2024/02/13 のログ
ご案内:「第一教室棟 食堂」に風花 優希さんが現れました。
風花 優希 >  
昼時の食堂、相応に学生が食するために群を成すその場所にて。
端のテーブルに腰を下ろし、風花優希もまた他の学生たちと同様に食事をしていた。

「いただきます…と」

蒼銀髪の彼の眼下にあるのは揚げた野菜に、鳥、海老…
出来立ての味噌汁に白米が並ぶ、正しく和な定食であった。

特に変わった部分のない、何気ない一生徒の日常風景。
その姿だけを見るのならば、多少は容姿で目立ちこそすれ、それだけだ。
数多の生徒たちと同様に、ただ食事をしているだけなのだから。

ご案内:「第一教室棟 食堂」にポーラさんが現れました。
ポーラ >  
 お昼時の食堂となれば、学生も勿論、教員も利用するため非常に賑わうのだが。
 そんな中を、それなりに目立つ和装で、するりするりと歩いていた教員の一人、ポーラ・スーは、一つのテーブルの前で、ひたりと足を止めた。

「――あら、綺麗な和食ね」

 そんな風に愛らしい少年の献立を覗き見ては。
 少年の反応を待つこともなく、さも当然のように向かい会うよう椅子に座った。

「風花優希くん、よね。
 和食が好きなのかしら?」

 そう言いながら座ったポーラが自分の前に置いたのは、円柱型に包まれた大きな風呂敷包み。
 見るからに弁当持参なのだが、どうやら食事する場所を探して食堂にやってきたようだ。
 

風花 優希 >  
「んお?」

もごもごと、少々頬を膨らませて天ぷらを咀嚼していた最中。
ふと掛けられた教師らしき女性の声に視線を向ける。

そうしてごくんと食事を呑み込み、備え付けのお茶を一杯。
口の中身を空にしてから、真直ぐに顔を向けた。

「ええと…確かポーラ先生、でしたっけ」

はい、和食は馴染みがあって。
などと相槌を返しつつ、話を合わせる。

「先生は…場所探しに?」

何時もはもう少し砕けた口調だが、相手は目上。
整い慣れた敬語で会話を返した。

ポーラ >  
「あら、覚えてくれてたの?
 うれしいわぁ」

 両手を合わせて目を細めながら微笑む。
 
「和食はいいわよね、わたしも好きよ。
 幼馴染の娘がね、よく作ってくれたのよ」

 懐かしそうに、やんわりと穏やかな口調で話しつつ、風呂敷包みをそっと解く。
 すると、三段重なった漆塗りの円柱形の容器が現れる。
 合わせて30㎝ほどの高さがあるそれは、ちょっとしたタワーだ。

「そうなのよ、職員室で食べようとしたのだけど、追い出されちゃって。
 あら、いけない。
 今更だけど、ご一緒してもいいかしら?」

 そう 少し上目遣いをするように伺いを立てるだろう。
 

風花 優希 >  
「まあ、先生達の名前くらいは一通り」

担任や自らが受ける授業の教師であればともかく、相手は初等教育が担当だ。
初等教育など受けている筈もない生徒としてはある種、珍しい類かもしれない。
実際、覚えている理由やらは彼には在るのだが…閑話休題。

「へぇ、幼馴染…」

軽く合図血を返しつつ、視線を相手へ向ければ、そこに在るのは山盛りの容器。
お弁当、にしては行き過ぎて見える量に少し目を丸めた。

「同席は構いませんけど…先生、そんなに食べるんですか?」

当然、そんな疑問の言葉が返される。

ポーラ >  
「あら珍しい。
 あなたは随分といい子なのね」

 目を丸くして、少し驚いたように少年を褒める。
 実際、この学園の教員の数を考えれば、普段接触する事の少ない教員の名前を憶えているのは相当にすごい事だろう。

「ええ、幼馴染よ。
 幼いころから一緒なの」

 そう話しながら三段の容器を一段ずつ降ろして並べると、蓋つきの容器が三つ。

「あらあら、そんなに食べるように見えるかしら。
 どちらかと言えば、小食なほうなのよ?」

 言ってる事と、目の前の光景が一致しない。
 当のポーラは口元に手を当てて、くすくすと笑っている。
 

風花 優希 >  
「…その割には、こう…滅茶苦茶な量ありますけど」

常人が食するにしても、あまりにもあまりな量。
目の前にある容器の中身がそのままお弁当だとして、一人前では足りぬだろう。
あるいはそう、容器だけが大きくて中身は少ない可能性もあるにはあるが。
それはそれで、何故にそんなことをしているのかが気になってしまう。

