2022/09/19 のログ
ご案内:「常世公園」にリタさんが現れました。
■リタ >
何か月かに一度ほど、体がむずむずしだす時がある。
それは精霊たちが私の身体を使って遊びたがっている、そんな日。
「ひゃっほう! どうだいちびっ子たち! これがお姉ちゃんの実力なんだから!」
今日は私――即ち『土』の日。朝起きて、精霊を纏繞して、適当にぶらついて――公園の前を通ったその時、私の脳内に電撃走る。
――そうだ、砂のお城を作ろう! とびきりすごいの!
もちろん、一番は興味本位と自己満足。けれど私には一つ打算があった。
即ち、
「もし公園にいる子供たちの前ですごいの作れたら、きっと尊敬してくれる……!」
そんな助平心。
けれどそれは正しい形で実った。数時間をかけて作り上げた、精巧かつ私の胸くらいまでの高さにもなる巨大な砂の城の横で、私は胸を張っていた。
どやあ。
■リタ >
「え、この辺に塔増やす? おっけーおっけー、任せなさーい!」
城の傍らに砂を細く高く積んで。
手を翳して圧縮、固着。それから。
「目ー離しちゃ駄目だよ? 行くよーっ、わん、つー、すりーっ!」
掛け声とともに手を振ると、固着した砂山が崩れて、その中から塔が現れる。
普通の子みたいに、固めた砂を削って作ってもいいんだけど。
やっぱり砂を操れるんだから、こっちの方が早いし慣れてるし、何より傍目から見たらまるでマジックなので、子供たちが目を惹かれるのだ!
子供たちからのリクエストにも瞬時に応えられるのがこの方法最大の利点。
砂の城は矢継ぎ早に繰り出される意見を聞いて、姿をどんどん変えていった。
ご案内:「常世公園」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
■芥子風 菖蒲 >
今日も今日とて風紀委員の哨戒任務。
要するにパトロールだ。少年は職務にも勤勉で
漆塗りの鞘を肩に担いで歩いていた。
常世公園の脇を差し掛かった所で、見えたとはそれは不思議な光景。
公園にそびえ立つのはそれは子どもが作った砂の城とは比べ物にならない。
まさしくそれは、立派な立派な砂の塔。
「……すご」
少年は男の子。
なんだかしらんけどでっかいものってかっこいいよな。
自然と足は公園へと踏み入れ、砂場の前にいた少女に声をかけた。
「ねぇ、アンタが作ったの?ソレ。カッコいいね。どうやって作ったの?」
■リタ >
「お!」
興味を持つ声に振り向けば、そこには黒一色の男の子。
すっごい! 刀かっこいい!
「私の傑作に興味を持つとは、お目が高いね! ではでは、お見せいたしましょう! リタお姉ちゃんのチカラをね!」
少し大仰に、くるんと一回転。別にそうする必要はないけど、今日のお姉ちゃんはテンションが高いのだ!
回転に合わせて、砂の城の前に砂が集まったかと思うと、小さな山を成していく。
「わん、つー、すりー!」
掛け声とともに、山を成す砂を吹き飛ばす。そうしてお城の前に現れたのは、お姉ちゃん特製のスフィンクス! お城の守り神様だ!
得意げに笑って、男の子の方に向き直る。
「ふふん、どう?」
――ちなみにリタが心中スフィンクスと呼ぶ「それ」の造形は、どう見たってスフィンクスというよりは子猫なのである。
■芥子風 菖蒲 >
「結構目立つしね。オレ、こういうの興味あるな」
何がどう、と言うよりは感覚的なもの。
なんだか知らんが凄くてでっかいと男の子は惹かれる。(※当社比)
どうやらこれ以上に凄いものがあるらしい。おー、と漏れる感嘆の声。
少年の表情は機敏に疎く、余り変化は見られない。
それでも興奮しているのは声音に現れていた。
そして、仰々しく彼女が成せば山が爆ぜ、大きな何かが現れた。
衝撃で黒衣が僅かに靡いた。
「すご……」
感嘆の賞賛。
どんな手法であれ、それは立派な造形物に変わりない。
芸術とかそういったものには疎いけど、とにかく凄いのはわかる。
ぱち、ぱち。小さく拍手をしながら、2つの青空が少女をみやった。
「可愛いね、その"猫"。名前ある?」
……残念、少年にはスフィンクスは猫にしか見えない……!
■リタ >
「ふふん、そうでしょうそうでしょう! お姉ちゃんすごいー、って褒めてくれていいんだよ!」
あまり顔に動きはないけれど、賞賛と拍手があるってことは、そういうことでいいんだよね! そう解釈して、気を良くする。
けれどそれに続く言葉にびっくり。
「――って、猫っ!? 違うよ、この子はスフィンクス! このお城を守ってくれるありがたーい子なんだから!」
そりゃあ、ちょっとデフォルメはかけてるけど。
え、だってせっかくなら可愛い方がよくない?
「んーと、でもそっか、名前、なまえ……」
うんうんと唸ること、約十秒。
「よし、キミにこの子の名付けの権利を与えよう! さあ、どんな名前がいいかな?」
我ながらいいアイデアだと思った。
別に思いつかなかったとか、そう言うんじゃないよ? ……本当だよ?
■芥子風 菖蒲 >
「……リタお姉ちゃん?凄いね」
確か自分で自称していたはず。多分それが彼女の名前。
少年は素直な部類だった。変だと思わなければ素直に褒める。
ぱちぱち。おねーちゃんすごーい。
「……?すふぃんくす?……って、何?よく知らないけど、猫の種類?」
生憎、少年は興味が無いことはとことん知識がない。
アラビアンなエジプトの知識はどうやら興味がないようだ。
どうしても、少年には猫にしか見えないが、そうじゃならしい。
そうかなぁ、と小首を傾げてスフィンクス(仮)をみやった。
「どう見ても猫だよなぁ……」
ぼんやりぼやく、今日このごろ。
「オレが名付けるの?んん……」
急にふられて青空が丸くなった。
唸り声を上げながらスフィンクス(仮)と数秒にらめっこ。
名前、名前……。
「…………うめ?」
……猫に名付ける感覚だコレ!
■リタ >
「ふふふふふー」
褒められてにやにやが止まらない。やっぱりお姉ちゃんはすごいのだ!
「スフィンクスはね、簡単に言うとねー。砂漠なんかにいる、ライオンの魔物なのだ! ありがたーい存在なんだよ!」
スフィンクスのことを知らないらしいので、そう説明してあげる。
――そう得意げに言い放ったところで、リタの作った「それ」は傍目にはやはり猫なのである。
「――そう、うめ。うめちゃん! いい名前だね、採用! よしよし、今日からキミはうめちゃんだ!」
とても可愛い名前を貰った。一発採用!
そう言って砂で出来たスフィンクス改めうめちゃんの頭を指先で撫でる。