2017/07/23 のログ
ご案内:「研究棟 ***」に谷蜂檻葉さんが現れました。
谷蜂檻葉 > 無機質に立ち並ぶ灰色の森の中。

一際影の濃い場所に、彼女の研究棟はあった。
それこそ隣合う他の研究棟と何か際立って違うところなぞ無いのだが、それでも言葉にならない『不気味さ』を感じる。

ヌッと空の青を食う灰色の背丈は影も相まって此方を押しつぶそうとしているようにも見える。
ぎぃ、と見た目に似合わぬ軋んだ音を立てる鈍く輝く鉄色の大扉は、見えない怪物が開いた顎にも見える。

それら全てが、生物が直感的に感じる『空気』であるのか。
それとも脳が嘯く、妄想の中にある『恐怖』が悪戯しているのか。

遠くに聞こえる蝉の声と、ヒートアイランド現象が齎す過熱の上に現れた蜃気楼が思考を惑わせる。


「―――それで、此処が私の研究棟です。」


笑顔で案内をする彼女の顔から推察することは、終ぞできなかった――――。

谷蜂檻葉 > 扉を潜った先は、まさしく「研究室」だった。
雑多なようで、しかし機能的に物が収まっている
室内は見回せばあちらこちらに目を引くものが置いてある。

だが、それらには頓着せず檻葉は部屋の奥にある小さな扉を潜って別の部屋に行き、数分も経たずに戻ってくる。

「あったあった。 これがご説明したお薬です。
 とりあえず改めて注意事項など説明しますから、そちらに掛けてくださいね♪」

手に抱えたビーカーを慎重にデスクの中央に置くと、
後から入ってきたエニィを引っ張り出してきたパイプ椅子に勧める。

ご案内:「研究棟 ***」に水月エニィさんが現れました。
水月エニィ >  
 研究棟の一角。
 
 他と変わり映えせぬのに物々しいと言うべきか。
 騒音もなく静かであるのにおどろおどろしいと言うべきか。
 多種多様に備えられた機材に騒々しいと言うべきか。

 何れにせよここにも『強き何か』があるのだろうと考えた。
 『強いもの』は鼻が利く。悪く言えば鼻に付いてしまう。
 それが何かは分からない。警戒するべき何かなのかもしれない。

 しかし私は谷蜂檻葉に誘われている。
 故に行かない道理もないし、それ以上気にするものはない。

 誘われるがままに研究棟と足を運び、
 促されるままにパイプ椅子に座る。
 

「ん、了解。保険証とか要るのかしら?
 ……にしても、良い所で研究できているみたいじゃない。」

谷蜂檻葉 > 「ああ、いやコンプライアンス遵守って奴ですから、そう構えなくても大丈夫です。」

強いて言うなら学生証は見せてくださいね。
と、自ら格好を崩して楽にしながら、カルテを引き出して何かを書き込みながら説明を始める。

「今回の試薬品の効果は『人の感覚器から呼び出した信号を元に体組織の一部を変質させる』お薬です。

 現行の新薬に、私の異能で指向性をもたせたもので『イメージ通りの理想の自分に変身』……とでも言うんですかね。
 脂肪の蓄積と燃焼を短時間で発生させる効果があります。

 主目的は美容ですが、効果の関係上解毒作用などが在るので、お腹が痛くなったらすぐ言ってくださいね。
 それと、強い発汗性があるかも知れませんが副作用の範囲内ですので問題はありません。

 ……此処までで、何か質問ありますか?」

水月エニィ >  説明を聞き続ける。
 格好こそ崩しているが学生証の提示を要するもので、尚且つカルテらしき何かへと書き込んでいる。
 正式な記録に残すつもりなのだろう。そしてそれも変な事ではない。

「特に無いわ。
 興味が無い訳じゃないけれど、突っ込んだ話を聞いても困っちゃいそうだもの。」

 首を横に振る。
 先程も教えられない事があると言っていた。
 故に追求はしない。『イメージ通り』と言う部分には引っ掛かるものがあるが、言う程のものでもない。


「続き、お願いしても良い?」

谷蜂檻葉 > 「良かった。 それでは――――

 今回の試薬品の使用方法はグラス一杯分飲んで頂くだけで結構です。

 ですが効果の特性上、服用後に一定のカロリーと刺激反応……要するに食事をして欲しいんです。
 予測では30分後に効果が現れるはずですので、服用からそれまでを監督者と共に過ごしていただきます。

 また、服用前後の採血結果を確認させていただきますのでご了承下さい。 ……っていうぐらいかしら。

 基本約款はこの契約書に書いてあるとおり。
 それと、こっちが監督者――今回は私ね―――についての説明。」

カルテをめくって、一枚破いてそれを水月に渡す。

そこには署名欄と、契約内容についての基本事項――人権の尊重に類するあれそれ――が書かれている。
元々が学園が発行しているものなのだろう。
意図的、作為的にエニィにとって不利になるようなことは書いていない。

