2019/03/24 のログ
ご案内:「常世公園」に真浄在処さんが現れました。
真浄在処 > 冬の寒さも、夜はまだまだ冷え込む時はあれど昼間は大分マシになってきた気がする。
常世公園の一角にあるベンチにて、一人近くの自販機で買った缶コーヒーを片手に寛ぐ青年が一人。

「いや~今日は暖かくて何よりだねぇ、と」

軽く伸びをしてから缶コーヒーを口元に運ぶ。一見すると優男といった感じだ。
ただ、その燃えるような赤毛と赤い瞳が目立つと言えば目立つかもしれない。

ご案内:「常世公園」に真浄在処さんが現れました。
真浄在処 > そういえば、最近はバイクで島巡りもしていないなぁ、とか呑気に思う。
そろそろやるかなぁ、と思いつつ一人で気楽に巡るのもいいが…。

「まーー後ろに美女とか美少女が居れば最高なんだけどねぇ~…。」

アハハ、と緩い笑みと独り言を漏らしつつ、コーヒーをぐびりとまた一口。
まぁ、唐突に思いついただけだし今すぐにバイクで繰り出す訳でもなし。

(”アイツ”はアイツで、どうせ物騒なお仕事に精を出してるんだろうし)

それは別に勝手だが…”表”である自分に迷惑が掛からない範囲にして欲しいものだ。
なんて、思うのは今更だよなぁと思いつつ、半分ほど中身が減った缶コーヒーを一度己の隣に置いて。

ご案内:「常世公園」に真浄在処さんが現れました。
真浄在処 > 「はぁー最近は出会いも無いし、ここらで新しい出会いとかあったり?無かったり?」

独り言が多いのは癖みたいなものだ。公園を見渡せば昼下がりの休日とあって他の人の姿も見える。
ちなみに、青年の周りは誰も居ない・・・まぁ、赤毛赤目が目立つし見た目がナンパ男だからしょうがない。

(髪の毛染めたりカラコンとかも面倒だしねぇ…あ、バイクそういえばメンテもしとかないと)

再び缶コーヒーを手に取りつつ、ぐびりとまた一口飲んでほぅ、と一息。

真浄在処 > 「さて。そろそろ行きますかねぇ」

公園のあちこちで日常を謳歌する人達を一瞥してから、近くの缶専用のゴミ箱に空き缶をダストシュート。
見事にビシッと決めつつ欠伸を一度零しながらゆっくりと公園を後にする。

ご案内:「常世公園」から真浄在処さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にギルゲイオスさんが現れました。
ギルゲイオス >  
(お昼も過ぎた頃合いに)

「ふぅ……」

(ベンチにぼけーっと座りながら、ペットボトル入りの茶をしばく魔王様。
なんだか視線がとーくを見ていて。お年寄りチックな雰囲気が若干と滲みだしているのは気のせいだろうか)

「いやぁ、温かくなってきたのであるな」

(季節も本格的に、春がやってくる頃合いだろうか。
そんな魔王様の懐事情はとても寒々しい。ちょっと前に散財しちゃったからね。
朝昼モヤシで、前日の夜もモヤシだった。
太陽光に含まれる微量な魔力を吸収すれば少しはましかなという、苦肉の策。
魔王様植物説)

ギルゲイオス > 「給料日までもつか……いや、もたせるしかないのであるが」

(家賃が殆どかからない寮暮らしなのが、せめてもの救いだろうか。
茶をまた一口、ちびりと含んだ辺りで)

「ぐっ……」

(腹がぎゅるぅっと情けない声をあげた。
いっそ黄泉の穴にでもいって魔力供給してくるべきか。
食事は本来補助的なモノなのだが、やはりこちらだと色々に不都合が出易いようだ)

ご案内:「常世公園」にアガサさんが現れました。
アガサ > もう間もなく新学年。そろそろと島外に出ていた人達も戻ってきて島に活気が満ちようと云うもので常世公園内も何かと賑やかしい。
春が賑わうのにはきちんと術理が存在するのだと、陰陽術理Ⅰで習った事は記憶に新しく、私は歩きながら視線を彼方此方に巡らせていた。
右に犬の散歩をする老夫婦を見て
左に駆け回る、きっと自分より幼い子供達を見て
再び右に移動販売のクレープ屋の車を見て
再び左に──項垂れ気味の誰かを視た。

「──こんにちは!何だか具合が悪そうだけど、大丈夫ですか?」

ベンチに腰掛けた男性。
少し離れた位置からでも大柄な体躯は見て取れて、近づくと白灰色の髪の合間に尖った耳が覗くのが解った。
更に近づくと、額に瞼のようなものがあるのが判り解って、嗚呼異邦人さんなんだなと得心が行く。
きっと、何か困りごとでもあったに違いない。だから気軽に、声でもかけてみようかな!

