2015/07/18 のログ
ご案内:「未開拓地域/風荒ぶ荒野」にクランさんが現れました。
クラン >  まだ日も高い荒野に砂塵が吹き荒れる。
その先頭には十台のバギー。落第街で名を上げようとした違法部活の所有するものだ。
 専用に誂えたダートタイヤは不必要なまでに砂を巻き上げもうもうと視界を狭めていく。
 目指すは南西。そこに仲間が手配した船が駐留しているはずである。
『あともう少しだ、あともう少しで港につくぜェ!』
 先頭車両。モヒカン=ヘッドのパンクがシフトレバーを乱雑に切り替えながら、残った片手で片鼻を摘む。
助手席に座るスキン=ヘッドが、すっとモヒカンの鼻にストローを差し込んだ。
 音を立て、ストローから勢い良く空気を取り込むと、その中に仕込まれた劇薬がモヒカン=ヘッドの低能を刺激する。
『キタキタキタァアアー!! 乗ってきたァ!』
 アクセルペダルはべた踏みに、何もかもを置き去りにしていくかのように。
ハンドルに添えられたボタンを狂乱めいて叩くと、バギーに据えられたエキゾースト・パイプから炎が巻き上がった。

クラン >  それに続くバギーでは、タトゥー=ヘッドの男が神経質めいた表情で爪を噛む。
もはや噛み切るほどの爪がないことが分かると苛立つ様子でクラクションを響き鳴らした。
『デク! おいデク! 背後はどうなってやがる!』
 車両後部にいる相棒へと声をかけると、3mはあろうかという大男がバギーから身を乗り出した。
『なあんも見えねえよ! みんな砂撒きあげちまってからァよォ!』
『ふっざけんなよおいデク! 俺はハンドル、テメエはミラー! 仕事をしやがれ、クソッ!』
 続けざまにクラクション。違法改造を施されたそれは、鼓膜を割らんと稲妻めいた轟音を響かせる。
 そのクラクションの音を嗤ってか、ざざ、ざざ、とカーステレオから無線が届く。
『オイオイ! ピッカー・フック! ビビってんじゃねえよ! ここまで来りゃ追いつけるもんなんてたかがしれてやがる!』
 陽気でファンクな煽り声に、ピッカー・フックと呼ばれたタトゥー=ヘッドはもう一度クラクションを叩き鳴らした。
『デク! デク! テメエ、銃座に行って来い! 物は用心っていうだろう!』
『わかったよ、相棒! そういらつくなって! あと二十分も走ればゴールなんだからよォ!』
 大男がバギーの後部、開けた荷台に移動する。
そこには装甲車両をも食い破る大型の機関砲が一つ。
『矢でも鉄砲でも、こいつの前じゃあかんぼみてえだな。ヘヘ』
 ――デクが愛おしそうにその鋼を撫でてやった。

クラン >  そう、ゴール。ゴールだ。彼らは大蛇の尾を踏んだ。
落第街第四区画の元締め、クラン・カラティン。
その縄張りを荒らしまわった。魔女と呼ばれるその元締めの怒りを買ったものは生きて帰れはしないという。
『なァにが鉄の掟だ!』
 無法者たちが声を上げる。そんなもの、ケツをまくって逃げてしまえば関係ない。
トンズラこいて、ケツをまくって、せいぜい臭い屁でもかがせてやればいい。
 男たちのアイドルである男娼が、三番目の車両からギター・サウンズをかき鳴らした。
 ロック&フリーダム。圧制からの解放。
自由を夢見てバギーが海へと走りゆく。
『ヘヘ、オレぁこの島ァでたらよ、ビッグになるんだぜ』
 アイドルが、薬漬けの証たるすきっ歯と、落ち窪んで淀んだ瞳で呟く。
ギターをかき鳴らし、高らかに明日への希望を歌う。
 だが。
『オイ! バンジョーだ! ケツからエンジン音! 数は……うるせえな! テメエら少しは静かにできねえのか!?』
 無線を通じて、最後尾の見張り役がガナリ散らした。
砂塵の奥に、ぼんやりと浮かぶシルエット――バイクだ。

クラン >  6200ccの排気量を誇るエンジンが、化け物じみた回転数を生み出して疾走する。
そのシートに乗っているのは一人の老婆。ゴーグルつきもメットをかぶって、不敵に笑った。
 脳を痺れさせるような甘い紫煙を吐き出しながら、スロットルを開けていく。
 3.2秒。そんな僅かな間にバイクは最高速度に到達する。
バギーの巻き上げる砂塵を突き抜けて、老婆が最後尾をとらえた。
「鬼ごっこは終わりさ、坊やども」
 ナイトドレスのはためきから、気づけば取り出したのはグレネード・ランチャー。
八連装で爆炎をまき散らすそれを、事も無げに車上で構える。
ボン、ボン、ボン、と間の抜けた音を立てながら爆炎の種が飛翔する。
近代魔術によって強化された加速術式が、バギーに食らいつかんと唸りを上げた。
『ゥロッケンロォオオーール!』
 爆炎。バンジョーの叫び声とともにバギーが吹き飛んでいく。だが、即死ではない。
まるでボールめいたルーフが、転がるようにしてバンジョーを守る。
列から脱落し、クランと併走するまで位置を下げたバンジョーが、金歯と吐瀉物を見せつけながら笑った。
『地獄へ落ちろ! クソババア!』
「地獄でいいのかい、嬉しいねェ」
 四発目のグレネードが、バギーの窓に突き刺さる。
あとは簡単。まるでハンプティ・ダンプティのように砕け散った。

クラン >  最早魔女は止まらない。箒の代わりに鋼を携え、
自分の十倍では利かぬ重量のバイクを振り回す。
 唸りを上げるエンジン音をかき消すように、前方からクラクションが鳴り響いた。
 ――ファイアフラワーブラザーズ。
燃え上がるようなヒマワリをバギーに刻んだ赤と緑のバギーが、魔女を挟み込もうと舵を切る。
『『ヒァウィゴーッ!』』
 甲高い声がバギーから響き渡る。その二輛の側面には、明らかな穴。
ハリネズミめいた虚空から、まるで大輪の花の如く炎が吹き出した。

