2019/06/12 のログ
ご案内:「常世公園」にアガサさんが現れました。
アガサ > 2年生になってから色々な事があった。
あんまり色々な事があったものだからついつい頭から抜けかかっていた出来事の端を、鮫が獲物に噛み付くが如く引っ掴んで引き寄せたのがつい先日の事。

「……いやいや、まだ時間はあるし。普通にすれば大丈夫大丈夫……」

その名も前期期末試験。
ここで成績に不味いものが残ると、楽しい筈の夏休みは一転地獄へと変わる恐ろしいイベントだ。
この名に震え上がらない常世学園の生徒は多分、きっと居ない。
私は一年生の頃は可も無く不可も無くで通っていたけれど、2年生になってから、特に此処最近の自学習は特定の項目に偏っていたものだから、
気が付けば他があまり宜しく無いような気が吝かでも無い。そんな灰色になっている。

「とはいえ急いては事を仕損じるとも言うのだし、自分のペースを崩したら行けないし……ままならないものだなあ」

常世公園の広場に設えられたベンチの上で青空を見上げる。
こうした過ごしやすい天気も、梅雨という季節からすれば「ままならないもの」だ。
世の中の全ては蹉跌を免れる事は出来ない。そう世界を判った気にでもならなければ、
小テストのあまり宜しく無い点数というものは、私の頭にいつまでもへばりついている気がしてならなかった。

アガサ > 『にゃあ』

そんな風に悩める少女Aと化していると猫の声がした。子猫の声だ。
私が俯き加減になっていた顔を上げると、三毛の子猫がベンチの向かい、遊歩道を隔てた芝生の上に御行儀よく座っていた。

「おや、おやおやおや子猫がこんな所に……んん~どうしたのかな君。ママとパパは居ないのかい?」

ベンチから立ち上がり、近づいても子猫が逃げる素振りは無く、私が声をかけるともう一度小さく『にゃあ』と鳴いた。
そうして芝生の上に正座する私の膝上に覚束ない足取りで上がってくる。仕舞い切れない爪がちくちくとして随分とこそばゆい。

「人に慣れているなあ。お腹が減っているのかな?……いやでも猫はチョコレートとか飴は食べないよね……ふーむ」

猫の言葉は生憎解らない。
魔術世界に於いては使い魔として親しみ深く、とある魔術系譜によれば動物との会話を可能にする術もあるとは言うけれど、
生憎と私はそういう系統には素養が無い。だから困ったように眉を寄せ、指先で気ままな珍客をあやして遊ぶのが精々というもの。

『みゃあ』

そんな風にしていると、また別の猫の声がした。今度も子猫の声だ。
顔を向けるとベンチの傍の茂みから黒い子猫が出てくる所で──

『にゃお』『みゃお』『ぎゃお』『おあーお』『ふぎゃあご』

「何だか多くないかな!?」

──訂正、子猫達が出てくる所だった。

ご案内:「常世公園」に鳩森 速都子さんが現れました。
鳩森 速都子 > (梅雨にはまだ入っていないが今日の天候は比較的安定して晴れているような気がする。故に引きこもってテスト勉強をする事も無く外へ自然と足が向き、歩いた先が常世公園だった。トランクケースを持った男は公園でアテもなくぶらついていたのだが、視線に留まったのはベンチの傍らの茂みから大量の子猫達にせっつかれてる様子の少女だった。)

にゃあ、なんてね?随分人気者だね。

(男は足を早める訳でもなく彼女の近くへと歩いていくと声を掛けようとして。同じ学年だっただろうか、顔は見たことがある気がするが名前は思い浮かばなかった。でも猫がわんさか集まってる様を見ると何処か微笑ましく感じたのと同時に興味が湧いたから行動に移した次第だ。)

アガサ > 三毛猫
白猫
黒い猫
茶トラ
錆び猫
白黒ぶち
他etc.etc
一体何処にこれだけの猫が居たのか。はたまた最初の子猫が鮟鱇の提灯のように犠牲者を待ち構える罠であったのか。
気が付けば私の周りには様々な柄の子猫が勢ぞろいしていた。

