2016/08/03 のログ
■加賀背 雄 > いえ、その…ちょっとびっくりした、のっ…ごめんね?
(なんだかのんびりした調子の妖精男子だけれど、思ったよりしっかりしているようだ。
するりと、音もなく思いっきり自分の眼前に降りてくる彼。 すっごく……顔が近い。
自分の発情した吐息がかかってしまいそう。 まさか吐息からバレたりはしないだろうけど。
大きな青い瞳に移るのは、自分の表情…だらしなく目尻を下げ、 小さく口を開けて…
すっかりメスのような顔の自分だ。 ごくりと息を飲む。)
っ……っはっ、あ、んんっ…うん、ちゃんとして、るっ…!
そうなの、少しね…、息、上がっちゃって…ぁ…♡
(優しい助言は、とっても優しい。 なんだか優しすぎてあんまり緊迫感がない。
答えようとするけれど、その声色が僅かに歪むのは、尻尾がお腹の中の弱い所を刺激するからだ。)
…っ…う、っ…う、うんっ、わたし、異邦人じゃなくて、本当は人間で……
ね、ねえっ、キミ?ええと…わたし、そんなに男っぽい、かな、ぁ…♡
(まるで真実に気づいているかのような、幼い精霊の言葉。
必死に反論するけれど、瞳も声も揺らぐ。膝が震える。
深くて青い綺麗な瞳が、まるですべてを見透かすかのように自分を見つめている――)
■リヒット > 暑苦しい夏の路地裏だというのに、顔が近い二人。とはいえ、リヒットの側からは体温を感じさせる熱気は漂ってきません。
色素の薄い小人の唇から漏れ出す吐息も、妙にひんやりとしていて、そして柑橘とハーブを混ぜたような爽やかな石鹸臭。
「ぷー……わかんない。おねーさんのこと、なんだかちょっと、おにーさんにも思えた。
でも、なんでそう思ったかリヒットにはわかんないし……おねーさんにそう言われると、やっぱりおねーさんにしか見えない。
怒らせちゃったなら、ごめんね」
可愛らしく作られた声、整った化粧。そして、発情した雌の相を帯びてきたその表情。
リヒットは小さな頭を横にかしげながら、前言を撤回します。
「でも、いほうじんのカッコしてるのは、ふしぎ、ふしぎ。にんげんの耳があるのに、いぬの耳もつけて。
リヒット、いままでこの島でそういうことしてる人、みたことない。とくに、いほうじんがいでは。
なんでかな。なんでかな」
口頭では前言を撤回しつつも、いちどは精霊の勘で相手の性別の謎に感づいたリヒット。そして、異邦人の装いも偽りだというのは本人の言。
どうやらこの人間に興味が湧いたようです。
戸惑いを見せる相手から目を逸らさず、トーンが高く性徴の感じられない声を奏で続けています。
今度は相手の頭部だけでなく、胸元から足先まで首も振りながらまんべんなく観察。股間にも躊躇なく視線を向けています。
■加賀背 雄 > (目の前の彼はすごくいい匂いがする。まるで石鹸のような。
いいソープとか、こんな香りだった、と思うけれど、目の前にいるのは
精霊?妖精?の男の子であることに変わりはない。)
ふふっ…う、ううんっ、怒ったりなんかしてないから、だい…じょうぶ、ぅっ♡
たしかにそう、だね…あんまり、そういう人いないかもしれないねっ…。
ふ、ぁ…♡ わたし、異邦人の人って、ちょっと憧れてるのねっ、だからぁ…♡
こういう格好っ、してるんだけど…なんでだろう、ねえっ…!