クラン >  グレネードは、放った瞬間炎に炙られて爆散する。
左右から挟み込むように走るバギー。
そこから撒き散らせた炎が、魔女の視界を塞ぐように景色を歪めていく。
「チッ、使えないねェ」
 事も無げに15万の品を投げ捨てて、翻るケープを撫でた。
 破壊と暴力。巻き上がる砂塵と火炎。立ち上る香りは狂気とガソリン。
 だからこそ魔女は笑う。今はこの場所こそが魔女の舞台なのだと。
「レディをダンスに誘いたいなら、花束は一人ずつ贈るんだね」
 急激に速度を落とすモンスター・バイク。
急速にそのシルエットを縮めていく二台のバギー。
 だが、その御蔭で魔女は、炎の輪郭から本来の姿を見つけ出す。
 取り出したのは自動小銃。この距離ならば、心置きなく銃弾をサービスできる。
 高らかに響くガン・ファイア。毎分600発という速度で吐き出されるその弾丸が、際限なくばらまかれていく。
 まずは無粋な弟から。左手に映る緑のバギーに銃弾がたたきつけられた。

クラン >  しかし、常世島を走るバギーがただのバギーなわけはない。
速度は魔女の駆る愛馬より劣るだろう。
加速も魔女の駆る愛馬より劣るだろう。
 装甲車めいて強化された甲鈑が、その暴風めいた牙すら跳ね除ける。
『イィイヤッフゥウー!』
 緑のバギーがスピン気味にバギーを走らせた。
グリップ力を操る弟は、まるでコマのように回転しながら魔女のバイクを踏みつぶさんと迫った。
「ばかだねェ」
 魔女は自動小銃に口付けると、ゆっくりと銃口を向けた。
あのバギーの大本は、誰が売っぱらったと思ってるんだい。
そんな、まるで教師のような笑みを浮かべて、引き金を引き絞った。
 吐出された銃弾はおよそ6発。それぞれが、対炎加工を施された魔術弾。
火炎放射に怯むこと無く砲口へ吸い込まれた銃弾が、破滅的爆発を引き起こした。
「ダンスをしたいなら、ステップはちゃんと踏むんだね」

クラン >  改めて、スロットルを開けていく。
化け物じみたエンジンは爆音を響かせながらその回転力を上げる。
3.2秒でトップスピード。魔女の追走は止まらない。
 弟をやられた兄が、諦めたように速度を落とす。
そのまま弟に付き従うかとおもいきや。
『イエス! スタァート!』
 大型アンプから吐出される16ビートに乗せて、背後に回ったバギーが光り輝いた。
 マズル・フラッシュ。バギーの全面に搭載された銃火器群が一斉に火を吹く。
 装甲車を貫く威力はないものの、老婆一人を打ち殺すのには十二分すぎる火力であった。

クラン >  強引に魔女のフロントタイヤが跳ねる。荒野に残る岩くれを踏み台に魔女が宙へ駆け上がった。
 同時、その翻ったナイトドレスからいくつもの"卵"が転がった。
「早めのイースターエッグさ」
 火炎放射をまき散らすことをやめた赤のバギー。
最早誘爆を恐れる意味すらない。
 テクノめいたユーロビートが鳴り響く中、びっくり箱のように赤いバギーが吹き飛んだ。
「兄弟仲良くあの世に行きな」

クラン >  一方その頃。前方のバギーは動揺の色を隠せない。
バンジョー、そしてファイアフラワーブラザーズ。
三台の"腕利き"たちが既にジャンクと化した。
『オイオイオイ! ヤベエぞおい!』
 七番目の男。チキン=ヘッドがやかましくクラクションを鳴らす。
このままでは次にやられるのは自分だ。
男の役目はラム・アタック。
あんな馬鹿げたバイクに突撃できるキチガイなんてどこにいる?
『このクソ野郎! 道を開けやがれ!』
 いくらクラクションを鳴らしても一向に開けないスポンジ=ヘッド(間抜け頭)。
 テメエの方がいくらでもやりようがあるだろうが!
 わめきちらすうち、バックミラーに映る宵闇の色。
『畜生! 畜生! クソを垂れろ!』
 戸惑い、狂気のままにアクセルを踏み込んだ。急激に速度を上げたバギーの先端が、間抜け頭の後部に突き刺さる。
爆発魔術を先端に仕込んだ無数の衝角が、スポンジ=ヘッドを穴だらけに引き裂いた。

クラン >  スポンジ=ヘッドがガラクタをまき散らしながら後方へと吹き飛んでいく。
『おっ死ね、ババア!』
 チキン=ヘッドが泡を吹きながら叫んだ。
示すサインは"ぶち犯す"。
自分を恐れさせるものには容赦しない。
 この調子で五番目の男もどかして、とにかく前へいかねばならない。
先頭車両に追い付きたい一心で、車内に吊るしたウィスキーを飲み干した。
『どきやがれ、ストーンヘッド! テメエもあんなふうになりてえかよ!』
 五番目の男、ストーン=ヘッドは動かない。
寡黙でロックも嗜まないクソッタレ。
前々から気に食わなかったのだと舌なめずりをして、その衝角を食い込ませていく。
 しかし。
『なんだ、なんだおい! 爆発しねえぞ!』
 それもそのはず。ストーンヘッドの能力はマジック・キャンセラー。
爆発魔術は無効化され、ストーンヘッドとがっちり絡みあう。
『おい! クソ! クソッタレ! ふざけんじゃねえぞ!』
 クラクションをいくら鳴らそうが、ストーン=ヘッドは離さない。
仲間を裏切る愚か者を石頭は許さない。
『テメエも! テメエも一緒に死ぬんだぞ!? 死にてえのかよォ!』
 言葉は返らず。ただ背後から死神めいたエンジン音が響き渡る。
『チクショウ……オレは、オレはビッグになってよォ……』
 そう呟くチキン=ヘッドと二台のバギー。
その側面から、携行用対戦車擲弾が食らいついた。

クラン > 「1、2、3、4、5、6」
 巻き上がる爆炎をバックに老婆は指折り数えていく。
報告が正しければあとは四台。前方からは荒々しく響くギター・サウンズ。
前方を走る車影、それらと合致。最早ここまで来たら逃さない。
残るは四台。一台であろうとも、この魔女から逃げることは許さない。
 エキゾースト・パイプから吐出される煙とともに、再び魔女は煙草に火をつけた。

