2018/11/19 のログ
ご案内:「歓楽街・裏路地(過激描写注意」に遼河 桜さんが現れました。
遼河 桜 >  
日の暮れた歓楽街
賑やかな店の集まるビルの裏手───

「だから、売れないの。
 お金持ってこない悪いコには、ね」

壁に背を預け、自分に対して土下座している…女だろうか、
それを一瞥すらせず、スマホを弄りながら言葉だけを投げかける

「ていうか、自販機にお金持たないで行ったりする?
 土下座したらジュース出てくる?
 ちょっと考えたらわかると思うんだけどぉ」

間延びした、冷たい口調を振り掛けられれば、女はサクラの足へと縋りはじめる

遼河 桜 >  
──自分には異能なんてないと思い、ドロップアウトし二級学生へと身を窶した
実際には使えなかっただけ…制御薬を使い、自分に異能が在ることを知って一転
彼女の人生は明るい場所へと躍り出た
けれどそれは、薬がなければ異能を制御できない…暴走させてしまう状態
彼女にとって制御薬は必要不可欠なものとなってしまった

「触んなよ」

自身に縋る女学生を無遠慮に蹴りつけ、突き放す

「だからさっきから言ってるでしょ?
 金稼ぐ手段くらいいくらでもあるじゃん♪
 さっさとそのゴミみたいなカラダでも売っておカネつくってきてねぇ♡」

蹴り放され、蹲っている女学生へとしゃがみ込んでにっこりと笑みを浮かべてそう告げる
……そう告げられた女学生は、この世の終わりのようなカオをしていた

遼河 桜 >  
「聞ィてる?」

俯いている女の髪を鷲掴みにして上を向かせる
悲痛な、小さな悲鳴が路地裏に響いた

「まだわかってないみたいだから言ってあげるけど、
 世の中そんなうまい話ってそうそう転がってないんだよね。
 自分で勝手に異能なしだと思いこんで、落第街なんかで腐ってたクソビッチがさぁ、
 それが夢の薬でみんなにちやほやされる異能者になれましたー、とか」

クスクスクス
嘲笑の笑みが降りかかる

「猿なりにもうちっと知能つけろや。
 テメェのグロマンこいつでズタズタに拡張される前に稼いでこいっつってんだよ」

小気味良い音を立てて、サクラの手に鈍く光るバタフライナイフが握られる

───恐怖と、絶望の表情を浮かべて女学生はこけつまろびつ、路地裏から走り去ってゆく

遼河 桜 >  
くるくると楽しげに刃を舞わせ、ナイフをしまう
あの手の女は虫唾が走る、こうやって虐めてやると少しだけすっきりするのだ
最初はあの女が持ってきた金で十分足りていたが、軽く倍の値段をふっかけてやった
するとそれを疑いもせず出すといった。必死の形相で

「世の中バカばっかすぎ、ウケる♪」

───もうちょっといじめてやっても良かったかな、と思いつつ、少し広い路地へと踏み出す
こちらはまばらに人がいる
落第街とは違って無法地帯ではない
あまり目立つことをすると、鬱陶しい連中がやってくるのだ

「(次にいじめるやつはホテルにでも連れ込むかな)」

そんなことを考えながら薄暗い路地を軽い足取りで歩いていた

遼河 桜 >  
「しかし制御薬様々って感じ。
 バカな男に貢いでもらわなくても毎日贅沢できるもんね」

常世島、特に落第街に住んでいる連中なんかはすぐに飛びついてくる
金を用意しろといえば盗みや売り、なんでもやる分払いも良い
此処歓楽街の夜に生きる人間も、よく金を落としてくれる

「うまくやって、学生街辺りでバラ撒いてみるのもいいかも?
 手に入れたくても落第街はコワい、なんて子なんかもいそうだし…」

算段を立てて、口元に手を置いてクスクスと溢れる笑みを抑える

ご案内:「歓楽街・裏路地(過激描写注意」に木里嶺 静織さんが現れました。
木里嶺 静織 > ━━━━━━━━ウィィイィ…………ィィン。

電子音と、路地裏の冷たいコンクリートの地面の細かな砂利を、転がるようにしゃりしゃりと踏みしめていく音。

それがこの路地裏に響いてくる。時々、行き先を見るような音の感覚を挟みながら、それは、ゆっくりとそちらへ。

「━━━━あ、あのぉ……」

…………小さな声。高く細い声がして。そちらへと、闇の中から出てくる姿が声を掛けてきた。
━━学校貸与品の証である常世学園の用品ナンバーがテープで貼られている車椅子に、来客は腰掛けていた。

「……そこの綺麗な、えと、お姉さん」

遼河 桜 >  
「(うわっ…びっくりさせやがって……何だ、こいつ)」

闇の中からすっと現れたそいつと、モーター音に少し驚く
…あまりにも今の時間この場所には似つかわしくないヤツが現れたものだ

「? どうしたのお嬢ちゃん。車椅子…だけど、こんなところで」

そんな内心はおくびにも出さずにそう応えを返して

木里嶺 静織 > 「……え、えっと」

車椅子に乗ったまま、そのブレザーの制服のぶかぶかな手を上げて、……ゆっくりと路地の外側を指す。

「……外のほう、何時も帰ってる道が、工事中になっちゃって、寄り道してたら、道が、分からなくなっちゃって……。
その、お姉さんは、常世学園の生徒さん、です……か?」

━━ボブヘアーの前髪が掛かった、医療用の眼帯で隠されていない方の金色の目。
こんな場所で、こんな場所を知らなさそうな純粋無垢な金色の眼。
……ゆっくりと其方の顔を見上げた。

「……介護寮に行く道って、分かりません、か?」

遼河 桜 >  
「うーん、ごめんね。私は学生じゃないんだ、だから寮の場所も知らないの」

──ほとんど学校に行っていないのは本当だが、学生でないというのは嘘だ
ただ単に、相手をするのが面倒くさかっただけである

見ればまだ歳も幼い
歓楽街に来ているとはいえ、金も持ってなさそうだ
だったら相手をしたって自分になんの得もない気がする

「大通りに出れば他に教えてくれる人がいると思うよ、頑張って♡」

満面の笑顔で見捨てようとしていた

木里嶺 静織 > 「……そ、そう、なんですか……ごめんなさい」

笑顔をなるべく維持したままだったが、その返答には少なからず『また訊ね損ねてしまった』という顔色が滲んだ。

「……お兄ちゃん、お仕事忙しいから、早く帰ってご飯作ってあげないと……」

『コームインなんて難しいお仕事、出来るのかな』などと小さく呟いて、元来た道への帰路につこうと、手元のレバーを弄って何度もその場で切り返しをしてUターンしようとする。

━━━━《かたん》と。
その拍子にか、何かが車椅子の荷物掛けにかかる、手作り感いっぱいの鞄から落ちた。そして中からぱさっと数枚の何かを撒き散らす。

「あっ」

…………障害者手帳、学生証、保険証、メモらしき紙切れ。
…………キャッシュカードが2枚。一枚は黒く反射するもので、名義には

『木里嶺 敦』と。

遼河 桜 >  
──音がした
とろくさいやつ
放置放置、ほっといて帰ろう、と思ったが…
ぶちまけられた荷物の中に黒く光るカードがあるのに気づく

「(…ブラックカード?あんなガキくさいやつが持ってるモンかよ)」

足を止め、踵を返す
少女のところまですたすたと歩いていき、屈み込んで

「大丈夫?拾ってあげるね」

微笑んで、落ちたものを拾い集めてゆく
そこでもう一度、カードを確認してから…少女へと手渡した