「自称小食、とかそういうオチで?」

なので、冗談交じりでそう返す。

ポーラ >  
「ふふふ、めちゃくちゃに見える?
 そんなでもないのよ、だってほら」

 そう言って一つの容器を開けると、そこからはコンソメの匂いが香る、オニオンスープが入っていてふんわりと湯気を立てている。

「それで、こっちがご飯。
 久しぶりに幼馴染のめーちゃんがお弁当作ってくれたのよ」

 そう言って開けた容器には白いご飯が入っているのだが。
 その量は確かに容器の半分にも満たないくらいであり、少々、少ないとも言えなくもないだろうか……いや、おそらく、平均値くらいだが。

「知っているかしら、保体の焔城鳴火(えんじょうめいか)先生。
 めーちゃんも昔からの幼馴染なのよ」

 そう、いわゆる保健室の先生を紹介しつつ。
 最後の容器をそっと少年の前に差し出して。

「さて……先生から問題よ。
 とっても可愛いめーちゃん手作りのお弁当。
 そのメインは一体何でしょうか?」

 そう微笑みながら、茶目っ気を見せて問題をだした。
 

風花 優希 >  
「あぁ…さっき言ってた幼馴染が…」

一つ納得、小さな息を吐く。
自分で作ったのでないのならば、多少は納得も出来る。

そして中身を見ればさらに腑に落ちる。
なるほど、容器は飾りであったらしい。
中身だけを見れば、ごくごく普通…或いは少し多いかもしれない程度。

何故にこんな大きな容器を使っているかは、やはり疑問ではあるが。

「ん、まあ顔と名前くらいは…
 お知り合い、昔馴染みだったんですね」

ぼんやりと、口にされた人物の顔を思い浮かべ。
自身はもぐりと、揚げた野菜を一口。

「うん? あぁ…突然ですね」

茶目っ気混ざりなのだろうか。
ああ、確かに初等教育の先生なんだなぁ…などと考えつつ。
咀嚼を終えて飲み込んでから、続く言葉に返していく。

「オニオンスープと御飯ですからね、洋食っぽそうですけど」

ポーラ >  
「あらほんとにすごいわね。
 めーちゃん、そんなに目立つほうじゃないのに」

 大した記憶力だと思いながら、小さく拍手を送る。

「あら、御明察ね。
 残念ながら和食じゃないの」

 くすくす微笑みながら、そっと容器の蓋を開けると――

「――じゃーん、めーちゃん特製の、手作りカレーでした」

 と、開けた蓋の中には真っ赤に染まった液体。
 カレーと言うには強烈すぎる、目に染みるような刺激臭が周辺に広がるのだった。
 

風花 優希 >  
「いいですね、カレー。
 ……ちょっと、刺激が強そうなやつですけど」

常人なら鼻と目にツンと来て、涙が出そうな刺激臭。
スパイスたっぷり、辛味マシマシの真っ赤さに何とも言えない顔を浮かべる。

なるほど、どうやら目の前の人物は…
あるいはかの保険の先生の味覚は辛味に支配されているらしいと。

「辛いの、好きなんです?」

ポーラ >  
「ええ、とっても刺激が強いのよ。
 目がパッと覚めちゃうくらい」

 とても強烈なスパイスの匂いを刺激を前にしても、にこにことした笑みを崩さない。

「そうねえ、わたしは辛いのよりも甘い物が好きかしら?
 でも、めーちゃんのカレーは特別なのよ。
 だって口に入れた瞬間、とっても素敵な香りしか感じなくなるんだもの」

 どうやら味覚が痛みを感じる前に麻痺するような次元のモノらしい。
 ただ香りは、刺激にさえ慣れてくればカプサイシンだけではない香ばしさに気づけるかもしれない。

「どうかしら、一口食べてみる?」

 そう言いながら、スプーンを差し出すが……。
 

風花 優希 >  
「目が覚めるどころか、火傷しそうなぐらいですけど」

肌に触れれば、其処が炎症を起こしそうなほどの辛味を感じる。
というか、聞く限りもうそれは味覚が消し飛ぶほどのモノらしい。

…この刺激臭の中にある香ばしさも、これではあまり意味がないと感じる程だ。

「遠慮しておきます」

そして、差し出されたスプーンにはきっぱりと断りを入れる。
辛味が好きというわけでもなければ、明確な耐性があるでもなし。

この身は仮初ではあれど、最低限に人並みの五感はある。
自ら好き好んで、地獄を見る気は彼には無かった。

ポーラ >  
「あらそうなの?
 ざんねん……うちの教会の子たちもこれだけは食べてくれないのよね」

 そういいながら、いただきますと、躊躇いなくカレーをたっぷりと掛けてご飯を一口。
 それをゆっくりと味わいながら、頬に手を当てているのは、美味しそうに見えなくもないが……。