(彼の質問に怒ったりなんかしない。 事実であるし、騙されてくれる方が今は好都合だ。
とはいえ、不思議そうにする彼はしっかりと自分を見据え、丁寧に、
まるで調査でもするかのように自分に視線を這わせる。
幼い瞳に見つめられると、なんとも言えない快楽が全身から湧き上がってくるけれど…。)
ね、ねえっ、キミ。ちょっとだけ急いでるの、あのっ、いい、かな…♡
(彼に声をかける。 そう、こうしている間にも尻尾は動き続け、自分を苛んでいる。
すっかり出来上がってしまっている今の状態では、ふとしたきっかけで達してしまいかねない。
頑張って声を振り絞るも、最早絶頂に近づいているせいで嬌声にも似た、甘く高い声でお願いして。)
■リヒット > 「ぷー」
ただこうして道端で話しているだけだというのに、獣人のカッコをした人間はずいぶんと様々な表情の変化を見せています。
対するリヒットのほうは、徹頭徹尾無表情。感情が表に出ないだけのようですが。
「ふぅん、いほうじんに憧れてるんだ。
リヒットもがくえんで教わった。このせかいの人々は、いほうじんに対する理解を深めたがってるって。
おねーさんはそのために、いほうじんのカッコをしてるんだね。……そういうやりかたもあるんだね。べんきょうになる」
相手の発言と自分の中の情報をすりあわせ、とりあえずは納得するリヒットでした。
そして、いよいよ相手の挙動不審っぷりが極まってくると。さすがにリヒットも相手とのんびり談話してるわけにもいきません。
「ほんとに、大変そう。急いでるなら、止めちゃってごめんね。早く涼しいところに行ってね。
……あ、でも。せっかくお話してくれたんだし。つらそうなおねーさんに、リヒットにできるだけのこと、してあげる。」
なおも変わらない表情で、相手を心配するような言葉を紡ぐリヒット。
ふわりと身を路肩に反らし、相手の行く道を開けてあげながら、小人はスモックの袖をぷんと軽く振り、加賀背さんへ向けて3個ほどシャボン玉を飛ばしました。
それが加賀背さんへ命中したならば、リヒットがシャボン玉に込めた意思……『気分をよくしてあげたい』という気持ちが有形無形の力として伝わってくることでしょう。
それは本当に小さな力。例えば、ふと座った場所で四つ葉のクローバーを見つけたときのような幸福感。
あるいは、かゆいけど掻けなかった場所を掻いてもらえたときのような爽快感。
当たりどころがよければ(悪ければ)、さらに気持ちいい思いもできるかもしれません……。
■加賀背 雄 > ぷー。 う、うんっ。異邦人の人でねっ、すっごくっ…すごくぅっ♡っはっ…あ、
憧れてるひとがねっ、いて…うん、まずは格好から、そのっ、んんっ…!
真似、してみっ、みてぇっ……るの…ぉ…♡
(自分の中で納得した様子を見せてくれた彼に、胸の内で安堵の溜息をつく。
とはいえ、最早自分には一刻の猶予も無い。 ちら、ちらと彼を見て、
必死にアピール。)
ううん、せっかく話しかけてくれたのにっ、ごめんねっ…♡ わたし、ちょっと…
いい加減あぶっ、なくてぇっ…♡
(彼に謝罪するけれど、心配してくれているのだから罪悪感が残る。
とはいえ、ほんとうに…後ほんの少しで、達してしまいそうなところなのだ。
できるだけの事、ということばとともに、優しく放たれる可愛らしいシャボン玉。
そういえば、さっきも跳んできたような…と思ったところで、一つ目が
ぽつん、と太もも辺りに当たった。)
――ぁ♡ まっ、あっ、ああっ、これなにんっ、まっ……!
(シャボンが触れた途端に、頭のなかに快楽が一気に注ぎ込まれる。
ガクリと膝から力が抜けるも、慌てて近くの壁に手をついて。
彼にシャボン玉について確認しようとする前に、2つ、みっつと
自分にシャボン玉がヒットする。 そして――)
―――っ♡ あっ、うぁ……んあ、あぁぁっ…♡
(壁に手をついたまま、ぶるぶると何度も体を震わせる。
見る人が見れば、それは”達してしまった”ということが分かるだろう。
きゅうっとお尻が締り、震える尻尾を咥え込む。 強烈な快楽のショックが
何度も何度も全身を貫き……。ぐったりと壁に持たれかかり、浅く早い呼吸を
繰り返して。)
■リヒット > 「……お、おねーさんっ!?」
常時ぼんやりのリヒットも、さすがにこのときばかりはキンと響く大声を上げました。
相手の不快感を取り去ろうと放ったシャボン玉。それが触れた途端、相手は喘ぎ声を上げて壁に手をつき、うずくまってしまったのですから。
身を翻し、慌てて相手へと駆け寄ります。
……お尻でひくひくと蠢く尻尾。これも作り物のハズ。では、どこから生やしているのでしょう?
