2019/03/24 のログ
ギルゲイオス > 「そうであるか。いやぁ不測の事態に備えていつでも準備を怠らないとは。感服するばかりであるな」

(まだ若干棘を感じるのは気のせいだろうか。
微かに頬へと冷や汗が垂れるのを感じる。正直、今手元にある禁書より余程怖い)

「……意外とお主、ノリが良いな?」

(既に本の気配は消え去っているものの。消え際のセリフにぽつりとつぶやく。なんだか別の意味で気に入ったかもしれない。
色々と自分の魔術も書き込んで、研究させてみよう。異世界の術に触れるのも、彼にとっては本望であろう。
なお、研究結果でお腹は余り膨れ無さそうだが、仕方ないね)

「んー? 王は人々を従える存在であるよ。
本一冊、魂一つ、迎え入れる事も出来なければ器が足りぬよ」

(どこか楽しげな表情を浮かべれば、既に大人しくなった本を相手に向けてヒラヒラと振る)

クローデット > 「…「ここ」に魔術書を探しに来るとは、そういうことであると認識しておりますので」

そう言って、改めて視線を男の方に向ける。整った美貌に貼り付けられているのは、アルカイックスマイル。
防御術式に限らず、魔女の服装のあちこちにはなんか戦闘の補助になりそうな術式が仕込まれていることに気づいてもいい。組み合わせの緻密さが、なんか「よくここまで相互干渉を減らしたな」
みたいなことになっている。

「…恐らく、あなたに出会うまでは自分が「そういった」存在であると疑っていなかったのでしょうね」

語り口は真面目だが、少しだけ表情と声のトーンが緩んだ。消え際のセリフと、それに対するリアクションがちょっと面白かったのかもしれない。

「………王、ですか」

どこか楽しげな表情を浮かべる男から、束の間視線を落とす。
それから、再び視線を上げて…

「…どうか、かの者に正しき王の導きのあらんことを…と、祈らせて頂きましょう。
特に神は頂かぬ、「魔女」の身ではございますけれど」

そう言って、柔らかく笑んだ。
…しかし、笑みによって細められた青い瞳の奥は、やっぱりいまいち笑っていない気がする。

ギルゲイオス > 「万全を期するというのは、大切であるからな。
――……まー詰め込みまくって、それでもかみ合ってはおるのだろうが、『重く』はないのか?」

(綺麗に納めているのは、性格ゆえに、なのだろうか。
しかし、単純な重量だけではなく、つまるところ所有する負荷も増える。剣に槍に弓に鎧に盾にと身に纏えば、動きにくくなるのと同じだ。
感心したような、不思議そうな、そんな問いかけだった)

「良い良い、変に礼儀正しいよりも個性があったほうが従えるに面白い。
魔王の配下になった事が良いと感じさせてやるのでな、愉しみにしておるがよい」

(本から特に返事はない。流石に無理やり押し込められたせいで、静かになってしまったのか。
なんだか急に愛着がわくものだから、妙なモノである)

「左様、先に何度か名乗っておったがな。
魔王ギルゲイオス、異世界の魔族を統べるモノである。以後お見知りおきを」

(幾分と、貴人じみた深い礼を一つ。顔を上げれば唇が大きく笑みを描いていた)

「魔族も余り神というモノは信じておらぬのだがな。
こちらの例に従い、あやからせてもらおうとするか。
で、その魔女殿の名前は伺ってよろしいかな?あぁ、名を伝えると縛られると考えるモノもおるからな。秘匿しているなら別に構わぬぞ」

(妙に先ほどから含みのあるような、表情を向けられている気もするのだが。さすがに真意までは測れまい。
彼女の言に同意を示せば、さてそちらは?と問いかけるも。無理なら構わない、と予めに言っておく。
古風な者は、そいういうのを気にする場合もあるだろうし)

クローデット > 「…さほど、「軽さ」を必要としておりませんので。問題ありませんわ」

くすりと、柔らかく自然な微笑をこぼした。
人の身たる「魔女」にとっては必要な「重さ」なのだろう。

無理やり押し込められた瘴気は、今はなりを潜めていた。
押し込まれて敗北を悟って観念したのか、あるいはリベンジの機会を虎視眈々と狙っているのか。
少なくとも、この場で暴れることはもうないだろう。相手が一人ではないし。

