2015/06/29 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮、自室」に鈴成静佳さんが現れました。
■鈴成静佳 > ………んー……っ! ふっ……くぅ……!
(時刻は、夜もとっぷり更けてきたころ。10時だろうか、11時だろうか)
(氷架さんの恋のお悩み相談に乗り、くくる先生の魔術によって氷架さんを寝かしつけた後は、ちょっとだけマッサージの講義を受けたのち、自室へと戻った)
(先刻、氷架さんの部屋のほうから物音がし、外に出ていったように感じた。よく寝て頭が冴えたか。なおも冷めやらぬ心を鎮めるために、走りにでも行ったか)
(それとも……)
■鈴成静佳 > はふ………んぅ………っ……!
(静佳はあれから自慰に耽っていた。いや、氷架さんが帰ってくる前もしていたが)
(異能を用いて子宮頸部のみを震わせるエクストリーム自慰。静佳にとってはこれが最も気持ちよく、潮吹きにも繋がりにくいので後処理も比較的楽なのだ)
(潮吹き体質というのも困りモノである。そして、ルームメイトや他の寮生への迷惑ともならぬよう、枕を噛んで精一杯声を抑えなければならない)
(……自慰に耽っていないと、不安なのだ)
■鈴成静佳 > (初めての恋に悩む氷架さんへ言った、自分の言葉を反芻する)
「異性に特別な感情を抱いたなら、それは恋愛にせよそれ未満にせよ、よい感情だ。大事にしよう」
「恋をしていると思ったら、素直に好きだと伝えよう。偽らず誤魔化さず、まっすぐに」
「もしそれで恋敗れても、好きであることをやめる必要はない」
「ただし避妊しないセックスは結婚してから。責任を持てるようになってから」
(……ああ、きっと合っているのだろう、この理屈は)
(「好き」というポジティブな感情は、大事にすべきだ。それが実り多い人生につながる)
(……では、アタシはどうなんだろう)
■鈴成静佳 > ひぅ……あ! ああああ!! っく……ぅ……
(アタシだって、ずっと前に……3年くらい前には、恋心とか抱いていた。氷架ちゃんの切ない気持ちはわかる)
(でもすぐに、恋という切ない感情は消えた。人を好きになるよりも、快楽を好きになり始めた)
(快楽が好き。快楽を好きな人が好き。快楽を与えてくれる人が好きで、快楽を受け入れてくれる人が好き。快楽を否定する人は嫌いで、他人に苦痛を与える人も嫌い)
(そこには性別の垣根はなく、切ない気持ちもなかった。ただ単純に、手を伸ばせばそれがあった。異能があれば、手を伸ばしたり添えたりする必要すらない)
(悩み、悶々とする時間も要らなかった。ある意味、人を好きになるよりも、生産的とさえ言えるかもしれない)
(……でも。今は、氷架ちゃんが羨ましい)
■鈴成静佳 > (母親は言っていた。「いっぱい勉強して、早くいい人見つけて、早く結婚して、いっぱい子供を産んでね」と)
(ああ、あこがれのお母さんの言うことだから、アタシもそうなりたい。お母さんを目指したい)
(だから、今は勉強する。でも結婚するのは、勉強が終わってからでいい。だから避妊もしっかりする)
(でも、快楽とは結婚できない)
(いざ社会人になって、この快楽主義をポイと捨てられるのか? この自問が頭のなかに浮かんでから、静佳の心を陰鬱なものが包んでいる)
■鈴成静佳 > アタシ……人を好きになれるのかな……
■鈴成静佳 > (顔を真っ赤にし、クッションを抱きながら脚をバタバタさせてた氷架ちゃんは可愛かった)
(その心のなかでは、火が着くほどに思い悩んでいたのだろう。多少なりとも力になれたことは嬉しいが、その姿は羨ましくもなった)
(きっと、アタシがそう遠くない過去に置いてきた感情なのかもしれない)
(遺失物に気づくことは、悲しい)
………くぅ……っ…! ああ……はふ……っ……。
■鈴成静佳 > ………はぁ………はぁ……。
(もっといろんな人の意見を聞いてみるべきだ。アタシだけの意見を聞いちゃいけない。やや逃げ腰ではあるが、氷架ちゃんにはこうも述べた)
(恋に悩む少年少女は探せば掃いて捨てるほどいる。氷架ちゃんには身近に家族もいる)
(では……アタシは誰に相談すればいい?)