そして、壁際で荒い息を吐きつづける人間に対し手を出しあぐねているリヒットへと、漂ってくる不思議な匂い。
「……おねーさん、やっぱりおにーさん、だよね?」
どういうわけか、リヒットの知っている匂いです。
精液の匂い。人間をはじめとした、『精霊でない』生物の雄個体の大半が繁殖のために分泌する体液。これを雌個体に流し込むか、卵に掛けることで、次の世代が産まれるのです。
石鹸の精であるリヒットは、さまざまな事情により、前の世界にいた頃からこの体液に幾度と無く触れてきました。そう頻繁でもないですが。
目の前の、女性だと思っていた人間から漂ってくるほのかな精臭。さすがにリヒットも確信に至ります。
さて、だからといってどうだというわけでもなく。今大事なことは性別でなく、目の前の人間がつらそうにしているという事実です。
「……ごめんね、リヒット、気付けなくて。おねーさん……じゃなくて、おにーさん、熱中症じゃなかったんだね。
交尾したくて、あんなにつらそうにしてて、こんなところを歩いてたんだね。
リヒット、人間と交尾できないのに、おにーさんに変なことしちゃって、ぴゅってさせちゃった。ごめんね……」
心配そうに絞り出す声はどこか震えています。そして、壁に手をついてうずくまる加賀背さんの背に、ほのかな重みが寄り添います。
リヒットの冷たい身体がぴたっと密着してきています。少しでも相手の火照りを冷まそうとしているのでしょうか。
「だいじょうぶ……? リヒットのせいだから、リヒットにできることは、できるだけやるよ……」
■加賀背 雄 > っはーっ、ぁ…♡ はひゅ…ふ、ふぁぁぁ……♡あ…っ♡
(荒い息をつきながら、呆然と、恍惚とした表情。
可愛らしい妖精さんのせいか、はたまた自分のせいか…
絶頂に達し、壁際にへたり込みながら余韻をたっぷりと楽しむ。
本当はいけないことのはずなのに、この快楽はあまりにも強烈すぎた。)
………
(可愛らしい彼の、確信にも似た問いかけには、頷くことしかできなかった。
荒い息をつき、自分が雄であることを、そしてメスの格好をしていることを…
達してしまったことを、無言のうちに示す。)
そんな…そんなの、わたし…ううん、キミは悪くなんかないよ!
わたしが、我慢できなくて…えっちなこと、興奮しててそれでっ…!
(まるで自分が罪を犯したかのように震えた声の彼に、
必死に言葉を返す。 悪いのは自分だ。 彼をただ自分の欲望に使おうと、
騙そうとして、あげくこんな風に心配させてしまっている。
快楽の余韻と悔恨に呻いていると、そっと背中に触れる軽い感覚。
紛れも無く、精霊の彼が、自分に触れているのだ。
ひんやりとした体が、自分からゆっくりと余韻を取り去ってくれる。)
…っはーっ、ぁ…♡ ありがとう、リヒット…くん。それじゃあ、お願いがあるんだけど…。
(自分に優しく優しくしてくれる、素敵な精霊さん。 純真な彼を
自分の快楽のために使うのは気が引けるけれど、
儚げな声が、密着した体が…自分に甘い快楽をもたらす。)
リヒット、くん…ね、それなら…わたしと、しばらく一緒に、”お散歩”してくれないかな…?
(純然たる異邦人である彼が隣にいてくれれば、ここらへんの散歩もし易いだろう。
優しくほほえみかけるとゆっくりと立ち上がり、そっと彼に手を伸ばした。)
■リヒット > 水の精霊の冷ややかな身体を、加賀背さんの背中に預けるリヒット……その構図だけ見るなら単なるおんぶですが。
そういう体勢ゆえに、放精の快楽に歪む加賀背さんの痴情がリヒットから見えなかったのは不幸中の幸いといえましょうか。
余韻に浸る女装男子に対し、どうしたものかと困惑を見せるリヒット。すっかり立場は逆転です。
「ぷ……ぷー……でも、ぴゅってするのすごく体力使うって話だし。
こんな暑いとこで体力まで使っちゃったら、おにーさん、もう倒れちゃいそうだし……」
涼し気なブラウスを掴み、ぎゅっと小さな身体を押し付けるリヒット。
2枚の布越しに伝わる冷感は流水のごとく確かなもので、それでいて、衣服を引っ張る力こそ感じるものの『重さ』はほとんどありません。
絶頂の余韻にわななき、相手の肉体から香り立つ汗とフェロモン。
リヒットはそれを嗅いでも特に変化はありませんが……いま抱きすくめる肉体が確かに男性のそれであることの確信を深めていきます。
異邦人の耳と、女性の着衣を着こなして、交尾を求めて路地を歩く。なんとも妙な人間がいたものです。
そんな不思議な背中越しに、相手の要求に耳を傾けるリヒット。しかし、予想外の内容に、思わず首をかしげます。
「……おさん、ぽ? おにーさん、リヒットとおさんぽしたいの? 他の人間と交尾したくて、ここに来たんじゃないの?
