2017/02/04 のログ
三谷 彰 > 「ん、ならもうすこしだけ待っててくれ。すぐに安全な場所へ連れて行ってやる」

 少し微笑むと立ち上がり男の方へと視線を向ける。まだ絶対に大丈夫かはわからないが少なくとも取り乱しているわけではないならまだいいだろう。
 さて、ここからが正念場だ、自分は力が人の基準しかない、そんな自分がこんな大男に組み付かれれば振りほどくのは困難だろう。もっとも相手を生存させてという前提が着くかもしれないが。
 ベルトをズボンから外すと手にしっかりと持つ。
 そのままゆっくりと歩み寄る。もし抵抗しない、もしくはできないのであればそのまま男の腕をベルトでしっかりと結び硬質化の魔法をかけるのだが。果たしてできるのだろうか。

龍宮 銀 >  
(彼の動きを目で追う。
 まだ身体の震えは止まらないけれど、少しだけ落ち着いてきた。
 どうやら男を拘束しようとしているらしい。
 ふと異変に気が付く。
 ――はっきりとしたものではない。
 ただ、なんとなく先ほどまでと様子がおかしいような、なんとも言えない違和感――)

――危ない!

(叫んだのと、男の身体の痙攣がなくなっていたのに気付くのは同時だった。
 男が腕を振るって、今まさに彼が男の腕を取ろうとしていたのも。
 反応出来なければ、伸ばした腕の二の腕の辺りを思い切り殴りつけられるだろう。
 直撃すれば、彼も自身と同じように反対側の壁に叩き付けられるかもしれない。)

三谷 彰 > 「!!」

 異能の視力がほんの少しの異変を捕らえる。危ないの声と同時急いで後ろに飛び上がりギリギリ直撃は回避する。しかしかする程度は貰いそれでもズキズキと痛みと痺れがくる。
 見てみると変色、直撃を回避してこれだ。

「どんなバカ力してんだか。ありがとよ」

 さて問題は自分の主兵装の棒を拘束の為に手放してしまっていること。場所的に銀の傍に落ちているのだが……武器をひろうなどという隙を晒すのはあまり利口とは言えない。さらに言えば今左手は満足に動かない状態。
 まったく持ってよろしくない状態だ。
 ベルトをしっかりと伸ばし魔力を流した。

「硬質付与、雷属性付与・集」

 ベルトは伸ばした形のまま刀のように固まりそれを電撃が纏う。
 ビュンと軽く振るうと相手に近寄りそれを相手の腕に向かって振り下ろす。

龍宮 銀 >  
(一見すると男に吹き飛ばされたように見えた。
 だが、それにしては明らかに勢いは小さい。
 掠りはしたもののどうやら無事のようで、ほっと一息。)

っ。

(しかし、男が立ち上がったのを見れば息を呑む。
 男はそのまま腕を伸ばし、こちらに一歩近付いて。
 近くに彼の棒が転がっている。
 拾おうと思えば拾える。
 だが、動かない。
 視線は男に注がれたままで。)

――ぁ、

(自身の瞳に浮かぶ、恐怖とは違う色。
 ほぼ同時に、男の身体を再び電撃が襲う。
 先ほどと同じように男は倒れた。)

三谷 彰 > 「女ばっか見てこっちおろそかにしてんじゃねぇよクソ野郎が」

 風紀委員としてどうなのだろうか、そんな言葉を吐き捨てると魔術を解除する。ベルトは先ほどまでの固さを失い本来のベルトに戻る。
 ふぅと一息出すと銀の方に顔を向け。

「さっきは助かったぜ。すこし変なのはわかったが近くにいすぎてタイミングまでは見えなかったからよ」

 実際彼に見えたのは痙攣が治まりかけてていたこと。そしてそれが止まったことくらいであり攻撃の事がわかったのは教えてくれたからだ。それが無ければもう少し深く受けていたかもしれない。
 左手が動かないため仕方なく右手と足を使い今度こそ拘束に取り掛かる。今の状態で動かれると完全に足を取られる形になる為あまりいいとは言えないが……少なくとも狙われている彼女を手伝わせる愚行はおかせない。
 拘束は無事成功しただろうか。

