2015/09/30 のログ
ご案内:「居住区・ボロアパート」に竜胆 薙さんが現れました。
竜胆 薙 > 薄暗く、埃っぽい
一見生活感がないようで
それでいて住んでいる人間のずぼらな性格がわかる
そんな部屋

ろくに換気もされていないのか、部屋の中はじっとりとしていた

暗い部屋の中で絹擦れの音が聞こえる

竜胆 薙 > 薄幕のカーテン越しに、雲間から覗いた僅かな青白い月光が部屋の中を照らす

家具らしい家具はほとんどない
小さな冷蔵庫と、硬そうなパイプベッド
クローゼット代わりなのか、壁に打ち付けられた釘に衣服が吊るされている
簡素というにも、粗末な部屋

朱塗りの太刀が立てかけられた壁の前に、一糸纏わぬ薙の姿がある

「………」

ちらり、と冷蔵庫の上におかれた小さな鏡に視線をやる

竜胆 薙 > 左肩から、首元にかけてが赤黒く変色している

小さく溜息をつく
『生身の部分』に、後に響く被弾をするなんて、少し油断が過ぎた

冷蔵庫を開ける

中には食品なんかは入っていない
消毒用のアルコールと包帯がぎっしりと詰まっていた

竜胆 薙 > 鎖骨が砕けている
左腕の筋肉を動かす基礎基盤であるパーツの損傷は、活動に支障が出てしまう

以前怪我を負った時はユキヱ先輩に病院に担ぎ込まれてしまったが、
大抵の怪我は、基本的に自分自身で対処をする

そのほうが、下手に体のことを勘ぐられることもない

……とはいえ自然治癒を待つには少々長くなってしまいそうだ
人工骨に入れ替えるにしても、散らばった骨片くらいは除去しておかなければ炎症が酷くなる

「………」

折りたたみ式のナイフを取り出し、自身の肩口へと突き立てる
麻酔は必要ない
痛覚神経は幼いころに焼かれてしまっているからだ
……失血の心配があるから処置は手早くしなければならないが

ご案内:「居住区・ボロアパート」に流布堂 乱子さんが現れました。
竜胆 薙 > 僅かな月灯りの下で処置の無機質な音が響く

数呼吸ほどの僅かな時間、散らばった骨片がアルミ皿の上へ並べられる
……薄暗い室内はすっかりと血と埃の匂いが充満してしまった

縫合…は面倒なのでしばらく圧迫止血をしておく
体細胞の自己治癒能力は常人よりも高い故に、多少切開した程度ならこれで十分傷口は閉じる

流布堂 乱子 > ブーツの音が、アパートの正面で立ち止まる。
方向を変える踵の擦れる音の後に、表札を見るような迷いもなく、
規則正しい足音はそのまま連なって、薙の部屋の前で再び止まった。

ノックの音が二回。
「……流布堂です、夜分遅くにすみません。
少し、よろしいですか」
くぐもった声は指向性が強く、居るかもわからない他の住民には聞こえなさそうだった。

竜胆 薙 > 「……………」

じ、と入り口を見つめる
自分の部屋の前で足を止める人間など今までいなかった

とはいえ、そう間もおかず聞こえてきた声は耳に覚えがあり───

「……どうぞ、開いています。
 今、少し手が離せないもので」

とても人を迎えられる部屋ではないが、
今から部屋をぴかぴか綺麗にするわけにもいかないだろう

服は……同性だし別に良いか、程度にしか思っていなかった

流布堂 乱子 > 「……失礼します。」
このアパートを訪れるのは、二度目だ。
地図を見ながらつっかえつっかえ進んだだけに、間を置いての再訪とはいえ迷うこともなかった。

こうしてこの扉を開けるのは、初めてなのだけれども。
扉を開けて中から漏れた空気の臭いで、乱子は僅かに眉間に皺を寄せた。
生活臭と……濃い、新鮮な血臭。

ゆっくりと室内へと体を滑り込ませると、
僅かに紅い眼差しが薙を見つけた。
「事情を伺ってもよろしいですか?」

後ろ手に閉めた玄関に立ったまま、乱子が再びくぐもった声で尋ねた。

竜胆 薙 > 「乱子先輩でしたか。怪我を負いまして、処置をしていました」

圧迫止血をしつつ、目線だけをそちらへ向けてそう応える

「…それとも、乱子先輩の知りたい事情というのは、そういうことではなく…でしょうか」

くすりと口元に笑みを浮かべる

流布堂 乱子 > 「怪我、ですか。」
ブーツを脱ぐこともなく。
今もかすかな月影を部屋に呼びこむ窓に少しだけ目線を動かして、すぐに開ける状態かを確認してから、
もう一度薙を視界の中心に置いた。

