2024/02/14 のログ
風花 優希 >  
「それでも、立場としては上も上じゃないですか」

よくそこまで成れましたねぇ、と小さく。
宗派やら詳しいことは定かではないが、それでも真っ当に考えればすごいことだと。

「仲が良いならともかく、初対面だったりならそういうものでしょう。
 特に先生はほら、目上になりますし?」

よく食べれるなぁ、と思考の端に。
呑み終えた湯呑をコトリと置いて。

「先生のその好意のラインで、そこまで気軽に呼べるのは素質な気はします。
 自分なら何となく好意的に思ってる相手でも、交友がないなら”さん”とか付けますし
 ボクの事が気になってたというのは、少し驚きですけど」

ポーラ >  
「うふふ、褒められちゃうと照れちゃうわね。
 でもそんなすごい事はしてないの。
 ……何事にも、裏技、ってあるもの、でしょ?」

 なんて、血色の良い唇に人差し指を当てて、ウィンクをして見せる。

「目上だなんて、この島にいたら、学生も教員も、お互い教え合っているようなものじゃない。
 だから気にせず友達みたいに、仲良くしてくれると嬉しいわ」

 恐らくこの距離感は、子供たちと長く接しているからこその感覚なのだろう。
 思春期の少年少女からしたら少々近すぎるかもしれないが。

「もう、ゆーちゃんたら、先生のこと沢山褒めてくれるのね。
 とっても嬉しいけれど、ちょっと恥ずかしいわ」

 そう頬に手を当てて目を細める。
 ほんのり頬が染まってるのは、劇物のせいではない……はずである。

「あら、驚くような事かしら。
 ゆーちゃんみたいに可愛らしい子、目立たないはずがないでしょう?
 時々見かけて、女の子みたいに愛らしいなあ、って思ってたの……あ、ごめんなさい。
 もし、気にしていたら無神経だったわね」

 大丈夫かしら、と様子を伺うように、そっと少年を底が見えないような深い青色で見つめる。
 

風花 優希 >  
暗に裏技を使った、ウィンクを見せる教師に苦笑を浮かべる。
なんと返せばいいか分からない言葉を聞かされたが故の対応だった。

「その理論が通じるのは立場を気にしない人だけですよ。
 互いが教えられあっていても、役職と立場というのは気にするものです。
 考え方とかスタンスは、好きですけど」

ボクは気にしますからね、と断りを入れ、一息。
子供を相手しているのならば最適なのだろうけれど。
その感覚が他者に重ねられるのかといえば、NOなのだと。
常識的ではある少年は、率直にそう答える。

「ま、容姿は確かにそっち系というか、いい方ですしねボク。
 特にそう言うとこは気にしてないので構いませんけど。
 ……それにしても、そこまで目立つのは少し意外ですね」

深い青を宿した瞳を見返す赤みがかった瞳に、ブレはない。

ポーラ >  
「よかった、好きって言ってもらえるなら十分だもの。
 じゃあ、ゆーちゃんの前ではちゃんと先生らしくしなくちゃいけないわね?」

 くすくすと楽しそうに笑いながら、しっかりしなくちゃ、なんておかしそうに言ってみたり。
 やはり少しばかり子供っぽい大人に見えるだろう。

「あらら、自覚があるのは素敵ね。
 気にしていないのなら良かったわ。
 こういうので、傷つく子もいるから」

 はあ、と悩まし気にため息。
 ジェンダー問題は幼い子供たちの方が繊細な部分もあるのかもしれない。

「……あら?
 不思議ね、ゆーちゃんくらいの美人さんなら、沢山声かけられそうなのに。
 男の子にも女の子にも、モテたりしないの?」

 首を傾げながら、少年に率直に問いかけた。
 

風花 優希 >  
「あはは、コンプレックスだったりするとそうですよね」

気にする人は気にする問題なのは違いない。
ある程度しっかりしてくると、嫌でも口にしなかったりするものだ。
むしろその点は、幼い子供の方が分かりやすいくらいだろうから。

