2016/09/01 のログ
ご案内:「女子寮 ***号室」に谷蜂檻葉さんが現れました。
■谷蜂檻葉 > 「――――ああぁ、もう…ビショビショ!気持ち悪いぃー!」
荒く音を立ててドア開くと、もどかしげに靴を脱ぐと彼女はそのままバスルームへと駆け込んでいった。
間もなく、白いタオル―――いや、雑巾なのだろう―――を持ってくると後から入ってきた彼女/彼の足元に投げた。
「ごめん、あがる前に足だけ拭いてもらえる?
兎に角体を温めましょ、夏も終わりだけど風邪引いちゃうわ。」
常世島では―――常世島でなくとも、夕立はある。
二人で買い物をしながら帰っていた二人が、ふと頭の上に落ちた水滴に気づいて駆け出そうとしたその僅かな時間にその雨粒は滝のように勢いをまして二人を濡れネズミに変えてしまった。
「着替え…は、多分はいるでしょ。 私の分を貸すから先シャワー浴びててね。」
檻葉は、そういって濡れた服を無防備に脱ぐともう一人の前で下着姿で部屋の奥へと足を向けた。
ご案内:「女子寮 ***号室」に癒斗さんが現れました。
■癒斗 > 普段はくるくるとクセを描いている薄紫の髪も、今は水分を含んで直毛に近い。
癒斗は投げられたタオルを有難く受け取ると、谷蜂に向かってお礼の言葉を投げた。
サンダルを脱ぎ、足を拭くところに来た"先にシャワーを浴びてて"というセリフには、
雨水とは別のものがぶわりと浮き上がる。いわゆる冷汗というものだ。
先に?いやいやいや、そんな危険な橋は渡れない。
それに谷蜂さん、いくら女子寮だからって無防備に脱ぐのもどうかと思います。
「あっ、えっ、んだっ、だいじょうぶです!
私は後でも良いので、谷蜂さん先に身体を温めてきてください!!」
自分は体温調節も魔術でどうにかできるので!と慌てた。
はたから見れば、ただ遠慮しているだけにしか思えないだろう。
タオルだけでも十分です!とばかりに、手をぶんぶん振っている。
■谷蜂檻葉 > 「お約束だけど、そういうの良いからさ。
ほら、入って入って。 お客さんが濡れてる方が嫌なんだってば。」
ゴシゴシとタオルで身体を拭きながら、癒斗を押しこむようにバスルームへと誘導する。
『友人』という枠組みに入ると、急に緩くなるのが檻葉という女の特徴だった。
そこには「味方」や「仲間」など他の言葉も入るが、偏に『身内』の境界線の内外の差がそこそこにある。
身体のラインはお世辞にも綺麗とはいえない、そのスタイルを他人に見せるのを嫌がる彼女だったが、
目の前の「困った人を助ける為」に立ち止まることもなく、ゆるく笑うばかり。
癒斗の必死さの裏など欠片も気付かずに、『優しい遠慮しい』だとしか思っていない。
そんな強引なお節介だ。
「シャワーを浴びればてっとり早いでしょ? ほら、私も風邪引いちゃうから早く早く。」
■癒斗 > でも、という言葉が谷蜂の姿でングッと飲み込まれる。
顔色が一気に変わるということは無かったが、それでもしどろもどろになった。
男の性も女の性も持つ癒斗にとって、"女の子"である谷蜂檻葉がこのような姿で傍にあるというのは、
非常に――そう、とても厄介なことなのである。
インドア寄りの体型だとしても、年頃である柔かい線が失われているというわけでも無い。
癒斗はずるずるとバスルームに引きずられながら、どうして幻術科(または変身学)を取らなかったのか後悔していた。
(あああああ、ここで変に断っても訝しがられちゃうだろうし…)
だからといって、谷蜂の押しをサッと切り返せるような機転は生まれなかった。
「じゃ、じゃあ手早く済まさせてもらいます………」
結局、誘導されるがままにバスルームで脱衣であった。
癒斗の上半身は他の女性と変わりなく、たわわな曲線と緩やかなくびれを作っている。
問題は下半身だ。女性の前に男性がある。酷く目立つ程度ではないが、確実に。
脱衣中からしてすでに、背後が気になって仕方がない。
■谷蜂檻葉 > 「そうそう、素直が一番ってね♪ ええと、それじゃシャツを――………」
