2020/08/08 のログ
ご案内:「常世渋谷 常夜街」にヨーコさんが現れました。
■ヨーコ > 全く、ひどい目に遭った。
目の下にクマを作りながら夜の街を歩く女が一人。
足取りこそしっかりはしているが、強烈な酒の匂いをさせながら、頭を右の掌で押さえながらため息を一つ、二つ。おまけにも一つ。
事件の緊急応援要請。
慌てて現場に急行すれば、それはもう大変に出血なさっている男性が一人。
うん、後から話を聞けば事件の犯人だということだが。
抵抗したから攻撃したら、やり過ぎた、らしい。
やり過ぎたから医者になんとか死なないようにしろ、というのはもはや探偵とかそういう概念を超えた災害にしか思えない。
まあつまるところ、知り合いのミスのしりぬぐいをした上でお酒の席に引っ張られ、結婚できない愚痴を店が閉まるまで聞かされていたのだ。
頭痛い。
■ヨーコ > 後ろで軽く髪を縛った、目の光があんまりない女。
元医師で元教師、今は探偵兼裏医者の、一般的な価値観では転落と称しても違和感のない経歴。
今はこの常夜街にある古びた事務所で、一人で怪奇事件を中心に担当しながら過ごしている。
「………閉店が早い店を選んで正解だったわ。」
もう若くはない。どんちゃん騒ぎを朝までできないし、もともとするような性格でもない。
うんざり、といった顔をしながら夜の街を歩く。
探偵としては無名だ。 客引きに声をかけられては、追い払うように手を振って。
繁華街のギラギラとした明かりに照らされて、路地を歩む。
■ヨーコ > 「………」
酔っ払いの女は道を歩く。
客引きの金髪。ニューハーフのお姉さん。バニーガールな女性。
吐きそうな顔のおじさん。倒れているお兄さん。泣いているお姉さん。
色とりどりの明かりに照らされて、同じくらい色とりどりの人間模様が広がる街。
「………」
ふらふらと歩きながら、空を見上げて、溜息一つ。
事務所はもう、ほど近い。
早く帰って寝たいというのに。
■ヨーコ > 「……何がどうなってこんなとこで倒れてんのよ……」
倒れて動かなくなっているお兄さんを担ぐように肩を貸しながら、必死に診療所にまで運ぶ。
外傷は無いようだけれど、体温がやたら低くて呼吸も浅い。
ああ、これ最近評判の混ぜ物入り薬物だわ。
ため息をつきながら首を横に。 今日の仕事はまだまだ終わらなさそうだ。
ご案内:「常世渋谷 常夜街」からヨーコさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に水無月 沙羅さんが現れました。
■水無月 沙羅 > 謹慎明けの休日。 所謂オフ日。
風紀委員会のメンバーでの慰安を兼ねた温泉旅館行が近づいてきたそんな一日。
普段は、風紀委員の活動、活動するための資金集めであるバイト、そしてトーレニングに、どこぞのお嬢様の家庭教師、最後には異能の致命的な副作用が判明したための通院などなど。
忙しいというにも程がある日常の中に、ふらっとおとずれる、何をしても自由な日。
「休日って何をすればいいんだろう。」
産まれてこのかた、『やるべきこと』を与えられ続けてきた沙羅にとって。
やることがない時にすればいいこと、というのが皆目見当がつかなかった。
現在は夏休み中でテストもしばらくは無いため、勉学もこれと言って励む必要はない。
トレーニングも体を休めろという事で本日は禁止されている。
まだ星を見るには時間も早い、陽は頂点に上ったばかりだ。
風紀委員の彼は仕事をしているし、デートと言うデートも実はしたことがない。
以前水着を買いに行ったことはあるが……、あれをデートと言うのは少し違う気がする。
悩んだ結果、生活必需品を買いに行こうという事でふらふらとこの渋谷にやってきたというわけだ。
■水無月 沙羅 > 従兄、『兄』と慕う彼を呼ぶことも少し考えたものの、衣類やら日用品やらを買う都合、あまり見られたくないものもあるので今回は保留。
しかしたまには顔を出さないといけないだろうとは思うから、次の休みにでも会いに行こうか。
……実家に顔を出しに行く成人女性の気分とはこういうものだろうか?