「無いわけでは無いですけど、それは他にも同じような人は居るには居ますし。
 ボクだけが特別目立つ、ってわけでもないでしょう?」

そうしてさらりと、少年は返す。
単に容姿がいいだけならば、他にもいると。

確かにそうした声掛けだったり誘いに聞き覚えはあるが、目立つものとは少し違う。
少なくとも己の立ち振る舞いに、自らをひけらかすような点はあまりない。
何の気なく、ごくごく自然に振舞って、集団という社会に溶け込むようにしているのだから。

ポーラ >  
「そうなのよ。
 特にこの学園、繊細な子が多いから、とっても難しいのよね。
 ふつうの子供が悩む問題だってたくさんあるのに、異能に魔術でしょう?
 先生してると、とっても気を使うわぁ」

 ほぅ、と普段から苦心しているのか、そんな事を零し。
 それだけ学生の事を気にかけている、という事ではあるのだろうが。

「そう言われてみればそうね?
 美男美女、多いものね……」

 食堂をぐるっと見回してみても、そういった学生は多い。
 たしかに言われてみれば、容姿で目立つというのなら、他の学生にもいくらでも言えてしまうだろう。

「……あらあら?
 そうしたらゆーちゃんが気になったのはなんでかしら。
 他にも気になる子は沢山いるけど……」

 自分でも不思議そうに目を丸くしながら、困ったように少年を見つめつつ。

「不思議とゆーちゃんが目に留まったの。
 あら、あんな可愛らしい男の子もいるのね、って。
 やだわ、どうしてそう思ったのか、覚えてないわ。
 はぁ。
 どうも忘れっぽいのよね、困っちゃう」

 そしてまた、悩まし気にため息をつきつつ……劇物カレーの最後の一掬いを頬張った。
 

風花 優希 >  
ふとした切欠での異能の暴発やら、魔術的事情でのアレソレやら。
思考を巡らせれば幾らでも出て来そうな問題に、同情の苦笑を浮かべる。

「不思議と…ですか。
 ま、目を惹く髪色だとか容姿なのは、否定できませんけど」

整った容姿の多い学生の中でも、何故に自分なのか。
その理由が分からぬ、覚えていないという言葉にはそうとだけ。

特に理由なく、何となしに目を惹いた…という事だってあるだろうと。
ひとまずはそう納得することにした。

「目立つ、で言えば先生の和服もそうですしね。
 色んな先生は居ますけど、和服のとなれば限られますし」

どうやら相手も食事を終えたらしい。
話を終えたら、食器を返しに行かないとなと、ぼんやりと考える。

ポーラ >  
「目を引くのはその通りよね。
 でも、たまたま目に映った、だけなのかしら。
 なにか考えてたような気がするのだけど……」

 頬に手を当てたまま、じーっと少年を見つめる。
 そう自分の頼りない記憶力と戦っていると、和装の事に触れられて、ああ、と袖を握って少年に見せてみながら。

「これはね、ふふ、ちょっと恥ずかしい話なのだけど……。
 そうねえ、ちょっとだけヒント。
 わたしにも幼くて乙女な子供時代がありました。
 親のいないわたしにも、優しくしてくれる男の子がいました。
 さてさて、わたしが和装を好むようになったのはどうしてでしょう?」

 なんてまた、戯れるように問題をだして、悪戯っこのように微笑んだ。
 

風花 優希 >  
「……ああ、幼いながらの女心…ってやつですか」

少年は鈍くはない。
人の感情というものが、どうしたものなのかは知っている。
少なくとも、知識の上では。

だからこそ、そう推察するのも難しくはなかった。
自分に優しくしてくれる異性がいて、その子が和装が好きだという。
ならばその子に好かれたくて、和装になるのは自然なことだ。

「それって今でも、なんですか?」

だから、そんなことをちょっとした冗談交じりで聞いてみる。

ポーラ >  
「もう、ゆーちゃんったらそんなストレートに言わなくてもいいじゃない」

 恥ずかしそうに袖口で口元を隠して、頬を染めながら笑う。

「大正解。
 今思えば、可愛らしい恋心よね。
 初めてお着物を着せてもらった時に、褒めてもらったから……なんて」

 自分でも照れ臭いのか、もじもじと落ち着かない様子で。

「やぁね、もうっ。
 子供の頃の初恋の話よ。
 でも、それが忘れられないから、和装をするようになったのでしょうね。
 すっかり趣味になっちゃったわ」

 そう話す表情は、穏やかで、とても懐かしそうに見えるだろう。
 それだけ、心に残る思い出だったのは違いなさそうだ。

「と、こ、ろ、で。
 せんせーにソレを聞いたって事は、ゆーちゃんも答えてくれるのかしら?
 ね、ゆーちゃんは初恋とか覚えてなぁい?
 それとも……恋の真っ最中だったりとか」

