2015/07/21 のログ
五代 基一郎 > 曲芸以上の片輪走行からのカーブ。
針の隙間を縫うような鋭い悪魔のLのインからアウト。
片や不安定な車体を、不安定だからこそとクセを見ぬいて操るドライバー。
片やインアウトを見切り鋭く侵入し掛けて行く者。
車種は違えど、その全てが違えど卓越した運転技術を持つものが今そこにいる。

そして悪魔のLが一歩抜いたかと思えば……赤いミゼットが
ついにその真の姿を現すかのように”炎”を噴きだす。
”キャノンボール”から”ファイアボール”へ

炎のミゼットが新たな三次元のラインを走り駆けて行く姿が見える!

■チームメイト>「ジェットマンならわかるぜ……だけどありゃ車だ!一歩間違えば車ごと”ファイアボール”だ!」

「ヤツはそんなことを考えちゃいないさ。今ここで命を考えていたら先に走れない。
 今あそこにいるのは追う者と追われる者……速さに命を駆ける走り屋だ。」

秋尾 鬨堂 > 走ることの出来る路面が無いのであれば、見つけて飛び乗る。
わずかの平面を路面とし、駆ける!
超軽量車体、異様に小さいホイールベースと車幅…他に真似のできない特性!
道無き道をゆくミゼット。
その姿は、奇しくも生活に根ざした超小型ビークルとして親しまれたミゼットの本領。

「火の玉ガール。キミの野望の一歩…その一歩は、ここで踏み込めば得られるのかもしれない」
ここが、無限高速と呼ばれるのは。
無限に加速し続けられるからだと、誰かが言った。
そんなはずはない。
こんな交通量の、しかも曲がりくねった、アップダウンの激しいコースで踏み続けることなど出来ない。
だが―――
針の隙間に追いついたミゼットは見るだろう。
そのラインが。
時速200km/hクルーズ、最高速度300km/hオーバーという領域でだけ顔を出す。ガードレールスレスレのそこに。
極端に車両の少ないバイパスに。
一瞬の四車線に。
三重スパイラルカーブに。

繋がる隙間。

そして、つなげる腕!
「ただ、純粋な速さに…良いも悪いもないヨ」
「悪を為すのは、ただ人の心…そして、腕前だけサ!」
危険運転の代償は、本人だけではなく他人を巻き込む。
それをわかった上で、踏み切る事が出来るのは。
事故を起こさないのは当然。起こさせないこと。
周囲すべての状況を読み、適切な位置を、タイミングを自分のモノとする。

それが出来れば、このコースは本当に…無限に加速し続けることが出来る!
『悪魔のL』のL30A改ツインターボエンジンが叫ぶ。
誰にもわからない言語で。
排気が、炎を後を引く。それは1万回転のアフターバーナー。
無限に加速し続ける、その駆動力!

ご案内:「◆速度Free(違法描写注意)3」にLさんが現れました。
天球儀緋鳥 > ここは少女の“地元”ではない。いや、少女の地元など存在しない。
少女の目的は――“征服”なのだ。いわば、全てが敵地。走りこんでなどいない。
天球儀の名を冠する少女の目的とは、天を手にすること。森羅万象全ての瞳を――自身に向けさせることだ!

見よ、このイカれたレースに多くの人間の目は釘づけだ。
これだ。これなのだ。このスピードに乗ることによって、少女は全てを支配する。
“征服”とは――全てを、自らで釘付けにすること。
自らの色で、存在で、この地を支配するのだ!

この赤いミゼットこそは、火の玉――新星、スーパーノヴァ。
それがついに、『悪魔のL』に追いつく!
そこで見たのは、新たな光景――

「――これは!!」

何故ここが無限高速と呼ばれるか、少女はわからなかった。
とても無限の速度を出せるような場所はない。アップダウンの激しいコースでは無理だ。
いずれ減速しなければならない。交通量も多い。
しかし――天球儀の名を冠する少女は、火の鳥の名を冠する少女は、見たのだ。

ガードレーススレスレの場所。極端に車両が少なくなる場所。
そう、こここそが!