地下鉄を抜けて駅前までやってくると、『忠犬ロク公像』という待ち合わせ定番スポットにたどり着く。
『異能犬ロク』、日本国にある『忠犬ハチ公銅像』にそっくりなそれ。
沙羅はもちろん実物を見た事は無い。
しかし、物語程度なら書物で読んだ事がある。
主人の帰りを待ち続けて、約十年の間、日本国の渋谷駅に通い続けたという伝説の犬。
思い出すたびなんとなくその犬に感情移入をしてしまうのは何故だろうか。
かわいそうというのではなく、主人を待ちたくなる気持ちがわかるという方向性で。
とはいえ、おそらく自分は待ち続けるのではなく、探し回る事を選びそうだが。
少しだけ銅像の頭を撫でてやる。
「あっつっい!?」
陽にあたったワンコの象は沙羅に牙をむくのだった。
おのれ日光。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に神樹椎苗さんが現れました。
■水無月 沙羅 > 牙をむいてきたロク象を少しだけ睨みながら、やけどしそうだった手を抑えてセンターストリートへ。
無論、やけどするほどではないし、したとしてもすぐに治ってしまうわけだが、それにしたってじんじんする。
今回のお目当ては、異能によって散々血まみれになったり損傷した制服の替えを買う事と、普段から風紀委員の施設に籠っているために、ほとんど代わりを持っていない私服という事になる。
ついでに言えば温泉旅館に行くにあたって必要なものがあったりするのかも確認はしておきたい。
「……かわいい服……。」
自分の姿を街中のウィンドウを鏡代わりにしてみてみる。
そこまで大きくはない身長、スレンダーで少し筋肉質な体系。
トップスはワンポイントのポロシャツ。
ボトムは黒地のカプリパンツ。
果たしてこれはおしゃれというのかどうか、判断してくれる人が居ないため分からない。
一般女子とはおしゃれの意識が違いすぎる。
ちょっとだけウィンドウの前で回ってみせるが、果たしてこの仕草はかわいいと言えるのか。
鏡の中の自分は答えてはくれない。
■神樹椎苗 >
最近話題の常世渋谷。
風聞は把握していても実際に足を運んだことはないそこに、今日は珍しく小さな影。
「――まさかネコマニャンリュックを置いてるとは思わなかったですね。
なかなかわかってる店じゃねーですか」
そう、満足そうに隣の店舗から、そこそこ大きな荷物を左手に提げて出てくる。
店の外に出れば日差しが強かったが、植物としての性質も持つ椎苗にとって、水分さえ取り忘れなければ暑さは苦にならない。
とはいえ、地域柄湿気も多くなるのは地味に不快である。
「もう少しカラッと晴れてれば気分もいいんですがねー」
そう空を見上げつつ、これ以上荷物も持てないし、引き上げるしかないかと思いつつ、視線をスライド。
店の前で珍妙な動きをしている娘がいた。
「――さて、駅は向こうでしたね」
見なかったことにして踵を返した。
■水無月 沙羅 > 鏡代わりにしていたウィンドウに、チラッと映った見覚えのある姿。
小さい姿にピンク色の髪、何やら大きな荷物を持っているらしい少女は、ぱちりを目が合った、が、唐突に回れ右をされる。
「いやいやいや、しぃ先輩私を腫れものみたいに扱うのはだいぶ傷付きますよ!?」
踵を返そうとする10歳くらいの少女の背中を捕まえて、とりあえず羽交い絞めしてみる。
傍から見れば小さい少女通しの戯れにしか見えないだろう。
それにしてもすごい荷物だなと眺めて。
「いくつか持ちましょうか?」
と提案してみる。
とりあえず今日の予定は全部キャンセルでもいいかな。
■神樹椎苗 >
「娘の恥ずかしい姿を見なかった事にしようという、親心みてーなもんですよ」
後ろから羽交い絞めにされながら、捕まったなら仕方ないと諦めた顔をした。
「ん、自分から荷物持ちを申し出るなんて、見上げた孝行娘じゃねーですか」
そう言いつつも、荷物を持たせるわけでもなく、地面において袋からリュックを取り出す。
「ほら、ネコマニャンリュックです。
生産数限定のレアものですよ。
今日のしいは、運勢最下位の蟹座を腕組んで見下ろせますよ」
そうやって自慢げに見せつつ、片手で器用にリュックへ荷物を詰め込みはじめる。
買い物を続けるために、さっそくリュックを使おうとしているようだ。
■水無月 沙羅 > 「え、恥ずかしかったですか今の。」
どこに恥ずかしい要素が? みたいな顔をする。
少女漫画やらノベルシリーズでの少女はよくそう言った仕草をするイメージがあったモノだが。
「孝行娘って……しぃ先輩おばあちゃんじゃないんだから。」
もぞもぞ取り出されるリュックをみて、あぁ、今日はこれが狙いだったのかと察する。
どうにも最近彼女のお気に入りらしい、『ネコマニャン』グッズ。
しかもリュックと来たものだ、生産数限定のレアもの……。
売れ残ったりしませんかその在庫、というツッコミはしないほうがいいのだろう。
正直、沙羅の感性にはあまり響かない。
少女らしい可愛い趣味ではあるかな、とおもう程度
ぶさカワ系?でいいのだろうかこの猫は。
「ネコマニャン……本当に好きなんですねそれ、余り街中じゃ視ないですけど……本当に人気なんです?
あとかに座に何の恨みが……。」
リュックに荷物を詰め込む、どうやら手伝いはいらない御様子。
多分ネコマニャンは自分で持っていたいのだろうし。
手伝うルートは消え失せた様だ。
■神樹椎苗 >
「今時、ウィンドウを鏡にしてポージングしたり回ってみたりとか。
なかなかいないレアな生物にはちげーねえですね」
そう言いつつ。
「なるほど、『お母さん』の次は『おばあちゃん』と来ましたか。
どっちでもかまわねーですけどね、いたわる気持ちがあるのは感心です」
そしてネコマニャンリュックを背負い。
「しらねーんですか。
ゲームセンターとかにもプライズ景品で入ってるくらいです。
たしか風紀の有名人にも、ネコマニャン好きが居たはずですよ」
「それと蟹座の運勢は最下位と決まってるのです」などと胡乱な事を言い出した。
なんてふざけたやり取りをしつつ、空いた左手を娘に向けて差し出す。
■水無月 沙羅 > 「そ、そうなんですか……?