 にこにこと楽しそうに、まさに恋バナを楽しむ少女のような調子で、軽く身を乗り出しながら少年に声を潜めて訊ねるだろう。
 

風花 優希 >  
「自分から切り出したんですから、乙女の秘密ってわけじゃないんでしょう?」

くつくつと、恥ずかしげに笑う正面で、微笑を携えて少年も笑う。

「ふふふ、流石に初恋は昔話ってことですね。
 でもいいじゃないですか、可愛らしい理由で微笑ましくて」

色々、気にかかる事が見え隠れする先生だが、
こうしてみるとやはり普通の女性だな、などとそう思い。

「あらま、藪蛇でしたか。
 でも残念ながら、そう言うのとは縁がなくて」

その一方で、こうしたことに苦笑しか抱えせぬ辺り、
自分もこうした人の器がありながらも、何とも人馴染みのない生を過ごしていたものだなと。
そうしみじみと思いながら、肩を竦めて返すのだ。

ポーラ >  
「あらあら、そうなのね。
 実際にお話しして思ったけど、とっても魅力的な子なのに。
 ゆーちゃん、そういうこと、してみたいとは思ったりしないのかしら?」

 椅子から浮いた腰を再び下ろして、やはり興味津々、と言った様子で首を傾げる。
 この辺りは確かに、見た目相応の女性らしい好奇心ではあるだろう。

「さっきも思ったけど、ゆーちゃんなら男の子にも女の子にもモテそうだもの……ああっ!」

 なんて言ってるうちに、なにかに思い当たったのか、両手をポンと合わせながら声を上げた。

「そうだわ、ゆーちゃんに気づいたのは丁度その事だったのよ。
 ほら、養護施設をしてるって話したでしょう?
 そこの子が、性自認で落ち着かなかった頃があったの。
 その時にゆーちゃんを見かけて、ああ、ああいう子もやっぱりいるのね――って思ったんだわ!」

 そう言うと、すっきりしたような表情で嬉しそうに笑う。
 幼い子供は性自認が曖昧であることも多いため、日ごろから気にかけていた事でもあり、切っ掛けとして意識していなかったのかもしれない。
 

風花 優希 >  
「今のところは、特別興味とかは無いですねぇ」

好奇心に満ちた顔へ返すは曖昧な苦笑。
とはいえ、ある意味では御尤もな質問である。
なにせ、容姿で言えば年頃も年頃だ。
”そういう話”は飛び交うし、興味があって然るべき年齢なのだから。

「あはは…どっちも、というのは嬉しいやら哀しいやらで…ってうん?」

ともあれ、冗談めかした笑いを返していれば、目の前の先生は何かを思い出した様子で。

「ははぁ、なるほどそういう経緯でボクを。
 やっぱり、そういう子供も居るんですね。
 その点ではボクは何というか、悪い見本なきもしますけど」

ポーラ >  
「あら、勿体ない」

 素直にそうリアクションするが、そういう子がいるのもまた然りとわかっているのだろう。
 それ以上に踏み込む事はしなかった。

「あら、悪い見本なの?
 そんなに可愛らしいのに、しっかり男の子してるでしょう?
 あ、それとも、なにか悪戯でもしてるのかしら!」

 何か面白い事でもあるのかと、表情をぱぁっと子供のように明るくして躊躇いなく訊ねる。
 

風花 優希 >  
「まあ、しっかり男の子はしてますけども」

悪戯とかじゃないですよ、と笑いつつ。
少し、どういう言い方をするべきかの思案をして。

「女子の服とか着るのに、そこまで抵抗もないんですよ。
 似合う服を着ればいいかな、くらいの感覚なので」

回りくどい言い方はせず、けれどもストレート過ぎぬ言い回しで答える。
隠すようなことでもないので、そのままに。

ポーラ >  
「まぁ」

 そうなのね、と言うような声で手を合わせる。
 そして、人差し指を顎に添えながら小首をかしげて、うぅん、と小さく唸った。

「でも、それってとても自然な事だと思うわ。
 それでちゃんと自分のアイデンティティをしっかり持ってるのはとても素敵だもの」

 事実、そうして『自分らしさ』を確立出来ているのなら素晴らしいものだと思うのだった。
 だからこそ、少年の存在はジェンダー問題に悩む子供にはとても良い刺激になるのでは、と。