また、監督者についてはそのまま『責任者』としてエニィの安全の保持に努める旨が書いてある。


「よければそこにサインして。 そのまま採血しちゃいましょう。」

水月エニィ > 「ん、了解。特に変わった事もないわ。」

 カルテの写しを受け取り確認し、檻葉の文言と照らし合わせる。

 採血・投薬・実証および30分の監視。
 契約内容にも変わった所は無く、書式にしても気になる所はない。

 真っ当な研究として認められているのだろう。
 少なくとも、この研究に関しては。

「サインはボールペンで良いかしら?」

 写しをテーブルの上に置き、視線を戻す。
 そのまま檻葉に目線を併せれば、筆記用具について伺うか。

谷蜂檻葉 > 「うん、大丈夫よ。」

言いながら、手際よく注射器と洗浄道具を用意していく檻葉。
やはりと言うべきか、自分以外にも既に何人もこうした『治験』を行ってきたのだろう。

エニィがサインすると、文字通り一瞬で採血を終える。

「それでこれがお薬で――――」

そして、学生寮の食堂にも置いてあるグラスに透き通った赤色―――試薬を注ぎ込んでいく。

「さ、グイッといっちゃって。

 そういえば食事については私の晩御飯予定だったのを出すつもりだったんだけど……何か出前でも取る?
 出前取るなら、到着してから飲んでもらうんだけど……。」

水月エニィ >  恙無く採血が終わり、試薬が運ばれる。
 エニィの血には特別なものがあるものの、それはまた別の話。

「んー……そうね。
 折角だから頂きたい気もするけれど、貴方は食べなくても良いの?
 檻葉さんが夕ご飯にありつけないのも悪いもの。だから、そうね……」

 注がれた試薬を横目に見る。
 出前を取る場合、注いだ状態で結構な時間放置することになる。
 それは避けたいものの、彼女の夕食が喪われるのも思う所がある。

「檻葉さんの晩御飯を頂いた上で、出前を取るのはどうかしら?
 どっちにしても一人分のご飯がなくなっちゃうもの。」
 

谷蜂檻葉 > 「あはは……ごめん、ちょっと嘘付いた。

 ほら、夏場はもう外に出歩くのも億劫でさ。 ある程度買い込んでるのよ。だから気にしないでいいわ。」

そう言って、エニィに待つように言って―――


「ええとエニィちゃん、好きなのある?」

ガササササッ、と。
両手に抱え込んだレトルト食品とカップ麺を持ってきた。

持ってきたというか、言いながら部屋の隅にあるIHクッキングヒーターで薬缶と鍋のお湯を沸かしている。

実に不健康な生活をしているらしい。

水月エニィ >  
「了解。ピザぐらいなら奢っても良かったのだけれど――って」

 取り出されたレトルト食品とカップ麺。
 そして手際よく沸かされるお湯。
 お手軽にそれなりの食事を摂取出来る文明の利器。

 ――その手際の良さを見た水月エニィは、
 どことなく彼女の普段の生活を想起した。
 色々と。

「んー、シンプルなカップ麺を貰うわ。
 出来れば塩味ね。豚骨よりはさっぱりの塩って気分だもの。」

谷蜂檻葉 > 「ふふ、お給金ならこの研究でも貰えるから大丈夫よ。

 ……それじゃあコレとコレとコレね。」

そう言って、手際よく2つのカップ麺と1つのレトルトカレー。
ついでに[不確定名:サトウ]のご飯を調理していく。

「水月さんのはお湯入れて2分で出来るから、もう飲んでおいていいわよ。

 ……そういえば知り合いと食事するなんて本当に久しぶりかもね。
 外食はするんだけど、知らない人と横にいるのとこうして誰か知ってる人と居るのは違うし。」

水月エニィ >  電熱で沸かされる湯。湯煎される料理。
 それらが齎す湯気をなんとなく眺めながら会話を続ける。
  
「ん――"付き合い"の食事が多いの?
 それとも、カウンター席のニュアンスかしら。」

 聞くに一応は外出/外食もしているらしい。
 それでも久しぶりと言うならば。思いついたままに尋ねる事にした。

「ま、了解。したわ。
 今の内に飲んじゃいましょう。」

 促されるままに液体を飲み干す。
 一応、味も確かめておく。
 

谷蜂檻葉 > 「まさか。 ただの一人飯よ。

 そうねぇ。 カウンターもあるけど、適当に相席させてもらうこともあるわ。
 それもそれで乙なモノって感じはしてたけど、そればっかりだとやっぱり寂しいもの。」

前はメイと一緒に食べたりもできたんだけどね。
と溜め息混じりに呟いて、部屋の隅にあるバスケットから何か取り出す。

……ビニルに包まれた小さいハンバーガーだ!

