2022/05/07 のログ
ご案内:「学生通り」に麝香 廬山さんが現れました。
麝香 廬山 >  
夜の涼風が肌を撫でる。
ここは健全な学生街の大通り。
生憎歓楽街とは違い、お休みの時間。
この時間に通りを歩く生徒なんて、夜回りする風紀委員位か
或いは、お天道さまに顔向け出来ない人種かどちらかだろう。
夜更けでなければもう少し店も開いていただろうが
ストリートはあっちもこっちも明かりが落ちている。

「いい夜だなぁ……」

青年はにこやかに独り言を漏らす。
手元にあるペットボトルはクルクルと滑り回り
炭酸水がシュワシュワと悲鳴を上げていた。
さて、青年はどちら側でしょうか。

麝香 廬山 >  
月明かりを乱反射する炭酸水は山のように泡立っていた。
もう水と泡の区別がつかないほど中身はぐちゃぐちゃだ。
さて、蓋を開けたらどうなってしまうのやら。

「……おや」

さながら一人で歩くメインストリートは支配欲を掻き立てる。
まるで、世界の支配者とも錯覚できる優越感。
ほんのささやかな高揚感を持つのは男の子特有のそれだと思っている。
そんな優越感に水を差すのはすれ違った人影。
一見何気ない、何処を見ても普通の男子生徒。
強いて言えばまだ季節に不釣り合いなコート。

暖かくなったとはいえ夜は肌寒い。
此処はおまけに訳アリだっている。
この学園ではおかしいことはない。

一見すれば、だが。
青年の口元は、楽しげに口角を吊り上げた。

ご案内:「学生通り」に高坂 綾さんが現れました。
高坂 綾 >  
夜。久那土会の活動で遅くなって帰り道。
コートを着込んだ男子生徒を見かけて気になってしまう。

帰り道が同じルートなだけなのになんとなく気配を殺してしまう。

そして炭酸水のペットボトルを持った青年。
どういうことだろう。
どっちも怪しい………

緊張して喉が乾く。
意味もなく近くの自販機でミネラルウォーターを買ってしまう。
彼らは一体。

麝香 廬山 >  
それは決して確証のようなものじゃない。
言ってしまえばただの山勘。悪い言い方をすれば言いがかり。
けどどうしたものか。世の中、嫌な予感ほどよく当たる。
ある種の因果だし、"似た者同士"っていうのはやっぱり惹かれあうものなんだろう。
それは、そう──────……。

「不運なんだろうね」

にこりと青年は軽やかに微笑んだ。
それはすれ違った男子生徒ではなく、その先の自販機にいる女子生徒に、だ。

「やぁ、こんばんは。夜更かしはいけないなぁ。
 悪いことをすると罰が当たるよ?あ、喉乾いてるなら飲む?」

何てこともなく男は話しかけ、振りまくったペットボトルを差し出した。
当然、何食わぬ顔で。開ければ見事、炭酸水が歓迎してくれる。

高坂 綾 >  
夜中。腕に覚えがあるとはいえちょっと怖いシチュエーション。
コートの男子生徒も気になるけど。
ちょっと待って青年のほうがこっち来てるなんでなんでなんで。

硬直しているとペットボトルを差し出される。

「え、ええと………“部活”で帰りが遅くなっただけで悪いことは」

頭が混乱している。
普段なら断るペットボトルをその場で開封してしまう。
どうせシノビの嗅覚で匂いだけで毒物の判断はできる。

そう高をくくっていたのが。
良くなかった。

「……………」

スプラッシュした炭酸水を浴びた。
こ、この男………闇に滅してくれようか……………!

麝香 廬山 >  
ぷしゅっ。はじけ飛んだスプライトは見事に噴火してくれた。

「ぷっ…!あははははは!ゴメンゴメン。
 こんなに簡単に引っかかるなんて思わなくてさ」

のらりくらりと平謝り。
残念ながら悪びれは一ミリも感じない。
精々、風邪ひかないようにねー、なんて付け加える始末。
闇に滅されても仕方がないと見える。

「そっかそっか、部活帰りか。夜遅くまでお疲れ様。
 と言っても、幾ら学生街のメインストリートだからって夜遅くは危ないよ。ほぅら……」

し、と青年が人差し指を立てた矢先
その背後で夜に不釣り合いなけたたましい音が響いた。
それはちょうど、道端で止めていたラーメン屋台が"先ほど男子生徒を下敷きにしていた"。
きっとそれは、"不運にも留め具"が外れてしまった"に違いない。

「夜が暗いと危ないよね?やっぱり、不運だ。
 よかったね。もうちょっと早かったら、君がああなってたかも?」

「ん……?そうなると、寧ろ君はラッキーだったんだ。いやぁー、ゴメンゴメン」

なんとも調子のいい発言がころころと飛んでくる。
よく口は回るタイプらしい。これには勝手に一本取られた。
なんて、わざとらしく肩を竦めて降参ポーズ。

「あ、とりあえず救急車呼ぼっか。死んではないだろうけど、怪我人だし」

「ボク携帯忘れてきちゃってさぁ~」

そしてこの言い草である。

高坂 綾 >  
「うわぁ……謝ってるのに謝ってない………」
「わた殺しはきみ殺におこってい殺いとおも殺うんだけど殺」

殺気が隠しきれない。
思わず人間の可聴域を超えた言語で殺意フォーユー。

「あのね………夜遅く歩いてて一番の不幸はあなたと関わったことで」

直後、ラーメン屋台が崩れて男子生徒が被害者に。

「もないかも知れないわね………」

速攻で青褪めながら前言撤回した。
あのまま歩いていたら大怪我コースだった。
続く彼の言葉に慌てて携帯デバイスを取り出して。

「もしもし!! 緊急です、今、目の前でラーメン屋台が崩れて!!」
「はい、被害者ははっきり確認していませんが!!」
「男性が下敷きになっています!! 学生街メインストリートXX番のXで…」

近くの電柱を見ながら必死に緊急コール。
早く来て、救急車!!