龍宮 銀 > ――ごめん、もう少し――っ、早く気付いてれば。

(自由に使えないらしい彼の腕。
 うつむき、自身の身体を抱きしめながら、そう口にして。
 男の意識はまだあるようだが、今度は電撃を喰らってからそう時間が経っていない。
 時折ビクンビクンと痙攣するので若干縛りにくいだろうが、問題なく拘束することが出来るだろう。)

 っ、ごめん、あり、がとう。

(何かに耐えるように、言葉を詰まらせながらも謝罪と感謝を。

 男が倒れる直前、においがした。
 恐らくは、人間の嗅覚では分からないにおい。
 ――いや、もしかしたら普段の自分でも分からなかったかもしれない。
 そのぐらい僅かなにおいだったが、自身のスイッチを入れるには充分だった。)

三谷 彰 > 「っし!」

 今度こそしっかりと腕を拘束する。この状態で足だけで立ってくることはそうはないだろう。と信じたい。

「ん、いやいや気にするな。あれ以上早くなんてそれこそ無理だぞ」

 ハハハ、と安心させるように笑う。
 空中にルーン文字を描きながらこちらも少しだけ申し訳なさそうな顔を浮かべる。

「俺の方こそごめんな来るのが遅れた。それが無ければそんな怪我しなくて済んだかも知れないのによ」

 自分は見回りとしてこっちの方はそんなに来るわけではない。だから少しだけ勝手がわからなかったのだ。それさえなければもっと早くたどりつけていたのに。

「銀が逃がした二人は先に戻らせてあるからもうすぐこいつを拘束するための他の委員が来るはずだって……どうした?」

 いざという時に戦えるように自分を治して相手の傷を治そうとそっちを向いた時に彼女の異変にも気がつく。そういえばさっきも何かに耐えるような声だった。

「……やっぱりまだかなり痛むか?」

 においを感じることができれば別かもしれないが、彼には感知できなかった。故に怪我が原因という結論になってしまうのも仕方が無いといえるかもしれない。

龍宮 銀 >  
だいじょう、ぶ。
来てくれて、嬉しかった。

(ぎゅう、と自身の身体を強く抱く。
 知らない誰かならともかく、知人で同僚ある彼に気付かれるわけには行かない。
 必死で衝動を抑えながら、彼の言葉にそう返して。)

よかった、逃げられたんだ。
――大丈夫、ちょっと、怖くなっちゃって。

(だからそう誤魔化す。
 自身の身体を抱いたまま、壁を背にして脚を身体に寄せて。)

三谷 彰 > 「そうか……でも一応」

 ズボンのポケットからメモ帳を取り出すとそこに魔力でルーンを書き記す。治癒とは別の痛みを止めるルーン。
 それを書ききるとメモを破り相手に差し出す。

「無いよりマシ程度だけどさ。これ痛む場所あるなら使っとけ、治療まではいかないが痛みくらいなら楽になるから」

 ごめんな余力は残しておかないといけないからと謝罪を付け加えると棒を拾い壁にもたれかかる。
 今の段階でもすでに治療1回に痛み止め1回。これ以上使えばまたこいつが起き上がった場合に魔力の残量が少なくなってしまう。

「他にも何かあったら言ってくれ。まぁ……状況が状況だから買い物は無理だがその怖さを紛らす為の話し相手くらいならできるぞ。どっちにしても俺は今ここを離れられないしな」

 どちらにしても彼女に監視を頼んで先に帰るわけにもこの男を背負って帰るわけにも行かない。故にこうするしかないのだ。

龍宮 銀 >  
うん、ありがとう。

(そのメモ帳を受け取る。
 少し迷って、背中に貼っておくことにした。
 顔の方が痛みが強いが、ちょっとそれは情けない。)

う、ん……。

(出来る事。
 あるといえば、ある。
 でもそんな事を頼めるわけが無い。
 入ったスイッチはいつまでも治まる気配が無いし、むしろ強くなっている気がする。
 自分の事は自分で知っている。
 一度吐き出さないと、治まらない。)

――三谷くん、チョコ、食べる?
バレンタインには早いけど。

(気を紛らわそうとポケットを探れば、小さなチョコが二つあった。
 一つを取り出し、彼に向けて差し出してみる。)