(アタシは変態だ)
(変態の相談に乗ってくれるひとなんて、居るのだろうか……)
■鈴成静佳 > ………ふぅぅ……あ! あぐっ………くぅぅ……。
(変態の悩みを封じ込めるために、何十回も、何百回もイッたけど)
(そのシミはいつまでたっても脳の裏側にこびりついてて)
(いつしか、アタシは気を失うように脱力し、意識を失った)
(困ったなぁ、もうすぐ試験期間だってのに)
ご案内:「常世寮/女子寮、自室」から鈴成静佳さんが去りました。
ご案内:「常世神社・鎮守の森」に石蒜さんが現れました。
ご案内:「常世神社・鎮守の森」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。
■石蒜 > 寝床にしていた異邦人街の祠は、風紀委員どもに嗅ぎつけられたらしく、待ち伏せされていた。
もはや鳴鳴と同一の存在と成り果てた石蒜であるが、未だに鳴鳴の残り香は麻薬めいて安寧をもたらすのだ。
だから今は、鳴鳴と初めて会ったこの場所、鎮守の森の一角にやってきたのだった。
「すぅ……はぁ……。」大きく深呼吸、鼻腔を満たす香りと瘴気に、安らいだ顔になる。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 一方その頃。フライトパックによる飛行の訓練を行っていた畝傍は、
何やら禍々しい気配を察知し、常世神社付近の上空へと辿り着いていた。
鎮守の森はあの時、畝傍と石蒜が最初に出会った場所である。もしや、ここに彼女が――?
そう感じた畝傍は、ゆっくりと森の中へ降下していく。
■石蒜 > 何かが近づいてくる。
鳴鳴の残り香にまじるその臭いに、顔をしかめて舌打ち。
何かを燃焼させる焦げた臭い、そして……ああ、この臭いは知っている、よく知っている臭いだ、方向からして空か?
薄ら笑いを浮かべ、空を見上げる。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > フライトパックを脳波制御し、降下していく畝傍の視線の先に映るのは、彼女がよく見知っていた少女。
畝傍の最初の『トモダチ』にして、今は袂を分かった、人斬りの少女。――石蒜である。
しかし、彼女の姿は以前畝傍が見たものとはどこか違っていた。以前は白かったはずのその肌は、褐色に染まっていた。
畝傍は石蒜の姿を見るや否や、叫ぶ。
「シーシュアン!……シーシュアン!そこにいるんだね!?」
■石蒜 > そう、かつての同類、そして今は、ご主人様を仇なす敵だ。
「ああ、畝傍。」親しみを込めて、その名を呼ぶ。
「ええ、石蒜はここに居ますよ。まさしく私です、石蒜です。元気でしたか?」迎え入れるように、両手を開く。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > やがて畝傍が地面に足を付けた時、眼前には畝傍を迎えるように両手を広げる石蒜の姿。
しかし、今の畝傍はそれに応じることはなく。
「うん。ボクは……元気だったよ。……ねえ、シーシュアン。その体……何かあったの?」
石蒜の身に起こった変化について、問う。
その両腕には狙撃銃の代わりに、先日養護教諭の蓋盛椎月から借り受けた上下二連式ショットガンが抱えられていた。
万が一の場合に備え、すでに弾が込められている。
■石蒜 > 相手が応えることがなければ、残念そうに肩をすくめて腕を引っ込める。
「この肌ですね。綺麗でしょう?ご主人様と同じ色です、ふふ。」自分の肌を無でさすり、自慢げに言う。
