2019/09/19 のログ
カラス >  
「お父さんは人間です。
 竜の研究をしてて…その、俺はいろんな竜と鴉のキメラ、です。」

ぽろぽろと情報が零れていく。
竜というには竜らしさはほとんど……緑の鱗に包まれた足ぐらいか、
それぐらいしか今の所は見当たらない。

何とのキメラ、という部分には、笑顔がすっと引っ込んでしまったが。
甘いココアを啜れば、表情を戻して

「お二人は、人間の方なら、異能か特殊能力をもってるんですよね…?」

春寺谷 れもな >  
「心配しなくてもだいじょーぶなのに……。
 ん、竜?え、竜ってドラゴンだよね?だから足元オシャレなんだね~~!」

爪とかデコりがいありそう~~とキャッキャしている。
カラスの笑顔が引っ込んでも、ニコニコしたままだ。ついでに芋もかじっている。
でもマニキュア沢山使いそうだなぁとか、そういう心配事ばかりをつぶやいてるのが聞こえるだろう。

「片足でマニキュア一本使うかな…?え?うん?」

「あ、異能あるよ!もう見てるかもだけど!」

と、れもなはピンクでラメラメな焚き火釜を指さした。
中の炎はすっかり消えて、灰の代わりに花びらのようなしゃらしゃらしたものが詰まっている。
なんだかよくわかんねえ物体だな、という感想もやむなしではある。

水鏡 浬晶 >  
「そういうところが心配されてると思うんだけど。
 ……へぇ、竜。珍しいね。だから何だってわけじゃないけどさ。」

ずずず、とココアを啜り、芋の最後の一口を口に放り込む。
なんだかんだ焼き芋は美味い。秋の味覚の真理である。

「…あぁ、異能?まぁあるけど大したもんじゃないよ。
 こんな風に、ちょっと触れてる液体を操作できるだけ。」

そう言って、飲みかけの冷めたココアに指を突っ込む。
……指を引くとココアは、まるでゼリーのように指が突き刺さったまま引き抜けた。
そしてそのまま、ココアの塊を口に含む。若干艶めかしい。

春寺谷 れもな >  
「今日のサービスシーンが出た」

アルミホイルをくしゃくしゃ丸めながら回収しつつ、水鏡を見上げて言う。

水鏡 浬晶 >  
「何の話だよ」

指をティッシュで拭いてからゴミ箱にシュート。


入らなかったので拾って捨てた。

カラス >  
彼らに偏見類が無いことに内心、心底安堵する。

「異能……春寺谷さんのは、えっと…?」

確かになんだこれであった。
どういう異能なのかぱっと見では分からない…。
いや、説明されても理解が難しいかもしれないが。

「お二人とも、ちゃんと使いこなしてるんですね。」

わぁ、と水鏡の行動を見ている。
羨ましいな、という表情をしている。

春寺谷 れもな >  
さあ、何の話でしょうとばかりにトボけながら、焚き火釜を持ちあげる。
小さくピュルリン☆という音がした。気のせいでは無い。

「かぁいーでしょー。そこそこ使えるようになったからこそ、なんだけど~…。
 カラスちゃんくんは魔法少女知ってる?アニメとか漫画とか見てる?」

焚き火釜をおろし、そなえつけの箱からペンを勝手に拝借。
それを片手にふにふに振りながら。

「私の異能は物質への効果付与ってやつらしーんだ。
 世間で言う魔法少女と呼ばれる概念?にそったデザインと効果になるように、物質に一時的な上書きを行うってヤツ!」

カラス >  
「魔法少女……???
 家に小説や本はありますけど…。」

さっぱり知らぬ顔である!!