でもほら、鏡近くにないし……ね?」
自分の正当性を主張してみる、なにもおかしなことはない、筈。
レアな生き物なの? 周りを見るが、確かにそういう人はいなさそうだ。
偶に髪をいじっている人が居る程度か。
「え。あぁ、いや。確かに前はお母さんみたいって言いましたけどあれは言葉のあやというやつで。
そもそもしぃ先輩こんな大きな娘要らないでしょう。
……しぃ先輩がお母さん……お母さん、お父さんは誰でしょうね。」
さすがにこの少女が自分のおばあちゃんになるのはちょっと嫌だったのでやんわりと否定しておく。
それならお母さんの方がいい、なんとなく傍に居ると安心するのは確かだから。
「へぇ……意外とブームなんですかね……ん?」
妙な戯言はとりあえず聞き流すとして、何やら左手が差し出される。
少し前の事を思い出す、手を繋ごうと思ったら拒否された記憶。
だというのに自分から。
一体どういう辺境の変化なのかなとは思ったが、そういえば先日も手を握っていてくれたな、と思い直して。
「へへ。」
そっと左手を握る。
ひょっともすれば姉妹ぐらいには見えるかもしれない。
■神樹椎苗 >
左手を握られれば、まあ背丈や外見からは良くて姉妹と言ったところだろうか。
「まあしいには親子とか家族とかよくわからねーですからね。
別に『お母さん』でもかまわねーのです。
お母さん役ができるかどうかはしらねーですけどね」
言いつつ、お父さんはと言われると首をかしげる。
なるほど、お母さんであるなら対であるお父さんも必要なのかと。
このままではシングルマザーになってしまう。
「――なんか適当な雄でも見つければいいですかね」
面倒くさくなくて、便利そうで、かと言って馬鹿でもないような。
意外と要求が身勝手だぞ。
■水無月 沙羅 > 「お母さん役……求めてるわけでは……うぅん。
私の母のことは言うほど覚えてないですしね、しぃ先輩が家族だったら……。
うん、それはすごくうれしいかも。
別に私がお姉ちゃんでもいいんですよ?
まぁ、そう見えないっていうのは重々自覚してますけれど。 はい。」
沙羅にとって少女の存在は大きすぎるというか、自分がお姉ちゃんと呼ばれるにはあまりに不相応な気がしてならない。
少なくとも自分なんかよりよっぽどしっかりしているし、何なら何度も助けられている。
やはり母なのか?
「いやいやいや、しぃせんぱい? 本気にしないでくださいね?
そもそもそういう事の為に伴侶は見つけるモノじゃないというか。
しぃ先輩奥さんにするともれなく犯罪になります。」
ロリコンどころではない、ペドフィリアだ。
■神樹椎苗 >
「まあ、しいほどの可愛いロリ美少女ともなれば、犯罪になっても結婚したいというやつがいてもおかしくねーですね」
鼻を鳴らしながら、自己評価が無意味に高い発言をしていく。
「あー、姉は間に合ってますし、妹も――まあ似たような面倒なのが居ますし。
やっぱりお前は『娘』の方がしっくりきますね。
だからほら、しっかり親孝行しやがれですよ」
と、繋いで手をゆらゆらと揺らし。
「お前も買い物に来てるんじゃねーですか?
しいも、渋谷に眠るネコマニャングッズを探しに来てますし。
付き合ってやらなくもねーですよ」
■水無月 沙羅 > 「自己評価高いですね……否定はしないですけど、性格に難ありってハンコ押されそう。」
想像してちょっと笑う。
確実に旦那さんを尻に敷くタイプだ。
「姉……? そんな人がすでに。 しぃ先輩がそう思ってる人なら、うん、きっと素敵な人なんでしょうね。
あ、ひょっとして良いことあったってそういう?
妹は……あぁ、うん、希ちゃんですね。
……希ちゃん私のおばさんになるんですか!?」
三人の中では一番年上の筈なのにこの扱いはいったい。
「しかし親孝行って言われても何をすればいいのか……。
あぁ、一応、私服とか、日用雑貨を探しに。
一緒に住んでる人がまぁ自分では買わないような人なので……。
……。」
ゆらゆら揺れる手を少しだけ、微笑んでみている。
こうしてみると普通の子供なのにな。
■神樹椎苗 >
「失礼な娘ですね。
しいほどパーフェクトなロリはそういませんよ」
性格にとても大きな問題を抱えているが。
「今度、叔母さんって呼んでやったらいいんじゃないですか。
案外、意味が解ったら喜ぶかもしれねーですよ」
横を見たら、なぜか微笑ましい表情をされていたので、繋いだ手を器用に抓ってみた。
「お前の買い物ついでに、しいの荷物持ちです。
しいも丁度、いくつか買い足しもしたいところでしたし、都合がいいですね」
■水無月 沙羅 > パーフェクトロリは取りあえずスルーすることにした。
パーフェクトというにはあまりに毒舌すぎじゃない?
「いやぁ……あの年の女の子を捕まえておばさんはちょっと……。
本人が良くても私の精神が辛いですよ。
主に立場的な意味で。」
あの二人を物理的に守るのがそもそも自分の仕事でもあるからして、自分より幼い二人が母に叔母と来たら、ちょっと恥ずかしいとかいうレベルではないのでは?
そもそも椎苗を母を慕う時点で形無しだという事に沙羅はまだ気が付いていない。
「って、イタイイタイ。 抓らないで下さいよ。」
わざとらしく痛がって見せる、拗ねた子供が横に居るぞ?