ギルゲイオス > 「いっそ、今から売り払って……」

(スッと、視線が自分の背面に向けられる。とはいえ直接見る事は出来ないが。
腰回り、ジャケットの下。前日に買った禁書がベルトでくくりつけてあった。
しかし、こんなすぐに売ってしまうなら、そもそも買うなという話だ。下手をすると損が出る。
本がカタカタと揺れる不思議現象を今経験したが、そっと黙殺しておく)

「こんにちは、元気であるなー」

(そして掛けられた声に、のっそりと顔を向ければ。とても眩しいモノを見たように双眸を細めた。その元気さが眩しい)

「具合が悪いと言うか………腹が減ったのである。
食事か、魔力供給でも良いのだがな。ま、なんとかするのであるよ」

(やや表情が弱いものの、口元が笑みを描いた。渾身のニッコリ
流石に、この少女に頼るのも、忍びない)

アガサ > 「んっふっふ、春だからってのもありますけど、何しろテスト明けからバレンタインと来て、
その流れでホワイトデーやら春休みやらと何かと浮き立つ事も多かった所為ですね!
あんまり浮かれると地に足を着かずで宜しくないって、判っていてもついつい」

自然と口端が緩むくらいに上機嫌さを隠しもしない私だけれど、
反面、うっそりと顔を上げる彼の顔は浮かないもので、地に脚どころか五体投地しているようなもの。
学生さんだとしたらテストの成績が芳しくなかったのだろうか。なんて心裡で首を傾げた所に理由が開陳されて変な声が出た。

「……いやいや、いやいやいや。それは十分具合が悪いですって。とはいえ私はてーっきり貴方が学生さんで
期末テストが踏んだり蹴ったりで進級出来なくてー!とかかと思ってしまっていたのでそれよりは大分マシ!ですけれど」

紅玉のような瞳を憂い気にした笑みは、体躯が立派なだけにより深刻そうに見える。
私は一先ず、ポケットからアーモンド入りのトフィー(※キャラメルのようなもの)を数個取り出して彼の手に握らせよう。

「でも魔力供給でお腹が満ちるって初めて聞きました。美味しいんです?あ、これ取り合えずどうぞ!」

ギルゲイオス > 「元気溌剌としているのは、良い事であると思うぞ。そういう感情は他人にも伝わるのでな。お主は周囲を明るくする才能があるのかも知れぬ。はは、だが浮いておれば石につまづく事もないぞ?
バレンタイン、ホワイトデー……男女でお菓子をやり取りする行事、であったかな? 意中の相手と上手くいったのかの?」

(釣られたように、表情が先にくらべて幾分柔らかくなる。巻き込まれた感じだが、気分としては良い。
なんだか女の子らしい話題に、少々チャチャを入れるような返答をしつつ。肩が小さくと揺れるのだった)

「学生、ではあるのだがな。今回来た時はテスト後であったので、その辺は関係ないのであるよ。
勉強は苦手という訳でもないのでな、流石に落ちる事はないと思うのであるが――うん?」

(差し出された、お菓子のようなモノ。其方にと相手に、視線を交互にやる。
恐らくは、純粋な善意から差し出されたモノだろう。我慢する姿を見せて余計に心配させるより、素直に受け取った方が彼女にとっても快いのではないかと、思う。
しかし、魔王としての威厳はどうなる! 少女に施しを受ける魔王とはッ)

「すまぬ、頂くのである」

(プライドは遠く彼方に投げ捨てられた。至極あっさりと。
しっかりと受け止めれば、一つを口に運び。コロコロと転がす)

「んー、む。甘くて旨いのであるな、甘いのは幸せの味である。
あぁ、これと言って食べているという感触も、味もせぬよ。まぁ質が悪いと身体を悪くする事もあるが。
身体が満たされ、状態が維持されるって感覚が近いかのう?」

(唾液に混ざり舌を刺激し、胃へと流れていく感覚を存分に味わう。
十分な魔力を補給できている状態を例えれば、腹が減る訳でもなく満たされる訳でもなく。ちょうどいい感じが続く、そんな風だろう)