クラン > 『まずい、まずいぜ。おいおい!
なあ、オレが魔女をぶっ殺したら、なあおい!
オレの物になるかよ!』
 四番目の男がアイドルに向かって無線を流す。
"ご褒美"でもなければあんな地獄には挑んでいられない。
三台分は事実上の同士討ちのようでもあったが、
先程から震えが止まらないのもまた事実であった。
『オウ、抱かれてやるよ、チェリー・サム。この島を出て、俺たちゃ天国へ行くんだ……』
 ギターサウンズをかき鳴らし、
ボロボロのスキッ歯を見せて笑うアイドル。
 醜いその笑みを見て取ると、
『イェエエエアアアアアッ!!』
 途端に、ドラッグでも決めたかのように立ち上がった。
パートナーに運転を任せ、自分はバギーの屋根に上る。
軽機関銃二挺を掴んで勝利のための雄叫びを上げる。
『ロック! ロック! ロォオーーック! ラァアアーブ! アンド! ピィイース!』
 歯を噛み締め、血の泡を吹きながら、追走する魔女をみつめた。

クラン >  バックミュージックは愛する男のかき鳴らすギターサウンズ。約束された婚姻の誓い。
『ヘブン! ヘヴン! ヘヴゥン!』
 がむしゃらにばら撒かれる6mm弾頭が軽快に砂塵を巻き上げる。
大味だが、その圧倒的な弾幕。
今までよりも軽快にばらまかれる弾丸に魔女は確実に追い詰められるだろう。
 魔女のバイクが弾幕によって押しとどめられて、急速に速度を失っていく。
 あっという間に景色の向こうへ消えていく老婆を見て喝采をあげる。
『ハネムーンはベガスに行こう! そこで俺たちゃ名を売って! 名を売って――?』
 男の胸に衝撃が届いた。見下ろせば、自分の胸に巨大な穴が空いている。
『ひ、ひでえや。ミ、ミンチじゃねえの』
 遅れて、轟音が響いた。景色のはるか彼方。バイクを止めた魔女が、狙撃銃を構えていた。
「愛を語るにゃ、ちょいと早すぎたね」
 ため息とともに、甘い紫煙が巻き上がった。

クラン > 『やられた! やられやがった!
オイ先頭のハッピー野郎! 砂が足りねえ!
このままじゃみんなやられっちまう!』
 ピッカー・フックが声を上げた。このままではみんなお陀仏。
股間をいきり立たせながらクラクションを鳴らす。
爆音めいたその音がギターサウンズに混ざり合って荒野に響き渡った。
 その報せを受けてか、先頭のモヒカン=ヘッドはスイッチを切り替える。
バギー後部に搭載された"くわ"のようなパーツが降りて、荒野の砂を削り撒く。
『とっととオサラバだ! オイ、デク! 機銃をしくじるなよ!』

クラン >  砂を撒き上げるということは抵抗力が上がるということ。
速度は幾ばくか下がって、魔女の更なる追走を許してしまう。
 いずれにしても同じこと。近づいて殺されるか、遠くから殺されるか。
何も守るもののないこの荒野では、隠れることすらできやしない。
 紫煙を背後にたなびかせながら魔女が疾走る。
時速200kmを軽く超える暴力的な速度。
必ずケツをつかむと誓うように、エンジン音が高らかに鳴り響いた。

クラン > 『……オイ! オレはもうごめんだ! オレはやらねえからな!
あのババアなら、抵抗しなけりゃオレは活かされるかもしれねえし!』
 男娼が喚き散らした。彼らのアイドルのように扱われていた男が、ギターをかき鳴らしながら先頭の二人に告げた。
 どうせこの車には何も搭載していやしない。
武器を何も積んでいない分、逃げる足だけは大したものだ。
前の二人をちぎるようにして先頭を追い越していく。
『好きにしやがれ! いいぜ逃げろ!
ただしオレらが追いついたときはわかってるよなぁ!』
 バギーのアクセルを蒸かし、炎を舞い上がらせながら先頭のモヒカン=ヘッドが笑った。
 わかってる。わかってるとも。
 分かっていても男娼は夢を諦めない。
 クランと敵対するのは、あと二台。

クラン >  立ち上る砂煙の中、機関銃の轟音が響き渡る。
既にピッカー・フックの後方にあの魔女が迫ってきている。
 あまりにも濃い砂塵の中、お互いがどちらに居るのかすらわかりはしない。
 だがそれでも関係はない。その全てを制圧するように、
雷鳴めいた音を立てながら砲塔が回転して銃弾をまき散らした。
 対する魔女はただ回避に徹していた。
こちらから銃弾を放っては、マズルフラッシュで位置が露見する。
 視界の悪いこの場所では、グレネードはどうなるか分からない。

クラン >  ピッカー・フックは苛立っていた。
できることといえば車を走らせることだけ。
デクのように荒事に強いわけでもない。
ただ商才があって、このバギーを操ることが得意だっただけ。
『ファック! ファック! ファック!
こんなことならもっと早めに切り上げればよかった!』
 クラクションを鳴らす。暴力的な爆音。
最早それと交じり合うギターサウンズも聞こえない。
響き渡っているのは重機関銃の音。上部でデクが魔女を殺す音。
『……デク?』
 のはずだ。しかし、気づけばいつの間にか銃座の音は消えていた。
『オイ! デク! やったんだろう!? 報告しろっていつも言ってんじゃねえか、オイ!』
 運転席から身を乗り出して、後部に張りついているはずのデクにがなりたて。
「残念だったね」
 額に冷たい感触が押し当てられた。
クラクション無しでは正気で居られなかっただろうが、
クラクションがあったからこそ、魔女の銃声に気付かなかった。
 ピッカー・フックの乗るバギー。
それに飛びついたクラン・カラティンが、二回目の引き金を引いた。

クラン >  二体の死体を蹴り落として、魔女はバギーに乗り込んだ。
そちらの操縦も手慣れたもので、隠しスイッチに仕込んだニトロの効き目を上げていく。
 どうせ最後の一人をぶち壊すまでエンジンが持てばいい。何を遠慮することもない。
「さあ、あと二台だよ、バンビちゃん」
 前方のモヒカンを見据え魔女が笑う。
砂塵を避けて側面へ回りこむようにアクセルを踏み込んだ。
トップスピード。決戦だ。