「……フン、そうだな。善だ悪だの、考えるのはどうでもいい。それはその結果、そうなるというだけだ!
 真なる王は、その身のみで全てを支配するのだ!」

ミゼットと『悪魔のL』がそこにツッコむ。
1万回転のツインターボが火を噴いた! 『悪魔のL』はやるつもりだ。
ならば、ミゼットは逃げない。逃げるはずもない。
最大限で踏み込む!

ガードレールスレスレのそのラインへ、一気に突っ込んでいく!

「――チッ!!」

これまでの滅茶苦茶な走行のせいで、タイヤがかなりタレていた。
元々後ろに狂ったようなエンジンを積んでいるのだ。コントロールを誤れば、一気にスピンする。
タイヤのグリップが効かなくなれば、その危険は増す――。

だが今はスピードに乗っている。ここで止まるわけにはいかない。
無限の速さが目の前にあるのだ。速さを支配できるその領域が――!

ギュラギュラギュラ! ガードレールギリギリに車体を近づけて、目いっぱい踏み込む!速さを維持するためならば、あの片輪走行ですら辞さない!

五代 基一郎 > 「そろそろだな」
■チームメイト>「兄貴!?どういうことだよ!?」

「赤いミゼット、あの極限以上のチューンであのスピードで走り続け
 クセのある車体をよく飼いならしている。流石だ。
 車への拘りがそうさせるのか、それ以外の何かがあるのかはわからない。
 だが車である以上車輪は必ずある。そしてあのミゼットは三輪。
 このバトルでの過負荷は四輪よりハードだ。
 一般的に車体を安定させるには車輪が多い方がいいのは、わかるだろう。
 悪魔のLとの大きな違いはそこだ。
 不安定な三輪とその不安定な装甲からくる負荷……そして
 あのカスタムからくる重量。恐らく今あの赤いミゼットの
 タイヤは限界が違い。」

■チームメンバー>「それじゃ兄貴!?」
「あぁ、一歩間違えば弾けて消える。新星から太陽に早変わりだ。
 一足早い夜明けをこの無限高速で迎えることになるな……」

あの三輪が、無茶苦茶な改造をした三輪がスリップしクラッシュすれば
それこそ破滅的な結末しか迎えられない。

■チームメンバー>「冗談じゃねぇぜ!頭がどうにかしてやがんのか!」
「それが公道(ストリート)を攻める走り屋だ。いや、やつは何か別の者であり
 俺らはその別の者と悪魔との戦いを見ているのかもしれない……」

L > 無数の街灯が、窓の外を流れていく。
明かりは一直線につながり、コースにそって流れる光の帯のようだ。
いつからなのだろうか?街灯の形がおかしい。
ゆるやかなカーブを描くその先端のすべてに、像が腰かけていている。
そんなデザインの街灯は、ここにはなかったはずだ。

桃色の髪、褐色の肌、クラシックカーを思わせる詰め襟を着た少女は………微笑んでいる。

行く先の街灯、過ぎ去った街灯、そのすべてに腰掛けていたので像にも見えたがこれは違う。
生きている人間だ。

ふわり………。

少女が街灯から降りる。
飛び降りた少女は、次の街灯ではやや下がった位置に、次の街灯ではそれよりも下に。
まるで映画のフィルムを見ているようだ。

やがて少女は、物音も立てずに初期型NS-Lのボンネットに立つ。
エンジン音にかき消されたのではない。吸い込まれるような着地だ。
ものすごい勢いで後方にたななびく薄い赤毛。
右手を上げ、まっすぐに前方を指し示す。
そこは、スピードの先………。
甲高いエンジン音に、鈴を鳴らすような嬌声が交じる。

秋尾 鬨堂 > 「そうだエル…その先に、見るべきものがある。」
無限に引き伸ばされたような時間。
突っ込むミゼットとL。
カットインされたフィルムのような、幻想的な少女の姿。
ボンネットに立つ姿が示す先。それはガードレールへと激突してゆく地獄ではなく――

「そこが、世界の果て」

どこまでも続く道!