「荷物持ちくらいなら任せてください。
これでも引っ越し業者で鳴らしたものですから。
しかし買い物……服かぁ。」
とりあえず目指すのはファッション店や雑貨屋あたりだろうか。
店の良しあしもわからないのでとりあえず一番大きな店舗を目指して歩いてゆく。
通りすがる店には目もくれないのはたぶん見比べるという意識すらないから。
沙羅にファッションはまだ早かったか?
■神樹椎苗 >
「それなら、しいを『お母さん』と呼んだ時点で終わってるんじゃねーですか?」
ようしゃはなかった。
「こら色ボケ娘。
服を買うならまず、用途を決めやがれですよ。
あと、特定のブランドやジャンルにこだわりがないなら、いろんな店を見て回るのが無難です。
店によって値段もデザインも幅がありますからね」
そう、一直線に大きな店へ向かおうとする娘をちょっと踏ん張って引き留めて見た。
■水無月 沙羅 > 「ウグゥッ……」
綺麗にボディブロウが決まった、これは立ち直れない一発。
「んぇ? 用途……ですか?
着る意外に、何かあるんです?」
引き留められはしたものの、そもそも言っていることは半分も理解できてないない。
とりあえず可愛ければいいかな、というのは隣に立つ人に引けを取らないようするため程度の認識でしかない。
■神樹椎苗 >
娘の反応に、頭を抱えたくなる母親の気持ち。
右手が動けば、間違いなく額を抑えていた。
「お前、その服を着て何をするんですか。
どこに行くための服ですか。
誰と会うための服ですか」
そう、あからさまに残念な子を見るような視線を向けて問う。
年頃の娘だというのに、まさかの出発点だった。
■水無月 沙羅 > 何やらすごい目で見てくる隣の幼女、もとい母替わり。
何故そんな目で見られているのか皆目見当がつかない。
何かおかしなことでも言っただろうか。
「えっと。
仕事着は制服でいいから違いますよね。
基本的に理央さんと休日に出かける時用の事しか考えてなかったですし。
というか、それ以外に私服着る必要のある時がないというか。
今着てる服は昔、私を保護観察に置いていた方が選んでくれたものなので。」
犬っぽい意匠はどうやらその人物の趣味らしい。
まさしく忠犬にふさわしいという感じだろうか。
「一緒に出掛けるような友人もいないですからねぇ。
合わせる相手が居ないというか。」
基本的に誰かに合わせる、というスタンスがあだになる。
そして友達がほとんどいないという事実も明らかになる。
どんどん墓穴を掘っていることに気が付いていない娘。
周りから憐憫の目が集まり始めていることにすら気が付いていない。
■神樹椎苗 >
隣の娘がかわいそうになってきた。
視線がつい、憐れみの視線になってしまう。
「わかりました。
お前はとりあえず、服に興味を持ちましょう。
さあ、まずは色々見て経験値を稼ぐのです」
そうして、近くの店にまずはと引っ張りこんでいく。
たまたま入ったのは、比較的カジュアルなデザインの衣服を取りそろえた店。
部屋着に近いものから、気軽に出かけるにはちょうどいいものが揃ってるだろう。
■水無月 沙羅 > 「そんな目を向けなくても……ん? あれ、なんかこっちを見てる人増えてません?」
「って椎苗せんぱーい!?」
服に興味、と言われてもピンと来ないのだが、とりあえずついていこう。
連れてこられた洋服店にあるのは、言ってしまえば地味というか、部屋着に近いものが多い。
よく言えばシンプルと言った感じ。
それにしたって数は中のものだ、種類も豊富。
沙羅はそこまで沢山の服を見てきたわけではないので、呆然としている。
これではお上りさんではないか。
「ほえー……。」
ポカーンとみている。
「あ、あのキグルミパジャマとかしぃ先輩に似合いそう。」
早速自分の服のことを放棄し始めた娘。
■神樹椎苗 >
「ええい、見るのはしいのモノじゃなくてお前の服です。
お前は自分が着たい服を探すところから始めろってんですよ」
呆然としてる娘を横から肘で突いて。
「とりあえず、この店だったら、家に居るときやちょっと外に出るときを想定して選べばいいです。
最近はこういうタイプの服で出かけるのも割と許容される雰囲気が出来てますからね。
ほら、ボケっとしてないで店を見て歩くのですよ」
と、筋肉質でしっかりと締まっているおしりをペチンと叩いた。
■水無月 沙羅 > 「え、だってあれネコマニャンじゃないですか……いったい!?」
幼女に尻を叩かれて服を見に行く……なんだかみじめな気がする。
「着たい服……って言われてもなぁ。」
沙羅の求めるちょっと外に出る時の服。
何があってもいいように、あまり飾り気がなくひっかかったりしない、スカートじゃなくてパンツスタイルが好ましい、靴下は……家にいくらでもシンプルなのがるからいいかな。
今は夏場だから、記事はそこまで熱くない奴で、上着は邪魔だから要らないから……。
すすぃーっと案外すぐに終わって持ってくるのだが。
「こうですかね?」
薄いモノトーンのシャツに、シンプルな青いジーンズ。
……センスがない……っ!