クラン >  ぐんぐんと迫るモヒカンのバギー。
試しに銃弾を打ち込んでみたがびくともしない。
 男の操るバギーは今までの八台の中でもっとも堅牢だ。
それこそRPGでもなければぶち抜けまいが、
操縦を変わったモヒカンが、その狙いを定める邪魔をする。
 浸透圧性のシリンジを首筋に突き立てながらモヒカンが白目を向く。
『アァアアイイイイイ!!!』
 ドラッグ。エンジェルブラッド。
天使の血液と吸血鬼の血液を混ぜあわせ、
ありあわせの麻薬で混ぜあわせたという粗雑なドラッグ。
その中毒性・快楽は通常のドラッグの100倍にも匹敵するという。
 更に言えば、その特性は――。
『レェーッツ!! パァリィー!』
 異能の強化。かつて世間を騒がせたそれに性質は近い。
暴走めいたモヒカンの異能は"バリア"。
魔女のバラ巻く銃弾の尽くから、バギーの脆い部分を守りぬいていた。

クラン > 「まァた接近戦かい」
 バリアの有効距離は広がったが、その分内側はお留守となっている。
つまり、モヒカンのバラ巻く銃弾に耐えながら、有効距離まで近づく必要があった。
 それさえなければ、それこそあとは横からぶちぬいて終わりだったのだが。
 だからこそ、魔女はアクセルを踏んでいく。
理想の位置取りを展開しながら、速度を落とさずバギーの前へ。
 エンジンが焼き付いたとしても知ったものかと、ニトロの量を上げていく。

クラン >  唸りを上げる爆炎とともに、魔女の駆るバギーが走りゆく。
その意図を読み取ったスキン=ヘッドも、魔女を前に生かさないよう速度を上げる。
 おおよそまともとは言えないアップダウン。
車体を跳ねさせながらバギーを走らせる。
その鍵を握るのは何よりも操縦技術。
跳ねるたびに速度を落とす車に、いかに優しい道を通ってやるか。
 一度モヒカンたちのバギーから距離をとってでも、最速最良の道を通って行く。
 砂塵を巻き上げながら二者が抜いて、抜かれて、僅差の戦いを演じていた。
 だが。
「ちょいと年季が足りなかったね、坊や」
 その頭を抑えたのはクラン・カラティン。
銃弾をくぐり抜けながら先頭に躍り出る。
「アタシャダイムラーの頃から車に乗ってんのさ」
 ルーフを開け放ってクラン・カラティンが空に踊りでた。
銃弾がバギーを切り裂くがもう遅い。
「おやすみ、坊や」
 宙を舞う魔女のケープから飛び出したショットガンが、
モヒカン=ヘッドの頭を0.3秒でミンチにした。
 そのままフロントガラスにへばりつき、更に二発。
魔女を振りほどこうとハンドルを蛇行させる健闘もむなしく。
近距離で放たれたスラッグ弾が窓を突き破ってスキン=ヘッドを赤く染めた。
 乗り捨てたバギーが背後で爆発。間一髪で命をつなぐ。

クラン >  ――あとはもう簡単な話だ。
トップスピードで逃げる男娼も、クランの操縦の前ではかたなし同然。
 怯える男娼はあっという間にバギーを停めて、魔女に助命を懇願する。
『お、おれぁ男娼だ! な、なんもやってねえ! 本当だ!
だからさ、な? あんたんところで働かせてくれよ!』
 最早この男に力はない。
売れるものなら売っぱらってしまった方が得ではある。
「なるほど」
 紫煙を燻らせながら魔女が笑う。
「肋の浮き出た身体。ぼろぼろに歪んで抜け落ちた歯。
ガサガサの皮膚。黄ばんだ白目。
――どこの誰がアンタを買うんだい」
 値打ちなし。そう判断したクランの銃弾が、男娼を撃ちぬいた。
 誰一人として残りはしない。
ただただ、魔女の敷く鉄の掟を侵すものに容赦はない。
 むせ返るような甘い紫煙を吐き出して。
ただクランは荒野をあとにした。

ご案内:「未開拓地域/風荒ぶ荒野」からクランさんが去りました。
ご案内:「『ハニー・バレット』屋内」にクランさんが現れました。
ご案内:「『ハニー・バレット』屋内」に鈴成静佳さんが現れました。
クラン >  落第街第四区画。愚かにも魔女の領分を侵した無法者たちを壊滅させたあと、
老婆はそのまま身体の汚れを落としていた。
 花に満たされた大きなバスに、精油を垂らして湯船に沈み込む。
 彼女肌にたるみはない。しかしまるで枯れ木のように、深いシワが刻まれた肢体。
それを晒しながらゆっくりと湯に体を浸している。
 すると、横に備え付けられた電話が鳴り響く。
なんでも、この『ハニーバレット』の審査を通ってきた女子がいるらしい。
「いいよ、直接見てやるさ。通しな」
 そう告げる。恐らく、しばらくすればその噂の彼女がやってくるだろう。

鈴成静佳 > (落第街。始めて足を踏み入れた、常世島の暗部)
(ルームメイトや友人には、あれほど口を酸っぱくして「行くな」と言っていたのに、その自分がこれでは)
(しかし、好奇心とおさいふ事情には勝てなかったのだ。体を売るということ、夏に備えての貯金……)

(幸いにも、歓楽街の『ハニーバレット』における簡易的な一次審査を通ったことで、面接中の身でも護衛はつけられている。ありがたいことだ)
(まぁ、護衛なくともいざとなれば転移能力によって逃げも打てるので、そこまで過敏に怖がることもないのだが)

……失礼しまーす。
(面接の筋書きどおり、まずは風呂の戸をノック。そして、静かに戸を開けて入ってくる少女)
(全裸だ。お風呂ではあるが、静佳は要所要所をタオルで隠すようなこともしていない。胸と腰にはビキニの形に日焼け跡がついている)
(手にはスマホを持っている。生活防水のタイプだ)

(浴槽に横たわる老婆へと、おずおずしながら近づき)
ええと、ハニーバレットのクランさん、ですね、鈴成静佳といいます。今日はよろしくお願いします!
(未知の世界へ触れることに若干の恐れを抱きながらも、精一杯笑顔を浮かべておじぎをする)