「うーん最近動物に縁があるなあ。この間は蛙を取ったし、その次は鮫映画だし……いやあれは動物枠に入れていいのかな……」

脳裏に浮かぶのはクレープ屋さんにて口角にクリームを付けたまま、早口で映画について語る親友の姿だった。

「いや、うん、一先ず忘れよう……うーん、実は人語を解する猫ちゃんとか居たりしないかな」

膝上に乗る三毛猫を持ち上げてみる。ごく普通の子猫だ。お腹に鼻先をつけて深呼吸すると子猫の匂いがしてついつい唇が緩んじゃう。
そうして三毛猫を下ろして次は黒い子猫を持ち上げてみる。三毛に比べるともそもそと動く元気のよい男の子だ。声も元気がある感じ。

「なんでも聞いた話だと人の言葉をしゃべる柴犬さんが居たとか居ないとか言うじゃないか。怒らないから申し出てごらん?」

全てお見通しだぞ。なんて芝居がかった声を上げていると後ろから声がした。

「へぇっ!?……な、なぁんだ人かあ。ああ、えっと御免御免、変な声あげちゃって……」

まさか本当にしゃべる猫が!?と瞠目して振り向くけれどそこに居たのは猫じゃあ無くて男の子。
わたあめみたいなプラチナブロンドの髪が陽光を受けて煌めいて見え、隠れた目元が表情を窺わせない。そんな不思議な印象の子。

「何だか集まってきちゃって……こんな事私も初めてなんだ。えっとー……多分、同学年、だよね?何処かで視た事があるような……
夢の中かな?なんて言うとロマンチックだけど、多分違うよね。私はアガサ・ナイト。2年生さ!」

顎先に指を添えて記憶を探るようにもし、さりとて思い出すには至らずに困ったように破顔して
最終的にはお近づきの印にどうぞ、と黒い子猫を彼に差し出してみた。黒い子猫はやっぱり『みゃあ』と鳴いた。

鳩森 速都子 > (カエルを取ったという話を聞いた気がしたが、ここらへんに田んぼでもあるのだろうかとか的外れな思考が過った。眼の前に見える猫達は男が知ってる限りの大体のキャラ…もとい柄のパターンが居る気がする。何処からこんなに集まってきたんだろうと思えというかまるで大名行列のようにも見えてやっぱり微笑ましい、と男は思うと表情を少しだけ緩ませた。元気そうな黒猫を持ち上げながら話しかける様子はまるで会話ができるように…いや成立はしていなさそうだ。一瞬の期待を持った視線を向けられた後に笑みは少しだけ困ったような、そんな雰囲気を含んで)

いやいや、ごめんね?猫ちゃんじゃなくて。ボクもさすがに言葉を話す猫とは会った事が無い事を申し出ておくよ。

(彼女の見通しは少し甘かったかもしれない。さすがに猫の姿のまま人の言葉を話す存在は居るのだろうけどまだ見たことが無い事を伝えながら続く言葉を聞いただろう。同学年だよね、という確認の問いかけに対しては頷いて返し、夢の中かな?って聞かれると聞こえない程度にだが"えっ"と動揺を含んだ声を漏らしただろう。)

ボクも見覚えがあるから多分学校の中で会った事があると思うんだ。まだ…君の夢にお邪魔した事は無いと思うし。ボクは鳩森 速都子。ボクも二年生だよ、宜しくねアガサさん。

(名前を彼女に告げ簡単な自己紹介を終えた後、差し出された黒猫を一度手に持ったトランクケースを置いてから受け取ろうとするだろう。少しだけ緊張を含んだ視線を黒猫の方に向けるが鳴き声を聞いた時にまた口元を緩めてから何かを思い出したように言葉を続けて。)

フフッ…元気だし可愛らしいね。でも子猫ばっかりだけど親御さんは近くに居ないのかな?

(なんて黒猫を抱えながら今度は辺りを探すように一度見渡しながら言葉を投げかけて。)

アガサ > 猫を差し出すと彼は少し、困惑、または動揺するような様子を見せた。
もしかしたら実は猫が苦手だったのかも、そう一瞬思うも彼──鳩森速都子と名乗る同級生は黒い子猫を優しく受け取ってくれた。

「鳩森 速都子……んー、やっぱり初耳かも。でもこの学園じゃあ同じ学年でも良くある事さ。
なんといっても学園島、生徒の数は通常の学び舎の比じゃないんだもの。……それにしても速都子君は面白い事を言うなあ。
夢の中にお邪魔するだなんて、中々無い発想じゃないか。そして喋る猫は見たことが無い…と、ふむふむ」