それに、ぴゅってしたのをそのままにして、へんな感じしないの? ふしぎー……」
なにはともあれ、お散歩などという要求をよこしてくる相手。少なくとも体調のほうはもう大丈夫なのかもしれません。
背中を離れ、ふわりと宙で円を描き、加賀背さんの前へと身を移すリヒット。くりっと見開かれた瞳は先にも増して興味津々の色。
これまでに常世島で出会ったどんな人間よりも……いえ、どんな異邦人よりも、この男性は不思議な存在です。
「まぁ、いいよー。リヒットも、おさんぽは大好き。おにーさんがしたいなら、してあげる。
ほんとに熱中症になっちゃわないように、涼しくもしてあげるー」
言ってリヒットは、両手を翼のようにはためかせ、何十個ものシャボン玉を路地に満たし始めました。
それが割れた端から、湿った涼風が弾け、二人を包みます。さすがに文明の利器たる冷房には敵いませんが、不快指数は下がるハズ。
「交尾したい人を見つけたら、リヒットは帰るから、言ってね。じゃー、いこー」
露出狂が2人、並び立って歩き始めました。ひとりは宙に浮いてますが。
ご案内:「異邦人街・裏路地」からリヒットさんが去りました。
ご案内:「異邦人街・裏路地」から加賀背 雄さんが去りました。
ご案内:「落第街・路地裏奥」に影打 鈍さんが現れました。
■影打 鈍 > (ちぐはぐな格好をした少女だった。
ゴシックとパンクと和を袋に入れて適当に振り、そのまま皿の上にぶちまけたような印象の少女。
相対するは銃や異能で武装した数人の男女。
文字通り数の暴力を前に、レイピアのような柄の抜き身の日本刀をぶら下げたまま感情の無い瞳でそれらを見ている。
武装した男女は少女を取り囲むように立ち、今まさに少女の命が蹂躙されようとしているようにに見えるのだが、少し違う。
少女と彼らの間には更に数人の男女が血溜まりに沈んでいる。
彼らは皆身体に刀傷を負っていて、脚や腕を切り飛ばされているものも居た。
蹂躙しているのは武装した者達ではなく、たった一人で黒い刀だけを持っている少女の方だ。)
「うわああ!」
(錯乱したような声と共に銃を放つ青年。
その銃弾は声に反応してそちらを向いた少女の額を確実に捉え、硬質な音と共に弾かれた。
次の瞬間、少女が動く。
歩き難そうな高下駄で滑らかに少年との間合いを詰め、刀を振りあげる。
少年は右脇腹から左肩口にかけてざっくりと斬りつけられた。)
ご案内:「落第街・路地裏奥」に水月エニィさんが現れました。
■影打 鈍 > (それを切欠に彼らは銃弾や異能を浴びせだした。
銃弾や炎の塊、氷の槍などが少女へと飛来する。
しかし銃弾は先ほどと同じように弾かれ、炎の塊は弾け飛び、氷の槍は砕け散った。
次々と繰り出される攻撃の悉くが同じ結果に終わる。
その猛攻をものともせず、地面を蹴る。
カコン、と言う下駄の音が響き、炎を繰り出す少女の懐へと潜りこんだ。)
「や、やめ――」
(炎の少女が一歩下がるがもう遅い。
再び刀を振るい、少女の他に二人の男女の血が噴き出す。
直接斬り付けられた少女は脚から、青年は腕から、もう一人は肩口から。
他の者から見れば、少女が刀を振った瞬間、他の二人も見えない刀で斬り付けられたように見えただろう。)
■水月エニィ >
怒声とは別種の悲鳴。
血の香り。駆け付ければ血溜まりの路地裏。
ボタン一つで委員への通報を定型文と位置情報のみのメールで済ませた後、状況を確かめる前に躍り出る。
「――ァ、Laアァァアッ!」
身を厭わぬよう躍り出て、棍に見立てた長布を横薙ぎに叩き付けに掛かる。
それは棍足りえる質を以って、日本刀めいた獲物を持つ少女に迫る。