クラン >  浴室では、甘いアロマの香りが立ち込めている。
いや、アロマというよりは香木――むせ返るような甘い香りが屋内を漂っている。
 その中、浴場に踏み入ってきたのは――ともすれば幼さすら感じさせるような風貌の少女。
しかしその、おそれを抱きながらも踏み込んでくるその様は、
「タオル一枚巻かずに入ってくるとは、度胸があるねえ、あんた」
 湯船に身を沈めながら、気だるげに視線を向ける。
否、彼女にとっては好感だ。
「静佳だね。そう、アタシがここの頭のクラン・カラティンさ」
 魔女のように口を歪めて、少しだけ身体を起こす。

鈴成静佳 > そう……ッスかね。お風呂では裸の付き合いが基本だと思っていますので。フフッ。
(甘いアロマに、緊張した表情が解され、思考が緩やかになる。そんな空気の中では、鷲鼻で枯れ木めいた肢体の老婆にも悪い感情は抱けない)
ここって、そういうお店、なんですよね。アタシでよければ、ぜひ働いてみたいんです。
そのために、今日は面接の時間を取っていただき、ありがとうございます。
(言いながら、老女が湯浴みする浴槽のそばまで歩み寄り、顔をしっかり見せられるように床に正座する。そして再び会釈)

ただ、クランさんにもいくつか聞いてみたいことがあったので、スマホだけは持ち込ませてもらいました。
具体的には、ここ……「ハニーバレット」を知る切っ掛けになった、メーリングリストについてなんスけど……。
(「ゲマインシャフト」のことである。静佳はそれと知らず、メーリングリストに加入していた。そして、この「娼館」の話を知る……)
このメーリス……げめいんすちゃ?(Gemeinschaの英語読みに近いか) これって一体なんなのでしょうか……?

クラン > 「悪くないね」
 歯を見せて笑う。花のうめつくされた浴槽から、
一段上がった場所で、半身浴のように身体を出す。
萎びた胸がすこしだけ揺れて、
「そういうお店? どういうお店だって?」
 くつくつと笑いながら、言葉を濁す静佳にその顔を向ける。
「足、痛めるよ。なんなら入ってくるかい」
 正座。硬い床に体重をかけるのは年頃の少女にとってはよろしくないだろう。
彼女の浸かる浴槽は、売春宿に置かれたそれに合い、
二人浸かるにはゆっくり、三人ならば肌を寄せ合い狭くなる、程度の大きさである。
彼女のように半身で浸かるなら、一段高くなった場所で魔女と正面から向き合うような形になるだろう。
「あァ……それかい」
 メーリングリスト。いつしか老婆のもとに届くようになったメール。
「文字数が足りてないんだろうね。ゲマインシャフト、共同体って意味さ」
 彼女もまた、詳しくは知らない。
結局のところゲマインシャフトとは形のない付き合いだ。
誰がどうつながっているかという全貌など、この魔女をして定かではない。
「大したもんじゃない。ただのメーリングリストさ。
ただ、こいつを受け取る奴らは、みんな家族だ仲間だなんていう奴らもいる」

鈴成静佳 > あ、気遣いもうしわけないッス。では……失礼します。
(半身浴の姿勢になった老女に促され、静佳は立ち上がり、浴槽に入ろうとする)
(しわくちゃの四肢や顔立ち、しなびた乳房。初見では「醜い」という感情もわずかには湧いたかもしれない)
(しかし、それ以上にその小柄な体に濃縮された「人生」の濃さを感じれば、嫌悪感を凌駕する尊敬の心が湧いてくるような気もする)
(花の満ちる湯に大きなお尻を沈め、クランさんと相対する形で自らも半身浴になる)

……この店って、いわゆる「売春宿」なんスよね? 明示的には書かれてなかったような気もしますけど。
「安全さと品質」を売りにした、性行為を売るお店。
アタシ、いろいろあって、そういう行為にあまり抵抗がないというか……アハハ、なんかこういうとビッチっぽくなるかもしれないッスけど。
実際とても興味があるのです。まぁ、胸もないですしスリムでもないので、人気になれるかどうかは全く自信がないんスけどね。アハハ……。
(頭を掻きつつ笑う静佳。とはいえ、同性の前とはいえ全裸で平然としているのだ、肝が座っているか、何かが壊れているか、どちらかの印象は感じられるかもしれない)

……なるほど、あれはゲマインシャフト、って読むんスね。
(浴槽の縁にスマホを置く。あの中には、すでに100通に及ぼうかという「ゲマインシャフト」からの「情報」が入っている。多くは胡乱な情報だろうが)
家族、仲間、ッスか……。いまいちピンとこないッスね。危ない地区の情報ばかりで……あっ。
……そうか、そういう地区の居住者たちの結束……ってところなんですね。
(フゥ、と鼻息を鳴らし、感心を示す)

クラン >  酸いも甘いも噛み分けたような。嫌悪と好意が混ざり合うような視線。
クランはそんな静佳の視線と正面から向き合っている。
皺と笑みを深くして、静佳の言葉に同意する。
「そう、アンタから客は"楽しみ"を買っていく。
客はアンタに金を落としていく。シンプルだろう?
ビッチだとして、そりゃ結局それだけ誰かを楽しませてるってことサ」
 言いながら、湯船に浮かぶ花をつまみ上げて魅せつけるように。ふぅ、と息を注ぐと、その花の香りが漂うだろう。
「咲くことを忘れた花なんて悲惨なもんさ。
結局、ここでの人気なんてものは金でしか測れない」
 花を静佳のほうに流して、水面を指先でもてあそぶ。
しわがれた声。しわがれた身体。
しかしクランは真っ向から彼女の印象に向き合った。
「アンタの居場所の一つをここに望むというのなら、アタシはアンタを受け入れる。マザー・ハーロットだろうがなんだろうが、ここじゃ庭園を彩る花のひとつさ」
 どれ、と言いながら軽く少女に手を伸ばす。
品定め、ということだろうか。
ゆっくりと、彼女の肩から肌に触れていくだろう。
 そして、最後の問い。
「結局は、好きに使ってるだけさ。
アレを便利に使おうと思うやつもいれば、アレは絆だって言うやつも居る。
アタシはまあどっちもさ。最近は学園地区の情報まで入ってきて笑っちまうけどね」
 "速報"は、そのメンバーに間接的にも直接的にも関係する事柄を、機密性すら無視して届けてくる。
あらゆるニュース。それら全てはメールを受け取る全ての人間のために配信されていると言っていい。
 最近は学園の一般学生たちも増えたことにより、情報の多様さは増してきている。