そのまま、モシャモシャと齧りながらエニィが試薬を飲み干すのを見届ける。

「まだ味は調整中だから、多少は我慢してね?」

喉を抜ける、とろりとした水飴のような味。
苦かったり、飲めないわけではないが、逆に甘すぎて辟易とする。

微妙に喉に残る分、本当に水飴を呑み込んだようだ……。


薬缶が笛を吹く。
どうやら沸いたらしい。

水月エニィ > 「相席居酒屋の類じゃないわよね。……メイ? 」

 一先ず飲み干す。

 冗句めかした相槌を打っていれば取り出されるハンバーガー。
 そして齧りながらこちらを見つめている。
 
 ……試薬を飲み干してから改めて檻葉を見る。
 どれだけ食べ進めたのだろうか。所謂二度見。

 ともあれ甘ったるい試薬を飲み干し、大きく息を吐く。

「ん、く……ふぅ……ま、こんなものでしょう。
 日常的に飲むものでもないんだから、十分飲めるわよ。」

 そう言った辺り噴出する湯気と音。
 薬缶が沸騰を知らせたのだ。

「丁度湧いたみたいね。
 早速注いじゃいましょうか。……すぐに食べても平気?」

谷蜂檻葉 > 「ただの昔の”知り合いよ”。」

気にしないで、と苦笑交じりに質問をいなす。

その間もモソモソと小さなハンバーガーはその体積を削られていき、
喉に引っかかるような甘さの試薬を飲みきった頃には、最後の一欠片になって檻葉の口の中に消えていった。


「そう? 確かに無理に味に調整を掛けて効果がおかしくなっても面倒ね。
 有難う―――って言うにも早いか。 効果が実証段階でGOサインが出たらそのまま参考にさせてもらうわ。」

そのまま、二人分のカップ麺―――エニィは2分だが、檻葉のは3分―――にお湯を注いでタイマーを付ける

「ええ。むしろ効果が出るまでに食べて貰わないと困るの。
 無から有が作り出せないように、薬の効果を出すためのエネルギー源が必要なのよね。

 普通は逆に食べなかったりするものなんだけど……『吸収』の工程が関わっているんだと思ってるけど、
 どうにも外から栄養補給した直後にタイミングを合わせなきゃいけないのよね。

 ま、その点はまだ改良中ってところ。」


……なんて薬についての薀蓄について待ち時間に1つ2つ語っていれば十分だったようだ。
タイマーが、食事の時間を知らせてくれる。


「昔はカップ麺=不健康食だったけど、最近のはそうでもないのよね。」

水月エニィ > 「そうねえ……」

 昔の話を流し、そのまま説明を聞く。
 どうにも効用を発揮する為に色々な条件が有るらしい。
 そういうものだと認識し、完成の報せを聞いてカップへと手をのばす。

「と、出来たみたいだし頂くわよ。」
「――頂きます。」

 食事に手を付ける。
 カップ麺であることに変わりはないが悪くない味だ。

「健康志向のものもあるみたいね。
 尤も、その辺りは玉石混淆でしょうけれど――」

 そのまま一気に食べ進める。
 麺を食べきり、スープを半分まで飲んだ所でテーブルの上に置いた。

「ご馳走様、美味しかったわよ。」

谷蜂檻葉 > 「そうね。 これ、普通に合成物ゴテゴテの奴だしね。」

何食わぬ顔でそんな事を言いつつ、自分のカップ麺が出来上がると同時にレトルトカレーを引き揚げて並べる。

そして、そのまま器用に2種類の食器――箸を使って麺をすすり、置いた手でスプーンを拾ってカレーを食べる―――を操り、エニィに遅れて、しかし十分に早いペースで食べきった。