「やっと、やっとなれたんですよ、ご主人様と同じ存在に。今こうしていても、ご主人様を感じることが出来る、いつも触れ合ってるみたいに、ご主人様が私の中に居るし、私もご主人様の中に居るんです。素晴らしい、なんて素晴らしいんだろう!!ハハハハハ!」声を上げて笑う、その笑いには狂気、狂信、恍惚、読み取りきれないほど様々な喜びの感情が混ざっていた。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……そう、なんだ。……そう、だよね……」
石蒜の言葉、そして歓喜に満ちた笑い声。それを聞き、畝傍は俯く。
「……じゃあ、シーシュアンは……サヤは……もう」
石蒜に聞こえるか聞こえないかの小さな声で、呟く。
■石蒜 > 「はぁ……」笑いを止めて、ため息。
「サヤ?私の前で別の女の話をするんですか。嫉妬しますねぇ。」サヤサヤサヤ、どいつもこいつも、あいつのことばかりだ。あいつの何がいいんだ、あんな愚か者、臆病者。
仕方ない、と言った風に答える。「まだ居ますよ、私の中にね。でももう、出てくることはないでしょう。」
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 「シーシュアンの中に、まだサヤが……?じゃあ、あの時……」
畝傍は顔を上げ、問う。
彼女はまだ、祠での戦いの際に石蒜めがけ投擲した『サヤのかけら』の行方を知らなかった。
あの時は鳴鳴が繰り出した触手への対応に追われ、そちらに気を向ける余裕がなかったのだ。
■石蒜 > 「ええ、刺さりましたよ。それでサヤが私の中でひどく暴れてね。とても、とても苦しかったですよ、何せ一つの体で2つの魂が暴れるんだ。想像を絶する痛みと、混乱と、とにかくまぁ酷かった。」とても嬉しそうに、自分の受けた苦しみを語る。それすらも、享楽のネタにしているのだ。
「脱線しましたね。あなたのお陰でサヤが調子に乗ってね。それでまたご主人様に歪めてもらいました。徹底的に、その時まぁ……サヤにお仕置きしたんですが、ふふふ……。」とっておきの話のように、笑いをこらえる。
「くっくっく……刺激が強すぎたみたいで、もう何も出来ませんよ。出てきても泣き喚くだけでしょう、私の中で眠ってるのが一番幸せなぐらいです。アハハハハハ!」楽しくてたまらない、あれほど自分を苦しめた存在が今や無力な状態で飼われている。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 「それで……シーシュアンは……」
また歪めてもらった。石蒜のその言葉で、畝傍は全てを悟ったように。
「そっか……やっぱり……そう、なんだね。シーシュアンは、もう……ほんとに……」
俯き、ぽろぽろと涙を零す。
畝傍の心を支えていた何かが、ぽっきりと、折れた。
――同時に、畝傍の肉体に変化が生じていく。
ブロンドの髪は色彩を変転させ、揺らめく炎のように輝きながらなびき、
さらに眼帯の裏の左目と、両の手首・足首からも炎が溢れ出す。
零れ落ちる涙さえも跳ねる火の粉に変わるその姿は、まさしく生ける炎の顕現。
かつて石蒜の主、鳴鳴と対峙した時と同じ変化が起こっていた。
「なら、ボクは……シーシュアンと、戦わなきゃいけないかもしれない……ううん、戦わなきゃいけない。ほんとうに、心まで歪みきってしまったなら、ボクは」
ショットガンを構え、フライトパックの両翼先端に備え付けられた卵型の推進装置に脳波操作で点火、戦闘態勢を取る。
その目からは、炎の涙がとめどなく溢れていた。
■石蒜 > 「アハハハハハハh」笑う、笑う、笑う。人を命を神々すらも嘲笑う笑い。
石蒜の目が黒く染まる。漆黒の球体となった眼球には混沌がうごめいていた。
右手からどろりと黒い液体が滴り、それは刀の形をとった。
「そうですかそうですか、なら私もお相手しましょう。死ぬほど傷めつけて下さい、私もそうしますから!楽しみましょう、命果てるまで!!」
相手は銃、なら距離を取られては不利になる、跳びかかって距離を詰め、小手調べに横薙ぎの斬撃を放つ!
