2020/08/10 のログ
ご案内:「常世渋谷 常磐ハイム 一室」に桑原 梅乃さんが現れました。
■桑原 梅乃 > 夜中に目が覚める。
見えるのは、真っ赤に染まった天井。
(……げ、この感じは……)
"呑まれた"。
おそらく丑三つ時の境界だろう。
ここ常磐ハイムは、裏常世渋谷と繋がっている。
なんとかしないといけないが……体が動かない。
金縛りだ。おそらく怪異や怨霊によるものだろう。
常磐ハイムではよくあることだ。
こういう時にどうするかと言うと。
■桑原 梅乃 > 「メリーさん、今何処にいるの?」
魔術を利用して、なんとか声を出す。
■??? > 「はい、私メリー。今貴方の後ろにいけないので横にいるわ。」
西洋人形のような少女現れた。
■桑原 梅乃 > メリーさんを呼ぶ。
彼女は怪異でありながら、久那土会と協力関係にある。
「久那土御札、ちょうだい」
帰還のための札を要求する。
これが一番確実なのだ。
■メリーさん > 「発動料と合わせて15文になりまーす」
メリーさんは笑う。
笑うと行っても人形なので表情はないのだが。ちょっと怖い。
■桑原 梅乃 > 「ん、わかった。久那土会につけといて!」
高い!給料天引き!苦しい!けど背に腹は代えられない!
常磐ハイムに居を構えたので仕方がないのだ。
これを加味しても家賃はとても安い。
■メリーさん > 「はぁい。それではお帰りくださいな」
懐から久那土御札を取り出して燃やした。
■桑原 梅乃 > 「さんきゅー!」
札が燃え尽きると、視界が揺らいで……元の自分の部屋に戻る。
そこにメリーさんはいない。
彼女は向こう側にしか居られないらしい。
"メリーさんの電話"という都市伝説を元にした怪異は他にも居るようだ。
圏外のハズのエリアで携帯がなったら、後ろを壁にしなければならない、など。対応はいろいろ。
■桑原 梅乃 > 「はーっ、助かった……」
金縛りのせいで汗だくだ。
目も冴えてしまったし、シャワーを浴びて……外にでも行こうか。
歓楽街の側面を持つ常世渋谷は、夜でもそれなりに明るい。
表は。
ご案内:「常世渋谷 常磐ハイム 一室」から桑原 梅乃さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 常磐ハイム 久那土会部室」に桑原 梅乃さんが現れました。
■桑原 梅乃 > 「あれ、ぶちょーも鑑定さんも居な……夜中はいないんだっけ」
受付さんは居る。緑っぽい髪のお姉さんだ。
この人はいつ来てもここに座っている。どうなってるんだ?
受付さんに適当に挨拶をして、奥の休憩室に入る。
ここは登録者も無料で利用できる。
■桑原 梅乃 > 「あつー」
冷房の温度を確認する。設定が28℃になっていた。
エコか!28℃は暑いよ!
外から入ってきた時に涼しいって思う温度にしようよ!
