店を利用する人間もたかが知れている。
よっぽどの格好でなければ、つまみ出される心配もない。
もっとも、この着物もそこそこ良いものではあるけど。

「うん、まぁここ、美味しいからさ。是非食べてもらいたくて」

屈託なく笑いながら食を進める。
彼女が頼まないなら、ワインも頼まず。

「夜景も良いでしょ?」

眼下の町並みを見下ろし

水月エニィ >  
「気にしない程強者じゃないわよ。
 一度勝っただけでそこまで図太くはなれないわ。」

 片眉を顰めて、ざっくり言い放つ。
 ワインにしても認められた場では飲まないし、水月エニィとしては認められる事はそうそうない。
 ワインだってお酒である。

「ええそうね。本当綺麗。
 綺麗な街並みは良いと思うわよ。でもどう言う風の吹き回し?
 聞くまでもない気もするけれど、ご馳走を振る舞って貰った以上は聞いておきたいもの。」 
 
 それなりに品の良い手つきで食事を進める。
 お行儀良く食事を行う知識は備えているらしい。
 

烏丸秀 > 「へぇ、勝ったんだ?」

ふむ、と頷く。
余裕はそこから来ているのだろうか、さて。

「ん?
ボクがエニィちゃんと食事したいからだけど?
ていうか、前に言ったじゃない、デートしようって」

烏丸はさも当然とばかりに言い放つ。

前菜に続いては魚料理。
スズキのグリルと、オマール海老のロースト。
ナイフを進めながら、逆に聞く。

「勝った、って言ったよね。何かあったのかな?」

水月エニィ >  
「お膳立てして貰った上でどうにかね。
 ……烏丸さんの言う通りなのが半分、そうでもないのが半分だったわ。」

 頬杖を付こうとして止める。溜息は付く。

「そう。……ええ、そうだったわね。変な事が無くて安心したわ。」

 順当に食べ進める。
 エビには少しだけ苦戦したものの、慌てずに時間を掛ける。

「ちょっとした意地の張り合いよ。
 先輩と喧嘩しただけのものだけど……まぁ、勝ちは勝ちね。
 何かを救えた訳でも、何かを認めさせられた訳でもないわ。」

烏丸秀 > 「ボクが変な事するように見える?」

見えるだろうなぁ、と内心思いつつ。
スズキはなかなか美味しい、後でシェフにお礼を言っておこう。きっと、良い物を回してくれただろうから。

「なるほど。キミにとっての本当の勝ちは、何かを得る事、残す事なのかな?」

何かを残す事にまったく興味の無い烏丸にはよく分からない。
何かを消費し、何かを奪い、何かを壊す事にこそ、烏丸は勝利を感じるから。

「面白いね。キミは勝利そのものを求めてるような気がしたけど、一度勝利した事によって、その先が見えてきたのかな?」

水月エニィ > 「変な事以外しないように見えるわよ。
 ……美味しいわね。」

 良いものであることは分かる。
 良いものばかり食べたものでもあれば、悪いものしか食べられなかったものでもある。
 故に味は分かる。今はどっちも食べると言うのは別として。

「具体的にこう、って言うのは言いづらいわ。色々と。
 だけれど残せるのなら意味のないことではないのかもしれないわ。

 ……でもそうね、その先は逆に見えなくなった気もするわね。だから気が抜けているのは否定しないわ。
 捨てたつもりもないし解消したつもりもないけれど。」

烏丸秀 > 「あ、美味しいなら良かった。うんうん」

満足そうに言いながら、こちらもフォークを進める。
肉料理がやってくる。鶏肉と秋野菜のポトフと、仔牛のパイ包み。
とくにポトフは烏丸のお気に入り料理である。

「なるほど。気が抜けている、と。
ふふ、面白いなぁ。気が抜けているキミは確かにギラつく意思は見えなくなったけど。
でも、別種の美しさを持ってる気がするよ」

そう、それは硝子細工のような危うさをはらむ、とは口には出さずに。

水月エニィ >   
「素直に受け取っておきましょう。
 ひと段落もついたのでしょうけれど、これ以上をしでかそうとすれば途方もない。
 それなりに筋の通ったシステムで報われぬものもそこそこに報われている。それを見てみぬ振りは出来ないわ。
 それでも世界は善意で回されもしない――って考えを下げられるものじゃないけれど。」

 2度目の溜め息。
 借りとは自分が勝てるようになったのならば、次はどうするべきか。

「負け犬なのは私だけではないわ。
 同時に負け犬でありながら勝ってみせたと主張するにも1度では押しが弱い。
 だから気が抜けているわ。語弊のある言い方かもしれないけれど、ニュアンスを汲み取ってくれると嬉しいわね。」

 含みのある目つきにも見えたが、気にしない事にする。