「ギルゲイオス様…魔王陛下、とお呼びした方がよろしいでしょうか?」

ことりと、どこか人形めいた動きで首を傾げた。こうしてみると、人間の、若い女性としての側面が強調される。

「…最低限、そういった状況から身を守る術も心得ておりますので。
クローデット・ルナンと申しますわ」

「こちらこそお見知りおきを、魔王陛下」と、こちらも恭しいお辞儀を返してみせる。
口元には、どこか楽しそうな微笑。

冷めた視線は、基本的にはここで禁書を探しながらやたら余裕綽々な魔王様に対する牽制の意味であったが、「祈り」を口にした時だけは違っていた。

「「力」を正しく行使して欲しい」という、真剣な願い。
………自分が、かつて間違えていたから。

ギルゲイオス > 「なるほどな。我少々肩が凝りそうで苦手なのだが。ま、それぞれ事情はあるだろう」

(過剰武装にも思えるが、あくまで自分なりの視点だ。彼女にとては、必要なものなのだろう。
コキコキと頭を左右に揺らし、肩を解すような仕草を見せた)

「そんな改まりまくった呼び方は、我の世界で腐るほど聞き飽きてるのである。
ギルゲイオスでも、いっそ略してギルでも、楽なように呼んでもらって構わぬ。そもそも、此方ではあくまでイチ住民、イチ学生であるからな」

(軽く両手を広げてれば、衣服もやはりその辺を歩いている男性と大差はないモノだ。
そうと地位に拘っている、という様子でもない)

「クローデットか、よろしく頼むのである。
ま、危険な本ではあるが、適切に所持しておれば自動的な厄災を振りまくようなモノでもあるまい。
ふむ、でそちらの用事はいいのか?」

(この本は、購入するのが決まったので、それはそれで良しだが。
どうにも、相手の買い物を中断させてしまったような気がする)

クローデット > 「ええ…それぞれ、事情はございますから」

過去も現在も、理由は多少違えど彼女の境遇が過剰武装に走らせていることは変わらない。
その辺りを押し隠して、クローデットは艶のある微笑を浮かべてみせた。

「…聞き飽きている、とは、なかなか…「興味深い」おっしゃりようですわね」

「臣下の方が聞かれたら嘆かれそうですわ」なんて言って、楽しげに笑う。これは他意はなさそうだ。

「…普段は、他の方のことはお家や一族の名前で呼ばせて頂くのですけれど。ギルゲイオス様、と呼ばせて頂きましょう」

教師ならば「先生」と呼ぶのだが、それ以外は基本的に様付けだ。
例外は、様づけをやめるよう直接要求してさん付けにさせた異邦人の青年と…色々あって互いに呼び捨てするようになった、異邦人にして異能者の青年。

「………わたしの用事…ですか」

ちょっとした事件の中ですっかり読めなくなってしまっていた、腕の中の魔術書に目をやる。

「………もう少し、吟味してみようかと思います。新しい発見がどれほど眠っているか…」

そう言って、本の中に視線を落として、細い指で軽くページを繰ってみせてから、また青年の方に視線を向けた。他意の伺えない、自然な柔らかい微笑が口元に浮かんでいる。

ギルゲイオス > 「基本的に朝から晩までそんな扱いであるよ? 王というのは気安く呼び合える友人、というのも作りにくいのでな。
元の世界に戻るまでは、気楽な名で呼んで欲しいモノである」

(何処か悪戯っぽく、くくくっと笑い肩が揺れた。
付き合いの長い臣下は崩して呼ぶ時もあるが、誰かの目があれば当然王としての扱いが一番になる。
そういう意味では、此方の世界が気楽に思える面もあるのだ)

「あぁ、一族の名前に準ずるものもあるのだがな。ホッドケーテと言うが、コレは代々の魔王が継いでいるのでな。歴代王という意図に近い。我個人を示すのであれば、ギルゲイオスの方がありがたいのである」

(様付けに関しては、彼女なりのやりかたであれば良しとしよう。
代わりに己の片手を胸元に添えれば、名前についてのアレやコレを相手へと伝えた。
此方の人間が使う『苗字』というモノより、更に個人の呼び名としての意図が薄いのだ)

「特に用事もなく、何となく来るモノも多いだろうがな。そういうタイプには、余り見えぬでな。
ほう、それが気になっている書物であるか」

(相手が本を開けば、何を呼んでいるのか覗き込もうと近づいていって。
そして、不意と視線に加えて笑みが向けられると、不思議そうな瞬きと共に首をちょこんと傾げた)