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍は素早く後方へジェット噴射し、寸でのところで斬撃を回避する。
しかし、切先の一部が畝傍の胴に命中していた!橙色のボディスーツの一部が切り裂かれ、わずかに鮮血が滴る。
「く……っ」
だが、この程度のダメージに怯んではいられない!ショットガンの引き金を引き、散弾を二発立て続けに放つ!BRAKKA!BRAKKA!
放たれた散弾はあの時と同じ力によって炎を纏い、襲い掛かる!
■石蒜 > 銃、ならば弾道は直線、左手に力場をまとわせ斥力を使って弾こうとする。「……!!」
弾が、散らばる。その全てを弾くには、手のひらだけでは狭すぎた、心臓と脳に向かうものを優先して弾く。残りは……その薄笑いの顔面を貫いた。
運動エネルギーを受けて後方に吹っ飛び、仰向けに倒れる。
「アハ、アハハガボガボゴボ」喉が破け、笑い声が濁る。傷口を塞ごうとするが、燃え盛る未知の炎が邪魔をする。
頬が吹き飛び、その断面が燃えている。立ち上がり、残った顔で笑顔を作った。
「痛い、とても痛い。それにこの炎、傷口を焼いて私を責め苛む。最高だ……素晴らしい。畝傍、ありがとう、今私は本当に楽しい!!」上体を低くして、駆ける。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 「くうぅうう……ッッ♥」
畝傍が自らの異能であると他者に対して嘯く『狙撃快楽』<スナイプ・ハッピー>。それは銃弾を生物やモノに命中させることで快感を得る、彼女の異常性の一部。
石蒜に散弾を命中させた畝傍の体には強い快感が迸る。しかし、畝傍は自らの精神力を以て快楽に喘ぐ声を押し殺した。
畝傍は石蒜から一定の距離を保つように飛行を続け、弾の補充を行いつつ、石蒜の言葉に応える。
「……そう。ボクは……つらいよ。悲しいよ。シーシュアンを……こうして、撃たなきゃいけないなんて」
そう語る畝傍の瞳からは、相も変わらず炎の涙があふれ出ている。
■石蒜 > 木々の間を縫うようにして、遮蔽から遮蔽へと移動する。しかし相手が背負っている、機械で空を飛ぶ畝傍には追いつけない。
「辛い?悲しい?今喘ぎを漏らしたのは誰ですか?あなたも楽しいんでしょう?気持ちいいんでしょう?」一旦木の影に隠れて、力場を足に集中させる。
「認めましょうよ、あなたも私も狂ってる!この殺しあいを楽しんでるんでしょう?!」
木の影から姿を表すと同時に、斥力を利用してすさまじい早さで飛び込む。
散弾の被害を最小限にするため、体全体を横にし、顔の前で腕を交差させている。例え撃たれても、勢いのまま体当たりをするつもりだ。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 「違う……違うよ。ボクは……っ!」
飛び込んでくる石蒜に向けて、再び炎を纏う散弾を発砲!BRAKKA!BRAKKA!
しかし、石蒜はなおも勢いに任せ突っ込んでくる!ならばと、畝傍は石蒜に背を向けぬまま後方へ急加速!
だが畝傍の思考の乱れがそのまま脳波制御に現れ、飛行ルートは徐々に狂い始めていた!