「……けふ。 お粗末様、本当にね。」

分量的には明らかにエニィの倍近い量食べているのだが、どうにも余裕がありそうだ。

「アイスあるけど、あとで食べる?」

故に、まだ食べるらしい。
とは言いながらも今は食べるつもりはないのか、今度は端っこに積んでいた雑誌の山を漁っている。

水月エニィ > 「ええ。それに健康に良いものも入っていなさそうだもの。」

 お腹を擦りつつ容器を邪魔にならない所に置く。
 ……ふと檻葉を見ればまだ食べていた。
 カレー、ラーメン、ハンバーガー。結構なラインナップかつボリュームだ。

 程なくして檻葉の食事も終った。 
 食後のアイスを提案された。お腹はいっぱいだが――
 
「ええ、貰いましょう。
 丁度冷たいものが欲しかった所なのよね。」

 冷たいものは魅力的だ。
 左頬に垂れた汗に気付けば、汗をハンカチで拭いつつアイスを求める。
 

谷蜂檻葉 > 「最近気がついたんだけど、『今から健康に気を使う必要もない』ってね。

 そんなのもう少し後でいいのよ、後で。
 今は元気が資本なんだから、食べるものぐらい気にしないで食べるぐらいでちょうどいいのよ。

 それじゃあ後で取ってくるわね。 それで、これに目を通してほしんだけど―――」

差し出されたのは、グラビアアイドル紙だ。

「あ、順調に効いてるみたいね。

 アイス食べる頃には、サウナ入ってるみたいにダラダラ出るから覚悟してて。
 ……水着あるけど、着替えておく?」

部屋に冷房は十分に効いている。
それでも、垂れるほどにかいた汗に檻葉は満足げに頷いた。

彼女の反応を見るに、薬は順調に効いているらしい。

水月エニィ >  
「全くもう……
 ……と、アイドル誌ね。」

 差し出された雑誌を受け取る。
 これも実験の一つなのだろうと思いながら流し読む。
 ある程度目を通した所で、檻葉に視線を戻した。

「ええ、そうね。無理に汗塗れの服で帰る理由もないもの。
 合うものが有ったら借りても良いかしら?」

 ハンカチで汗を拭きつつ頷き、雑誌を一度置いた。

谷蜂檻葉 > 「先に言ったことを覚えてるかしら?
 薬の効果は『イメージに合わせて体組織を変化させる』
 ……つまり、具体的なイメージがないと効果にブレが大きいのよね。

 動物実験では、何も見せなかった個体よりも写真を表示させておいた個体のほうが大きな変化……

 ―――写真に移った個体に似た体つきに変わったの。 つまり、それの中で気に入った体型の子に近づけるはずって訳。

 って言うわけで、頑張って理想の体型を探しといてね♪ その間に水着取ってくるから。」


どんな子を選ぶのかしらね。とクスクスと笑みを溢して檻葉は水着を取りに行ったようだ。

水月エニィ > 「難しいわね……」

 檻葉から視線を戻す。
 "気に入った"となると少々難しい。

 今の体型に不満があるわけではない――公園で聞いた通り、美容効果が主になると言うのも頷ける。

「んー……とりあえず、普通の子にしておきましょうか。
 異種族を選んで変な事になっても困るでしょうし……」

 ひとまず濃茶色のサイドテールの少女を選ぶ事にした。懐っこい表情の健康的な少女だ。
 ……銀髪の猫耳尻尾少女も気に掛かったものの、余計なことはしないでおく。

「後は谷蜂さんを待ちましょうか。
 ……本当に汗が止まらないわね。」

 あまりにも汗が出るため、上半身だけ脱いでおく事にする。
 衣服は汗によって濡れに濡れていた。

谷蜂檻葉 > 「はいはーい、お待たせー……。 って、結構ペース早いわね。
 少し汗のサンプル取らせてもらっていいかしら? それとこれ、生理食塩水。 脱水症状が怖いから飲んでおいて。」

からかいも僅かに含んでいるのか、どこか楽しげに戻ってきた檻葉だったが、
エニィの様子を見ると目を瞬かせて冷蔵庫にあった飲料を手渡す。

「上着とかは後で全部洗濯しておくとして、直ぐに着替えておいたほうが良いわね。

 ほら、全部ちゃっちゃと脱いじゃって。 それで、ビキニタイプの紐で調整するだけだからこれを着て頂戴。」

はい、と手渡しで真っ赤なビキニの水着を渡すとカルテに何かを書き込んでいく。


「個人差はあるけど、水月さんの反応は結構早いわね……このペースなら20分ぐらいで変化するかも。」

水月エニィ > 「ん、了解。問題ないわよ。」

 ひとまず全部の服を脱いで飲料を飲んでおく。
 実践半ばで倒れたりなどしてもしょうがない。

「ええ。……って、随分と派手な水着ね。」
 
 とは言え少々驚いたものの強い抵抗が有る訳ではない。
 促されるままにビキニを身に着けた。

「理想の体型、ねえ……。」

 全身を確かめる。
 ひとまず、今の体型でも着れない事はなさそうだ。
 
 

谷蜂檻葉 > 「あはは。 いやぁ、この為にワゴンに残ってた奴もらってきたんだけど、
 出るわ出るわ普通じゃ着れないド派手な水着が。 ……で、それはその中の一つって訳。」