勿論常世島には獣頭人身的な異邦人の人達がいる。彼ら彼女らの中には当然猫科の人もいるけれど、
そういった人達は喋る猫ではないのだから一先ず除外と言えるもの。
私は速都子君と和やかに自己紹介をし合い、夢の中発現を拾う彼を面白がって見つめていた。

「そうそう子猫ばっかりでママもパパも居ないみたいなんだ。でも……どうみても8匹以上いるんだよね。
一体どうなっているのやら……」

子猫達は速都子君にも臆することなく近寄って行き、立ったままの彼の足を遠慮なく登り始めたり、
芝生の上に置かれたトランクケースの上で丸くなり始めたりしている。
そういった微笑ましい光景の中で、私がはてと首を傾げるのはそのトランクケースが不思議に思うから。

「ねえねえ速都子君。どうして公園にそんなものを持ってきているんだい。これから何処かにお出かけだったりするのかな」

正座姿勢からアヒル座りに足を崩し、速都子君を見上げて訊ねてみようと思ったから、そうする。
子猫達も好奇心をくすぐられたのか、何匹かがにゃあにゃあと声を重ねていた。

鳩森 速都子 > ボクの方もはじめてだから…多分お互いはじめましてかな?確かに凄い人数だし学年が一緒だって言っても専攻が違ったりすると会う事も少なかったりするからね。……そうかな?まぁもしお邪魔したらアガサさんがしんどい思いをするから、行かないに越した事は無いよ。
人の言葉をしゃべる猫は居ても不思議じゃないとは思うけどね、魔法や異邦人が居るくらいなんだし。

(会った事があってもこれだけ広いと確かにお互い知らなくても無理は無いだろうと同意の言葉を返した。中々無い発想、という言葉を聞いた時は隠す事も無く意外そうな口元を浮かべただろう。散々感じてきた事ではあるが自分が異邦人である事を改めて実感として感じながら猫の方に一度視線を落として)

ふーん…餌でも探しに行ってるのかそれとも放棄されちゃったのか……。でも健康状態もそこまで悪くなさそうだし前者の方だと良いなぁ。

(希望を含んだ言葉を呟きながら抱えてる黒猫を片手で撫でた。気がついたら足を登ったり置いたトランクケースで丸くなったりとやりたい放題だ。その様子を見て男は僅かに苦味を含んだ笑みを浮かべ、続いて投げられた問いかけに対しては少しだけ時間が空いただろう。)

ううん、あんまり遠くに置いておきたくない大切な物なんだ。思い出が詰まってるからね。

(言葉を選ぶような言葉を足を崩して座っている彼女へと返しただろう。前髪の合間から見える暗めの赤い瞳は興味深そうに彼女と、せっくように鳴く猫達の方を交互に見ており、また少し合間があいてから言葉を続けようとして。)

とは言っても他の人には価値の無い物だと思うけど、ボクは宝物って呼んでる。

アガサ > 「まるで本当に人の夢に入れるような事を言うね速都子君。………もしかしてそういう?」

夢の中で会ったかな?と言ったのは冗談のつもりだった。
単に何となく読んだ恋愛小説の一節。貴婦人に声をかける優男の口説き文句を茶化してみせただけのこと。
でもそれが偶々に可能とする人物に当たっていたとするのなら、これも一つの「ままならない」ことで、
私は彼にそういう異能なの?とつい、訊ねもしてしまうんだ。

「大切な物。なぁるほどそれなら納得だとも。私にも宝物はあるよ、速都子君のみたいに大きなものじゃあないけれど、
いつもずうっと持っているからね。大事にされているなら宝物の方も嬉しいんじゃないかな?ううん、嬉しい筈だよ」

もしも彼が夢を見る人ならば、その宝物も素敵なものに違いない。
私は猫のように勝手きままにそう考えて破顔するのだけど、その時。

『んぎゃあご』

ドスの効いた猫の声がした。
は、と顔を向けると茂みの中から白い猫が此方を見ているのが解った。
顔に大きな傷があって目に力のある、所謂ボス猫じみた風格を漂わせる白猫。
もしや子猫達を虐めに来たのでは──そう危惧する私を他所に、声に応じて子猫達はわらわらと白猫へと近寄って行く。
白猫も、寄って来た子猫達を舐めたり甲斐甲斐しく面倒を見ていて、なんだ親猫か。と私は安堵の溜息を──