「……あなた、この事態が見えていたの?」

麝香 廬山 >  
「え、怖いなぁ。ボクそんな悪いことした?」

何この隠し切れない殺意。
もう言葉の端端から"殺"って出てるし
次変なこと言ったら本当に埋められそう。
でも残念、ボクの口は後退のネジを外してあるんだなぁ。
まさしく、闇にも滅せぬ"減らず口"。

それはそれとして、彼女のおかげで程なくして夜中のストリートにサイレンが走る。
救急隊がせわしなくやってきては嵐のように去っていくだろう。
おかげで近隣住民の安眠は破られたが
まぁ人名には代えがたいと納得してくれるだろうね、多分。

「いやぁ、ありがとう。ごめんねー、携帯持てなくてさ」

なんて、のらりくらりとする青年は今の今まで笑顔を崩さない。
一転して大惨事になったかもしれないのに、飄々としている。
見えているか。そんな言葉に青年は小首を傾げた。

「ボクがそんな風に見える?"高坂 綾"ちゃん」

初対面だからこそその得体の知れなさは"答え"だ。
名乗りもしていない名前を、青年は何故か知っていた。
それでも青年は笑顔を崩すことはない。
あげた両手を月明かりに向け、月輪様のお光拝借。
赤のメッシュが乱反射し、青年はただ彼女を見ている。

「そうそう、"初めまして"。ボクは麝香 廬山(じゃこう ろざん)
気軽にロザちゃんって呼んでくれていいよ~」

高坂 綾 >  
「ちょっとぶっ殺していいかな……半殺しで済ませるから…」

この場合の半殺しというのは相手の骨を206本中103本折るということです。
多少、骨は折れるかもしれないけど。
実際に折れるのは相手のほうだ。

「携帯が持てない………?」

相手の身なりを見る。
赤のメッシュの入ったショートの髪。
スーツジャケット。身だしなみに乱れた部分はない。
その点でいったら炭酸水を浴びた私のほうが乱れている。

二級学生とは思えない。

「………!」

直後に名乗った覚えのない私の名前を口にした。
コイツ………何者。

「麝香くん……」

鋭い眼光が月下に輝く。

「私が今からする質問への答えはよく考えたほうがいい」
「何故、私の名前を知っている」

麝香 廬山 >  
「怖いなぁ、十本も満たずにショック死しちゃいそうだよ」

だがあくまで飄々とした態度を崩さない。
そのどことなく見透かした物言いに、態度。
月下鋭瞳、心の臓に突き刺さっても何処吹く風だ。

「制服に名札がついてた……って、いうのはバレバレの嘘?
 ちょっとまってねー、いい感じの嘘考えてるからさ」

二言目に飛んでくるのはよくも考えない言葉。
尋問の空気に早変わりと言えど、肌を撫でる風が止まる事はない。
んー、と顎に指を添えてわざとらしく思案して見せた。

「────やだなぁ、冗談だよ。あんまり度が過ぎると、"足元を掬われちゃうかな"?」

しかし、そんな小馬鹿にした態度もほんの数秒。
こーさんこーさん、と両手を上げ、流し目見る先は綾の"足下"。
驕れるものは足を掬われる。それは見えない、栄光の落とし穴。
何時でもそれが影から這い寄ることは"知っている"。
どうどう、とまるで静止するかのように軽く両手を突き出した。

「あ、それとも今ちょっと怒ってる?謝っとこうか?」

……まぁ、相変わらず悪びれた様子は微塵もない。

高坂 綾 >  
半殺しにするとは言っても骨を折ると宣言してもいない。
読心異能か、それも異能制御装置なしの。

確か、風紀委員の監視付きの危険な学生たちがいたはず。
だけどそれを確かめるのは相手を気絶させた後でも構わない。

「よく考えたほうがいいと」

苦無を自分の影に投げつける。
影は切り裂かれて闇を広げる。

「私、言ったよね……?」

セカンドステージ。シャドウグラフ・冥灯(アビス)。
夜に闇があればあるほど。
ここは私の世界だ。

影法・二十四絶陣。

全出力を使った金縛りの法。
この暗さ、セカンドステージの出力。

ヒト一人拘束するのになんの不足もない。

麝香 廬山 >  
夜が更ける。
そこはまるで深淵だった。
光明が差し込まない仄暗い底の底。
成る程、これが彼女の異能か。動けない。
それでも尚青年は態度を改めることはなかった。
暗がりの中でにこにこと微笑みを浮かべながら"視線(い)う"。

『善良な一般生徒相手に酷いじゃないか。
 それにこれじゃぁ、答えようにも答えれないよ』

目は、口より物を言うものだ。

高坂 綾 >  
「何を言いたいかももうわからないけど、もう答える必要はない」
「次に何を言うかは目が覚める時までゆっくり考えておけばいい」

影の蛇がゆっくりと鎌首をもたげる。

「一つ、私の名前を知っていたこと」
「二つ、あの男子生徒が事故に遭うことを予見していたこと」
「三つ、私の心を読んだこと」

「次にあなたが目覚めた時は日曜日」
「痛みを伴う前に全部詳らかにしてくれればいいから」

ごめんなさいね、と欠片も悪びれずに言って。