■神樹椎苗 >
「いいから行ってくるのですよ」
尻を叩いて押し出し、少し見送ってから。
自分は一直線にネコマニャンの着ぐるみパジャマを買いに行った。
そして買い物袋を抱えつつ待って――いるほどの時間もかからなかった。
「そうですか。
もう一周してきやがれです」
帰ってきた娘をもう一度蹴りだすように店の中に放り込む図。
これでまたあんまりだったら、店員に磨いてもらうしかないだろうと考えつつ。
スタッフを一人捕まえて、恋人と同棲している女子の部屋着と、軽く出歩くのに丁度いい服を見繕ってくれるように伝えておいた。
■水無月 沙羅 > 「うっ、うっ……」
今度は蹴られた、悲しい。
ネコマニャンだってだいぶひどいと思うんですけれどね?
仕方ないので持っていた服を元に戻すことに。
さて、しぃ先輩は何を求めているのか考えなくては、と考える娘。
ちがうぞ、君が着たいと思ったモノを探すんだぞ?
早くも目的がすり替わりつつある。
今の状態だとその目的の方がいい服になりそうだというのが皮肉だが。
そう言えば他の生徒たちはどんな服装をしていただろうかと思いだす。
道行く人たち、その中でも『スカート』じゃないもの、『動きやすい物』をリサーチをかけて脳内で検索してゆく。
その中でも椎苗にけりだされなさそうな。
結果として、黒い少し大きめのワンポイントが付いたシャツに、ネイビーのパーカー。
スカートのように見えるシャツの下に同じ色合いのショートパンツという。
カジュアルナボーイッシュスタイルが出来上がった。
夏場には少し熱いのでは? という感想は捨ておくことにする。
「これなら文句ないでしょう!」
と若干のドヤ顔である。
■神樹椎苗 >
戻ってきた娘のどや顔を、とりあえず背伸びして抓っておく。
しかし、用意してきた服はまあまあ、悪くはない。
「――まあ、カジュアルなら及第点と言えなくもねーです。
でもお前、それ、しいに褒められるにはどうしたらいいかって選びましたね」
頬を軽く引っ張りつつ、じっとりとした半眼で見上げた。
「まあいいです。
ここのスタッフに用途は伝えておきましたから。
一緒に選んでもらって、今後の参考にするといいです」
そう話している間に、二人の元へは一人のスタッフがやってきて、娘に声を掛けるだろう。
■水無月 沙羅 > 「あばばばば……な、なんでわかるんですかぁ。」
おかしい、上手くいったはずだったのに抓られている。
「だって、よくわからなかったですし……動きやすければいっかなって。」
と目を逸らす。 沙羅にとっての服は、動きやすくて邪魔にならないものなら何でもいい。
位の認識だった。
「うぇ、……うぇーーーー!?」
にこにこしたスタッフに轢きづられて行く沙羅。
恋人が居る娘を、好きにコーディネイトしていいともなればそうもなるのかもしれない。
無理もない、沙羅に自覚はないが、素材はいいのだ、素材は。
暫く着せ替え人形にされた後、沙羅は何とも珍しい格好ででてきた。
飾り気は少なめなものの、少しフリルの入った、ゆったりとしたトップグレーとアンダーホワイトのモノトーンカラーのロングワンピースに、小さい手提げかばん、フリルのついたくるぶしより少し上くらいの白いソックス。
首元にはちょっとしたリボンを添えて。
ゆるふわ系森ガールの完成だった。
「スカート。」
動きにくい、という感じで少したくし上げては自分の姿を見るようにくるくると回っている。
自分の尻尾を追いかけている犬かな?
■神樹椎苗 >
「まあ、悪くないコーデではありましたし、それはそれとして」
とりあえず今のセットは確保して。
楽しそうなスタッフに連れ去られる娘を見送った。
ドナドナ。
そしてしばらく、自分用の服を眺めつつ待っていれば。
戻ってきたのは見違えるくらい、少女らしい格好に仕上がった娘だった。
「――やっぱりプロってのはちがいますね。
素材の良さをよくわかっています」
そう感心しつつ、スカートと戯れている娘をとりあえず捕まえる。
「ほら、遊んでないでちゃんと鏡で見て見やがれですよ。
写真も撮ってやりますから、あのダメ男に送り付けてやればいいです。
間違いなく喜びますよ」
そう、捕まえた娘を鏡の前に突き出してしっかり、自分と対面させつつ。
最近渡されてしまったスマホを取り出し、その姿を撮影する。
■水無月 沙羅 > 鏡の前に立つ、今までと違う、『女の子らしい』、『かわいらしい』自分が目の前に立っている。
とも言えばモデルさんの様な……いやいや、それはいくらなんでも自己評価が高いというものだろう。
大きく首を振って。
「うぇ、いやいやいや、私にスカートとかやっぱり似合わな、あ、ちょ、しぃせんぱーい!?」
慌てて止めようとしたところをパシャっと撮られる後輩。
顔と手がアップになった少々可愛らしい写真が出来上がるだろうか。
案の定スカートにつんのめって椎苗の前で転ぶのだが。
「へぶ……。 す、すかーとなんてきらいでしゅ……。」
懇親会以来の、しかし正装ではないファッションとしてのスカートに少しだけ頬を赤らめる。
言葉ほどいやなものではないが、少なくとも外に着ていく勇気はない、いろんな意味で。
少女のファションマスターへの道は余りにも険しかった……、
■神樹椎苗 >
「しっかり似合ってるじゃねえですか。
それならファッションモデルでもやれるんじゃねーですかねー」
などと、にやにやとしながら止めてくるのを少し下がって逃げて。
すっ転んでしまうと苦笑を浮かべながら手を貸した。
「好き嫌いはわかりますが、慣れておくといいですよ。
恋人に『可愛い』『女の子らしい』自分くらい、見せたいでしょう」
まだまだ先行きは遠そうだがと思いながら、頬を赤らめる娘に微笑んだ。
■水無月 沙羅 > 「も、持ち上げたってなにも出ませんからね……!」
真っ赤な顔で抗議しながら、手を取って立ち上がる。
幸いスカートは汚れてないし破れても居なかった。
「と、とりあえず買取で……このまま帰ります。」
近くに駆け寄ってきていた店員さんにこそこそと耳打ちする。
気に入った訳ではない、断じて気に入った訳ではない。
そう、これはスカートで歩く練習なのであって、決してスカートに興味があるわけではない。
「…………えへへ。」
脳内ではそんなことを言っているが、鏡の前でスカートの端をもってくるくる回る夢見がちな少女が居る事は事実である。
「と、とりあえず、こっちの買い物はこれでおしまいでいいですよね!