■石蒜 > 「アハハハハハ!!!」腕を散弾が削っていく、肉が露出し、骨に弾が食い込み、その傷口を炎が焼く。常人なら気絶するほどの痛みを快楽として石蒜は受け止める。心臓が脈動するたびにズキズキと痛みが燃え上がり、石蒜は絶頂した。
飛び込みで追いつけないと悟ると、着地と同時に前転して、速度をほとんど殺さないまま、走る姿勢へと移行する。
地面を蹴ると同時に斥力を使ってその速度を増す、今や距離は少しずつ縮まり始めていた。
「もっと撃って下さいよ畝傍!!私をボロボロにしてください!!もっと傷めつけて、最高の苦痛とともに殺して下さい!!」身に受ける快楽を笑い、苦しむ相手に笑う。全ては石蒜の享楽のネタでしかない。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 「あ……♥はぁ……ッ♥イ……ッ♥」
さらに増す快楽。抑えきれぬ喘ぎが漏れる。畝傍もまた達していた。しかし。
「……嫌だ。嫌だよ。ボクはシーシュアンと戦わなきゃいけない、そう言った。でも。……ボクの目的は!シーシュアンを殺すことじゃない……!だけど……どうしたらいいか……!」
ショットガンに弾を込めつつも、そう語る。その言動は明らかに矛盾しているものと、畝傍自身わかっていた。だからこそ思い悩み、苦しんでいた。
例えそれが、当人にとって嘲笑と享楽の種にしかならなかったとしても。
畝傍の飛行は段々と乱れていく。何かしら衝撃を受ければ、そのまま墜落しかねない不安定さだ。
■石蒜 > 弾込めの隙に、走りながら左手で土をすくう。軽く揺すって土を落とし、中の小石を握りこむ。
「畝傍、あなたは何がしたいんですか?私を殺したくないなら、どうしてあなたは私に銃を向けるんですか?矛盾してますよ!それはどう見ても殺すための武器だ!それを撃ちながら、殺したくない?笑わせる!」
防御を捨てて左手を突き出し、畝傍の顔を狙って小石を親指で弾く。斥力は足に使っているため加速できないが、当たれば十分痛いし隙が出来るだろう。さらに避ける先を予想して、右手の刀を振りかぶって、投げつける。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍の眼前に迫る石。それを間一髪避けたはよいが、さらに石蒜の右手の方向から、投げつけられた刀が高速で迫る!
とっさに回避を試みるも、左脚を負傷!スーツが破れ流血する!
さらに衝撃によって体勢を崩した畝傍は、地面へと徐々に落下しはじめた!
石蒜の言葉により動揺している精神では、飛行の制御が利かない!
やがて、畝傍の体は地面へと叩きつけられる。なんとか致命傷は免れたが、足を負傷した状態での移動は困難だ。
「……ボクは……ボクは……」
炎と化していた畝傍の体は、次第に元に戻ってゆく。
もはやこれまでか――?畝傍は半ば希望を失っていた。
■石蒜 > 刀はブーメランのように弧を描き、石蒜の手に収まった。
すぐさま、倒れた畝傍のそばに駆け寄る。
「もう降参ですか?残念ですねぇ、とても楽しかったのに。」畝傍の首に切っ先を向ける。その両腕は前腕のほとんどの肉が吹き飛び、骨が露出していた。笑う顔も右頬を中心に1/3ほど失われている。
その姿は、石蒜が人間を辞めたことを如実に物語っていた。
「どうしましょうか、腕を落とします?足の健を斬りましょうか?指を潰して銃を撃てなくするのも、いいですねぇ……。」切っ先をそれぞれの部位に向けながら、狂ったモノが笑っている。希望を失った顔を、さらなる絶望に叩き込む愉悦を。
だが「……?!あ、ぐ……。」その顔が苦痛を受けたように歪み。刀を取り落とす。「まだ……くそ、そんな力が……。サヤ、め……。」
表情が、纏う雰囲気が変わる。「畝傍さん、私です……サヤです、ごめんなさい、私のために……。」必死で石蒜の意識を抑えながら、サヤが顔を出す。
ご案内:「常世神社・鎮守の森」に風間蒼介さんが現れました。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍はその声に気付いた。失われつつあった希望が徐々に蘇る。
「……サヤ!サヤなの!?」
石蒜の中にいた――本来の彼女、サヤ。
出てきてももう何もできないだろうと石蒜は言っていたが、
今、そのサヤ自身が、自らの声で畝傍に語りかけてきたのだ。
■風間蒼介 > これ……は?