アガサ > 「む、いきなり褒められてしまいました。でも、浮き過ぎるのはダメですよう。だって空を飛ぶ物は皆いつか落ちるものですから。
それは躓くよりも大変な墜落です。そしてバレンタインとホワイトデーは特に何事もなかったんですよねー」

よいしょ、と勝手に隣に座り込み、褒められた事には言葉が揺れて、浮き上がる事には言葉が沈む。
行事については、友人間で上げたり貰ったりを和やかにした程度、と簡素に述べた所で彼が学生だと知った。

「あ、学生さんだったんですね。何年なんですか?私は一年で、今度二年になるアガサ・ナイトって言います」

彼の何処となく奇妙な喋り口調は年齢を感じさせにくい。
見た目こそ若いけれど、御話に云うエルフを思わせる長耳は、私に学年も上なのかなって思わせるには十分が過ぎている。
反面、トフィーを頬張って相好を崩す様は、なんとなーく少年っぽいなあ。なんて口には出さずとも見つめながら思う。

「そして魔力は無味無臭……それ絶対面白くないと思うんですけど」

代わりに口から出たのは魔力の味についてのこと。
想起するのは味も香り何も無い羊羹のようなもの。身体は良くても精神に良くなさそうに思われて眉をついつい顰めちゃう。

ギルゲイオス > 「おや、それは耳に痛い話であるな。素早く移動できたり障害を無視できるので便利なのであるが、肝に銘じておこう。
そっかー、何も無かったであるか。ま、お主であれば受け取り拒否する男なんておるまいて。良い相手を探すがよい」

(隣にちょこんと座ってくるのを、特にコレといって気にする様子もなく。徐々に小さくなってゆく甘い塊を楽しみながら、視線を相手へと向けて。
口調も、口の端を上げる笑みも、なんだか少し普段通りに戻ってきた)

「一年であるよ。期末後の滑り込みであったのでな、もう一度一年である。
アガサか、つまり先輩というやつであるな。ヨロシク頼むのである。
ついでに自己紹介を。我が名はギルゲイオス、異世界から来た魔王である」

(此方の流儀に合わせて、ちょこんと頭を下げる仕草、そののちに。
次は軽く胸を張ってふんぞり返ると、そこへ掌を当て。何時も通りな感じの自己紹介を行う。
腹ペコで鬱々としていた人物に話しかけたら、魔王とのエンカウント宣言。信じる要素が欠片もあるか怪しい所だ。
――口調は王様やってて板についてしまったもので、内面的にはほとんど外見相応か)

「そもそも食べるというよりも、自然と吸収する、といった感じであるかな。魔族にとっては、それが普通であったのだよ。
あちらで食事は補助や嗜好品の部類であるかな。
もっとも、我もこの世界で食べ物の魅力に憑かれてしまったが……」

(とはいえ、彼女の言う事もコチラの世界に来れば理解は出来る。
甘いお菓子で顔を綻ばせているのが、そのいい例だ。
実際に、ヒトとの交流で食事を好むものも増えてきている、らしい)

アガサ > 「む、そんな事を言うって事は空を飛んだり出来るって事ですね!いいなあ。魔術かな、異能かな。
そのどちらにしても、こんなにも良い陽気に飛べたら──って戒めた後に羨ましがったら意味ないですね、うん。
お相手についてはー……そうですね。いつか素敵な人を!とかはやっぱり」

羨ましがったり、落ち着いたり、視線を左右に泳いでいったりするけれど、
そんな瞳が獲物を見つけた鮫の如く彼──ギルゲイオス。もとい、後輩らしいギル君へと向く!

「あ、なぁんだ先輩かと思ったら後輩なんだ。そっかそっか、私が先輩かあ!
うんうん、なんだかちょっと良い響きだぞ。宜しくねギル君──って魔王!?」

向いて、また綺麗にターンしていった。但し言葉遣いは先輩じゃないって解ったなら砂糖菓子のように崩れちゃう。
魔王。魔の王。物語では大体主人公の敵役な奴。
すこうし前に読んだサイユウキには牛魔王なんてのが出ていたのが記憶に新しい。

「異邦人なんだろうなあって思ったけど魔族、それも魔王って言われるとは思わなかった……。
やっぱり、その、あれなのかい。君は悪い事をして勇者的な感じの人にこっちに追い出されたとか?
それとも此方の食品が君の世界に流れ着いて、ハマってしまって此方に来てしまったとか?」