「うわ長っ!?」

──吐きかかって、止まる。
だって茂みから出てきた白猫は、足が8本あって胴体が凄く長いんだもの。
悠然と横たわる様は何処か神々しくもあり、お乳を貰いに殺到する子猫達を見つめる眼差しは優しい。

「ぅゎー……異世界の猫かなあ。初めて見た。足が一杯あってながーい猫……結構可愛いかも?」

折角だし写真にとっておこう。
そう思った私は携帯デバイスを取り出し、カメラを向けた。

鳩森 速都子 > うん、ボクは所謂夢魔だから。でも本当に夢の中で会った存在が正夢になったらロマンチックだよね。

(特に隠し事をしている訳では無いので尋ねられると小さく頷いて、あっさり白状をしただろう。ロマンチックだと言った彼女の言葉をふと今一度思い返しては確かにそういう出会いが魅力的に見る事ができるようになったのは、ある程度この世界に馴染んでこれているからかもしれない。)

思い出は物の大きさじゃないけど、やっぱり身につけれる小さな物だったら良かったのになぁとは思うよ。物が嬉しがってるという事は考えた事が無かったけど、この世界には捨てた物に宿る存在もいるらしいし、お互い大切にしとかないとね?

(化けて出てくる、とは思ってはいないが確か書物でそういう存在が居るらしいというのは見た事があったと思う。茶化すような言葉を掛けながら抱えてた猫を降ろそうとした矢先に聞こえてきたのは随分ドスの効いたような声だった。)

スポンサーが帰ってきたみたいだよ、ほら…お行き。

(此方も此方で見た目は歴戦のツワモノのような見た目だが子猫達が集まっていく様子を見るに親猫のようだった為に安心したような声を漏らした。しかし胴の長さを見た時に男の方も前髪越しに目を丸くしたのが見えたかもしれない。)

ボクもビックリした…不思議な猫だね。顔はちょっと怖いかなって気はするけど…確かに可愛らしさはある気がする。

(可愛いかもしれない、という彼女の言葉を聞いては男はまた小さく頷いて返事を返しただろう。確かに見た目はコワイが彼女だって多数の子どもたちを抱える親であり、やはり可愛い猫なのだ。これがいわゆるギャップ萌えというやつなのだろうかと思いながら眺めていたが、カメラを向けるアガサさんの姿をも含めて、男は両手の親指と人差し指で写真の縁のような四角い形を作り出すとその四角い枠の中へ収めてみる。)

……うん、中々良い画だね。カメラが無いのが悔やまれるけど…。

アガサ > 「うんうん夢の中に入れる異能──ってえ"ぇっ!?」

危うく携帯デバイスを取り落しそうになった。
予想の斜め上を錐揉みして飛んでいくような速都子君の回答に、乙女にあるまじき声が出てしまうし、
私の声に反応したのか長い親猫の矢のような視線が痛い。

「ちょっと予想外な答えが来て吃驚したじゃないか~……ああ、いや速都子君の所為じゃないんだけど。
夢魔ってあれだろう、一般的には夢に顕れる悪魔。魔術書に於いては……その」

そうした視線を受け流す私の顔に少しばかり熱が上がって、言葉が濁る。
夢魔、夢の悪魔。魔術に於いては性魔術の記述に上る事もある存在で、私の頬が含羞に染まるのも当然だ。
けれども速都子君の様子は自然なもので、此処で変に反応するのも彼に悪いと言うもの。
私は空咳を数度して話題を変えようと思った。

「おほん、うおっほん……うんうん、不思議な猫だなあ!って速都子君は携帯を持っていないのかな。
メールアドレスとかもない?もしあるなら、後で写真を添付して送ってあげるけれど」

取り下とすことの無かった携帯デバイスで、私を思いっきり睨んでいる親猫を写真に収めてシャッター音が鳴った。
それが済んだら立ち上がって、そこで初めて結構な身長差がある事に気付いて目が丸くなって、けれども直ぐに柔和に細くなる。
改めてみると、彼の容姿は悪魔というよりも天使のようだ。特に、わたあめのようなプラチナブロンドの髪が。

「もし持っているならアドレス、教えてくれる?」

そんな事を思いながら携帯の入力画面を開いた。