(禍々しい気配を感じたのが数分前
戦闘の音に気づいたのが数十秒前
そして二人の姿を見つけたのが数秒前
動かぬ畝傍に刀を突きつけるサヤ…石蒜の姿を認め、遅かったことに歯噛みをしながらクナイを引き抜き…
しかし次の瞬間飛び込んできた会話に思わず、戦場に飛び込みながら、しかしその手は振りぬかれず止まっていて)
■石蒜 > 「そう、です……すみません、お話……したいけど……時間が……。ぐうっ…!」途切れ途切れに、言葉を紡ぐ。その声は苦しそうだ。
「私の……鞘を…刀の鞘を……探して……くださ、い……。そこに私の、残りの…っく……た、ましい……が…。学生、通りに……。落とし……あぁ……!」右手がぶるぶると震えながら落とした刀を掴み、自らの腹を貫こうとする。それを左手が刃を掴んで止める。体の中で壮絶な主導権争いが起きているのだろう。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 「うん……わかった……。ボク……刀の鞘を、探す……よ……だから……サヤ……は」
畝傍はサヤのほうを向いて宣言する。しかし、体の各所に負った傷のために、その声は畝傍の意思に反して弱々しいものとなっていた。
脚は刀による負傷と着地の衝撃でうまく動かせない。再びフライトパックによる飛行を行うのも難しいだろう。
では、どうすべきか?畝傍は考えようとするも、思考にもやがかかったように、頭が回らない。ただその目に涙を浮かべ、呆然と宙を見つめるのみであった。
■風間蒼介 > 畝傍殿……これを
(スマートフォンを取り出し起動するのは術符アプリ、風の符を呼び出し、力を注ぎタップ
バッテリーが急速な消耗を始めるが発熱が限界量に達っするまでこの程度の術なら数十分は保つだろう
それを畝傍に向かい投げ渡す
風の伝播を操作し、狙った場所に声を届ける木霊送りの術
本来ならば周囲に声を漏らさず離れた相手と会話するための術だが、術者の制御を離れた今精密操作は不能の拡声器と化しているが
この場ではそれこそが重要だろうと)
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍は左手を出し、蒼介から投げられたスマートフォンを受け取る。
バッテリーの熱が畝傍の手に伝わった。
「……これは……?」
画面上に呼び出されている風の符。蒼介の意図のすべてを察し取ることはならない。
だが、ふと思いついた可能性に賭けてみる。
「……サヤ!サヤ……!」
石蒜としての人格に再び主導権を奪われつつあるサヤに、呼びかけた。
■石蒜 > 「ごめん、なさい……諦めてと……言うべきかも、知れないのですが……。」刃を握る左手を少しずつ刃が滑り、切っていく。
そのたびにサヤは苦痛に顔を歪ませる。
「私は……あなた、と…友達に……なりたく、て……。」涙をこぼす、それは魔性のものに染まった後悔か、それでも差し伸べられる手への感謝か。
「かざま、さんも……ごめいわ、く……おかけして、すみ、ません……。」駆けつけてきた、サヤを最後に助けてくれた恩人に
「でも……おね、がい……します……。たすけ、て……。」
力を振り絞って、か細い声で言う。臆病な少女の精一杯の勇気。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍は、助けを求めるサヤの言葉に応える。
「あきらめない……ボクはまだ、あきらめない」
負傷した左足を引きずりながらも立ち上がり、涙を拭って言葉を続けた。
「ボクは……サヤの、トモダチだよ。シーシュアンはボクのトモダチで、ボクのいちばんだった……だから、サヤだってボクのトモダチで、ボクのいちばんだよ。ボクはサヤのこと……ぜったいに……あきらめない!」
叫ぶ。
■風間蒼介 > 迷惑など…かけずに生きていける人間などござらぬ
居るとすればそれは誰とも関わらず誰とも交わらずに生きている人間だけでござろう
それに…ご大層な能力など持って産まれてきてござるが、拙者らなど所詮は子供でござる
今はそれが人生の全てに思えた事でも…後になれば笑って振り返る思い出話にならぬとも限らぬでござるよ
(ようやく聞けた彼女の本音の声に胸中の迷いも、周囲の血腥さも吹き払われたような気持ちに
そして動けぬはずの畝傍が必死に立ち上がるのならば、隣に立って、よろけるようならば捕まれるように)
ならば…その先がある事を願うのは当然のこと、そしてこれが拙者達の望む事ならば、迷惑など感じてなどござらぬ
畝傍殿は手を伸ばしてござるよ、必死に駆け回って、自分の事も忘れるほどに…
それに拙者も願ってござると、お主が帰ってこれるのを
(一息吐いて、聞くべきか、聞かざるべきか悩んでいた言葉を、腹の奥から探って)
サヤ殿…石蒜は「異物」にござるか?それとも、サヤ殿の一部にござるか?