クローデット > 「…確かに、「対等」というものとは遠い存在でしょうね…「王」というものは。
そのような笑い方も、気楽に出来るものではないのかもしれませんし」

「一介の魔女たる身には、想像しきれないことですが」と留保を置きつつ、首を傾げる。

「………そのおっしゃりようですと、純然たる世襲…というわけではないのですね。
それでは、ギルゲイオス様と呼ばせて頂きましょう」

「一族の名前に準ずる」という言い方から、「一族」そのものではないのか、などと推測してそのように。

「資料の閲覧を望むだけならば、図書館の方がリスクへの対応が分かりやすいですので…ついそちらに。
…今日は、授業期間も終了したので息抜きも兼ねてですが」

本を覗き込まれれば、拒むでもなく頭の位置を動かし、男の視線の邪魔にならないようにする。
どうせこれは禁書ではないし。

魔女が眺めていたのは、錬金術の調合レシピのマイナーパターン集みたいな感じのものだった。
《大変容》以後に現れた様々な要素を取り入れた形跡が見える…比較的新しい年代の、純粋な知識の集積だ。

ギルゲイオス > 「その国内に限って言えば――国ごとに事情もあるが、基本的に頂上であるからな。統べる国に対等は基本的におらぬ。
強いて言うなら他国の王やそれに類する存在であるが……友達と言えるかは、のう?」

(なんとも若干苦い顔だ。
王というのは、己の国を第一に考えねばならない。他国は敵、とまでもいかずとも、利用するかされるかの関係がデフォだ。友好国ならその割合が下がる、程度の違いといった話でしかない)

「左様、生殖によって仔を生む場合もあるが。魔族は、魔力の淀みから生まれる方がメジャーであるな。
魔王が生まれる場所、みたいなのが城の地下にあってな。我もそこで誕生したクチである。歴代で考えると、世襲の方が少ないのではないかな?」

(例えば岩の巨人のような無機質な存在はそもそも生殖能力がない。対して、彼女の目の前にいる生物的な特徴の強い魔族であれば、仔を作る事も可能だ。とはいえ、どちらかと言えば自然発生が中心になっている訳だが。
この辺も、ヒトとの交流で変わっていくのかもしれない)

「あちらであれば、必要に整理しておるからな。
アタリというかハズレというか、こういうのに当たる可能性も低いであろうし」

(先に大人しくさせた本を、軽く持ち上げてみせた。本からちょいと不満そうな気配が漏れたのは、気のせいだろうか。
笑みに対してはコクコクと、とりあえずな感じで頷いてから。
頭越しにその上から、ほんの内容を流し見た)

「ふーむ、錬金術であるかな。
物質の絡む術は如何せん、その世界事に存在するモノが違うのでなぁ。
レシピの再現とかは、相当難しいのである
ふむ、何か作りたかったりするのかの?」

(或いは、無理といってもいい。
存在しない鉱石や薬草なんてのは、幾らでも該当してしまうのだ
そして、錬金術であれば何かしらこういうモノを作りたい、という意図が働く
そもそもが、金を作り出そうという技術である。探し物か、あるいはただの知識欲かもしれないけれど)

クローデット > 「………難しいでしょうね。人の身であれば、配偶者ならばあるいは…ということもあり得ましょうけれど」

ギルゲイオスの苦い顔の意図を察してか、こちらも苦笑い。

「…世襲ではない理由としては、闘争などの方をまず思い浮かべてしまったのですけれど…そもそも、生まれる摂理が異なっているのですね。
しかし…魔力の淀みからこれほどの存在が生まれる世界というのも、こちらの世界で生まれた者としては少々考え難いものがございますわ」

「こういう知識を得ていくのも、きっと興味深いものでしょうね」と、ほんのり楽しげに付け足す。
脳裏に、とある家族の存在を思い浮かべながら。

「禁書庫に足を踏み入れれば別ですけれど、そうでなければ危険はございませんものね。
必要に応じて向き合い方を変えられるのは気が楽ですわ」

「用がないのにリスクは冒せませんもの」と、どこかいたずらっぽくくすくすと笑う。
本からの気配は…とりあえずクローデットは黙殺を選んだ。

「作りたかったというか…元々、得意分野の一つなんです。
金や賢者の石を生み出すよりは、魔術的な性質を持った物質を生成して、「武装」や戦闘に役立てるのが主な用途だったのですが。