「……うん、そうだわ。
 ねえユーちゃん、こんどうちに遊びに来ない?
 きっと、うちの子たちにとっても、いい刺激になると思うの!
 ……どうかしら」

 そう伺うように、訊ねてみるが。
 

風花 優希 >  
「あはは、ありがとうございます。
 それが自分だって言えるのは、確かにですし」

そういう事にも悩むのが、性自認だとかアイデンティティーなのだから。
自分のそれもまた、悩みへの刺激になるのならばそれもまたよいことの筈だ、と。

けれども、続く言葉には少し少年も目を丸めた。

「へ? 先生のとこに、ですか?
 ……ええとまあ、そういう事なら構いませんけど」

その流れでそのまま、彼女の管理しているらしき教会への誘いがあるとは思わなかったのだ。
さしもの彼も、間の抜けた声が零れてしまった。

ポーラ >  
「ふふっいいわねえ、ゆーちゃんらしさ、って言うのかしら」

 少年の可愛らしさだけでない、芯のある所を見て、教員として嬉しそうな笑みを浮かべた。

「そうそう、わたしの教会……と言うよりは養護施設かしら。
 ちょっと訳ありの子ばかりで、困らせちゃうかもしれないけど……」

 少年の返答に、少しホッとした表情を浮かべて、穏やかに微笑むのは、どこか母性を思わせるかもしれない。

「その時は、お礼にとびきり素敵なお着物を着せてあげちゃおうかしら。
 ……あら、もうこんな時間なの?」

 懐から小さくアラーム音が鳴って、時間を確認する。
 また昼休みが終わるわけではないが、教員としては次の準備をしなければならない。

「ごめんなさい、ゆーちゃんとのお話が楽しくて、すっかり夢中になっちゃったわ。
 ええと、はいこれ。
 ゆーちゃんの都合のいいときに連絡頂戴?」

 手元の弁当箱を綺麗に風呂敷に包みながら。
 アナログな、しっかりとした和紙で作られた名刺を差し出した。
 そこには『児童養護施設「方舟」院長』と書かれている。
 

風花 優希 >  
そうした子供たちの良い刺激になるかもしれない。
理由の方は腑に落ちても、そのまま誘うのには少し面を喰らったら叱った。
けれども、その穏やかな微笑を見れば納得も行くものだ。

「そっちが本音だったりしませんよね?」

なので、そんな冗談を返しつつ、アラーム音に小耳を揺らす。
自分もまたふと時計を見れば、まだ時間はあるがそれなりに話し込んでいたようだった。

「いえいえ、こちらこそ。
 食後はどうせ暇してましたし…ああえっと、名刺ですか、はい確かに」

ともあれ、目の前の先生はもう時間のようだ。
少年も立ち上がり、食器を戻しに行く構え。
名刺を受け取り、軽く一瞥してからひとまず懐へと仕舞うのだ。

ポーラ >  
「ふふっ、どうかしらね?」

 少年の答えに楽し気に笑って、風呂敷を抱えながら立ち上がる。

「今時、古臭いでしょう?
 でもこういう時、ぱっと渡せて便利なのよ。
 それじゃあゆーちゃん、また会いましょうね」

 そう言って、小さく手を振りながら、食堂を後にするのだった。
 

ご案内:「第一教室棟 食堂」からポーラさんが去りました。
風花 優希 >  
「形がある方が、後で手元に残りますからね」

よさは分かりますよ、とそう返し。
軽く会釈を返せば、少年もまた食器を厨房へと戻し、
食堂を跡にするのだった。

ご案内:「第一教室棟 食堂」から風花 優希さんが去りました。