鈴成静佳 > なるほど、かつては……その、学生でない方たちのモノだったんスね。
(やはりその出自はアングラであったか。しかし静佳はその過程に物怖じはしない。そのメーリスへの向き合い方が固まりつつある)
あ、一応言っておきますが、アタシはちゃんと学生です。1年。まだ、この島に来て半年も立たないッスけど。
でも、このメーリスの情報は楽しく読ませて貰ってます。こんな良い施設のことも知れましたし……フフッ。

……んっ。
(骨ばった手が品定めするように肌に触れると、静佳はその手を受け入れ、もっと触れやすいように老婆へと体を寄せる)
(当然だ、店の花の一つになるのなら、隅々まで品評をするのは必要なことであるから)
……フフッ、そうッスね。花になれるなら、ぜひ、喜んで。
アタシの体で誰かが喜んでくれるのなら、それはアタシにとっても嬉しい事です。アタシも気持ちいいことは大好きですし。
だから、実をいうと、そういった行為で自分だけがお金を取るということにはちょっぴり抵抗感もあったんです。
でもまぁ……ここは、常世島は、怖いところです。
だから、自分の身を守るために……「お客さん」という立場の方にリスクを負ってもらうことで、安全を得ることも大事なのかと。
(自分の、お金と体に関する意見を忌憚なく言う。静佳が自分の価値を過小評価しているようにも聞こえるかもしれない)

ええと……クランさんも、かつては娼婦だったんでしょうか?(体を吟味される感触に肌を紅潮させながら、静佳は真顔で問う)

クラン > 「まあね。ただ、結局使う奴らは様々さ。
アタシのような奴もいれば、奴隷同然に扱われてる奴らもね。
"速報"はただの道具さ。ただ、それに意味を見出す奴もいるってだけ」
 静佳の身体に触れるその指先は、撫でるようなもの。
と揉み込むように指を埋めさせ、まるで遊ぶような感覚だ。
「結局、金ってのはもらうだけでもないんだよ。
ありゃ男たちの言い訳でもあるわけだ。
金を払ったんだからこんなことだってしてもいい」
 言いながら、その胸の先端に触れるだろうか。
笑いながらその肌をくすぐって、
「上等な女を抱いたって、乱暴に扱ったって、
そりゃ金を支払ったからだ。
奴らは女に対して王様になれる権利も買ってんのさ」
 いたずらっぽく目を細めて肩をすくめる。
湯船に腕を沈めて、魔女の腕は見えなくなっていく。
「だが、その考えは正しいよ。
契約だからこそ好きにできるってこともある。
ここじゃ、客とアンタの関係はどこまでも対等だ。
客がアンタで楽しむように、アンタは客で楽しんだっていいんだ」
 それは彼女を既に受け入れている言葉だろう。
娼婦として、否、このクラン・カラティンに身を寄せるものとして。
彼女の器量は合格といっていい。
楽しげに顔を歪ませて、身を寄せる静佳に鼻を突き合わせるようにして顔を寄せる。
「アタシは魔女さ。古い、古い時代のね。
性も、愛も、暴力も。癒やしも破壊も。
なんだって受け入れてきた古い魔女さ」
 そういって笑った。
彼女の体臭は、浴槽に浸かってなお、
むせ返るように甘い煙草の煙が染み付いている。

鈴成静佳 > (ない胸を揉みしだかれると、苦笑いを浮かべる。やはりないものはないし、それで価値が下がることも覚悟のうえだ)

アハハー、ちょっと乱暴なのは勘弁してほしいところッスねぇ……。
(痛い目に合うのは、いくらお金を積まれたとしてもできれば避けたいのだ)
対等な関係で遊べる、そういう「契約」ができるアタシの価値っていくらぐらいなんスかねぇ……。正直、自分ではわからないところ。
やっぱり、お金って難しいッス。すごく幼稚なことを言いますけど、金銭感覚というか、その辺もまだまだ未熟なので、そこも学んでいけたらなって思います。
クランさんの元で……。

(静佳の鼻と、クランさんの鷲鼻がくっつきそうになる。加齢臭とタバコが混ざった臭いには内心嫌悪感はあるが……)
フフッ、魔女ッスか。たしかに、クランさんは色々なことをやってきたっていう雰囲気があると思います。
すごく活き活きとしていて、なんというか、カッコイイというか……骨太というか。
(目を細め、魔女の目の前でニコリと微笑む。そして、手が湯船に沈むのを見ると、体を離し、ゆったりとした半身浴姿勢に戻る)

クラン >  手を離し、自分も再び身体を戻す。
煙草はともかくとして、加齢臭が漂うのは問題だ。
あとでしっかり手入れをしておかなければ。
 少女のその内心に気づいたはともかく、軽く髪をかきあげて。
「契約以上のことをさせた奴にはきちんとそのケツを世話してやるからさ。
だから対等。もし約束を破るような奴が居ればいつでも言いな」
 そういった点が、ハニー・バレットの好まれる理由だ。
表であろうが裏であろうが、金を払った以上その契約は履行される。
しかし、その契約外のことを侵すことは許さない。
 高いサービスに両立する安全性、信頼性は彼女の強みであった。
「アンタの価値ね。アンタなら、それなりに金は取れると思うけど」
 魔女の"目利き"はそれなりに正確だ。
いかに彼女のスタイルが貧相とはいえ、話した感触、
そして触れた感触は嘘をつかない。 
「金銭感覚を身につけたいなら、どーんと高く行くか、それともどーんと安いかだ。
アンタはどっちがいい? 鈴成静佳」
 目利きの目。まさに猛禽を思わせるような目で、
楽しげに静佳を見る。
この場においても動じることなく笑うその様。
「美人でいられるコツは、人生を楽しむことさ。
バイクもやるし、酒もタバコもやる。
それが良いことかなんてアタシゃ知らないけどね、
ただ、どんなことでも楽しめなきゃ老けこむだけさ」
 だから色々やってきた。気づけばこんな組織を作ることになった。
それでも彼女は"楽しいから"と、今も少女に向き合っている。