勝手に冷房の温度を24℃まで下げる。
「アイスたべたいー……」
冷えるまでの間、うだうだしながら時計を見る。どう見ても夜中。
「……やめとこ」
そういうの、気になるお年頃だった。
■桑原 梅乃 > 「ん、すずし」
部屋が冷えてたので、ソファーに座る。
ふっかふか(だった)高そうな(安い)ソファー。
バネ飛び出してるけど買い換えるか修理しないのかって聞いたら
部長は「そんな予算はない」って。
しかたないね……。
スマホを取り出して、ニュースサイトにSNSにいろいろチェックする。
無意識に噂話に目が行ってしまう。
梅乃はこう見えて仕事人間である。
仕事中でなくても、仕事に有用そうな情報を集めてしまうのだ。
■桑原 梅乃 > 「…………やーめた」
スマホをテーブルに放って、ソファーに横になる。
落ち着いたらなんか眠くなってきた。
多分怒られるけどここで寝ちゃおうかな……。
「すぅ……すぅ……」
もともと金縛りに起こされた興奮状態だった故の覚醒だったので、
それから解放されたなら落ちるのも早い。
■桑原 梅乃 > 翌朝、部長に叩き起こされ、休憩室を私物化するなと怒られる梅乃の姿があった。
ご案内:「常世渋谷 常磐ハイム 久那土会部室」から桑原 梅乃さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 底下通り」に修世 光奈さんが現れました。
■修世 光奈 > 「いやいや、いーですってば!あーもう!」
特訓?も終えたし、後は目的の人物を探すだけだ。
しかし、表通りを歩いているイメージがあまり今は湧かない。
探そうとすると、どうしても…暗いイメージが付きまとうため、探す場所を変えようと。
そんな思いでやってきた常世渋谷。
ただ、黒街などと呼ばれる場所は流石に自分一人では行けず。
少し中途半端な…底下通りに足を運ぶ。
ここでは犯罪かどうか微妙なラインの呼び込みや客引きが行われており。
もしかすると、そこで一線を越えた人たちのところに目的の人物が現れるかもしれないと。
怖いのは怖いが…まだとある高架下、というだけであり本当に危ない予感はしない。
しかし、それでも客引きが滅茶苦茶に鬱陶しい。
奇妙な形のアクセサリーや、それ、何に使うのと言った道具まで
様々なモノを差し出して買わせようとする人?達から逃げ回り。
(はぁ…何やってんだろ…。入口のクレープ屋さんに戻ろうかなあ)
彼女の能力をもってしても、その人物の位置までははっきりとわからない。
客引き相手に疲れるだけの探索に、流石に心が折れ始め。
客引きの眼につかない死角で、一息つく。
■修世 光奈 > 【何も起こらなかった】
■露店のひと > 「こっちおまけしてやるよー、ほらほら、買えよー」
■修世 光奈 > 「だから、良いですってば―――!!!」
隠れているところも見つけられる。
慣れていない、と見抜かれているのか…ちょろいと思われているのか。
あるいはその両方か。
怪しげな露天の人がわらわらと声をかけてくる。
必死に逃げ回り、物陰に隠れる。そんなことを更に繰り返していき
ご案内:「常世渋谷 底下通り」に桑原 梅乃さんが現れました。
■桑原 梅乃 > フィールドワークがてら街を歩いて、クレープ屋に寄り道して。
噂話を集めようと底下通りに来てみれば。
「んぁ。女の子一人?」
露店の人にめっちゃ目付けられてる。
めっちゃ困ってるな……しょうがない。
「ごめーん、お待たせ!」
小走りで近寄って、待ち合わせを装って声をかけよう。
大丈夫だった?と聞きながら、露店の人達を睨みつけた。
「それじゃ行こっか!」
と、半ば強引に手を取って歩こうとする。
もちろん拒んでも構わない。
■修世 光奈 > 振り払っても振り払っても、別の露店のひとが寄ってたかって奇妙な商品を薦めてくる。
どうしよう、この人たちも仕事だから…なんて思い、困っているところにかけられる声。
「え?あ、あ、えと、わ、わー、やった会えた―。迷っちゃってさー」
もちろん、初対面の相手だ。
活発そうな印象を受ける女の子。
けれど、ぴん、と来る。
待ってもいないのにお待たせ、というのは当然嘘で。
何とか連れ出そうとしてくれているのだと。
手を引かれ、おっとと、と少しこけそうになりながらも従っていく。
睨みつけられた露店の人はまだゆるゆると追いかけてくるが勢いは大分減った。
「あ、ありがと…助かったー…、何かすごいキラキラした目で薦めてくるから、中々振り払えなくて…」
ある程度離れれば、はぁ、と一息ついてお礼のために軽く頭を下げて笑う。
■桑原 梅乃 > ついてきてもらえれば、程よいところまで離れて。
商人たちがついてきていなことを確認して、一息。
「あはは。そうでしょ、ここの人たち積極的だからね」
頭を下げられれば、気にしないで、と手をひらひら。
彼らは商人であるため、黒街ほど強引な人はほとんど居ないものの。
口車に乗せられて連れ込まれることもあるかも知れない。
「そんなワケだから、一人で歩いたら危ないよー?