割って入って押しのける。それを狙いとした奇襲だろう。
見ていられない。そう言わんばかりの闖入者だ。
■影打 鈍 > (裂帛の気合と共になぎ払われた棍は、自身の首へと突き刺さる。
振り向いたところへ叩き付けられ、小さい身体は横合いへと吹き飛ぶ。
しかし布を振るう彼女へ返った感覚は、とんでもなく固いものをブン殴ったような感覚であり、更に飛ばされながらも右手の刀を振るって彼女の手首を狙う。)
――人の中には見て見ぬ振りが出来ぬ者が居ると聞く。
その類か。
(そのまま地面を転がった。
しかしすぐに何事も無かったかのように立ち上がり、服の埃を払っている。
感情の無い十字紋の浮かんだ瞳で、何故飛び込んできたのか、と言うような顔。)
■水月エニィ >
異様な手ごたえの重さと反撃の色を見れば警戒を緩めず、長布を波打たせる。
己へ向かう右の刀を、返しで弾く。長布はその繊維を破る事なく役目を果たす、か。
「……ええ そうよ。悪い?」
間合いを取り直し、長布を鞭のように撓らせた。
……強い敵意と共に言葉を吐き出せば、周囲の空気が少しだけ冷える。
■影打 鈍 > 悪いとは言っていない。
理解は出来ないけれど。
(右手で刀をくるり、くるりと回す。
そのまま顔の高さまで持ち上げ、切っ先を彼女の顔へ向けて構えた。
ちょうどフェンシングのように。)
私はただ「食事」をしていただけ。
誰も殺していない。
家畜を殺して食事を得るお前たちよりは、「道徳的」だと思うが。
(彼女が何故そこまで敵意を向けてくるのかは分からない。
自身は人ではないし、彼女は刀ではないのだから。
わかるのは、彼女が自身の食事を邪魔した事と、彼女を排除しなければ食事どころでは無いということ。
下駄の音と共に踏み込み、刀を突き出す。
膝の力を抜き、落下の速度を踏み込みの速度に乗せる、初動の読みにくい歩法。
そして刀そのものに隠すように、刀の下から突きの斬撃も飛ばす。)
■水月エニィ > 吠える。
感情に任せて吠え立てる度に、気温が冷え込む。
……よくないもの、あるいは霊の類を引き寄せている。
「――そんなのは詭弁よッ!
だからと言ってお前が食べ散らかしていい理由になるものか――!
食べ散らかす暴力(わがまま)が、道徳を語るな……!」
癪に障ったのだろう。
更なる激昂を見せ、吠える。叫ぶ。
……奇怪な構えを見せたが"どうせ来るのだ"。
ならば大幅に外してやれば良い。
反撃を放棄して横っ飛びに太刀を拒むも、第二撃がエニィの左足を掠めた。
肉が欠け、血があふれる。
「ぐ、ぅッ……!」
■影打 鈍 > 猫は腹が減れば鼠を取るだろう。
それと何が違う。
(詭弁はそちらだと挑発しているわけではない。
自分はこうだと主張しているわけでもない。
単にその違いが分からないと疑問に思った事を口にしているだけだ。)
それに私は道徳が何たるかが理解できない。
「むやみに命を奪わない」と言うのは道徳的におかしいのか?
それとも「食事をするならきちんとすべて平らげろ」と言うことか?
(言葉遣いはともかく、口調は子供が親に尋ねるようなそれ。
そんな口調とは裏腹に、刀は澱みなく彼女を追いかける。
突いた刃を寝かせて、飛んだ彼女を追いかけるように振るう。
刀の上下に目視出来る魔力の刃を生み出して、刀は胴を、上の刃は首筋を、下の刃は脚を狙う。)
■水月エニィ >
「――そうよ、お前も含めてそうだ!
どいつもこいつも――!」
瞬時に布を左手腕に巻き、三本の魔力の刃を同時に叩き壊す。
三度叩き壊した辺りで、赤いものが滲んだ。
「ええッ、猫は腹が減れば鼠を取る!それと何も違わないわよ!
だからこそよ。我が物顔で自分は理性的だ道徳的だの!