ギル君の世界の魔族。というものはどうやらあんまり食事に重きを置かないらしい事が知れて
そして彼が重きを置いているらしい事が知れる。
なので、よかったらアレ、買いに行く?と彼の袖を引いて、クレープの移動販売の車を指差そう。
白とピンクのビビッドな配色の車が割合近くに止まっていて、時折甘い香りが漂ってくる。

ギルゲイオス > 「魔術であるな。広々とした空を自由に飛び回るのは、中々心地が良いぞ。
お菓子を貰った礼もあるのでな。なんなら、帰りは空の散歩にお連れしようか? ――ふふん、たまには戒めを破るのも蜜の味であるよ」

(ひょいっと視線を空へと向ければ、クルクルと指をまわす。噴射で無理やり飛ぶのではなく、重力制御の類なので乗り心地は恐らく悪くはないだろう。
やや、魔王めいた、なんだか誘惑するような笑みも浮かんでいたが。唐突に食いついて来れば、目を一瞬丸くして)

「そうそう、我が後輩でお主が先輩である。なんなら、アガサ先輩とでも呼ぼうか?
左様。魔族の王、つまり魔王である。ふむ早速略称をつかいこなしておるな、適応力が高いのである」

(此方から言う前に、ギル君という呼び方を見つけ出しておる。ま、ギルで構わぬと自己紹介するときもあるので、全く問題はない。
少々と浮かれ気味な雰囲気を察すれば、『アガサ先輩』なんて喜びそうな言い方をしてみた)

「普通はそうであろうな、我も別の魔王に会った試しは無いのである。
昔は人と魔族が、勇者と魔王が殺し殺されしていた時期もあったのだがな。なんやかんやあって今は平和であるよ。
…………それは、うん。魔族の食事は質素であるからな。流れ着こうものなら、殺到してもおかしくはないが。
落ちてきたのであるよ、文字通り、不意打ちで。しかも二度」

(此方の人間としては、やはりそう言う印象になるのだろう。なんどか説明した記憶もあり、うんうんと頷きつつ自分の世界事情を軽くと説明し。
しかして、続いた言葉には若干真顔になった。やはり、技術と文化の差だろうか。料理の味は、ある意味毒と言える。幸せにする毒だ。
そして、一拍おいたあと。空をまた指さして。次にまっすぐ線を引くと、地面を指さした。掛け値なしに文字通り、おっこちてきた)

「んむ……?あぁ…気にはなるが、懐が……いや、ここでケチケチするのも良くないのであるな。買いにゆくか」

(迷う表情がはっきりと見えたものの。次には、意思をはっきりと、妙に力強く。
クレープ屋台を直視したまま、すっくと立ち上がる)

アガサ > 今の所判っているギル君情報
1:魔術で空が飛べる
2:食いしん坊
3:上から下に2回落ちて来た。

「───えーと。それってつまり、空を飛ぶのって凄い危ないんじゃない?
ギル君の世界が平和なのは良い事だけど、どういう原理で飛んでいるんだいそれ」

良くは判らないし、解らないけどギル君の世界では不意打ちで異世界に落ちるらしい。
一体どんな"門"の開き方なんだろうかと、場面を想像しようとしても何も浮かばない。
浮かばないから落ちもせず、1+3な話題達はくるくると絡まり合って一つになって私の口から零れて行った。

「あと、そもそも街中でみだりに魔術を使うと怒られてしまうよ。
一応緊急避難とかの名目があるなら別だけれど……あ、いや決して空を飛ぶのが怖いとかじゃあないよ?
私だって魔術の授業はとってるもの。そういう技術に興味がないわけじゃないんだ」

アガサ先輩。なんて呼ばれたから先輩らしく戒めるような言葉を。
なんてつもりはさらさらに無いけれど、ギル君が風紀委員に目をつけられてしまうのは気の毒に思ってついと口に出る。
立ち上がる彼は、それはそれは背が高くてよく目立って、異邦人を快く思わない輩からすれば悪目立ちだってしそうなんだもの。

「だから飛ぶのはまた今度。そうだなあ……ああ、でも今はクレープのメニューを考える方が先かな。
ふふん、先輩のお財布を舐めたら行けないよ。お近づきの印に奢ったりとかしちゃうんだから!」

一瞬、渋ったような顔をしたのを見逃しはしない。
私はアガサ先輩なのだから、得意満面な様子を隠しもしないで彼の肩を叩こうとして
手が届き辛いので腰辺りをぱしんと叩いて促すんだ。