(ただ一つ、確認して起きたい事を)
■石蒜 > 「あり、がとう……。鞘を、見つけ、たら……それで……刀を、封じて……下さい……。」刀に自らの魂を込める人刃一刀流の性質を利用して、石蒜を刀に封じる。それが恐らく、サヤが助かる唯一の手段だろう。だがそれには石蒜をサヤが封じ込められるほど弱らせる必要がある。>畝傍
「おね、がいします……。うぅっ……!」刀がゆっくりと、サヤの腹に食い込んでいき、激痛にあえぐ。
「さ、最初は……私の、一部……でした……でも、もう……別の、存在……の、はず……。」確かに石蒜は、サヤの魂を元に歪められた存在だが、もはやそれは歪み果てて別個の存在と化しているのだった。>風間
「にげ、て……もう、抑えきれ……。」
業を煮やした石蒜が、別の手段に出る。
サヤのトラウマを、陵辱され鳴鳴に純潔を奪われた時の記憶を掘り起こす。
「あ、あぁ……うわぁあぁぁあ!!!!!」サヤが、泣き叫ぶ。
左手を刃から柄に移し、両手でもって自らの腹に刀を突き立てる。
「嫌だ!!嫌だ!!!助けて、誰かぁぁ!!!!!」
■畝傍・クリスタ・ステンデル > すでに満身創痍のように思われた畝傍の体は、サヤの叫びを聞き、無意識のうちに再び炎と化していた。
「(ボクが……助けなきゃ!)」
今は自身の心配などしている場合ではない。
ショットガンを取り捨て、サヤの腹に突き立てられた刀を思い切り掴み、石蒜の邪悪なる意思に断固として抵抗する!
「……サヤ!サヤ!しっかりするんだ!あきらめたらダメだよ!」
刀を握ったまま、サヤへの呼びかけを続ける!
■風間蒼介 > ……承った
(可能ならば否定はしたくなかった、だが彼女がサヤを苦しめる異物となっているのならば…
いやしかし、歪みの根源がその否定にあるのなら?
判らない、何が正しいのか…ただ、迷いは必ず誰かを殺す事になるであろう事は、判る
迷わずに、しかしそれに凝り固まらず…出来るのはそれだけ)
っく…!
(駆け出そう…そう思った瞬間に横を駆け抜けていく影
動けぬはずの畝傍がかけていた、燃え盛る焔を身に纏い
迷わず、ただ一直線に…ならば)
煉精化気 起風発雷…!
(畝傍の肩に手を置き、異能を発動させる
全身を包み込む風の結界を触れた場所から伝播させ、傷口近くの血管を圧迫し止血
関節周りを多い外骨格のように補助、体勢が崩れるのを防ぎわずかな動きにも対応できるよう、全神経をそちらに向けてサポートに専念する
今ここで不意を討たれれば何も出来ないだろうというほどに)