水鏡 浬晶 >  
「すっとぼけてんなぁ……まぁ俺のは汎用性高くて便利だからね。
 クソマイナーなやつ引いた奴はまぁ、頑張ってくれって感じ。」

水を操作してマグカップを洗いつつ、さらっと毒を吐いた。

「…お前、そんな結構な能力だったのな。物質の概念改変とか…
 ……あ。」

ちらっと窓の外を見る。

「悪い、俺は先に帰る。じゃあね。ごゆっくり。」

そう言って逃げるように保健室を出ていく。
彼は見た。先生が一人、部活で怪我をしたらしい女生徒を連れてくるのを……
つまり、芋バレ(焼き芋がバレること)間近であった。

要は蜥蜴の尻尾切りである。クズだ。

ご案内:「保健室」から水鏡 浬晶さんが去りました。
春寺谷 れもな > しゅしゅしゅと逃げていった水鏡の後姿を見送って、数秒。

「はれ?チョコボール、チョコボールは?!…あああ、もらいそこねた…」

貰い損ねたお菓子に思いをはせつつ、しょぼしょぼとカラスに向き直る。
手元で焼き芋後のゴミをささっとまとめて小さい袋につめ、こっそりとゴミ箱に捨てた。
なお、それが先生にバレたかは別である。どちらにせよ、れもなはケロっとしてるだろう。

「……ええとなんの話だっけ?魔法少女、あれ?魔法少女知らないかあ!」

カラス >  
「あ、はい、お気をつけて…?」

この後もしかしたら巻き込まれるかもという考えは無い。
全く無い…そして魔法少女の知識も無い。
逃げるように去って行った水鏡に首を傾げて耳羽根がぴこと動いた。

ところでココアを飲んでいたマグカップはどうしようか。


「魔法を使う女の子って、別に珍しい事じゃ無いですよね?」

サブカル知識が無く、しかもこの世界では珍しい存在ではない。
大変容後のここ日本ではよくあるお話。

春寺谷 れもな >  
「今はね!そう珍しくないんだけどさ。
 アニメや漫画、ライトノベルとかゲームとかのサブカルチャーってやーつ。
 あれらでは"可愛い衣装に変身して魔法を駆使する女の子"のジャンルがあるんだよ~。
 
 異能や魔術みたいな複雑な制約はナシでね、魔法もキラキラぴかぴかしてるの。
 私の異能はその変身する魔法少女を能力として付与できる。

 だから~、このペンも~……『マジック☆エンチャント!』」

ぱっぴゅーん!と空気がポップコーンのように弾ける音がする。
れもなが持っていたペンに、どこから沸いたか細切りのリボンやガラスのようなハート、
何故か懐かしさとワクワクを感じさせるような光の粒がきゅりり~んと集まり――

「はい、この通り!みたいな?」

ただのペンは魔法少女属性が付与された、太陽色の可愛いペンとなった。
ほとばしるインクを表現しているのか、ペンの周りはしゅるしゅるぽわぽわと光の液体じみた光がくねる。
ペン先には金の金具に収まった赤い宝石が輝いていた。

カラス >  
カラスに馴染みが無いのはさておき
とても馴染み深く懐かしい、由緒正しき魔法少女ペンになった。
日曜の朝にやっている感じの見た目である。

「すごいキラキラになりましたね…?
 これ、ずっとこのままなんですか?」

膝にあった黒翼がベッドの方へ周り、
翼の幹の部分で身体を支えるようにして、
覗き込むように身を乗り出す。

春寺谷 れもな >  
太陽色の魔法少女ペンは、微かにオレンジの匂いをさせている。
カラスがよく見えるようにとれもなが差し出せば、小さな花弁がほろほろと宙へ消えた。

「でしょでしょ!キラキラのつやつやペンになったよね!
 ずっとこのままだったら良かったんだけど、私が寝るか気絶するかするとダメなんだぁ…。
 ポン!って戻っちゃう。私が解除!ってやっても戻るんだけどね~」

カラス >  
差し出されたペンを指先でつつこうとする。
僅かに爪が長い。

「意識を保っているのが条件なんですね…。
 これを持ったら、魔法が使えるんですか?」

素直な魔法では無い分興味津々である。

しかし、二人には先ほど水鏡が目撃した先生が迫っているのだった。

春寺谷 れもな >  
「ううん、魔法を使えるようにするには決めセリフが必要なんだ。
 これはペンだからどういう色のビームになるかなぁ……」

試してみようかと決めセリフを考えていた時、れもなの何かの足音を聞く。
あ、これは誰か来たなと流石に察したのか、ペンを武器化するのはやめておいた。

「姿を変えるだけならエンチャント、武器化するなら決めセリフまで。
 それが私の異能発動の条件かな?あ、触って無いとダメっていうのもあったや…。
 見たかったらそのうち見せてあげるよ~~。スマホある?連絡先交換する?」