三谷 彰 > 「……大丈夫だって、もう拘束したから襲い掛かってきやしないよ。来たとしてもこの状態じゃ敵じゃないしな」

 どうにも煮え切らない様子。痛みだけじゃないのかと思いながらもあんなことがあったばかり、すぐに戻るほうがおかしいといえばおかしい。それをまだ怖いからと解釈してしまっている。
 チョコを差し出されるとすこしだけ目を丸くした後フッと笑い。

「そうだな……ありがとさん貰っとく」

 二つの内一つを貰いそれを口に入れる。甘い味が広がるがしっかりと警戒を男に向け続ける。この状態の奴らはいきなりどんな動きをし始めるかわからないからだ。
 口では大丈夫だといったが欠片もそうとは思っていない。なにせ異能者の可能性もあるのだ。それであった場合能力によってはベルトなどなんの効果も示さない。
 だからこそ彼女の傷を治療するのではなく痛み止めに留め、この場を後にしないのだ。

龍宮 銀 >  
――うん、ありがと。

(優しさが辛い。
 彼なら言ってしまえば受け入れてくれるんじゃないかとか、言いふらしたりはしないんじゃないかとか、優しくしてくれるんじゃないかとか。
 そんなわけは無い。
 そうだとしても、その後嫌悪感で死にそうになるのは目に見えている。
 だから必死でとどめるしかなくて。
 チョコを渡すときに近くまで来た彼のにおいに、衝動が大きくなる。
 膝に顔を埋めて、脚を抱き寄せる。)

――私ね。
二年前まで、飼われてたんだ。

(とうとう、こらえきれない、といった様子で言葉をこぼす。)

三谷 彰 > 「飼われてって……あぁ」

 風紀委員でそういった話を何度か聞いたことはある。といっても彼女の話という意味ではなく飼われているという人物に対してのことだ。
 違反部活や違反組織に捕まっている二級学生の保護の話。実際そういった現場に入ったことは無いがそうして保護された生徒が一定数いることは自分達も聞いている。
 彼女もおそらくはそういった人物だったのだろう。

「……関係者だったのか?」

 男の方を顎で指し質問した、こいつは彼女にかなり執心していた……といってもまぁあの時にみた醜悪な欲望をみればおそらくそうではないとは思うが。可能性は0ではない。

龍宮 銀 >  
ううん。
その人は、関係ない人。
私を飼ってた人はみんな捕まったから。

(こんな大男はいなかった。
 もしかしたら「客」の一人だったのかもしれないが、少なくとも知っている顔ではなかった。)

それでね、たまにその時の事を思い出して、どうしようもなくなる時があるの。
――その人、さっき……その、い、ってる、から。
だから、ちょっと、辛くて。
あまり、近寄らないで居てくれると、嬉しい。

(同僚に何をカミングアウトしてるのだろう、と思わなくも無い。
 けれど何も知らない彼の行動で、取り返しの付かない事になるのはもっと辛い。
 だから、言っておく事にした。)

――誰にも、言わないでね。

(最後にそう付け足して、より深く膝に顔を埋める。)

三谷 彰 > 「そうだったのか、よかった。折角助かったのにまだ狙われてた。とかだったら落ち着けないもんな」
 安堵の息を吐いた。同僚がそんなものでずっと怯えているなどやはり気分としていいものでもない。
 だがその後に続く言葉。一瞬思考を止め、その後に意味を理解。気持ち半歩横にずれ。

「わ、わかった。その……悪いさっきとかまったく意識せずに近寄ってた」

 そんな事とは露知らず怖いのかと思っていた。ある意味自分がへたれで良かったと複雑な安堵をしていた。もしここで怖そうだからと抱きしめるなどのアニメか何かに出てきそうな行動をしていたら……互いに取り返しがつかないことになっていたかもしれない。

「わかってるって、ちゃんと黙っとく。というか……言えるわけ無いだろ」

 言うつもりもなければ言う方法もわからない。なんて説明しろというのか。そもそもネタにして良いほど軽い話題で無い事くらいは理解しているつもりだ。
 少し微妙な間を置き。

