2016/08/04 のログ
■水月エニィ >
「漢字は、ないわよ。」
そもそも、"エニィ"は自分で付けた名前だ。
ある種の皮肉のようなものであり、カタカナで書くものだ。
「……分かっているわよ、そんな事。
だから貴方の様にそれが許されてる奴は、恨めしいのよ。
誰も彼も、私たちを餌としか見ない癖に。」
分かっている。そうありたいものがそう出来ない。
今こそ平和を享受せどそれを忘れる事はない。
主張はもっともだ。譲れぬ主張同士が衝突すれば、より強い方が主張を通せる。
水月エニィは其処に善は無いと思っている。それが恨めしい。
「……私は逃げる。貴方をどうすればいいか分からないから、逃げる。
勝てる気がしないから、逃げる。……弱者を傷付けて食事をするなら、また相対することもあるでしょうけど。
我儘でも無謀でも我慢ならないの。」
疲弊した素振りで立ち上がる。去るつもりだろう。
脚と腕からは溜まりを作る程の鮮血が流れ落ちている。
■影打 鈍 > 漢字はない。
ふむ、やはり元居たところとは違う世界なのだな。
(あたりを見渡す。
元居た世界ではこのような石――コンクリートの建物はなかったし、夜もこんなに明るくはなかった。
分かってはいたが、改めて実感する。)
許されている?
ここではそう言う法があるのか?
ならば汝もそれに従えば良いだろう。
餌と見られたくなければ、毒を持て。
それが出来ぬなら、利用すればいい。
(毒草は毒を持つことによって餌として見られないようになった。
また果実を持つ植物は種を食わせる事で生息域を広げてきた。
自身も同じだ。
人間にそう作られた身ではあるが、そう在れとされたのであればそう在るだけだ。
モノ故に単純にそう考える。)
そうか。
だが汝の目論見は叶ったようだぞ。
そう言う意味では、この場は汝の勝ちでいいのではないか。
(言ってあたりを見回す。
いつの間にか数人居た男女は姿を消している。
倒れていたものも残らず居なくなっており、残っているのは血溜まりだけだ。
だとすれば自身の目的は果たされておらず、自身の思うようにさせなかった彼女の勝ちだろう。)
――ふむ。
ならば取引といかんか。
汝の血、私に寄越せばしばらくは人を襲わぬと約束しよう。
魔力量に不安は残るが、人を傷付けずとも魔力を得る方法はある。
……正直アレはあまり好まんのだが、贅沢は言えん。
■水月エニィ > 「いくらそうした所で実らないものもあるのよ。」
疲れた具合で否定する。
努力を怠っていないと意を示し。
「精々引き分けね。妖刀の貴方は此処に居る。
……ええ、血なら幾らでも捧げましょう。」
ためらいもなく近付き、尖ったコンクリート片を拾い上げて己の右掌を串刺す。
そうすれば、肉から破片を伝って鮮血が滴る。……ある種の聖性を齎す以外は普通の血液だ。
■影打 鈍 > いつの世も人は思うままに生きられん、か。
やはり理解出来ん。
(思うままに生きれば楽だろうに、と思う。
しかし今まで見て来た誰もがそうであったし、自身の歴代の主もそうだった。
好き勝手に思うがままに生きたものはほんの僅かで、その誰もが人々から疎まれ孤独に死んでいったものばかりだ。)
ありがたい。
では。
(滴る鮮血に刀を晒す。
刀に触れた血液はそのまま刀身に吸い込まれるように消えていく。
同時に刀身の切っ先から根元にかけて、脈動するように光が走る。
普段は黒い刀身だが、その光のおかげで黒ではなく濃すぎる赤と言う事が良く分かるだろう。)
――美味であった。
約束どおりしばらく人を襲うことはせん。
では、またな。
(刀を鞘へ納め、踵を返す。
カランコロンと下駄の音を鳴らしながら路地裏の更に奥へと歩いていき、やがてその音も聞こえなくなるだろう。)
ご案内:「落第街・路地裏奥」から影打 鈍さんが去りました。
■水月エニィ >
「……。」
無言で見送る。
通報していたことを思い出せば帰ろうとする足を止め、
状況説明の為にその場に残る。
暫くの後に風紀委員の一人が来る。
誰も彼も行ってしまった事を伝え、厳重注意を受ければ近くの病院へと護送された。
ご案内:「落第街・路地裏奥」から水月エニィさんが去りました。