「……興味を惹かれるところは、多々有りますけれどね。
でも、私の知りたい事情は確かに別口です」
その声音が真実かどうかは、口調からも表情からも読み取れない。
「昨日、学生通りで五名ほど……けが人が出ました。何か、ご存知のことはありませんか?」
相談に行った上司はこう言っていた。
『カマをかければ絶対に『殺したはずだ』と言う。これはそういう犯人だよ』と。

竜胆 薙 > 「…その件については私は存じあげませんが。
 ……立ち話も何ですし、こんなところでよければどうぞ?」
土足で構いませんので、と、僅かな灯りの下でにこりと笑う

やがて傷も塞がったのか、手慣れた様子で消毒を終えて簡易的に包帯を巻く

「今日はこの怪我のこともあって本部に顔を出せなかったものですから。
 明朝本部に行って事案を確認してみようと思います」

流布堂 乱子 > その笑みを見てから、ようやく乱子は視線を下げて一息ついた。
「ほんの確認に来ただけですので、お気になさらず。
怪我人に無理を強いるような先輩ではありませんし。
……この部屋と薙さんに興味が無いわけではありませんけれど。」
そう言って長居を辞しながら、

「いわゆる通り魔です。
切り口が弄られているので、薙さんではないと思いましたけれど…」
肩を壁に預けて、薙の疑問にはその場で答えた。
一度言葉を切ると、胸元から一枚の写真を取り出す。
……朱鞘と太刀を持った少女が、帯刀した青年に斬りかかっている。
少女の腕には腕章が見えるだろうか。
携帯のカメラの最大望遠で撮られた写真は、見る人が見ればこじつけられる、というレベルの解像度でしか無い。
「こういった写真のついた通報が有りましたので、一応の確認をしにきたわけです。」

竜胆 薙 > 「………」
ゆっくりと立ち上がり、冷蔵庫へと消毒液と余った包帯を戻し、向き直る
立ち姿を特に隠すでもなく、少なくとも今の姿を恥ずかしいと思う感情はないようだ

「成程、風紀の失墜を狙う人間は多いみたいですね。迂闊な行動は避けるべきかもしれません。
 ……その青年は殺気をもって帯刀していたもので、危険人物と判断したのですが。
 どうも殺気を殺せないほどに未熟なだけだったようです」

流布堂 乱子 > 「……綺麗なものですね。剣士には見えない。」
ひどく無遠慮に、乱子もまたその肢体を眺めている。
今はただの高校生の体で、特に鍛錬もしていない乱子からすれば、
その均整の取れた体つきへは正直な羨望が有る。

「成程。警ら中に起こった、正当な職務執行ということですね。
……私が前に見た時は、そのような青年には見えませんでしたけれど」
ファミレスで、可哀想なくらいオロオロしていたように思う。

「……しかし、控えることも無いと思うのですけれどね。
薙さんに追求の手が及ぶようなことが有りましたら、これでも縁のない身でもありませんから庇い立てしますので」
ふと思い返した青年の姿を振り払うと、乱子は淀みなく話を続けた。
……通報の真偽は、構わない。
乱子としては通報内容が真で、何らかの理由で薙から仕掛けたのではないかと考えていた。
そうでなければ薙が怪我をして、そのまま相手を帰すわけがない。それは『風紀の失墜』そのものでしかないのだから。
だが、それもどうでもいい話。
「これからも、存分に為されたほうがよろしいかと。
『学生通りの警備は風紀委員会の本分ですから』。」

流布堂乱子の上司には二種類ある。
刑事課の職務上の上司と、違反団体から風紀委員へと派遣された先の上司。
先ほどの確認は前者の命令で、今の発言は後者からの提案だった。
学生通りで事件が起これば起こるほど、『落第街の巡回なんて無駄』という世論は大きくなるだろうから、と。

竜胆 薙 > 「此処に来る以前に数々の敗北を経て、半分は造り物です」
そう応え、着痩せするほうなのかそこそこ豊満な胸元に手を当てて微笑む

「剣士同士ということもあるのかもしれませんね。
 ……勿論、私は私の直感に従いますよ。
 それよりも……本当に犯罪が落第街からこちらに滲み出てきていますね。
 いっそう、気を締めてかからねばなりません」

流布堂 乱子 > 「私も一度、生え変わるまでの繋ぎにと義足を作ったことは有りますけれど、アレは……
よく、剣士を続ける気になりましたね。」
なめらかに動く指先に、視線が吸い寄せられる。
義手だとすれば、精度はありえないほど高い。
……体の方が義体なのだとしたら、それはそれで凄い精度だと思う。

「ええ。事件を受けてまた学生通りの警備が増員されるかもしれませんし、
文化祭などは格好の標的でしょうから。
……落第街にこちらから出向く時季ではないのかもしれません。」

竜胆 薙 > 「私にはそれしかなかったものですから」

ふわりとした笑み
その四肢は精度の高い義肢なのだが、それを思わせない程度には繊細で人間としての動きをする
そして裸体を晒しているにも関わらず、あるはずの『継ぎ目』が見えないほどに肌は滑らかである