次はしーな先輩の買い物に行きましょ、ね、ね!」
そう言えば見られているのだったと気が付いて、店員さんから渡された服をそれはもう大事そうに抱えながら椎苗を必死に説得するのだ。
■神樹椎苗 >
「別に世辞を言ってるわけじゃねーですし。
お前はちゃんと可愛いんですよ、色ボケ娘」
服を買い取り、少しばかり浮かれている様子に微笑ましさを感じた。
そう、こういう『普通の少女』らしさが必要なのだ。
この娘はどうにも、日常の外へ引っ張り出されてしまいがちだ。
「なーに言ってるんですか。
やっと常渋を歩くのに相応しい装備を手に入れたってだけですよ。
その様子じゃろくに私服もねーでしょうし、今日はお前の女子力強化が最優先事項です」
そう言いながら、ポシェットからスマホを改めて取り出し、娘に突き出す。
「――それと、お前の連絡先くらい教えやがれです。
勝手に調べてもいいですが、プライバシーってもんがありますからね」
そう、仏頂面で言った。
■水無月 沙羅 > 「うっ……。」
これまでに何度か言われてきた『可愛い』という言葉。
正直そこまで本気にしてきた事は無いが、ここまで真面目に返されると否定もできなくなる。
うぅうぅと唸りながらジタバタしていたと思ったら、次なるミッションが。
「じょ、女子力、強化……。」
唾を呑む、ゴクリと鳴る喉、緊張が走る。
次は何を要求されるのかと思えば、取り出されたのはスマートフォン。
「え、ぁ……う、うんっ!」
ぱぁっと笑顔に花が咲く少女。 可愛らしい服装を着て居ればなおさら目立つというもので。
近場に居た店員やら女性客がちらりと見ては微笑んでいる。
店の外から若干、男性の視線が集まるのにも気が付いていない。
それぐらい、『嬉しさ』にあふれているようで。
「私の連絡先と、しぃ先輩の連絡先、交換しておきますね!」
まるで誕生日プレゼントでも貰ったかのような、子供の様なテンションで、連絡先を交換する。
「はいっ!」
そして椎苗に其れは手渡された。
■神樹椎苗 >
「まったく、こんなことで喜んでるんじゃねーですよ」
むすっとした表情で、けれど周囲がその可愛らしい娘に微笑んでいるのを見れば。
はあ、と仕方なさそうに苦笑を浮かべる。
「ん、それじゃあさっきの写真を送ってやりますから。
あとで、お前のダメ男にでも見せてやるんですね」
もちろん、この後もあたふたするだろう娘をしっかり、記録に残してやるつもりだったが。
スマホを受け取ってから、また自然と娘の手を取り、引いて。
「さ、次の店を見に行きますよ。
まずはどんなものがお前に似合うのか、思い知らせてやらないといけませんからね」
そうして、椎苗は手を引きながら。
常渋を連れまわすのだろう。
■水無月 沙羅 > 「だ、だっていつも逢いたいときに逢えなかったし……」
指をくるくるしながら少し頬を膨らませる。
それでも苦笑いに合わせてもう一度、えへへと微笑んで。
「え、やっぱ送らないとダメですかね……かなり恥ずかしいんですけど……。」
びくびくしている間に腕を掴まれて、小さな手にひかれてゆく。
「え。ちょ、し、しぃせんぱぃっ!?」
これ以上まだあるのかと、慣れないスカートに苦戦しながら後ろを着いてゆく。
それでも、少女の笑顔は向日葵の様に咲き誇って。
これが彼女の『平和な日常』。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に桑原 梅乃さんが現れました。
■桑原 梅乃 > 「あっつ~~~~~~~~~」
明るい時間に出てくるとこれだ。
久那土会で貰った冷気護符無かったら倒れてるよ~。
これ何文ぐらいで作ってもらえるかな。いっぱい持ち歩きたい。
っていうか往来の人たちみんな対策してるんだよね……。
そこまでして出歩きたいのかな……ウメはお仕事だから仕方ないんだけどさ。
■桑原 梅乃 > なにはともあれ、今日も裏渋での探索場所に目星をつけるためのフィールドワーク。
無意識レベルで人が避けるような場所だとか。
変な張り紙がされている街灯を探してみるとか。
入れ替わったテナントをチェックしてみたりとか。
些細な変化が、裏渋谷に影響を及ぼすことも多い。
なるべく見落とさないように。収入に関わってくるから。
(ちょっと何処かで涼みたいな……)
■桑原 梅乃 > そう言えばこの辺に……。
あー、あったあった。イートインスペースのあるクレープ屋。
ここでしばらく休憩しよう。
「すみませーん、はい。この抹茶ババロアクレープ…に、
んー……ミルクアイスで!はい。ここで食べるッス」
普通のチョコバナナ系かなーと思ってメニューを見たら、変わったのを見つけた。
ちょっと興味が湧いたので頼んでみよう。