何か探しものでもしてたの?表じゃみつかんないものとか?」
と聞いてから、はっとして。
「あ、そだ。私は梅乃。にねんせー。ウメって呼んでね。
名前、きいてもいいー?」
■修世 光奈 > 睨みつけてくれたおかげか、商魂たくましい人たちも一時諦めてくれたようだ
「ほんと、積極的だった…。中々味わえないねー」
はぁ、と息を整えて。
「いや、まだ…ええと、奥の方よりはマシかなって。
ええと、うん。人を探してて…。その人、こういうところに出入りしてそうだから」
勿論自分の能力が間違っている可能性も十分ある。
けれど、少しでも可能性があるなら、と探しに来たのだ。
「あ、と。ごめんごめん。助けてくれたのに…えーと、ウメちゃん?
私は、光奈(こうな)だよ。よろしくね!」
助けてくれたのに紹介を後にしてしまった。
それに謝りつつ、自己紹介を返す。
「…って、ウメちゃんこそ、一人?」
一人が危ないのは相手も同じではないかと心配を見せる。
■桑原 梅乃 > 「ま、今度は誰かと一緒に来るといいよ。そしたらゆっくり見れるから。
結構掘り出し物も置いてあるんだよー」
呼び込みはボッタクリばっかりだけどね、と笑う。
「光奈ちゃんね。オッケー、よろしく!」
にっと笑う。それから、一人と聞かれれば。
「あ、うん。そだよー。
ウメは慣れてるからへーきへーき。」
声をかけられないわけではなく、あしらい慣れている、ということである。
「でも、人探しかー。それじゃウメはあんまし役に立てないかも。
一緒に歩くぐらいならできるけどね!
こういう所に出入りしてそうな……って、結構アブない人?」
梅乃が得意なのは噂集め。特に都市伝説。
噂になるほどよっぽどの変わり者であれば、チャンスはあるかも知れないが……。
■修世 光奈 > 「ここぐらいならいけるかなー、と思ったけどちょっと甘かったみたい…ありがとー!
こちらこそ、よろしくー♪」
なんだか親しみやすいノリだ。
気が合いそうな予感がしつつ、えへへ、と笑いを返して。
「慣れてる…。うーん、私もああいう時ははっきり言わないとなあ…
あ、うん。えーと」
少し反省。
ガツンと怒鳴ったりすれば流石に退いてくれたとは思うが、それができなかったから助けてもらう羽目になったのだ。
だから、気を付けようと意識を改めつつ。
「アブない…。というより、アブない人が多い場所に居そうな人…かな?
ええ、と…キッド、って言うんだけど。風紀委員の。帽子を被ったニヒルな感じの男の子。知ってる?」
探している事情を言うのは少し躊躇われるが。
誰を探しているかぐらいは言ってもいいだろうと。
簡単に特徴を伝えてみる。
■桑原 梅乃 > 「うんうん、ナメられるとどんどん来るからね。
ここの人も慣れてるから、暴力とかしなければ全然だいじょーぶだよ。
あ、お金が無いとは言わないようにね。お構いなしの人いるから」
ちらりと露店が有ったほうに視線を向ける。
「アブない人が多い場所……あー、それでこの辺りかー」
確かに危ない人は多い。でもそれだったら、黒街とか、落第街の方に……
いや、女の子一人で行けるとこじゃないか。
納得して頷いた。
「キッド……帽子のニヒルな男の子?