パタン、と扉が閉まると声がゆっくりと遠ざかっていく。
洗面台と、二人がギリギリ同時に立てる程度の広さしか無いシンプルなバスルーム。
お風呂に直通の一間から横を向けば洗面台の大鏡に自らの身体が映る。
おおよそ、男子寮も女子寮も作りに変わりはない。
ただ、そこに置かれた『女の子の洗面具』の違いが余計に浮きだって見える。
自分が、今他人の部屋に裸でいるという際が、浮きだって見える。
■癒斗 > 心臓が強く脈打っているせいか、どこか音が鈍く聞こえる。
バスルームの作りはそのままだし、化粧水が置いてあったりするのも分かる。
癒斗も化粧水やクリームくらいは使うし、自分の酷い寝癖を直すためのスプレーもある。
ただ、ここは完全に"女の子のバスルーム"なのだ。
しかも知り合いの、言うなればそこそこ仲良くさせてもらっているはずの。
知らない匂いがする。シャンプーやボディソープだとか、そうではなくって。
未だに引かない冷汗の意味が、若干ながらも変わっていく。
(何回か女子寮には上がらせてもらったことはありますけど)
(この状況は本当によくない……良くない…。はやく済ませて交替してしまないと)
(何より風紀員行きは避けたいのです!)
谷蜂の耳には、バスルームからの水音が聞こえるだろう。
癒斗は濡れた服をまとめている。下着は服の中。見た限りでは、本当にただの女の子の服だ。
■谷蜂檻葉 > 「そういえば、買った袋――― うわ、中身もダメかなぁ……。」
一方その頃、檻葉はゴソゴソとリビングで買い物袋を漁っていた。
片手でクーラーをつけると、びしょ濡れの紙袋からしっとりとした紙箱を取り出す。
『近所の知る人ぞ知るパン屋で、新しくミートパイを売り出し始めたんだって!』
今日の事の発端は、この檻葉の一言にあった。
図書委員としての仕事の帰り。
ルームシェア相手の帰りが翌日になるということを思い出して、夜ご飯を買おうと一緒に帰宅することになった癒斗に、そんな提案をした。 最後の2つをギリギリで手に入れ、ほくほく顔で帰った―――その途中がコレだ。 惜しいことをしたな、と思いながらもフタを開ける。
「あ、やった!」
そこには箱のガワだけが濡れ、中まではバターの光で輝くミートパイの双子の姿が!
「――――ゆーとーちゃーん! 買った奴、無事だったよー♪」
癒斗が一通りシャワーを浴び終えたその時、バスルームの扉が開かれ歓喜の報告があげられた。
彼女/彼が何を最も恐れているかも知らず、恐怖の根源が薄い扉を隔てて傍に立つ。
―――シャワールームの曇りガラスには、ぼんやりとしたシルエットだけが映る。
■癒斗 > 声に驚いた、というには少々オーバーすぎるリアクションがガラス越しに行われる。
シャワーヘッドを取り落しそうになっている動きである。もちろん、それは免れた。
谷蜂の姿はぼんやりとしか確認できない。不幸中の幸いだろうか。
「あっ、ミートパイ無事でしたか!それまでずぶ濡れじゃ無くて良かったです」
うわずり気味の声だが、パイが濡れていないのは素直に嬉しい。
思わずニコニコしてしまいそうなくらいに見事な黄金色をしたミートパイだったのだから。
曇りガラス越しの癒斗は、肌色に薄紫が目立つ程度だろう。
バスルームの中の正体だが、若干内また気味の癒斗が髪をまとめ直したところである。
髪が長い分、流すのに少々時間がかかっている。本人はめいっぱい急いでいるのだけども。
タオルで拭いきれなかった足元の小さな汚れもとれている。あと少し――。
――…下半身事情はといえば、まだなんとか平静を保っていた。
■谷蜂檻葉 > 「ほんと、不幸中の幸いよね♪
あぁ、着替え良いの見つけたから置いとくね。 前に間違えて買っちゃった1サイズ大きいのがあったからこれなら絶対はいるはず! っていうか、ブカブカだったら別の出すから言ってね?」
可愛らしい、しかし外には着れない少しばかりブカブカのTシャツを置いて扉に視線を向ける。
そろそろ、癒斗も洗い終える位かな。
―――そう思い。
「……あ!
