2022/02/25 のログ
■愛深きカルマ >
「ああ――私か。なるほど、そうですか。
ははは、そうだったのですね」
呵々大笑。
平然と笑って受ける。
「麗しのレディ。
確かに、夜も夜中。
このような場で、思いもよらぬ邂逅によって動揺することは理解できます。
誰もそれを責める道理はないでしょう」
まるで変態だと言ったことが悪のようである。
いや、言葉の上では認めてはいるが
「そして、名前。名前、ですか。
ははは、なかなか情熱的なレディですね。
いいでしょう!」
ばさり、とマントを翻す。
そしてなんだか謎の決めポーズ。
些かどころではなく怪しい
「私のことは……そう、『愛深きカルマ』、とでもお呼びくださいレディ。
長いようでしたら、『カルマ』と、でも。
ああ――それにしても……」
ゆらり、と怪人が僅かに揺れる
「獲物、とはまた……ははは。
ああ、レディ。名を問われたからにはこちらからも。
レディのお名前を伺っても?」
優雅に礼をしながら問いかけた
妙に決まっているのが逆に気味が悪い
「それと、もう一つ。
この夜空に合う色は、なんだと思います?」
■紫明 一彩 >
「めちゃくちゃ冷静だね!?」
自覚ないっぽいから多少は動揺するかと思ったけど、
思った以上にこの仮称変態仮面、大物かもしれない。
続く彼の紳士的な言葉を聞いて、
うむむ、と顎に手をやるのだった。
何かペースに呑まれてない?
「そういう意味で名前を聞いたんじゃないからね?!」
情熱のりっしんべんすらない。
しかし、いちいちポーズを決めてるの面白すぎるな。
目の前でこじんまりとした演劇を見せられている気分になる。
とても様になっているのだが……何より怪しい。
そんなものだから、思わずじとっとした目で観察するしかない。
「あ、愛深きカルマ……カルマさんね、覚えたよ……」
それ名前じゃなくて2つ名か何かじゃない!?
全然まともじゃなかった。
……いや、落ち着け。ペースに呑まれてはいけない。
「こほん。
私も、まぁ名乗られたからには……返しておこうかね~。
私は、紫明 一彩。何処にでも居る一般図書委員さ」
ペースを取り戻すことを兼ねて、自己紹介はしっかりしておく。
……いや、正直偽名とか使おうかと思ったけど。
まぁ……今の所言動……もとい、言だけ抽出すれば一貫してマトモっぽさがあるし。
いや、まぁ動きも所々はマトモなんだけれど……。
私がちょっと色眼鏡で見てしまっていただけなのだろう。
そう感じて、きちんと伝えたのだった。
「……え? そうだね、この黒い夜空に似合うのは
やはり白じゃないかな。コントラストは素敵だよね」
不意に来たロマンチックとも取れる質問。
顎に手をやり思案した結果。
丁度さきほど、某門の話を思い浮かべたところだったし、
黒洞々たる夜に垂れ下がった老婆の白髪を想像しながら
そんなことを口にした。
■愛深きカルマ >
「ははは、冷静さは大事だよレディ。
なにしろ、繊細な作業をするのには――ああ」
何かを思い出した、とでも言いたげに手を打つ
漫画チックと言えば漫画チックであり、どこか作り物めいてもいた
「レディ一彩、そうだ。
いま、貴女は言った。
黒に、白が合うのではないか、と。」
ゆらり、と怪人が揺れる
「そう、それも一つの意見だ。
私もその可能性を肯定する。
しかし、他の可能性も十分に有り得る。
底には検討の余地が在る。そこには検証の余地がある。
そうは想わないかな?」
ゆったりとした動きで少しずつ、歩み寄ってくる
正直、とても不気味である
「故に――レディ一彩。
貴女に少々、検証の協力を願いたい。
なに、お手数は取らせない。
ほんの少しの時間だけ、お付き合いいただければ結構だ」
にじりよってきた怪人は……
目にも留まらぬ勢いで腕を振った
■紫明 一彩 >
「ああ、確かに言ったけれど……?」
怪人が揺れれば、思わず半歩退く。
いや、だってめちゃくちゃ怖いよ!?
「いや、何か至極真っ当な口調で語ってるけど、
何について語ろうとしているのかさっぱり読み取れないから
恐ろしいね!?」
凄まじい不気味さを感じてまた半歩退く、のだが。
背後を見やれば遥か下に地面が見える。
あれ、マジで追い詰められてな~い……?
「は? 検証の協力って何の話を……」
振るわれる、怪人の手。
その手から感じる、ただならぬ力の気配。
何らかの異能であることは間違いない。
だが、一体何の――!?
一瞬の内に思考を走らせようとするが――
「速ッ……!?」
近づかれても、徒手空拳ならば利がある。
そう考えていたが、甘かったようだ。
刹那の内に閃くその手の軌跡を微かに目で捉えることはできても、
思考の波に気を取られ、満足な防御姿勢を取ることができず。
マズい、殺られる訳にはいかない。
それでも出来得る限り、最大効率の防御姿勢を両腕で取る。
実戦経験なら結構豊富だ。このような『戦い』の場で、
相手が何処を狙ってくるかというくらいは――読める!