鈴成静佳 > うんうん、クランさんって美人だと思うッスよ、アタシも!
(素直に答える。たとえ体が老いさらばえようとも、その内面に秘めたる輝かしいカリスマを感じずにはいられず、その答えが出た)
お酒やタバコはまだわからないッスけど、楽しいこと、気持ちいいことは大好き。できれば、そういうのにまみれて生きていたいッスね。
その結果がこの「娼館」なら、きっとここで働くのも楽しいに違いないッス!
(楽しげに、両手で湯面の花を掬い上げ、匂いを楽しむ。どんな人が相手でも、やはり複数人でのお風呂というのは楽しいのだ)

アハハー、やっぱり「高級娼館」の名は伊達じゃないッスねー。
安全に楽しく気持ちよくなれるならそれに越したことはないッスけど……。

(……と、「自分の価値」について逆質問されると、口を尖らせながらしばし熟考。睨むような視線を、ちらっと覗きこんだり、逸したりを繰り返し)
……うーん、個人的にはやっぱり、安いほうがいいッスねぇ。いろんな人とさくさく遊びたいというか。
ただそれでハズレを引いて、嫌なメに遭うのは避けたいし……。迷うところッスね。
(とはいえ、「どーんと高く」という選択肢がないことは確かだ)
んー、「怪我せずに安全に遊べる」レベルの最低金額、ってところがアタシの回答、ッスかねぇ。(結局はクランさんに任せる形)

クラン > 「そういうことさ。生きてるんだから楽しめなきゃ損さ。
アンタはいい女だよ、静佳」
 この浴槽に怖じることなく入り込み、
こうして肌を委ねて笑うというのはそうできることではない。
 だから彼女の姿も肯定する。元々が享楽的な魔女だ。
少女のようなあり方を否定する要素などなにもない。
「それならそうだね。
幾つかパターンがあるが、オプション性が楽だろう」
 要するに、何がOKで何がまずいかを改めて決めておいて。
その可否によって自動的に値段が決められる方式だ。
 客は最初からそれを求めてやってくるし、
本人は最初からNG行為を提示できる。
 小分けにされている分割安だが、その分何をするかが事前にわかるために覚悟も決めやすい。
 オプション制といえども娼婦によって価格のランクはある。
「一番下はろくでもない奴らが多いから、下から三番目のDランクあたりの価格帯にしときな。
学生でも手の出しやすい、けど雑に扱って来る奴らが減ってくるぐらいの価格さ」

鈴成静佳 > オプション制で、Dランク、ッスね。(頷きつつ)
それでよろしくおねがいします。ま、避妊しっかりして暴力沙汰さえなければアタシは大体なんでもイケるッスよ!
(どん、と胸板を叩く)

……あ、そうそう。せっかくの面接なんスし、アタシの売りもアピールしなきゃいけないッスよね。忘れてました。
まず……まぁ、この島に来てるわけですし、アタシも異能持ちってやつなんスが。こんな感じの……失礼。
(といって、今度はクランさんの方へ静佳から手を伸ばし、肩へ触れようとする)
(触れれば、その掌がまるで電マのように鈍く強く振動しているのを感じられるだろう)
……って感じで、体をぶるぶるさせられるんスよ。マッサージや生活方面で役に立つんスけど、きっとここでの仕事にも役に立つかなって!
(得意気に笑みを浮かべる)

それと、もう一つ。こっちはつい最近「くっついた」やつで……。
(座った姿勢のまま、目を伏せ、何やら集中する。今度は手でなく、水没した臀部が軽く振動し……)
(次の瞬間には、半勃ちになった陰茎が水面の花を割り、頭を潜望鏡のように覗かせていた)
……って感じで、ふたなり、ってやつなんスよ。出し入れ自由の。島でいま話題になってる『自販機』のジュースを飲んだらこうなっちゃって。
もちろん、出せるッスよ。こういうのって需要あるッスかね……?(こっちはあまり得意げではないアピールである)

クラン > 「へえ」
 手を震わせる。なるほど、便利なものだ。
魔女の肌は触れれば枯れたようでいて、手入れされてきたものを感じるだろう。
 心地よさそうに受け入れて笑うと、次いでそのふたなりに目を向ける。
「当たり前さ。どんなものでも売りは売り。
使い込んでないなら、いっそ客に遊んでもらうぐらいがいいかもしれないけどね」
 自慢げでない姿。おそらくこちらはあまり"使って"いないのだろう。
「もしそれを使いたいなら、普段いじるのはやめておいたほうがいいかもね。搾り取られて、タマ無し扱いされちゃあ切ないから」
 面白そうだ。"自販機"の話題は聞いていたが、
まさかこんなふうにもなるとは思ってもおらず。
 思わずまじまじと見つめて笑った。

鈴成静佳 > あ、こっちは「貯めておく」ほうがいいッスかねー……。
(自らの潜望鏡を指差し、苦い顔。「生えてから毎日弄っている」という図星をズバリ言い当てられたのだ)
(再び臀部に異能を集中させると、静佳の下腹部は元のつるつるに戻る)
じょ、助言ありがとうございます。じゃあ、お仕事始まったらあまり自分では使わないようにするッスね。
……フフッ、そうッスよねぇ、貯めておいたほうがお客さんもいっぱい楽しめるッスもんねー。アハハー。
(ふたなりが受け入れられ、そしてお客さんを楽しませる道具の1つとして認められた。静佳は晴れやかでどこか気の抜けた笑い声を響かせる)

ぶるぶるの異能の方も、マッサージに役立てられればと思っていて……あーでも、こういうのは公然と人に施すのは資格がないとダメっすよねー。
夏休みに資格とることも考えなくちゃなー。(真面目な顔で思案)
クランさんも、もしマッサージして欲しかったら遠慮なくアタシを呼んでいいッスよ!
無事面接が通ったらクランさんは雇い主ッスけど、そういうの抜きでもいろいろお話してみたいッス!
(快活な声を浴室に響かせ、アロマの香るお湯を日焼けした自らの肩にパシャパシャと掛ける。すっかりくつろいでしまっている)