…特に目的を持たずに、作れるものを増やしたり新しいレシピを覚えたりするのも、面白いかと思いまして」

そんな風に背後の魔王様に語りながら、ページをパラパラとめくっていく。
…と、途中で手を止めた。そのページに載っているのは、こちらの世界では高級な材料を使って作る触媒を、異世界由来の…しかしそこまで高級ではない材料で再現するレシピだ。

ギルゲイオス > 「生憎、そういう連れ合いもおらぬのでな」

(大きな肩が、ちょこんと小さく竦められた)

「昔はな、そういう時代もあった。人間と魔族が争って、勇者と魔王が殺し殺されしておったからな。もっとも、今では平和になってお互い上手い事やっていきましょうね、って感じではあるが。
我のいた世界では、大気中に存在する魔力がもっともっと濃いのでな。淀むとなれば、此方とは桁が違うのである。魔王の生まれる座となれば、言うまでもない。
ふーむ……或いは、黄泉の穴であれば場合により、何か生まれるかも知れぬが……」

(己の纏うシャツの前端を指で摘まめば、ペロンと捲り上げてみる。
ヒトと同じように筋肉の形は見て取れるが……哺乳類にあるべく、ヘソがそこには存在していなかった。
かの場所は事情あってああなっているようだが。生まれる可能性があるとして、それが良きモノか悪しきモノかは、さて)

「用事もなしに行く場所ではないのであるな、少なくとも。普通の書棚にまぎれていたら、図書委員に文句を言わねばならぬ」

(職務怠慢である。
無視された本は、やっぱりなんだか不満そうにしていた)

「ほう、随分と随分と実用重視であるな。錬金術を研究するモノ、というよりかは、利用するモノ、といった趣であるな。
しかし物騒な話であるが、なるほど、そういう事であるか」

(例えば、過剰防衛気味な現状装備とか。なるほど、何かしらの理由、が恐らくはそこにあったのだろう。
言い方からするに、今は余り重要視はしていないようにも、思えるが)

「ふむふむ、材料さえ手に入ればいい儲けになりそうであるな。
まぁ、材料が手には入れでばであるが……転移荒野でも漁れば見つかるかな?」

(類似品で代用できるモノかな?なんて何処か興味深げな声。
王様生活しているときは気にならなかったが、一般庶民になると金の大切さが骨身にしみるのだ)

クローデット > 「………これは、失礼を申し上げました」
(そこで縮こまるのですか、「魔王」ともあろう者が)

大きな肩が竦められれば、こちらも申し訳なさそうに頭を下げる。
…内心、表面以上に驚いていたりするのだが。

「…なるほど…闘争から、普通の「政治」に移行なさった世界の魔王陛下であらせられるのですね。
桁が違う魔力の濃さも興味深いですが…こちらに戻れる保証がないと、そう見学にお訪ねも出来ませんわね」

そう言って楽しげに口元を綻ばせるが…「黄泉の穴」という言葉を聞いて、少しだけ纏う雰囲気が硬くなる。

「………良いものが生まれる予想は、出来かねますわね」

元公安委員というのもあり、その辺の事情は今でも多少は把握していた。声も、普段の柔らかさを少しだけ失う。
ヘソのない魔王の胴体については、それを視認して大きな瞬きを何度かしては見せたものの、それ以上の驚きの表現はしなかった。

「そうですわね…もっとも、図書委員ならば誰でも対処が出来る、というものでもないのでしょうが」

そう言いつつくすくす笑うあたり、どこか不敵である。
…本が不満そうな気配を漏らせば、ポシェットからほんのり神聖系の気配を漂わせてみせるだろう。何が入っているのやら。

「そうですわね…お母様が専門で探求しておられるので、わたしはどうしても後塵を拝することになりがちでしたから。
…今は、もう少し発想を広げたいと思ってはおりますけれど…あくまで「趣味」、ですわね」

こんなところまで来るのだから高度な趣味には違いないが、それを振る舞いからは匂わせずに穏やかに語る。…過剰武装で、台無しではあるが。

「そうですわね…自ら採取する能力があるのであれば、それが手軽かもしれません。
最近は、そういった材料採取やら生成やらを請け負う業者もあるようですが」

「どこまで信頼に値するかは難しいものです」と、肩をすくめ…抱えていた本を買う決心をしたのか、会計の方に足を向けた。

ギルゲイオス > 「あーいや、気にするな。
あちらでの気苦労やら何やら色々思い出してしまってな。深い意図はないのである」

(パタパタと、片手を上下に振った。
力で支配していた時代と違い、政治の時代となれば――やはり、愚痴れる相手も欲しいよなと、しみじみ思ってしまったらしい)

