2017/02/03 のログ
ご案内:「落第街・裏通り」に龍宮 銀さんが現れました。
龍宮 銀 >  
(脇腹に迫る巨大な拳。
 後ろに飛んで衝撃を殺す。
 地面を転がり、しかし刀は手放さず、受身を取って立ち上がる。
 目の前には筋肉の鎧に包まれた大男。
 冬だと言うのに上半身裸で、焦点が定まらない目と半開きの口から零れている涎。
 どこから見ても普通じゃない。)

――。

(この男に襲われていた女子生徒を、この辺りを巡回していた相方と一緒に逃がしてから数分経つ。
 無事に表まで逃げられただろうか。
 別れ際、相方が応援を呼ぶと言っていたが、その場所から随分と離れてしまった。
 それでも戦闘の痕跡は消せるものでは無いだろう。
 とにかく応援が駆けつけるまでとにかく耐えて――
 などと考えていたら、今度は丸太のような脚が飛んできた。
 咄嗟に受けて、飛ばされる。)

く――、っあ。

(そうして、顔を上げた。
 見えたのは男の脚から流れる血。
 ざっくりと裂けた刀傷。
 それを見てしまった。)

龍宮 銀 >  
――、う――あ。

(蹴りを受けた際に刃が引っかかったのだろう。
 決して故意に斬り付けた訳ではない。
 そもそも捕縛対象に傷を負わせるぐらい、大なり小なりどの風紀委員もやっていることだ。)

ああ、そん――

(それでも、体中から力が抜ける。
 それが故意でも事故でも、「刀で人を傷付けた」と言うただそれだけで、何も出来なくなる。
 自身の血の気が引いていくのが分かる。
 顔など真っ青を通り越して真っ白だろう。
 そんな変化を、目の前の狂った男が待ってくれるはずも無い。
 自身の顔に迫り来る拳を何も出来ずに見つめ、)

――!

(それが突き刺さる。
 首の骨が折れそうな衝撃をまともに受け、その辺に積まれてあったダンボール箱を蹴散らし、壁に叩き付けられた。
 意識が飛びそうな痛みと衝撃のせいで意識を失う事も出来ず、苦痛にもがく力も無い。
 鼻と口の辺りがじんわりと暖かいので、自身が鼻血を出している事が分かった。)

ご案内:「落第街・裏通り」に三谷 彰さんが現れました。
三谷 彰 >  爆発音。そっちを見るのならその辺に落ちていたゴミ箱を魔術で威嚇の為に吹き飛ばした棒を構えた紅い瞳の風紀委員が立っているだろう。
 とはいっても帰り道なのかその棒は本来の黒い棒ではなく普通の白木の棒である。

「わるい、遅くなった」

 壁に倒れている少女にそう一言告げると視線を大男に移す。おそらく見た目的に薬か暴走か……少なくとも普通の状態ではない。
 ゆっくり歩きいざという時同僚の少女の前に立てる位置に入ると足を止める。話が通じるか通じないかはわからないがいきなり攻撃を仕掛けるわけにもいかず、一切の油断をせず声を出した。

「風紀委員特別攻撃課だ。今すぐ抵抗をやめて大人しく降伏しろ、従わない場合公務に従い」

 そう言葉にすると棒が電撃を帯びる。相手は大男、下手に破壊力を出すよりも電撃の方が効果的との判断をした結果だ。

「お前を無力化する。繰り返しはしない、今すぐ抵抗を止めろ」

龍宮 銀 >  
(大きな音が聞こえ、そちらを見る。
 風紀委員の制服。
 霞む視界では顔の区別は付かないが、その声は聞いた事があるような気がした。

 一方の男の方は、彼の事など眼中にない様子で自身へと歩を進める。
 唯一彼の口上を聞いてちらりとそちらを見たが、すぐに興味をこちらへ戻す。
 涎をたらして完全にイっている顔のまま、フラフラと一歩ずつ。
 その股間は衣服の上からでも分かるほどそそり立っており、そのサイズは男の巨体に見合ったものと見て取れる。

 ――大人しくなった獲物を「喰らう」つもりらしい。)

三谷 彰 > 「……そうかよ」

 相手の醜悪な欲望の象徴を見て顔をしかめる。
 そして行動から確定、交渉は決裂。向こうに止まるつもりも無し。
 それならばマルトクの行動方針に従うまで、すなわち

「じゃ、怪我しても恨むんじゃねぇぞ!!」

 理不尽に忍耐するのではなく、理不尽に必勝せよ。
 すぐに前に割り込める位置に立っていた、そしてそのまま距離を離されることも無かった。それならばすぐに間に割って入り電撃の帯びた棒を真っ直ぐに男の胴に突き出す。強力なスタンガンにも近いソレはバリバリといった音と共にすさまじい速度で相手の胴へ迫る。