片輪を路面!そしてもう片輪は…壁に擦るか?!
超変則的ながら、突っ込みの速度を最大限に活かした曲芸コーナリングを繰り出すミゼットに対して!
『悪魔のL』は、最早スピン寸前の超長距離ドリフト!
タイヤの寿命を著しく削りながら、そしてコーナーインでは大きく遅れながら。

800馬力のエンジンが世界の果てを捉える。
立ち上がりの加速が、絞り出されるパワーが。
直線を策定し、射出される。

「見えるだろう火の玉ガール」
「ここにイデオロギーは無い」
「あるのはただ―――スピードの自由!」
速度Free!!

悪魔が詠う。
それは、公道を地獄に変える誘惑か?
いや違う。
この地上の自由を謳歌する、喜びの歌。

「人の目を、心をとらえるのはいつでも。一番、自由な存在なんだヨ」
鉄の塊が、時速300km/hオーバーを超えてただまっすぐと。
ただ一瞬のクリアライン。
どこよりも狭いそこに、ドリフトで作ったタイミングで。
ただ飛び込んでゆく。

ただ、加速してゆく

天球儀緋鳥 > 「何――?」」

高速で景色が移り変わっていく最中。奇妙な形の街燈が目に映る。
街燈の上には何かが腰かけているように見える――いや、そのような装飾はこれまでなかった。
時空連続体の中に次々に現れるは、人であった。
それは、コマ送りのようにして動いていた。
そして、『悪魔のL』のボンネットの上に、それは降り立った。
これはなんだ。
これはなんだ。
詰襟という服装では、天球儀の名を冠する少女とも似ている。
その、ボンネットの上の少女が差すのは見果てぬスピードの先。

彼女もまた、スピードに乗っていた。
であるならば。

「いいだろう。言われなくても、我はその先に往く! このバトルが我の世界征服の始まりなのだ!
 速度を、光を、我が支配する!」

ブオオン――! エンジンが火を噴く。
タイヤの限界も近い。決めるならば一気に決めて、チギるしかない。
正攻法では駄目だ。この状況全てを味方につけなければならない。
そして、天球儀の少女が、緋色の鳥の少女が選んだこと、それは。

道なき道であった。

「そう、道はここにもある! 我は道を往くのではない。道を拓くものだ!!」

刹那、車体が一気に傾く。
ガードレールに沿うようにして、車体が大きく傾く。そして――

その一つの前輪が、ガードレールの上に――新たなるラインの上に、乗る!

「ここにこそ――世界を革命する力が、ある!!」

三重スパイラルカーブ、そこ滑るようにして。
壁に、ガードレールに、タイヤを載せて、新たな道を拓いて走る。

速く、速く。
何処までも速く――

「フン、貴様とは気が合いそうだが――我は全ての先を往く存在だ!
 人の目を引き付けるのがそれであるというのなら、そうしてやる!
 我は、火の鳥なのだ!」

曲芸のように、コーナーを直線の如くミゼットは突っ走っていく。
タイヤにかかる負荷は恐ろしい。恐らくは長く持たない。それはあの『悪魔のL』も同じだ。
スピン寸前、決死覚悟、速度Free!!
絶対的自由の楽園、速度のエデンを二台の車が往く。
原罪から解放された地へ、煉獄、地獄を越えて、天へと!

決戦は近い。
そう、次だ。
次の瞬間で全ては決する――
あのラインを決めた方が、エデンへの道を踏破できるのだ!

ガキン!
壁とガードレールから飛び出して、地面へと降りる。
僅かな隙。
だがその隙に、『悪魔のL』が突っ走っていく!
ドリフトで作ったタイミングで!

「負けるものかああああっ!!」

全速力。リミッターを越えた速度で。
ミゼットはより早くそのクリアラインへと突っ走ろうと、駆け抜けた。

そして――

タイヤがわずかに滑った。ぐらついた。
前輪が、あまりに速いそれについていけなくなったのだ。

車体が、揺れる――

車体が大きく回転した。
後ろを大きく回すようにして、派手に回転していく。
エンジンが爆音を上げて――車体が、宙に舞う!