クラン > 「中には、絞りきったあとのそいつをいじるのも好きって輩もいるけどね」
 くつくつと。それだけの偏執的な欲望を向けるものもいるらしい。
まあ、そういう奴は溜めていても絞り切るつもりで来るだろうが。
「もし本気で気持よくなりたけりゃ、"先輩がた"に講習でも受けてもいいかもしれないね」
 ここでは多種多様な種族や異能者が混在している。
アルラウネ、クラーケン、スライム――。
テレポーテーション、マインドコントロール、アクセラレート――。
 それぞれがそれぞれの個性を活かして、
常世島ならではの快楽を提供している場合もある。
 だから、彼女のそれも受け入れられて然るべきなのだ。
ここは受け入れられなかったものすら受け入れる、ある種一つの家のようでもあった。
「見た目は奇妙な奴らも多いけどね、良い奴ばかりだ。
あんたが行けば誰だって受け入れてくれるはずサ」
 そう言って、老婆は静佳の髪を撫でるだろうか。
くつくつと笑いながら、余裕の態度で静佳にその手を預ける。
「マッサージか。確か歓楽街の方で講習があったねえ。
後で一筆かいたげるよ、アタシの直轄じゃないが、ぼったくりじゃないとこさ」
 そういえば、と思い出して。おそらく後日静佳にはそういった教室に対する紹介状が届くだろうが。
「アタシも年中暇してるから、いつでもおいで。
ああそうだ。実は保健室の隣にも顔を出してるってしってたかい」
 ほとんど自分の立場は隠さない。
というより、悪目立ちする老婆にとってその存在は隠しようがない。
保健室の隣にあるという相談室。そこでたまーにカウンセラーをやっている。
それがクラン・カラティンの(一応の)表の顔であった。

鈴成静佳 > アハハー、意外とアタシのコレ、搾り切るのキツイと思うッスよ? ま、それはそれで楽しみッスけどね!
(先日の養護教諭との性交の際も、出し切るまでに20回弱を要した)

(髪を撫でられれば、いや、どのようなスキンシップにも従順に応じる静佳)
先輩方、ッスか。そういえば、この店の人たち、アタシよく知らないッスね。
異邦人も体を売ってたりするんスね……。フフッ、賑やかそうでいい感じ。交流してみたいッスねー。
(異邦人とのふれあいも大歓迎だ。「快感を求める」という共通項があれば、きっとうまく交流できる気もする)
なるほど、歓楽街の方で講習……いろいろあるんスねぇ、この島は。お世話かけます、クランさん!
(紹介を通してくれることには素直に感謝し、触れる手を握り返して肯定を伝える)

……というか、クランさん学校にも来てたんスね。相談室があったなんて初耳ッスよ!
相談室というか、なんか、占いの館みたいな感じ? 魔女っぽいし。アハハー!(冗談めかして)
今度顔を出してみます。でも、クランさんも保健室に来てみるといいッスよ。
保健室にもいろんな人がいるし。あ、アタシも保健委員なんスけどね~。

クラン > 「大した自信だねえ」
 そこまでの性豪を気取るものも少なくはないが、
どちらかというとその自然な態度が小気味いい。
「それこそ男十人を同時に相手取る女なんて、
実に"ここ"らしい奴もいるよ」
 相手の手を握り返されると、そのまま受け入れて歓迎する。
ああだこうだと、軽くここの場所についての説明を交えながらも。
「ああ。まあ週一で、午前中ぐらいだけどね。
別になんもしやしないさ。誰もきやしないから、煙草蒸かしてるだけ」
 たまに物好きがやってくるものだが、せいぜいソレぐらいだ。
いろいろな人がいるのは素晴らしいことだ。
「そっちの保健室も随分自由だって聞くね。
それこそアンタらしいといえばアンタらしいか」
 うわさに聞く保健室。まるで私室の如き状態になっているというその場所。
まあ、クランも関わりがないわけではない。なにせ隣だし。
「ああ。今度顔を出すさ。こっちでもあっちでも、ね」
 くすりと笑って手を離し、軽くウィンク。

鈴成静佳 > うわぁ……男10人はさすがに無理ッスねぇ。アタシゃどう頑張っても穴は3つ、手は2本までッスよ。
(穴3つは使えるようだ)
フフッ、本当にいろんな人……人? がいるんですねぇ。埋もれないようにせいぜい頑張るッスよ!
(ぐっとガッツポーズしてみせる)

保健室もたいがいに自由ッスねぇ。とくに養護教諭の蓋盛先生が好き放題やってて。
まぁ、過ごしやすい保健室ってのは保健委員にも病人にも大事だと思うッスからねー。
(さすがに保健室のベッドで性交はやりすぎであろうが)
保健委員らしいプレイってのも売りにできるッスかねー? 白衣着たり。フフッ!(何かが違う気もする)

(手を離されれば、そろそろ良いかと思って湯船から身を起こす)
ん、では、そろそろアタシは失礼します。クランさん、今日はどうもありがとうございました。お風呂気持ちよかったッスよ!
(花弁を落としながら湯船から上がり、来た時と同じように会釈)
これからもよろしくお願いします。フフッ、楽しい夏休みを過ごせそうでわくわくッスよ!
……あ、そうだ、源氏名は「シズ」でよろしくッス!
(浴室の戸を閉める前にまた会釈して、にこやかな笑顔のままで去っていった)

ご案内:「『ハニー・バレット』屋内」から鈴成静佳さんが去りました。
クラン > 「はは、ま、楽しくやりなよ。歓迎するよ。
自分の家だと思ってゆっくり寛ぎゃいい」
 ガッツポーズし、そして意気揚々と立ち去る少女を見て、こちらも気軽に、手首を振って。
「詳しいことはまたあとで連絡が行くだろうから、そっちで詳しく聞きな」
 シズ。新しいハニー・バレットの仲間。
魔女は彼女を歓迎するだろう。彼女は来るものを拒まない。
だからこそ、こちらも湯船から身体を引き上げて。
 なるほど、保健室。たまに顔を出すのも悪くはないか。
そんなことを考えながらこちらも花を落とす。
「とはいえ、火薬の匂いを落とさなきゃね」
 こびりつく香り。煙草の臭いでごまかしちゃいるが、
まずはそいつを落とさなきゃ学園にもいけないだろう。
 笑いながら、湯船から外に出て行った。

ご案内:「『ハニー・バレット』屋内」からクランさんが去りました。