使用済みとかじゃないから、そこはご心配なく。と笑って

「さて、それじゃあ後は結果までその絵を見ておいてもらうぐらいなんだけど……。
 どうやら水月さんのイメージに合う子は居なかったのかしら?」


……そんな会話の最中にも、今正に辛いものを食べているような勢いで身体にジワジワと汗が貯まる。
肌を大きく晒した為か、少し勢いは減ったがそれでも自覚する程度には汗がよく出る。


「まぁ、元々水月さんの為ってものだしもしも『今の体型で良い』っていうならそのままにも出来るんだけど、そうする?」

水月エニィ > 「ん、一先ずこの子にしたわ。
 異種族を選んで変な事になってもしょうがないし……。」

 先程見つけた頁を見せる。
 焦げ茶色のサイドテールの少女だ。
 ……雑誌を持ったまま、胸に溜まった汗を拭いつつ水分を補給する。

「とりあえず、この子を見ておきましょう。」

 視線を雑誌に戻し、じーっと見つめる事にした。
 

谷蜂檻葉 > 「了解。 ……うーん、こうして待たせてしまうのも改良点ね。

 とりあえず、アイスでも食べてて頂戴。 チューベットで良いわよね?」

言いながら、二人で割って吸うタイプのシャーベットアイスを投げてよこす。
そのまま片方を自分で食べながらまたカルテに何かを書き込んでいく。


「水分の方は大丈夫?何か目眩がするとか、熱っぽいとかはないかしら?

 あと少ししたら汗が引く筈だから、それから2分内で……って感じ。 汗が止まったと思ったら教えてね。」

水月エニィ > 「ええ。……と、ありがと。」

 放る音に気付けば向き直って受け取る。
 そのままチューペットを口に含む。
 ひんやりとした口当たりと甘さが心地よい。
 気付けば汗も――

「ええ。……そう言えば、汗が減り始めている気もするわ。
 アイスのおかげとも思ったけれど……。」

 既に汗も引きつつある。楽といえば楽だ。
 カルテに書き込む檻葉の姿に気付けば、小さく呟く。

「本当、研究熱心ね……。」
 
 不摂生も仕方がない。
 脳を回すにも一定のエネルギーは要るし、研究中の少ない娯楽でもあるといえばある。
 ……満足そうに研究に打ち込む姿は、ちょっと羨ましいと思った。
 
(考えてみれば、私には強く打ち込んでいるものもないわね……丸くなった分、でもあるのでしょうけれど。)

谷蜂檻葉 > 「今じゃ仕事が恋人、ってね♪
 ……まぁ、それもまた色々とあるとなんだか達観しちゃってねぇ……そんな歳じゃないって言われるけど……。

 元々趣味が読書だったし、今まで溜め込んできた物を吐き出す機会だー!って楽しませてもらってるわ。」

カルテを書き終えると、"メイ"について言葉にしたときのように曖昧な笑みを浮かべて自嘲する。
そして、ポタポタと滴り落ちる汗の勢いが減ってきたのを見るとバスタオルを掴んで頭から被せる。

「っと、汗が引いたか。 今のうちに少しタオルで拭いておくわね。
 変化が起きている間は身体が火照って、少しボーっとしやすいみたいだから椅子か机を手すりにしておいて。

 身体の悪影響はないと思うけど、イメージはしっかりね。」

ゴシゴシと、抱きしめるような勢いで勢い良く汗を拭き取られていく。


「そろそろ始まるかな……胃のあたりがポカポカすると思うんだけど、どう?」


正面で様子を見ながら、お腹を指差す檻葉。

その指に視線が向けると同時、小さく火が灯るように下腹部がポカポカと温もりに包まれてくる―――。

水月エニィ >  
「そこまで割り切れると羨ましいわね。」

 曖昧な笑みは追求せず、言葉通りに受け取る。
 程なくすれば、お腹の辺りに熱を感じる。

「ん、っ」

 ――座っているのは危険と判断したのだろう。
 左手で机の足を掴み、右手でお腹を支える。

 気付けば意識が曖昧がする。
 靄がかかったような感覚を覚えた。
 曖昧な状態で殆ど気付いていないものの、水月エニィの変化も始まっている事だろうか。
 

谷蜂檻葉 > 「……始まったわね。」


その声も、僅かに霞がかって遠く聞こえる。
最初の変化は、熱の灯った下腹部だった。

じんわりと、胃の底から膨らんでいくような熱は腰の周りを包んでいく。
熱された紐で腰回りを優しく巻かれているような奇妙な感覚。


檻葉の視点から見れば、エニィのウエスト周りが見る間に細くなってきれいなクビレを作っているのが見えていた。


暫くすると段々と腰の周りを渦巻いていた『熱』は引っ込んでいくようにヘソに溜まっていく。
チリチリと焦がすような熱は、しかし擽るように僅かに快感を伴う。


―――そして、そのまま鼓動が高鳴るように次は胸に火が灯っていく。

水月エニィ > ぅ、んっ――」

身体が撫で回されるような、包まれるような奇妙な熱。
ある種のマッサージのような感触を覚えながら熱に身を任せる。
机を手摺代わりに握って蹲る細身の少女の姿は、ある種の扇情的な色気を醸し出している。