■桑原 梅乃 > 「ん。あざまーす」
頼んだクレープを受け取って、日が直接当たらないテーブル席へ。
パシャリとスマホで写真を取ってから、口を開けてかぶりつく。
抹茶の風味とババロアの滑らかさ。ミルクアイスが程よくまろやかに。
ただ、とても柔らかいのでかなり食べにくい。設計ミスでしょ。
SNSに投稿したのは……
『冷たくておいしー。でもこれババロア要素いる?』
辛辣だった。
■桑原 梅乃 > (さてさて……面白い話はないかなーっと)
スイーツに舌鼓を打ちながらも、周囲に気を配っている。
目的は噂話だ。
他愛のない人間関係の話から"街に呑まれる"だとか、怪異、幽霊の噂まで。
裏常世渋谷に現れる怪異などの類は、常世渋谷の無念などによって形成されたものだと"されている"。
……これも噂でしかないのだが、実際に行ってみればその傾向があるとは思う。
どういう話が元になっているかを知っていれば、対策がしやすい。
先日聞いたものだと、影から突然現れて、噛まれると顔を奪われる人面犬がいる、という噂があった。
それは実際に裏渋谷で出会ったし、情報を持っていたので噛まれること無く撃退したが、
知らなければ、今頃外を歩けなくなっていたかも知れない。
そんなわけで、休憩中でも周りの話には聞き耳を立てている。
(んー。今日はめぼしい話はないかー)
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」にNullsectorさんが現れました。
■Nullsector >
「"渡りに船"……今日の三途の川はあちらまで……。
早々、船頭<うわさばなし>なんて、転がってるもんじゃないよ。」
クレープ屋で休憩している最中に、噂話に紛れて聞こえる女性の声。
気づけば彼女は、そこにいた。白衣姿の、気だるげな表情。
胡乱な常盤色の瞳が梅乃の背中を見ていた。
静かな足取りで、梅乃へとゆったり近づいてくる。
「桑原 梅乃……アンタで間違いないさね?」
■桑原 梅乃 > 「ちょっと、違うかもね。船を出すのは、私達だし?」
振り向くとそこには白衣の女。
えっ??常渋で?白衣??
めっちゃびっくりした。
びっくりしたけど、それを顔には出さないし、
無意識に自分の腰に手を伸ばしそうになったけど、それも気付いて抑えた。
「ん。そうだけどー。ウメになにか用?」
特に狙われるような事をしているつもりもない。
気さくに返事をする。
■Nullsector >
「それもそうか。……何見てるんだい?」
適当な相槌を打てば、怪訝そうな声を上げた。
まさか自らの服装に驚かれてるなんて微塵も思うまい。
軽く肩を竦めれば、両腕を組んで梅乃を見やる。
「別に、アンタをどうこうしようってモンじゃないよ。
まぁ、"知ってる事は知ってる"けどね。」
まずは敵意がない事を口頭で伝える。
いきなりぶった切られたらたまらない。
別に挑発をしに来たわけじゃない。
トントン、と自らの肘を指先で叩く。
「アンタ自身に用がある訳じゃない。久那土会に用があるのさ。」
「言っちゃえば、"売り込み"だね、」
■桑原 梅乃 > 「いやーその……ティーピーオーは弁えたほうがいいッスよ……。
おb……おねーさん」
ジト目がちになりながら、正直に答える。
「怪異じゃなさそうだし、大丈夫。
こんな人の多いところで暴れるようにも見えないし」
梅乃とて暴れるつもりはない。
風紀に目をつけられたりだとかで、この辺りで活動できなくなったら、
困るのは自分、あるいは部活そのものだ。
「久那土に売り込み?んー。そういうのやってるかなぁ……」
「ま、いいや。ウメでいいなら伝言でもなんでも聞くよ」
■Nullsector >
「…………。」
「……弁えてるが?」
流石にまさか、そんな事言われるとは思わなかったので顔をしかめた。
少なくとも逸脱したような(犯罪行為を除く)真似はしていなかったはずだ。
……まさか服装か?白衣の何がいけないんだ?
しかめっ面でじとーと此方も視線で訴えかけた。
「……まぁ、"知能"はともかく"理性"はあるみたいだね。結構。」
売り言葉に買い言葉、実は根に持つタイプだ!
「そうかい。……まぁ、あたいもこう見えて"もの探し"は得意でね。」
トントン、と自らのこめかみを叩くと左目が赤く変色する。
充血するように真っ赤に染まった眼球の目の前には
紫色のホログラムバイザー。バイザーには
常世学園の景色が、港、空港、或いは落第街に常世渋谷の何処かと
島中のあらゆる景色の一部がそこに映っている。
自分の能力を分かりやすく示す売込みだ。
左目を瞑れば、何事も無かったかのようにバイザーが消える。
「水先案内人……って、サービスもうやってるんだってね?