龍宮 銀 >  
(男は彼を無視して手を伸ばす。
 突き出された電撃を放つ棒を無視したまま突き出されるその腕。
 それに怯えるように身を捩るが、傍から見れば僅かに顔を動かしたぐらいにしか見えなかっただろう。
 その腕が自身の頭を掴む前に、男の身体を電撃が襲う。
 薬によって痛みを感じない身体でも、感電は耐えられない。
 つま先立ちになり、ビクンビクンと不自然に身体を跳ねさせて、地面に倒れこんだ。)

――三谷、くん――。

(そこで初めて彼の顔がはっきり見えた。
 同学年の同僚だ。
 白い顔のまま、震える声で、怯えるように。)

三谷 彰 > 「……あん?」

 どうにも解せないといった顔を浮かべる。いくらなんでもここまで簡単に行くだろうか。
 薬か暴走か、どちらにしても痛みを感じないであろう状態なのはたしかだ、だからこそその上からでもダメージが通る電撃を選択した。しかし……1撃?
 最低でも脳、つまりは頭部に入れないとダメだと思っていたが。そんな事を考え相手の動きを異能によって強化された目でしっかりにらみ付けていたが声を聞き首だけ後ろを向く。

「銀、怪我は……あんまり大丈夫そうじゃないな」

 白い顔におびえるような表情。それはそうだ、この様な状態に陥ったのだから。もっとも本当に理由は別かもしれないが少なくとも彼にはそう映っていた。
 本来なら今すぐに状態を確認してやりたいが……チラリと男を見やる。だが相手は普通じゃない相手。そんな知恵―気絶した振りをするなどという考え―を思いつくはずが無い。
 最低限の警戒だけを残し体ごとそっちを向くと膝を着きすぐそばにしゃがみこんだ。

「動けそうか?」

龍宮 銀 >  
(気を失ったわけではない。
 その証拠に、いまだもぞもぞと動いている。
 感電の一時的なショックで動けなくなっているだけだ。
 這ってこちらへ移動しようとしているが、うまく動けないらしい。)

っ、――ごめ、なさ……。

(近くへ寄られて今度は分かるぐらいに身体を後ろへ。
 視線はせわしなくあちらこちらへ動き、何かに怯えるように震えて。)

わた――わたし、そん、そんなつもり、なくて、わたしの、わたしのせいで――

(うわ言のように繰り返す。
 離れたところに落ちている長刀に付いた血と、男の脚に付いた傷。
 自身に人を傷付けることにトラウマがある、と言うのは彼も聞いた事があるかもしれない。)

三谷 彰 > 「……大丈夫だ、大丈夫だから」

 詳しくは知らない。しかしなんとなくそんな話を聞いたことがあるかもしれない。
 だとするとここで無理に近くに近寄ってこんな状態の彼女が奥へ逃げていってしまったら元も子もない。スラムまで行かれたら尚更だ。それに……
 チラりと男を見る。気絶したわけではなかった、今でもこちらににじり寄ろうとしてくる。この男を捨て置くわけにも行かない。
 少し歯をかみ締める。まだ問題ない、少なくともさっきの様子を見る限り俊敏な動きはこいつにはできないはずだ。
 上着を脱ぎ捨てると刀にかぶせる。少なくとも剣に着いた血は見えないはずだ。
 
「とりあえず怪我を見せてくれ、治療しないといけないからよ」

 まだ奴が確実に倒れたわけではないから治療はできないが、このまま相手を無理やりにでも捕まえるかもしくは落ち着いて捕まえるか、それだけは判断しなければいけない。

龍宮 銀 >  
――あ、え、だい、だいじょう――、いっ……!

(怪我、と言われて自分が鼻血を出していることを思い出した。
 慌てて袖で拭ったら、激痛。
 折れてはいないようだが、思わず声を出してしまった。)

ごめんなさ、だいじょうぶ、なんともない、大丈夫だから……。

(痛く無いようにぐしぐしと鼻をこする。
 幸いもう血は止まっているらしい。
 こう言う時に自身の人ではない血筋を実感する。
 とは言えその言葉はそう言うことから言われたものではなく。
 人に怪我を負わせた、と言うことから来るものだ。
 男はまだもがいている。)