「ぁ、っ」

 続いては胸。
 揉まれるような擽られるような感触に色気のある吐息が漏れた。
 

谷蜂檻葉 > トクン、トクンと。
喉から胸へと何かを注ぎ込まれているように鼓動が高まっていく。
しかしそれは心臓ではなく、肺の熱量が上がるように。

呼吸をする度に火を吹いているかのように胸の奥が熱くなっていく。
その熱は導火線のように胸の先へと繋がっていく。

身体を舐め回すような火炎の縄と、胸先へと燃え盛る熱い刺激。


檻葉の視線の先で、エニィの胸がぷっくりと膨らんできれいなお椀型に整っていく。
大きく、それで居て形の崩れない美しい胸部が出来上がっていく。


―――エニィの体に、またじわりと汗が吹き出していく。


呼吸が自然と浅くなっていく。
吐き出しても吐き出しても熱い吐息に、唾液が外に溢れる。
そして何より、胸の先が火傷しそうなぐらいに熱くなっている。

ヘソを撫でる刺激で昂る心に尖る乳首を、火花の散るような刺激が弾けた。

水月エニィ >  呼吸が乱れる。
 呼吸の度に胸に熱が灯るものの、呼吸を抑える事が出来ない。
 蹲ったまま転がり、机の足に頭をぶつけた。

 不思議と苦しいと言った感触はない。
 覚えがなくもない気がするが良くわからない。
 頭が白黒する、世界が回る。
 
「あ、っ!」

 乳首に迸る刺激。
 一際強い衝撃に身体が跳ねて、悶えた。
 

谷蜂檻葉 > ビクンッ、と。エニィが海老反りになるのを切っ掛けに最後の変化が始まった。

足の無駄な肉が取れ、ヒップが持ち上がる。
身体の均衡を取ったかのように、まさしく『黄金比』の体型に変わっていく。


しかし、その熱は見えること無くエニィの身体を焼いていく。

最早全身が焼かれているよう。
しかし、その熱は痛みもなくただ『熱い』だけ。

冷ますことの出来ないもどかしさ、昂ぶって降りる事のない心のざわめき。

胸が、子宮が燃え盛る悪魔に舐められているよう。
外界の刺激から意識が途絶えて、宙(ソラ)に浮いた自分は捏ね繰り回されているよう。






―――いつ気を失ったのか、ハッと目を覚ますと心配そうに檻葉が貴女を覗き込んでいる。

掛けられたバスタオルさえ、グショグショに濡らして床を汗びたしにして貴女は寝転んでいた。


「……あ、起きたみたいね。 良かったぁ……大丈夫? またこれ、飲んでおいて。 凄い水分を失ってるはずだから。」

手渡されたのは、先程の生理食塩水だった。
普段飲めば顔をしかめる程度のものだが、口をつけたそれは目を見開くほどに、美味い。

水月エニィ >  ――。


 目を覚ます。
 どれ程の時間が経ったのかは定かではない。
 身体には未だに熱の余韻は残っている。

「んぅ……」

 身体を動かすだけで濡れた感触が伝わる。
 滑る床からどうにか身体を起こし、差し出されたそれを飲み干す。
 身体が"これ"を求めている。瞬く間に飲み干した。

「ぁ、えぇ、大丈ぅ……」

 呂律が回っていない。
 程なくすれば覚醒するのかもしれないが、まだ呆けている。

「どう、なっ……?」

谷蜂檻葉 > 「ほんの少しだけど、完全に気を失ってたわ。
 汗も止まらないからどうしようかって思ってたぐらい。

 ……ふふ。 でも、実験は成功ね。 うんうん、見事なグラビア体型って感じに―――――――――




「ちゃんと」と言って良いのかは解らないが、ともあれどうやら成功したらしい。

全身にまだ仄かに熱が残っているような感覚が残っているが、それも時間が経てば収まるのだろう。
そうして、段々と覚醒してきた意識のままに机に手をかけた



その時だった。

どくん、と。

胃の底に燻ぶった熱が、再び火を吹きあげる。

ばちり、と。

胸の先で焦げ付いた熱が、パチパチと火花をあげる。


見開いた瞳に、驚いた表情の檻葉が映る。

水月エニィ > 「えっ、あっ、えっ――!?」

 何か――生理食塩水を飲み干した辺りだろうか。
 全身から強い熱を覚える。

 再点火。
 全身から強い熱を覚えれば全身を抱くように蹲り、身を捩らせる。
 熱から逃げようと抗うが、熱が止まる事はない――。

 