――クラッシュだ!

L > シュポーン―――

ボンネットの上に直立した少女は、超高速でカーブを曲がる車両の上からまるで力学の教科書に載せられた例のように、遠心力のまま、大きく弧を描いてガードレールを飛び越え、闇の中に消えていく。

五代 基一郎 > ラップトップに映し出された映像。
速度監視システムから覗いていた者。
そこに映し出されたのは……

■チームメイト>「言わんこっちゃねぇ!あんなことして持つわけねぇんだ!」

盛大なクラッシュ。その魂が、速度を求めるその魂が
光り輝き、弾けるように赤いミゼットが宙を舞う!
魂だけがスピードに乗ったまま消えて行ってしまうかのように

本当にここは常世なのだろうか。スピードに乗せられて別世界に
ズレているのではないか。そう思わせる、思わざる負えないバトルの結末。
それは破滅的なものだった。
エデンを、楽園を望み走ればその先にあったのは草などない荒れ果てた道の如く

速度のパラダイスロスト。現実へと引き戻されるように
男の声が正気へと戻す。

「結果が、出たな。」
■チームメイト>「こんなのが結果って言えるのかよ兄貴!」
「これが公道(ストリート)だ。今目の前にあるのがバトルの結末。
 覆しようのない事実だ。」

いくぞ、と伝えれば各々機材をしまい、車に乗り込んでいく。
バトルを見届けた出雲ブルースカイは公道の世界から現実の世界に戻って行った……

ご案内:「◆速度Free(違法描写注意)3」から五代 基一郎さんが去りました。
秋尾 鬨堂 > その気迫は。その心は、クラッシュに至る寸前まで、同じ先を見ていた。
クラッシュの原因はおそらく前輪のマシントラブル。
そして、それほどまでに車体を酷使する走り方と、最後に気持ちが先走ってしまったこと。
アツくなりすぎたそれは単純に経験の差であろう。

公道が詰まり始める。
今夜の無限高速は、幕を下ろした。

ミゼットのスピンをバックミラーに見送って。
遠くへと加速していくマシン。
戻り、助け起こす仲ではない。
公道バトルとは、そういったものだ。
一瞬の交錯の中。
本来交わらないであろう人生の一瞬に、ただ高速領域で出会う2つの魂。

「見えただろう、世界の果て―」
「だったらまた、踏み込んでくる そうだろ?エル」
また出会えると、確信にも似た予感を得て。
『悪魔のL』はミッドナイトへ消えてゆく―――

L > 鬨堂が語りかけると、助手席の少女はもぞもぞと寝返りをうつ。
登り始めた朝日に照らされたそれは、とても満足そうな寝顔に見えた。

天球儀緋鳥 > 宙を舞うミゼット、赤い鳥。新星。
世界の果てはそこにあった。だが、一歩届かなかった。
世界を革命する決闘の果て――決着はついた。

ミゼットの法外なエンジンが炎を上げて、超新星となる。
炸裂。爆音とともにミゼットははじけ飛ぶ。
超新星の如く、空の何処かで爆発を遂げたのだ

「おのれ――!!」

ミゼットの残骸と共に、少女は勢いよく宙に吹き飛ばされて行く。
その視線の先に見るのは、「世界の果て」を往く車――

「……次こそは、必ず勝つ! 貴様を、抜いて、支配してみせるのだ!」

蘇ル緋色ノ鳥である少女は、爆発で吹き飛ばされ、一つの星のようになりながら、世界の果てを往く車に誓う。

「次こそは、踏み切ってやる!」

また、あのエンジンは聞こえてくるに違いない。
何故ならば。

少女はまだ、諦めていないのだから――

ご案内:「◆速度Free(違法描写注意)3」から天球儀緋鳥さんが去りました。
ご案内:「◆速度Free(違法描写注意)3」から秋尾 鬨堂さんが去りました。
ご案内:「◆速度Free(違法描写注意)3」からLさんが去りました。