小さいタオルだと癒斗ちゃんも髪長いから乾かしきれないよね!うわ、何で気づかなかったんだろ!」
私も髪長いから大変でさ、なんて。
ガチャンと。
親切心のままに、バスルームと浴場を繋ぐドアをバスタオル片手に押し開けた。
■癒斗 > 髪の毛などが乱雑に落ちてないよう、軽く周りを流して。
もう後はタオルで下半身を隠してしまえばと、すっかり油断していたのだろう。
ちょうど、癒斗も浴室のドアを開いていた。ぶどうの香りが湿気を含んだ状態で、むわっと広がる。
かち合ってしまった。
「あっ……」
ありがとうございます、というべきなのだろう。
しかし、癒斗の口をついたこの言葉は、お礼の頭文字では無かった。
谷蜂が目の前にいる。この最高に最低なタイミングで!
シャワーで有難く温まったというのに、癒斗の顔色がさあっと青ざめた。
同性なら問題無い程度の、非常に無防備な姿で軽い思考停止に陥る。
もちろん、その前を隠す余裕すら無いまま。
■谷蜂檻葉 > ―――ぴちょん。
時が止まったように、中途半端な姿勢で二人が固まる。
芳醇な葡萄の香りを含んだ湯気がバスルームに流れて鏡を白く染め上げ、
ポタポタと癒斗の髪から止めどなく落ちる水滴が時間の経過を伝える。
「―――あ、えっと……ごめんなさい……。」
湯気が流れでて、互いの姿がくっきりと見えるようになってようやく。
呟くように、檻葉が先に声を出した。
ただ、その言葉は『何を言えば良いのか解らずに取り敢えず出した』という他なく。
その視線は癒斗の股間部に付いた”イチモツ”に釘付けだった。
この瞬間思考を占めていたのも、何を言葉にするかというよりは”イチモツ”について考えていた。
深い意味はなく、ただ見るはずのないもの―――幽霊でもみたような顔で見つめてしまう。
なぜ、なに、なんで
正常な文字情報になる前の単語だけが、脳内を静かに暴れまわる。
■癒斗 > ほんの1分もない出来事のはずが、重く長く感じられる。
谷蜂の言葉が無ければ、癒斗が我に返るのはもう少し先だったかもしれない。
ハッとしたように眼を開いて、慌てて小さい方のタオルに手を伸ばした。
それで前を隠すようにしてから、どうにか、なにか気の利いたことを―――
「いえっ、その………お、おふろ………あきました………」
言えなかった。ごまかしでも何でもない、明後日の方向の言葉しか出なかった。
見られてしまったという事実が苦く締め上げてくる一方で、
全身が過敏な状態に陥った癒斗の下半身は、少々機嫌がよくなっていた。
そうなる前にタオルに手が届いたのは、致命傷を避けた部分だろう。その瞬間が見えたかどうかは、谷蜂のみぞ知る。
「……………あ、う、ぅ………」
動こうにも動けず、谷蜂を直視することも出来ず。
情けないうめきをあげながら、へっぴり腰のままだ。どうしたら、どう切り出せば。
■谷蜂檻葉 > 互いに、下着姿にタオル一丁。
驚く程気まずい空気に、フワリと爽やかに甘い葡萄の香りが不釣合いに漂う。
さりとて女といえど花も恥じらう20の手前。
齢19にもなって、モノの一つや2つ――――
「……その、【ソレ】……」
"現物" なんて見たことなかった。
気の迷いで手にとった『小説』の描写で、息を潜めて携帯を通して『社会勉強』をした映像の中で。
『世の中にはこういうものがあるんだ』
そんな風に、傍にあって遠い何かを知った気になっていた。
それはレシピ本を見てから、初めて料理をした時に似ている。
「解ってる」と頭の中で、『本物』を著作を通したフィルターで眺めて手を付ける時の混乱。
―――そして、一欠片の高揚。
「……”本物 ”……?」
【恥ずかしがった】 というのも違う。