谷蜂檻葉 > 「―――水月さん!? ちょっと、しっかり――――



しかし、再燃した熱は最初の熱に比べて随分と小さい。
けれど小さい分、何処かもどかしい感覚がハッキリとした意識の中で渦巻いていく。

胸が熱い、お腹が熱い、お尻が熱い。
胸がモドカシイ、お腹がモドカシイ、お尻がモドカシイ。
胸にもっと欲しい、お腹にもっと欲しい、お尻にもっと欲しい。

熱く、熱く。

全身を嬲るような”あの熱”を身体が望んでいる。

エニィの身体を作り変える熱を、エニィの身体が望んでいる。

どうすれば熱は私の体を焼いてくれる?
削れるところはもう削ってしまった。
彼女はもう、完成だと言っていた。

まだ変える、まだ変わる。

―――ああ、調度良く目の前に『ベツノモノ』がある。


全身に、火が灯る。

水月エニィ > 「――!!」

「!!――!!」

「!!」


 足りぬ、と言わんばかり唸る熱。
 焦れているような熱。

 "まだ"、"もっと"。
 ある種の懐かしき情と熱。
 意識が遠のく、かと思えば急激に鮮明になる。と思えば再び遠のく。

 全身に火が灯る。
 炙られる様に焼いていく――。

 ――再び、意識が落ちたか。
 

谷蜂檻葉 > 意識を失った完成された黄金比に『無駄』が積もっていく。


既に巨乳と言って良い天を突く張りのある胸は、
たぽん。とだらし無く重力に負けて潰れた水風船のように広がる。

美しいクビレにむっちりと肉がつき、
妊娠の初期の如くぽっこりと張り出すお腹は、しかし呼吸によってふるふると震えている。

スラっと伸びた足の間の逆三角は、
ミチミチとその幅を狭めてやがてムチムチと膨らんだ尻肉に隙間を埋められる。


それらが、ほんの1分足らずの出来事。
そのわずか1分足らずで、エニィの人形のように無駄のないバランスの身体は、脂の乗った実に肉肉しい肢体に変わってしまった。



檻葉に出来ることは、ただ天を仰ぐばかりだった……。

水月エニィ >  ――もっと、もっと。
 完成された黄金比に肉が積もる。

 肉が殖える。
 黄金比の均衡の上に、更なる肉が乗る。
 黄金比を守っていた門《ビキニ》のブラトップは役目を果たせず、弾けて堕ちる。
 
 胸肉は殖え、それを支える肩肉が殖える。
 上身を支える腰肉が殖える。腹肉も殖える。

 太腿も、尻も、足も。
 どこかが殖えた分だけどこかが殖える。

 黄金比を護る門は熱と肉に敗れた。
 それらは全身に過剰なまでの振り分け肉を注ぎ、
 少女の身体を実ったものにせんと大変容を果たす。
 ――たった一分の出来事だ。


「ぁ……れ……」

 目を覚ます。先程よりは意識がはっきりしているのに全身が重い。
 力を入れて起き上がった。

「谷蜂さん……?」
 

谷蜂檻葉 > 「あぁー……えっと、お加減はいかがかしら?」

起こした上体を、檻葉が腕を引くことで持ち上げる。
その掴まれた腕が、『むにぃ。』と感じたことがない感覚で潰される。

「一応、実験は成功ね。 ……想定通り、イメージに合わせて変化したわ。」

腰を落ち着かせるために、勧められたままに椅子に座る。
『ぎしり』と、音を立てて椅子が軋み、先ほどとは明らかに違う座り心地がした。


「それでその……… どうかしら、貴女の理想の体型に成れているかしら……?」

完全に目を逸らしたまま、檻葉がカートのついた立ち鏡をエニィの前に持ってくる。


―――別人のような身体に生まれ変わった自分が居た。

水月エニィ >  
 鏡を見る。

「……」

 言葉を失い、その後に頭を抱える。
 手を離す。鏡を見る。顔を覆う。
 
 平静を取り戻そうと深呼吸し――鏡を見る。
 

水月エニィ > 「な、なによこれぇっ!?」
水月エニィ >  

 ――顔を真っ赤にして叫ぶ。
 研究棟に困惑の詰まった悲鳴が木霊する。

「……。」

 実った胸を抑え、訴えるように檻葉を見つめた。

谷蜂檻葉 > 「……ご、ごめんなさい。

 恐らく、だけど『変化段階』が2回に分けて起きてしまったみたいね。
 『最初の変化』までは完璧だったわ。
 ちょっと反応が大きいかな、とは思ってたけど正常の範囲内だった。