■紫明 一彩 >
瞬間、黒き宙に舞う、『敢えての色』。
此処に一つの検証は成った――。
■愛深きカルマ >
「おお……っ
なるほど、なるほど……」
怪人は感嘆の声を漏らす
・・
「やはり、いい!
やはり、これは無限の可能性を秘めている!」
・・
それをかざし、怪人は高らかに謳う
「ああ、レディ一彩。
貴女もそうは想わないかな?
闇には、やはり……この色が馴染む。
これもまた、一つの可能性だ、と!」
■紫明 一彩 >
「…………」
・・
掲げられたそれを見て。
「…………」
自分の服の下に、何だか変な感触を覚えて。
・・
もう一度それを見て。
「…………へっ……へっ!?」
わなわな。
■紫明 一彩 >
「変態紳士がーーーッ!!!!!」
超本気のドロップキックを放つ。放った。
蹴りを放ちながら、なんかもう泣きたくなった。
いや、バカみたいじゃん!
もしかしたら紳士かもしれないって思って自己紹介したのも。
すっごい真面目に戦おうとしてたのも。
すごいバカみたいじゃん!?
恥と損しかしてないな!?
紫明 一彩、一生の恥。
――冬空に 星を隠すは 下着かな――
■愛深きカルマ >
「おお、貴女もわかっ、ぐえっっ!」
渾身の力を込めたドロップキックは怪人に見事に決まった。
それはもう、きれいに入った。
ところで、ドロップキックとはいかなる技か。
それすなわち、全身をバネに、両足に全威力を込めて放たれる強烈なキックである。
体重×パワー×スピードなのである
つまり、超強力な技である
怪人は 吹き飛んだ
■愛深きカルマ >
ちなみに、ここは時計塔最上階
空も見渡せる高所である
怪人は 空へと飛んだ
「このあしらわれたレースといい……
僅かに透けたあしらいといい……
実に上物だ。
レディ一彩、貴女は実に素晴らしい!」
怪人の声が 風にのって響いた
■紫明 一彩 >
「……帰ろ~」
変態がどっかに飛んでった気がしたけど。
何か変な声とか聞こえてきた気がしたけど。
よし、何も見なかったことにしよう!
ここには綺麗な星空しかない!
「……嗚呼。良い夜――」
そう、この素敵な景色を楽しむには最高の場所。
だからこそ、ここで過ごすのはとっても素敵な時間で。
■紫明 一彩 >
「――な訳あるかーーーッ!!」
ふざけろ。
ちょっと寒くなった身体を抱きしめながら、
図書委員は一人帰るのだった。
その後、女は。
怪人が上物と評したタイプの下着を買うことは
二度となかったという――。
Noレース、No透け――。
ご案内:「大時計塔」から紫明 一彩さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から愛深きカルマさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にコピルさんが現れました。
■コピル > 大時計塔。
内部や屋上は基本立入禁止とされているが、ほとんどの生徒(あるいは先生)が無視して利用しているという。
その程度の有名無実な禁を破ることは『悪』の度合いとしてはごく低ランクになるだろうけれど。
それでも毎日『今日はこんな悪いことをしたよ!』と親に連絡する必要がある、魔界の王子コピル。
せっかくだから……と意を決して登ってみることにしたのだった。
「………ひえっ……! さ、寒いです……!」
長い長い階段を登りきって、屋上に続く扉を開けると、凍てつくような冬の風が褐色肌をかきむしる。
2月が終わろうとし、徐々に春の気配が見えてくる今日この頃。
だが地球に来て1ヶ月も経ってないコピルに、季節の情緒はまだわからない。
熱と瘴気の満つる魔界生まれの彼にとって、地球はただただ寒い場所。高い所に行けばその傾向も強まる。
「…………ん………でもやっぱり景色はいいですねっ……!」
それでも凍てつく風に負けず扉をくぐり、高い柵で保護された縁に来れば、眼前に広がる景色に息を呑む。
学園島を一望できるロケーションと高さ。来た甲斐はあったというもの。
……あまりの高さにちょっと脚がすくみ気味だけれど。
■コピル > 「やっぱり……魔界の景色とは大違いです。
いろんなところに植物が生えてるし……あっちじゃ『冷室』の中でしか育たない花や草や木が、こんなに。
建物も白いのが多いし、赤いところは太陽くらいしかないです……」
高所を吹きすさぶ風にうっかり飛ばされないよう、鉄の柵をぎゅっと握りしめて。
這うように位置を移しながら、島の全景を見ようとする。
南の方にはナントカという小高い山。鬱蒼とした常緑樹に覆われ、鮮やかな緑が目にまぶしい。
眼下には人間の営みによって作られた数多の被造物。『ビル』といわれる直方体の建築物が大半だ。