「はぁ……。
 やっぱりめーちゃんのカレーは素敵ね。
 愛情を感じちゃうわ」

 そして幸せそうな表情を見せるのだから、この教員もまた、くだんの幼馴染に負けず劣らず、ヘンな人間なのだろう。

「それにしても優希くん……んー……。
 ゆーちゃん、ってよんでもいいかしら?
 わたしの事は、あーちゃんって呼んでいいわよ」

 と、楽し気に距離を詰めていくが。
 ポーラ・スーのどこに『あーちゃん』の要素があるのかは謎だろう。
 

風花 優希 >  
そりゃあそうだろう、と思った言葉はお茶を飲みながら飲み込む。
寧ろ子供たちにこんなものを振舞っておらず、少し安心した。

教会、とふと零れた言葉は頭…もとい本の片隅に書き留めて。
返されてきた言葉に、思考を移す。

「どの辺があーなんです?
 …呼び方の方はまあ、好きにして構いませんけど」

なんとなく染み出てくる幾つかの違和を感じながら、
やはり、ここにいる教師というものもワケアリが多いのだろうな、などと。
会話の最中に、そんなことを思案していた。

ポーラ >  
「よかった、じゃあ、よろしくね、ゆーちゃん」

 ふふ、と笑って嬉しそうに愛称で呼びかける。
 そこにはどこか無邪気な親しみが込められているが。

「『どの辺が』といっても、そうねえ……」

 うーん、とまたカレーを一口頬張って少し考えると。
 相変わらず二口めも平然と味わってから。

「昔から、仲のいい子たちにはそう呼ばれていたの。
 いまも、仲のいい子はそうやって呼んでくれるのよ。
 うちの子たちも、懐いてる子は『あーちゃん先生』って呼んでくれるの」

 と、そこまで言ってから、ふと思い出したように。

「ああそうそう、わたしね、居住区で『方舟』って養護施設をやってるのよ。
 教会も併設してて、実は司祭もしているの」

 なんて、自分の学外での事も話しつつ。
 少しだけ残念そうに、はあ、とため息。

「でもね、幼馴染だともう、一人しか呼んでくれないのよ。
 まあいいけど……あーちゃん先輩って呼ばれるの、わたしは好きだもの」

 などと数人いるのだろう幼馴染の一人を思い浮かべつつも。
 やはり愛称で呼んで貰えるのが好きなのか、少しだけ拗ねたように唇をとがらせてみたりした。
 

風花 優希 >  
「ふぅん…まあ、あだ名ってそういうところはありますよね」

どこか煙に巻くような返答。
返す彼の返答もまた、どこか曖昧なもの。

確かにあだ名であれば、何となくそう呼んでいる、呼ばれている事もあるだろう。
けれども何かしら、それにも由来はある筈で。
だとすれば、先ず真っ先に浮かぶのは…今の名が偽名という仮定。

そう推察はすれども、それを問いもしなければ追及もせず。
当人が隠しているものを、わざわざ暴くような趣味もない。
なによりただの推測で、わざわざ疑うようなことでもないのだから。

「司祭…ですか。思ったより上の役職が出てきて驚きです。
 教会諸々は零れてたので修道士とかかなとは思ってはいましたけど」

ともあれ、ある程度食事を終えたのでお茶を呷りつつ。
素直な感想を返していく。

「中々、他人の事を気軽にあだ名だとか呼び捨てって難しいですし、そんなものですよ。
 誰でも気軽に呼ぶ人も居るには居ますけど…それは例外ですし」

ポーラ >  
「そういうものなのかしら?
 わたしも、どうして『あーちゃん』なのかよくわかってないのよね。
 昔からそう呼ばれてたから、すっかり気に入ってるけど」

 劇物カレーを楽しみつつも、不思議そうに首を傾げる。
 どうやら本人にとっても、由来に関しては曖昧な記憶らしい。

「ふふっ司祭なんて言っても、偉いわけじゃないのよ。
 ただ、自分の教会を持つのに都合がよかったから、すこーしだけがんばったの。
 ね、先生えらいでしょー?」

 褒めて、とばかりの言い方は、やはりどこか子供っぽく見えるかもしれない。

「あら、そういうものなの?
 わたしは好きな子は愛称で呼びたくなっちゃうけど。
 だからゆーちゃんも好きなのよ?
 実は少し前から気になってたの、可愛い男の子だなぁって」

 そんな事を言いながら、ゆっくりとだが、確実に劇物カレーが減っていく。
 合間にオニオンスープを口にしているが、味覚が死んでいる以上、これもまた香りを楽しんでいるのだろう。