あたいも、少しばかりアンタ等の活動に興味があってね。」
「一人で適当するのも面倒だから"コキ"使える相手が欲しいってワケ。…自分も含めてね。」
■桑原 梅乃 > 「ええ、マジ……?まぁいいや」
マジ?
周りの目を気にしないタイプなのか?
いや、そうじゃなかったら白衣なんて着てこないでしょ。
きっとそうに違いない。そう思うことにして、これ以上は言わないことにした。
「はいはい、ウメはバカですよー」
なにせ学校にもちゃんと行けてないし。そもそも二級学生だし。
まぁ、この人の言いぶりだとそれも知ってそうだ。
「んぇ。異能……じゃないね」
真っ赤になった眼球にちょっと驚いたが。
伝えると言われたからにはちゃんと見る。
科学的なものの感じがする。
ということは……つまり技術力のアピールだ。
「やってるよー。あんまり大きな声では言えないけどね。
向こうでの話なら、案内できるのは行きたい場所が分かってれば、だけど。」
「えーっとつまり、おねーさんも登録したいってこと?それとも部活の関係者希望?
話の取次ぎはしてもいいけど、どのみちお金関係のためにアプリは入れることになるかも」
■Nullsector >
「……何がマジなんだい?お前。実は失礼なのか?
白衣の何がいけないんだい。…………。」
そこまで啖呵切ったはいいものの、別に白衣にこだわりはない。
いい所語ろうとしたけど特に何も思いつかない。
冷静に考えると、汚れとか目立つし白衣じゃない方がいいんじゃないか?
…………。
「……まぁ、ともかく……。」
軽く咳払いして誤魔化したぞコイツ。
言うとおりにするのも癪だと感じたな!
「希望としては後者。あたいはこう見えて、比較的安全に探索範囲を広げる方法を持ってる。」
「行ける場所が増えれば、アンタ等だって得するだろう?
あたいも、"裏側"にも興味があるからね。『水先案内人』ってのが
専門屋が一人いれば大分活動も楽になると思うけどねぇ?」
「別にアプリを入れる事は問題ないよ。好きにしな。」
■桑原 梅乃 > 「……まぁ、いつか流行り来るかもね……わかんないけど……」
苦しいフォローをする。
何が流行るかわからないのが常世渋谷だ。
それを言う顔は無さそうだと思っている事を雄弁に語っているが。
「ん゛ーー……」
どうしようかと、唸る。
わざわざ表で活動している自分のとこまでやってきて捕まえたのだし、
さっき見せられたものも確かなものだった。
「わかった。部長に取り次いでみる。道具は便利な方が良いし。
んじゃあ、なんて呼ぶかと、連絡先だけもらえる?
部長が興味持ったら直接連絡があるから。無さそうだったらウメから連絡するよ」
■Nullsector >
「……コイツ……。」
久しぶりに素直に腹が立った。
曲がりなりにも女で…確かに服装に気を使ってはいなかったものの
こうもコケにされると腹が立つ。ちょっと痛い目でも見てもらおうか……。
「ソイツはどうも。期待しないで待ってるよ……。」
元々出来たらいいという話。
だが、これで久那土会と繋がりが持てればそれは重畳。
徐に右手を翳して、虚空を指先が素早く叩く。
「Nullsector<ヌルセクター>。そう呼びな。」
参照すればそこには何もなく、必ずバグを引き起こす虚数空間。
女がそう名乗ると同時に、梅乃の携帯端末が震える。
開けば、知らないメールアドレスが送られているだろう。
■桑原 梅乃 > スマホが震える。取り出して、これ?と言いたげに掲げる。
同意を得られればそのまましまう。中身の確認はする必要はない。
仮に間違えてるなら、連絡が相手に届かないだけのこと。
「ぬるせくたー。コードネームみたいなやつか」
あからさまに名前じゃないが、それには突っ込まない。
こういう場合、名乗ることで不都合があるのだろうから。
ようするに……自分の"跳び梅"みたいなもんだろう。
「話はこんなとこかな。まだ何かある?」
■Nullsector >
「まぁ、そんなもんだと思ってくれて結構。」
コードネームにしては随分と色気がないとは思ったが
相手にはその方がわかりやすいなら何も言わない。
虚空を叩く指先が、最後に空中をスライドすれば踵を返す。
「あたいからは以上だよ。後は、そっちに連絡をくれればいい。」
それじゃぁ、と軽く手を振って去っていくだろう。
「……ああ、それと……"頭上注意"。」
そう言う頃には何と、梅乃の頭上からなんかベタなタライが降ってきたぞ!危ない!
此れを避けようが当たろうが何かをするころには、女の姿はそこにはなかった……。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からNullsectorさんが去りました。
■桑原 梅乃 > 「おっけー、それじゃ、また会えると……頭上?」
目を向ける。タライだ。タライが落ちてくる。
そんなものに備えをしている人間が居るであろうか?
「あぃたっ!?」
答え。居るはずがない。
とっさに片腕でガードするので精一杯。
そもそもここ室内だぞ!?どっから??
姿を探そうとしたが、もう立ち去っていた。
「……。抹茶ババロアクレープ今日までって教えようと思ったのに」
なお、タライは部長に提出するために持って帰った。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から桑原 梅乃さんが去りました。