カラス >  
「台詞…??」

と、首を傾げた辺りで、確かにこちらも足音を聞いた。
そういえば自分は休みに来ていたのだった。

とはいえ、温かい飲み物と会話で随分と緩和されたのだが。

「あ、はい。持ってます…。
 結構条件のある能力なんですね。素直な魔法と違って…。
 不思議だなぁ…。」

不思議であるからこその魔法魔術ではなく異能なのだが。
ズボンのポケットからごそごそとスマホを出してくる。
長い爪で少し操作しづらそうだ。
ちらちら見える画面を目で追うなら、登録数は少ない。

春寺谷 れもな >  
「お、あるねあるね~~。てゆか指の爪も長いじゃん!うらやましー。
 私ちょっと丸っこい爪でねー、カラスちゃんくんみたいにシュっとした爪にするの大変なんだよねー」

画面見せてくれたらこっちから設定やっちゃうよ?と自分の端末を出す。
言いながらカラスの操作をソワソワ見ているので、勝手にスワイプスワイプしそうであるが。

さらに。
先生と生徒が入ってくる分には気にしない。ココア?飲んだけど作った人は自分では無い。
手当に忙しいようだし、何か深い追及が来る前に逃げておこうかな…とは考えている。
カラスと連絡先を交換したらバイビーの気持ちだ。

カラス >  
「え? あ、俺は切っても切ってもこの長さが一番短いみたいで…。
 ええと、じゃあ、お願いします…。」

たどたどしい使い方なので、最終的に操作は春寺谷任せになった。
アドレス帳を覗くなら、学校の先生数件と「おとうさん」の登録が見れる。

春寺谷 れもな >  
そういえば、おとうさんの外見を聞きそびれたなと考える。
キメラがキメラを育てたりするのだろうか。
ただ、なんだろうか、このカラスという存在は、どうにも笑顔が消えやすい話がいっぱいありそうだと、れもなは思った。
距離感がわかったら、またそのうち聞こう。先生がココアの匂いがするって周り見てるし。

「ほいほいほいっと、はい!れもなで入れたから~。
 勝手に先輩のも入れちゃおうかな?って、とりあえずメルアドだけアキ先輩のも登録しといたよ~~」

これが個人情報の流出である。

カラス >  
確かお父さんは人間だとカラスは言っていたので、
それ以上の情報は現在の所無い。学園内にいるのか、そうでないかさえも。

怯えたような表情、つまりがちな声、遠慮の塊のような心。
春寺谷の予想は当たっているのかもしれない。


「あ、ありがとうございます。」

同年代のアドレスの登録が増えたことに、
声色が嬉しそうだった。僅かに笑っている。片方は勝手な情報漏洩であるが。

先生の足音が近づいてきている。

春寺谷 れもな >  
「じゃあ、体調?いいときにメルメルって~~。
 体調悪くしやすいみたい?だし。私もそろそろ逃げるから、お大事にね!」

そう言いながら先生と生徒に気取られないようにマグカップを2個、そっと流しに置く。
ペンの魔法少女付与を「キラキラおしまい!」と解除し、元あった場所へスポンと差し戻した。

「じゃあねカラスちゃんくん!風邪ひかないでね~~」

カラス >  
そうだ、そういえば色々と怒られる要素が満載だった。
とはいえ少し体調が上向いたのもあってか、
彼女を引き留めて怒られることも無いなと思ったのか、
それとも彼女の賑やかさに押されたのか。

「あ、はい。ありがとうございます。お気をつけて…。」

そう言って彼女を見送ったのだった。

ご案内:「保健室」から春寺谷 れもなさんが去りました。
カラス >  
そうして、先生に見つかったのはカラスだけである。

お咎めがあったかどうかは、彼の性格を先生が鑑みたかどうか…。
とはいえ、体調が良い訳ではないことで、
それもいくらか緩和されることだろう。

――こうして、新しい出逢いがまた、始まったのだった。

ご案内:「保健室」からカラスさんが去りました。