「…かもしれませんね。
 私もしばらくは落第街の警邏に割いていた時間をこちらにまわそうかと思います。
 ……落第街でコトが起こるよりも、圧倒的に深刻でしょうから」

流布堂 乱子 > 「そうでしょうね。
最後に行き着くのは肉体の条件も異能も越えて、当人がどうするかでしょうから。
そこに行き着くまでに選択肢は多いに越したことはないのですけれど」
もう、龍になる以外には手がない、とか。
そういう事にはならないほうがいいし、そんな状況で背負い込んだものは……
「……薙さんは、何処か、『どうしようもない』という笑い方をしますね。」

「そうしてもらえると私も助かります。……学生通りの警備に回された矢先に昨日の件ですので。
洲崎元教員を捕まえてもう少し余裕ができるかと思っていたのですけれど……そういえば、ご連絡を差し上げずにすみませんでした。」
静かに乱子が頭を下げた。

竜胆 薙 > 「………」
笑い方への指摘、
この少女にはきっと珍しいであろうキョトンとした顔をする

「…そう、ですか?
 私としては普通に微笑みかけていたつもりなのですが」
両手をあげて自身のほっぺをむにむにと揉みほぐす

「その件は報告書で把握しています。
 逮捕というのが少し気がかりではありましたけど」
一切の温情を与えずに処断
要するに殺してしまっても良いと考えていた
それくらいの危険性は孕んでいる男だと

流布堂 乱子 > 意表を突かれた少女が自分の笑い方を確かめているのを見ると、
つい吹き出してしまった。
「それでしたら、私がそう見たいと思っているのかもしれません。
他に道がなかった人は、そんな笑い方をするものだと」
どこか少女らしいその様子に、先程までのくぐもった声と違って普通の声が出た。
「あるいは、本当は薙さんにまだ異なる道があるからかもしれませんけれど。超風紀アイドルとか。」


「初めは、何もかも燃やしてしまうつもりで居たのですけれどね」
生け贄にされかかっていた少女も、あの異邦の神も、洲崎も、青垣山も。
「……同類相憐れむというところでしょうか。」
ぼそりと、どうしようもない真実として、彼が死ななければならないなら、自分もそうなのだということに気づきながら。

「理屈としては、手勢を連れていませんでしたし、彼自身の拠点もまだ明らかになっていませんでしたので、
逮捕に依るリターンがあると判断したからです。」
そう言って、なんとかごまかそうとした。

流布堂 乱子 > 「……と。」
乱子が素早く室内を見回す。
時計を探す目線は、それを見つけることを早々に放棄して。
胸元から携帯端末を取り出した。
「夜も遅いですし……その格好で風邪でも引かせては困りますから。
私は、そろそろ失礼致しますね。」

静々とした一礼の後に、
「……では、また明日。」
そう言ってから、扉を開けて。
訪れた時のようにブーツを鳴らしながら、歩き去っていく。

竜胆 薙 > 「……なるほど……(超風紀アイドル…?)」
正直目の前の先輩の理屈はよくわからなかったが、
ここで怪訝な顔をしてしまうのもなんだろう、と
いつもどおりの表情に戻す
超風紀アイドルという言葉には脳内に合致する存在がなかった

「……現場の判断ということで納得しておこうと思います。
 リターンがあるというのも確かなことではありますし。
 …‥…リスクも大きいとは思いますが、流石に監視には手練をつけるでしょうからそこは信頼するしかありませんね」

「……また明日」

反復するように言葉を返して、入り口の薄汚れたドアに阻まれるまで、先輩の姿を見ていた

ご案内:「居住区・ボロアパート」から流布堂 乱子さんが去りました。
竜胆 薙 > 「………」

なんとなく、そのまま簡素なベッドへと倒れこむ
少女の軽い体重を抱えてすら、ギギギと耳障りな音が室内に響いた

他に道がなかった人の笑い方

そんなことは、初めて言われた

道がなかった
なぜそんな言い方をしてしまったのか

実際には、自分がこの道をどうしても肯定したかっただけだ

寝そべるままに、自身の太腿へ指を這わせる
強めに肌を押し込み、ズラすようにするとカチリと機械的な音がして皮膚に切れ目が洗われる

パシュ、という圧縮した空気の抜けた音と共に、太股の中程から右脚が外れ、ゴトリとベッドの上に転がった

左脚も同様にすると、そちらも比較的簡単に縫合が外れ、義肢が転がる

竜胆 薙 > たまには自分の身一つで眠るのも良い、と思いつつ目を閉じる

「………」

ころりと寝返りを打つ

「……部屋着くらいは買っておかないとダメですね」

竜胆薙は制服しか着衣と呼べるものを持っていなかった

ご案内:「居住区・ボロアパート」から竜胆 薙さんが去りました。