 で、一度安定期に入ったから安心しちゃったんだけど……
 まさか、そこからまた『第二の変化』が起きるのは予想外だったわ。

 その、一応聞いておきたいんだけど何か心当たりとか無いかしら? その……今の体型の持ち主に?」


顔は変化から外れたのが唯一の救いだろうか。
全身が一回りから二回りはサイズアップしてしまったエニィの身体は、
搔き抱いてなお、むっちりと溢れるように贅肉がついている。

水月エニィ >  
「……心当たりなら目の前に。」

 やや恥ずかしそうに視線を逸らす。
 心当たりがあるとすれば彼女を羨んだ事だろう。
 恐らく混ざったか、殖えた。

 重い体を揺らす。
 申し訳なさそうな谷蜂を見れば軽く笑った。

「ま、私の責もあるから怒らないわよ。
 ……どうせやることもなかったもの。夏休みはシェイプアップと筋トレに注ぎ込む事にするわ。どうせなら利用しましょ。」

 "ひとまずは虞淵と殴り合える程度が目標ね"――
 ――本気か冗句か、突拍子もない事をぼやいた。
 実の所はどうかと言えば、『やけっぱち』だ。
 

谷蜂檻葉 > 「ぅえっ!?
 わ、私に……? あ、あはは……それはなんていうか……ええと……。

 ごめんなさい……羨ましくなるぐらい自堕落な生活で……。」

顔を覆う。それはそれでなんというか、恥ずかしい。
とりあえずカルテに、『変化中は対象の目標物以外は監視対象でも傍に居ないこと』と書き込んでおく。

「取り敢えず調整しておくから、また完成したら連絡させてもらうわね……。
 変化だけはキチンと起きるし、恐らくだけど対処法はあるみたいだから手っ取り早く戻すなら手伝えるはず。」

そう言いながら立ち上がると奥から幾つかの服を持ってきた。


「……とりあえず、服着ましょうか。 そういうことなら、私の服で多分入るはずでしょうし。」

水月エニィ > 「違うわよ。打ち込める所が羨ましかったのよ。」

 再び顔が赤くなる。
 鏡を見た時とは別の意味で赤くなったのだろう。

「……どうしてもじゃないなら遠慮しておくわ。
 私も自堕落な生活だったもの。これを機に見つめ直しましょう。」

 やんわりと断りつつ服を受け取る。
 何だかんだで芯は強固と言うか、異常だ。
 負け犬でありながらも勝てるまで挑み続けた少女の捨てきれぬ性分なのだろう。

「一番ラフなのは……」

 布地や装飾が多い服など着ていられない。
 シャツにチャップスとスパッツ。シンプルな衣服に汗を吸収する程度のインナーを着込む。
 暑さは増すが替えられる事を優先する。
 
 着替えを終えれば鏡を見る。
 大きく溜息を付いた。

谷蜂檻葉 > 「その、手伝えることが合ったら何時でも言ってね。

 ……あ、連絡先交換しておきましょうか。
 貴方がシェイプアップに成功するのが先か、調整が終わるのが先かは分からないけどね。」

と、一先ず連絡先を交換する。

シェイプアップに全力を尽くすか否かは置いておいても、最悪元凶になった彼女が元に戻してくれるようだ。


「……しかしその、見事に『一回り大きく』って感じね。 スタイルだけなら変わらないわ……。」

水月エニィ > 「ええ……
 ……とにかく色々疲れたわ。」

 連作先を交換する。腕が重いしスワイプが鈍い。
 理由は明白。汗と脂だ。

「本当、負け犬から雌豚になった気分ね。暴れ豚?」

 へらりと笑ってみせた。一見するに吹っ切れたらしい。
 理想、と言うのはあながち嘘ではなかったのだろう――体型の事かはどうかは別の話だが。

「何でも良いから積めば良いってものでもないみたいね。
 ……でも、ちょっと恥ずかしいわ。」

 スタイルが変わらないと言う事は女性としての部分に重点的に肉が乗っている事となる。
 そのことを自覚すると、再び羞恥の意識が浮上する。

「一先ず、今日は帰るわね……。
 また会いましょう。檻葉さん。」 

谷蜂檻葉 > 「ええ、また。 私はだいたい此処にいるから、いつでも尋ねてきてもらっていいわ。

 進捗が聞きに来たいときにでも着てくれればお茶も出すし。」

なるべく早く調整を終わらせるから!
そう言って、ぐっと拳を握る檻葉を後に、研究棟を出る。


日差しが、暑い。

ご案内:「研究棟 ***」から谷蜂檻葉さんが去りました。