痛めつけられるこっちの身になってくれれば、にッ!」
目の前の少女の正体は知らぬ。
故に、そのように告げるだろう。
……それこそどちらが道徳的か、分からぬような荒ぶり方だ。
エニィの誰に向けたかすら分からぬ恨み言が霊を呼ぶ。
周囲の空気も冬の如く冷え込んでいる。
激昂し殺気立っている。最早抑えが効いていない。
――文字通りの捨て身を以って、左手を突き出しながら顔を掴み、
そして引っかかんと飛び掛かる。
■影打 鈍 > なにをそんなに激昂している。
(よくわからない。
彼女が怒っていると言う事はわかるのだが、その怒りが何に対して向けられているのかがわからない。
魔力の刃は打たれればガラスのように砕け、刀は大きく弾かれる。
彼女にそれを感じる余裕があるなら、刀を打った感触と先ほど自身を打った感触が似たものだと感じるだろう。)
そうか、違うのか。
人の理は理解出来ない。
ならば――
(何かを言いかけ、顔面を掴まれた。
それまでの刀捌きが嘘のように無抵抗で掴まれ、されるがままにされている。
引っかかれても金属をこすり付けたような音と感触がするだろうし、自身も血の一つも流さずに棒立ちして。)
――痛めつけられるのが嫌ならば、そう言えば良い。
やはり理解出来ない。
(刀を鞘に納めた。)
■水月エニィ > 余裕はない。
顔面を絞めに掛かっ た 所で 力を抜いた。
……無抵抗のものを殴れるものか。
荒ぶるものを抑え、
「……違わないのよ。
訳が分からないわよ……貴方は何なのよ……」
理解が出来ない。
食事を行うのは当然だと言う。
誰も殺していないからお前達よりはと引き合いに出したかと思えば、分からないと言う。
かと思えば、素直に攻撃を止める。
だまし討ちの布石かもしれないが、そうは思えなかったし、思いたくない。
結果、脱力して膝から崩れ落ちる。
したいが出来る故に驕る強者でも 出来ないが故に振り回される弱者でもない。
あっさりと抵抗を止めた事は、エニィにとって到底理解しがたいものであった。
■影打 鈍 > 私は刀だ。
黒刀の影打、銘は鈍。
(なんなのか、と問われたので素直に答える。
同時に鞘に入った刀を突き出し、本体はコレだ、と言外に告げる。)
私は答えた。
汝の名も告げるのが礼儀だと、前の主は言っていたぞ。
(礼儀を理解しての言葉ではない。
それが礼儀であり、人は礼儀に従って生きるものだと言う知識に照らし合わせて行動しているだけだ。
だから彼女が膝から崩れ落ちてもどうとも思わないし、大丈夫かと問うこともしない。
人ではないのだ。
人のカタチをしたものが、人の真似ごとをしているだけ。)
■水月エニィ >
「刀じゃない。それが貴方って言うのかしら。
――水月エニィ。今はそう名乗っているわ。」
訝しげに刀(ほんたい)へ視線を送った後……小さく首を振る。
激昂するにも無抵抗にされてしまえばどうしたって殴れないし怒れない。
そのようにしてくれるものを殴れるものか。
「……殺されなくても痛いのは嫌よ。
傷付くのも、喰われるのも、誰だって嫌よ。」
だが、それで良い訳ではないとは思う。
血に濡れた生徒たちを見なかった事にすることも、食事と主張した彼女も。
誰も殺していないと言えど、彼らは傷付いている。
詭弁とは言えそう主張しつつ道徳を知らぬと言う。
故に話が通じないとも言えないし、悪意でもなければ弾劾する事も出来ない。
名乗りを返した後も途方に暮れ、崩れ落ちたまま俯いている。
無力だと言わんばかりに項垂れたか。
少なくとも、神でも委員でもない私に彼女?を罰する正当性はないと認識した。
■影打 鈍 > そうだ。
汝ら人間は妖刀と呼ぶ。
えにい。
珍しい名だな。
どう書くのだ。
(元の世界では漢字の名前が一般的だった。
故にエニィと言う名がどう言う字を書くのか気になるらしい。
無表情だが、どこか無邪気に感じるような口調で尋ねて。)
だろうな。
私とてこの身を折られては困る。
(簡単に折れるような存在では無いのだが、物理的に折るのがほぼ不可能と言うだけで、折る方法はいくらでもある。
そうなれば自身は死ぬのだろうし、せめて主に使われる中で死にたい。
その感覚だけは人も自身も同じものだろう。)
しかしな、えにい。
私をこうあるべきと定めたのは人間だ。
そもそも刀は命を奪うものだろう。
人の血を吸い、命を喰らい、是も非もなく人を殺す道具として特化させたのは、人間の仕業だ。
作るだけ作っておいて、いざそう動けばそれは駄目だ、とは道理が合わんではないか。
(追い討ちをかけるような言葉だが、他意はない。
ただただ本当に道理が合わない、と感じているからそう告げているだけで、それ以外の意味など微塵もない。
その言葉をどう取るかは彼女次第ではあるのだが。)