【侮蔑したような】 というのも違う。
【好奇心に満ち溢れた】表情で、檻葉が癒斗に掠れた声で問いかけた。
■癒斗 > わずかに背を丸めた状態で視線を泳がせていたが、
谷蜂の言葉にそちらを向き、アメジスト色をした眼をまた忙しなく横に反らす。
視線は外したまま、その問いにはゆっくりと、しかし小さく頷く。
彼女が持つ鮮やかなオレンジと肌色が、ただただ眼に眩しい。
「そう、です…ね。わたしの、です。"コレ"は……」
タオルに隠れているが、"このように"きちんと機能しているのだ。
「………あ、あの、そのです、ね?騙してたとか、そういうわけじゃ無く……」
もごもごとした気まずそうな声で、どうにか言葉を続ける。
「もともとこういう性別、でして………あの、ああぁあの、えーと。えーと…!!」
せめて態度は誠意を示そうと谷蜂へ顔を戻すと、その姿にやはり眼が泳いでしまう。
女でも男でも無い癒斗にとって、女性も男性も等しく"異性"なのだ。
必要以上に見つめられれば恥ずかしく、つい意識がそちらへと集中する。
■谷蜂檻葉 > ―――結論から言うと、檻葉は癒斗の性別について大層なことを考えているわけではない。
両性具有の存在が世の中にいる、逆に無性別の人々もいる。
それらは異世界や、【大復活の影に居た地球種族】、そして妖精達も様々な『性別』を持っている。
故に”癒斗がそうであった” というのはただ『あぁ、そうだったんだ!』という理解の深い一言に尽きる。
ただ、一言『ありがとう』と伝えるのにも言葉の調子、表情、動作で余りにも相手に与える影響は変わる。
例えばただ一言、「騙してません」と伝えるのにも
目を泳がせれば誰かのいたずら心を擽り。
弱々しい気まずそうな声で抗議すれば嗜虐心を擽り。
裸で、モジモジと、いじらしく身を縮こめていれば――――
「癒・斗・ちゃん?」
―――自分でも、ゾッとするほど意地の悪い声が出た事に驚く。
「……見ても、良い?」
狭い部屋の中に、声が反響した。
■癒斗 > 思考容量が決して大きくはない癒斗の頭の中は、ぐるぐるしていた。
えーとの次が思いつかず、口を開いては閉じてを繰り返す。
「はい、へっ?見……み、る?」
その矢先にかけられた谷蜂の言葉は、あまりにも予想とはかけ離れていた。
何を言われたのか、理解するのに時間がかかったであろうその口調が、物語る。
たっぷり数秒、それまで慌てていたのが嘘のように、ぱちくりと瞬きをくりかえす。
「見る」
呟いた瞬間、若干青ざめていた顔色が手のひらを返した。
焦りが吹きかえし、頬どころか指先まで赤く紅潮してしまう。
前を隠したまま、谷蜂に向かって手をぶんぶんと振り
「みぃ、みみ見ても!面白いものではない、ですから……っ!
それにあの、ほらっ、たっ、谷蜂さん体冷えちゃいます!よ?!」
こんな状態の下半身を見られたら、この場で死ぬのではなかろうか。
■谷蜂檻葉 > ドクン、ドクンと心臓の音が聞こえる。
(―――馬鹿、何言ってるの――――)
後悔の声が心に響く。
(―――調子に乗って、後で恥かくのは私なのよ―――)
静止の声が、脳に突き刺さる。
でも
「これなら、冷えないよね?」
パチン、と音がして胸の締め付けが緩まる。
シュル、と一息に手をかければ股間に湯気がふわりと当たって、心地よく恥ずかしい。
癒斗と同じように、
一糸纏わぬ姿になって檻葉は二人で立てば少し狭い程の浴室に潜り込んで、後ろ手に扉を閉める。
癒斗と同じように、真っ赤に頬を染めて、再び癒斗に問いかける。
「―――見ても、良い?」
抑えきれない好奇心に、彼女の―――『妖精憑きの谷蜂檻葉』の箍が、外れた。
■癒斗 > 退路が。
谷蜂の姿が。
断たれた。近い。――近い!