「おや?」

その際、手が何か硬いものに触れたものだから、なんだいこれ。と手が腰に括りつけられたものを不躾に撫でたりもした。

ギルゲイオス > 「あぁ墜ちたといっても、飛行中の話ではなく。
一度目は定例の儀式中に、二度目は玉座に座ってる状態で不意打ちであるな。
此方に通じる出口が上空に開いてしまってな。世界が変わったのに咄嗟の対応が出来ず、ズドンであるよ。
……死ぬほど痛かった」

(最後に付け加えた言葉に、ものすごく感情が籠っていたのは、きっと気のせいではない。
アレだ、足元にいきなり落とし穴が開いたあげく、見知らぬ空に放り出されるとでも言えば恐怖は伝わり易いのか。
なんだか、門に悪意を感じてしまう)

「あくまで移動手段であるから、みだりと言う程のモノでもないとは思うのだがなぁ。
今まで注意された事も、特には……ふむ。ではアガサ先輩がそう言うので、止めておくのである。先輩の言う事は絶対なのである。
…………なので、目立たぬ夜に出会った時にしておこうか」

(頭がかっくんかっくんと左右に傾く。これといった記憶はないが、安全飛行であったしことさらに注意する程のモノでもなかった、という事なのだろうか。その辺りについては、またと確認しておこうと、心に決めて。
先輩が言うし仕方ないのであると納得したような素振りを、見せた直後。悪戯気味にウインクして、そんなセリフを口にした)

「いやぁ、いきなり初対面で奢って貰うと言うのも、であるが。
……では、先輩の広い心に感謝しつつ、奢ってもらうとするかの。余りメニューに詳しくはないのでな、お勧めを教えてもらえるとありがたいのだが……おぅふっ!」

(威風というのは、魔王にとっては重要な要素ではある。人型魔族の範疇としては……そう、悪くはないだろう。
変にこそこそしていれば目をつけられやすいだろうが、堂々としていれば――なんて、楽観思考である。
立ち上った辺りでぱしーんといかれたので、軽く腰から前につんのめりつつ。
……撫でられた本が、まるで抗議でもするかの様にカタカタと震えた。
支配下にあるため禍々しさは殆ど感じられないだろうが、魔術魔法、それらを知っているモノなら、禁書の部類だと衣服越しでも分かるだろう。しかも割かし強烈な部類であると)

アガサ > 「なーんだ飛行中じゃないんだ。それならよ──くないよね!?むしろよく痛いで済んだなあ……流石魔王……」

頭上から降り注ぐ切実な声。
あ、魔王でも落ちたらやっぱり痛いんだ。という感想と
痛いで済むなんて流石だなあ。という感想。
私の口から零れ出たのは無難な方で、この知り合ったばかりの後輩の、知らない苦労を労っておこうと思う。
具体的にはクレープ代と云う形で。

「だーめ。壁に耳あり障子に目ありといってね。結構うるさ型なのいるんだから。
だから……うんうん、夜だね、夜。判ってるじゃないかギル君」

歩きながら移動販売車の前に着き、店先に置かれたメニュー看板を視ながらのこと。
私達は互いにウィンクをばちこんと決めてささやかな悪巧み企てる。
此処に勇者は無く、居るのはクレープ屋のお姉さんばかりなのだから、何の問題もないんだ。

「……で、メニューなんだけど。やっぱり春らしいものを抑えていきたいとこだよね。
ほら、イチゴに桃とか。桃は実を付けるのが夏だから缶詰だけど、お花は今時分だから何となく良い感じ──あれ?」

ただ、ギル君が頓狂な声を上げて転びそうになると、お姉さんはすこうし驚いた様子を見せもする。
私は、そう驚かずに違和感に首を傾げる事となる。誰かが見るなら、きっとメニューに悩んでいる風にしか視得ない。

「…………ねえギル君。なんだかちょっと、いやーな雰囲気のを腰のあたりから感じたんだけど。
君、大丈夫かい。空を飛ぶよりも突拍子の無いもの、持ってない?」

彼の袖を引き、背伸びをし、頭をちょっと下げるように促してから長い耳に小声でささやく。
私には「あまりよくないもの」としか判らないけれど、私にも解るということは、つまりはそういうこと。
そして声音はギル君を疑うと云うよりも、ギル君を案じるもの。だって私は先輩なんだから。