鉄・硝子・石で構成されたそれらは、白や灰色が基調。
合間を埋めるように紺色や臙脂色の瓦屋根、山と同じような常緑樹の緑がアクセントとして散りばめられている。
そして何よりコピルの目を奪ったのは、360度全周を囲むように存在する『水の海』。
冷たい鈍色の水平線が、ここが洞穴内や大陸でなく小さな島であることを物語っている。
氷のような水色の空、煤けていない真っ白な雲もまた、魔界ではまず見られない光景だ。
「水の海……ほんとうにあったんですね。そりゃ寒いわけですね、この地球は。
地面の遥か下にはあっちと同じようにたくさんの溶岩が渦巻いてるって習いましたけど、ほんとなのかなぁ……」
魔界生まれの魔族ゆえ、その肉体に流れる血は人間よりも熱く、体温も高い。
熱にめっぽう強い反面、寒さには若干弱い。弱点という程ではないが、この寒気は結構しんどい。
ぶるる、と短パンから覗く細い脚が子鹿のように震える。
「僕が魔王になったら、パパと一緒にこの星を攻め落とすって言ってましたですけど。
……そんなこと、できるのかなぁ……」
傾いた太陽が、西の空をほんのり茜に染めている。島の西の方は未開拓地域のようで、砂の光景が広がっている。
その赤茶の色彩のみが、かろうじて魔界と似た雰囲気を帯びていて。
『異郷』の地に来たことを再確認し、何度目か分からぬ弱気な独り言を漏らしてしまう。
■コピル > 「ふぅ……疲れたです。休もう……」
ひとしきり景色を堪能し終えたコピルは、塔屋の扉の横に設えられたベンチに向かう。
ランドセルを下ろし、小さなお尻も木の座面に委ねた少年は、そのままころりと仰向けに寝転がってしまう。
縁から離れて体勢も下がれば、体温を奪う冷風の影響も少しは和らぐ。本当に少し。
他の利用者がベンチを使いたがった時に困るだろうな……と脳裏に独り言。現時点でここにいるのは彼一人のようだが。
「周りは水ばかりで溶岩はないですし。とても寒いところですし。
人間はとっても多いですし。平和で善良な人たちばかりですし。
……侵略には向いてない場所な気がするですけどねぇ……パパは何を考えてるんだろう……」
抜けるような青空をうつろに見上げると、空に漂う雲塊がパパ――すなわち魔王の顔に見えてくる。
コピルの何倍も背が高く、コピルの何百倍も重く、コピルの何億倍も恐ろしい、だけど時に優しい魔の帝王。
自身の成長を促すために、そして同時に地球のことを学ばせるために、コピルは半ば強制的に『留学』を命じられた。
父はとても強く、信頼を疑いようのない人物だが、異郷の地で孤独に包まれるとどうしても不安を覚えてしまう。
「いや、そもそも……僕が魔王になること自体、無理感ハンパないんですけど。
こんなに善良で個性的な人間たちの支配する場所で、悪いことを重ねるって……難題にも程があるですよぉ……」
父いわく、コピルも悪行を重ねればいつか現魔王のように大きく強くなれるという。
この小さな身が天を衝く巨悪に成長するまで、さて、どれだけの悪事を重ねれば良いやら。
途方も無い成長計画に、ぞくり、気の遠のくような寒気を覚えた。次いで一抹の疑義が芽生える。
――そもそも僕は本当に魔王になるべきなのだろうか?
「………逃げたいです………正直………」
■コピル > 「……うう、ダメです、ネガティブはダメですっ!!
こんな後ろ向きな考えだとまたパパに怒られるです! やめやめ!」
がぱりと跳ね起き、冷え切った頬を両手でぱんぱんと叩いて気合を入れる。
ついでとばかりに黒く細長い尻尾もハエ叩きのようにしなり、太腿をぺちぺちと打つ。自らを戒めるときのクセの動きだ。
「パパだってあそこまで偉大になるのに100年は掛かったって言ってました。
僕だって、1年……いや半年……そのくらいは頑張らないと。諦めるのはその後です」
父はコピルを信頼している。そして今のところ世継ぎはコピルひとりだけ。
十分過ぎるほどの重荷だけど、重荷は背負ってこそ男だと耳タコに言われて来た。
……すでに潰されそうな気配だが、あと1年も辛抱すれば、諦める言い訳も立つかもしれない。
もしかすれば、その頃には意思も変わって、魔王道に邁進しているかもしれないし。
若い僕には時間がある。
「……景色は堪能したですし、もう帰りましょう。
こんな時はアツアツの溶岩に浸かって身も心もリフレッシュするに限るです。
身体が芯まで冷え切ってるとお風呂も気持ちいいらしいですし、試してみるです!」
たん、とタイル張りの床を靴で鳴らしながら立ち上がる褐色少年。
ランドセルを背負い直すと、早足で塔屋へと入り、階段を駆け下りていった。
家路を急ぐあまり、何度か転びそうになったようだが……。
ご案内:「大時計塔」からコピルさんが去りました。