「あぁ……でもその、あれだ。心配しないでくれ。別に俺はお前に対して対応変えたりとかはしないから……その方が良いよなたぶん」

 自分は能力が発現したからだったが何かを打ち明けて対応を変えられるというのはあまり良い気分がしないことはおぼえている。こういう話題なら尚更だろう、優しくされるだけ辛いといった可能性もある。

龍宮 銀 >  
――たまに、ね。
そう言うときは、そうなりたい、って気持ちになるときもある。

(その後は大抵嫌悪感で潰れそうになるけれど。
 彼に秘密を打ち明けた理由は分からない。
 助けられたから気が緩んだのだろうか。
 なんにしても、少し気は楽になった。)

良いよ、知らなかったんだもん、仕方ないよ。

(顔を上げて少し笑う。
 正直なところ欲しくて欲しくて仕方ないのだけれど、気が楽になったら余裕が出てきた。)

うん、ありがと。
そうしてくれると、助かる。

(黙っておいてくれるという事と、対応を変えないで居てくれる事。
 どちらもありがたくて涙が出そうだ。
 泣かないけど。)

――――三谷くん、は――さ。
そう言うこととか、興味ある?

(なんとなく、本当になんとなく。
 こんな話をされてどう思ったのかとか、男の子だから興味あるのかとか、純粋な興味が沸いた。
 聞きにくそうに、しかし割りと臆することなくその疑問を口にする。)

三谷 彰 > 「そうだよな、わかったいつもどお……えぇ」

 何時も通りに戻そうとした直後にとんでもない爆弾をぶつけられ硬直する。
 思いっきり犯罪者の前というのが風情もクソも無い。しかし少しだけ考えて。

「……その、そういうことってのは……ええっと」

 どれを指しているのかというのがどうにもつかめずにすこしだけ考える。
 そして選んだ結論は思いついた両方に応えるといったことである。

「飼われてたに関しては……その、別に何も変な考えは無い。そこで何をされていたのかとかも……別に無理に聞こうとは思わない。言うのも辛いだろうし。さっき変えないって言ったから俺の中では何があってもお前はお前だからさ」

 そしてそこまで言ってから少し言いにくそうにして。

「んでその……ええっとだな、そういうちょっとアレな興味はそりゃ無くは無い……けど、俺だって良い年齢なんだし。でもその……ちゃんと好きな相手とってうぅ、なんだこれ」

 むしろこっちが羞恥心で爆発しそうな状態だ。同じ年代の女子相手になんという話をしているのだ自分はという思いでいっぱいである。

龍宮 銀 >  
そう言うゲームでありそうなことは大抵されてたよ?

(悪戯っぽく笑いながら。
 慌てる彼を見ているのはなんだか楽しい。
 なのでからかうようにそんな言葉を。)

――冗談だよ。

(その反応に少し救われた。
 まだまだ身体は治まらないけれど、気持ちの余裕はかなり出てきた。
 すると、男がなにやら呻きだす。
 どうやら薬が切れてきたらしい。
 同時に足音が聞こえてきて。
 聞こえてくる話し声からすると、風紀の増援らしい。
 立ち上がり、地面に落としたままだった刀を手にとって、血を制服の袖で拭い鞘に収めた。)

呼んでくるね、待ってて。

(そう彼に告げて走っていく。
 やがて数人の風紀委員が裏通りへやってくるが、そこに自身の姿は無かっただろう――。)

ご案内:「落第街・裏通り」から龍宮 銀さんが去りました。
三谷 彰 > 「頼むからへたれをからかわないでくれ」

 顔を片手で覆い少しうつむく。最近なんかからかわれる事が多い気がするのは何故だろうか。
 自分が変に反応するからという可能性もあるが。と考えていると足音。やっとかと考えていると彼女が立ち上がり呼びにいくと離れていった。

「はぁ……なんか、戦いより体力使った」

 いなくなってから一人呟く。事実最後の一言に関してはかなりのメンタルを羞恥心で抉り取られていったことだろう。
 増援として戻ってきたグループに彼女がいなかったことに少し疑問を持ったがきっと先に帰ったのだと考え経過報告などを済ませる。その男のさっきまでの様子や自分がした攻撃などだ。彼女との会話に関しては約束どおり話すことは無かった。

ご案内:「落第街・裏通り」から三谷 彰さんが去りました。