「当時は互いに絶滅の危機だった、という話であるからな。和解できたのは奇跡的と言えるであろう。
実はこの世界に来るのは二度目なのだが。どちらにせよ、自由に行き来できる訳ではないのでなぁ」

(腕を組んで、悩み唸る。
まぁ帰れる可能性があると分かっているだけ、前よりも気楽なのは確かなのだけど)

「……底の方は相当厄い何かとつながっているようでもあったしな。
まぁ世界の法則が違うでな、もしかしたらあり得るかもしれない、程度だが」

(そもそもの原因は、恐らく。世界を滅ぼしかねない、例えるのであれば神格に近い存在だろう。
その瘴気と魔力から生まれた魔族がどうなるかは、なんともといった感じか)

「我の配下にしてよいのならば、一斉に対処してやっても良いのだがなー?
気に入った分はごっそり無くなってしまうであろうが」

(例えば、今手にしている購入よていの禁書とか、そんな感じに。
お相手さんも随分と自身のある様子で、肩で笑みを返すのだ)

「ほほう、そういう家系であるのだな。
まー、目的は何にせよ、知識を広く深く身に着けるというのは良い事である。何かしら新たに見つけられるかもしれぬし。単純に己の力ともなるのでな。
趣味ねぇ……そういえば、これといった趣味が、無いような……」

(なるほどなと笑った後、急に真顔になる。
そもそも王様稼業が忙しくて、元の世界では趣味なんてモノはする余裕もなかったが。
此方に来ても、何かやりたい事というのが無いような――無論、帰る手段は別だが。
あれー?と、今さらながらに気づいてしまったらしい)

「業者か、冒険者とかそんな感じであるかな。便利屋は、信用できるモノと出来ぬモノの差が激しいでな。
さて、では我もコレを買って今日の所はおさらばさせてもらうかな。まだ色々と確認したい事も多いのでな」

(と言っても、会計は同じなのだけど。
懐から取り出してきた財布は、何か買う予定だったせいもあって随分と入っているが。
しかし、それは殆どが一回の支払いで消えてしまう。このまましれっと、持ち帰ってしまおうか、なんて悪も過ってしまうのだけれど。
ぐっと、呑みこんで。
彼女の後に並べば代金を払い、挨拶でもしてその場を後にするのだろう。暫くは、モヤシ生活か)

クローデット > 「…責務の多いお立場でしょうから…「対等」な存在があれば、心強くはありましょうね」

「お気遣い感謝いたしますわ」と、優しく微笑む。

「………当時の方は、双方大変に骨を折られたのでしょうね…。
重ね重ね興味深いのですけれど…自由に行き来出来ないのが、本当に残念ですわ」

口調はたおやかだが、目がかなり本気である。
異世界のあり方そのものにクローデットがここまで興味を持ったのは、初めてではないだろうか。

「……ご覧になられたのですか………」

魔王に対して、しみじみと呆れたような声を出す魔女。
「ご無事で何よりでしたというか…魔王陛下にこのような心配をするのも無礼に当たるかもしれませんが」と、どちらかといえばひとりごちるような声で。

「知識は独占するものではございませんわ」

冗談めいて笑う相手に、こちらもくすくすとおかしげに返した。

「ええ…専門は人によって違うのですけれど、母方には錬金術や魔法薬の専門家が多いんです。
わたしは…技術を俯瞰する立場で、勉強をしようかと思っているところなのですけれど」

どこか意味ありげに、視線を落とした。…数秒の間ではあったが。

「あら、魔術書の蒐集などはご趣味ではありませんの?」

魔王様の真顔に、ことりと首を傾げた。
自分が趣味と実益を兼ねた性格をしているので、相手もそうなのだとばかり思っていたらしい。

「ええ…まだ「諦めていない」様子ですので、お気をつけを。
…ギルゲイオス様であれば、杞憂かとは存じますが:

そんな言葉をかけて、男より先に会計をすませる。禁書ではないのでそこまで高価ではなかった。
すれ違いざま、魔王様に軽く会釈をして、魔女は古書店を後にしたのだった。

ご案内:「古書店街「瀛洲」」からクローデットさんが去りました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」からギルゲイオスさんが去りました。