背はあまり変わらない。というか、谷蜂の方が若干背丈はある。
癒斗は無意識に半歩下がったが、寮のバスルームだ。当然、逃げるスペースも無い。
シャワーから滴った水の音すら耳のすぐ傍に感じる。
どこか雰囲気が変わったようにもとれる谷蜂の言葉が、癒斗の小さなパニックへと追いつめる。
押しのける勇気もつっぱねる強さも無い癒斗には、目の前で妖しく頬を赤らめる彼女に一度だけ――小さく。
本当に小さく、こくりと頷くしかなかった。見せるくらいなら、そう、見せて済むなら。
胸の前はタオルで隠したまま、下半身の部分だけをたくし上げる。
年相応の毛が薄く茂るその場所にあるのは、見た目通りの性ではない。
同じ歳である少年たちのものを思えば若干小さなそれは、勃っていた。
とまり木のように持ち上がっており、言うならば今の状況に、谷蜂の姿に興奮していた。
どうにか落ち着きたい癒斗が大きく呼吸をすると、肺と腹の動きにつられて僅かに上下する。
「……あ、あんまり、近くで見ないでください、ね………」
■谷蜂檻葉 > 「っ、……ぁ……」
飲むことも出来ない固唾が、喉に詰まる。
同じ性の上半身。
違う姓の下半身。
一歩進めばつま先がぶつかりそうなほどの距離で、
ピョコンと立った陰茎がふるふると檻葉の臍の前で震えている。
鼓動が煩いぐらいに跳ね上がり、バクバクと聞こえる音に合わせて小さく指先が震える。
「これが……、……ぉち……ん……っ。」
モゴモゴと、言葉に出来ないままに『名前』を呼ぶ。
それはまるで誘蛾灯に惹かれるように僅かに湿った指先が癒斗のペニスの先端に触れた。
■癒斗 > こうして他人の前で自分を見せるのはいつぶりだろう。
学園で一番最初に健康診断を受けとき、くらいか。
谷蜂の口からそれを指す単語の欠片が出れば、露骨に眼を反らす。
恥ずかしさばかりが募り、見られているのが分かっているだけに、それが衰えるということはまず無い。
それどころか、思いがけない先端へのタッチが癒斗の腰を跳ねさせる。
指が触れた先は、水とは違う。"男性器の粘膜"という独特の触り心地を返すだろう。
皮に隠れているわけではないため、その先端はほんのりと色づいている。
「さ、触っちゃダメですって、谷蜂さん………」
情けない程に抑揚の不規則な、弱々しい声でそう頼む。
自分の中の"男性"が、理性をジリジリと削っていくのが分かるだけに、すがるかのようだ。
可愛い女の子に触られて、喜べないわけがない。
だから、早めにこの時が終わるように。主導権を握っている彼女の顔を、そっと見る。
■谷蜂檻葉 > 長風呂に入ったかのように、グツグツと頭が煮立ち、薄っすらと耳鳴りが脳を揺らす。
無意識に触れた感触に、震えた癒斗の腰にビクンと肩が跳ねる。
「―――あ、ゅロく…っ?」
そこまでいって、ようやく我に返る。
興奮と羞恥心に焼かれているのは彼だけではない。
……この段にまで来て『取り返しがつかない』のは、ある意味檻葉の方なのだから。
癒斗にも癒斗の考え、”男子生徒”としての恐怖心があるのかもしれないが、檻葉の理性は『先輩が』『後輩を閉じ込めて』『無理やり浴室で股間を見る』というアグレッシブな痴態に雁字搦めに苦しんでいる。
そんな理性を失うほどにボウっとしていた檻葉の口の端から、ドロリと粘ついた唾液が落ちる。
異常極まりない空間に浸された倒錯的な性欲で粘度をましたソレが、絡みつくように。
熱に浮かされた瞳が、癒斗に縋る。