うーん。そこまで目立つ格好でもないねー。
私はわかんないかなー」
風紀委員と聞けばちょっと嫌そうな顔になるが、すぐ戻して。
渋谷は基本的に人が多い故、話しただとか、よほど目立つとかでもない限り殆ど記憶に残らない。
■修世 光奈 > なるほど、と頷く。
要するに、いらないならいらないとハッキリ言うのが一番大事ということなのだろう。
いくら商売だからと言っても赦し過ぎてはいけないということを学んだ。
「そう、いや、うん。ここより怖いところは流石にさ…
異能もこれくらいしかできないから、戦えたりしないし…」
あはは…と苦笑いしつつ、異能を発動。
光奈の周りに5,6個ほどの球体が生まれ。
赤、青、黄色などにぴかぴか光る。
光奈の言葉から、それが本当に光るだけの異能だということもわかるか。
「そっか…。ありがと。後、背がすごく高いかな?これくらい。
よかったら、見かけたときに連絡くれると嬉しいかも…」
良いかな…と言いつつ自分の連絡用端末を取り出して。
連絡先を表示する。
「あと…ごめん。風紀委員とか、嫌いだった…?」
一瞬嫌な顔をしたのは…会話をしていれば見逃すこともなく。
申し訳なさそうな顔で謝ろう
■桑原 梅乃 > 「ま、そだね。ウメも好んでは行かないかも。
人相手に戦うのは苦手だし……」
丸腰に見えるが、一応刀は魔術で偽装して携帯している。
「へー。かわいーじゃん。イベントとか活躍しそうじゃん。
まぁ……確かに戦うのには向かないかもね。目立つし。
ウメのは……こう。あんまりかわいくないでしょ。」
そう言いながら、ジャンプして、もう一回空中でジャンプしてみせる。
異能を明かしてくれたのだから、こちらも明かそう。
「背が高いんだね。オッケー、気にしてみるよ。
なんか分かったら連絡するね」
自分の端末も取り出して、ワン切りする。
「あ、ううん。へーきだよ。その、ウメ、二級だから」
後半は小さな声で。
■修世 光奈 > 「人相手に…。…やっぱり、そういうこともあるよね…。
わ…。そ、そう?えへへ…ウメちゃんの方がすごいと思うけど…色々便利そう」
出た時と同じように光の球は消えていく。
持続力は中々あるが、周りの異能と比べると地味だなあ、と思っていたから。
褒められるのは素直にうれしい。
けれど、相手の異能もまたいろいろできそう、と感心したように。
連絡先を交換してくれれば、ウメちゃん、で登録し―――
「…二級、学生…って、ええと…」
確か最近、その単語を聞いたような。
少し考えて、単語と会話の流れを思い出し…
「あ、えと…"居ない"コトになってる、って、いう?
わ、ごめん!そのー、別に馬鹿にしようとかじゃなくて、えっと…」
何といえばいいのだろう。
大変だったね?…違う気がする。
そもそも、そんな軽い言葉を言われたくはないだろうと…わたわたと手を振って慌て。
「だ、大丈夫だよ!ウメちゃんは私を助けてくれたし!別に怖いとかそんなの全然思わないから!」
ぐぐ、と身を乗り出して力説。
本当にそう思っていることが伝わればいいのだが。
■桑原 梅乃 > 「人じゃないことも結構あるみたいだけど……。
んー、便利といえば、そーだね」
とはいえ、自分の脚力に依存してしまうので、
有効に使おうと思えば鍛えなければならないのだ。
あんまり足は太くしたくないなぁ、とひっそり思う。
こちらも"光奈ちゃん"で登録して。
「そ。お金なかったから、ちゃんと入れなくてね」
今でこそ違反部活でそれなりに収入はあるが、それでも裕福とは言い難い。
「ん、ありがと。
あんまり気にしてないから、だいじょーぶだよ。
バレなきゃ全然問題ないしねー」
目の前の相手に明かしたのは、大丈夫そうだな、と思ったから。
にししと笑う。
■修世 光奈 > 何それ怖い…と。
人じゃない相手も本当に居る、ということに戦慄しつつ。
新たな知り合いを登録し終えれば。
「…お金…。そういう理由でも、あるんだ…」
二級学生になる理由として金銭もあるのだと。
少し悲しそうな顔をする。
「えっと、うん。わたしでよければいつでも相談に乗るし…あ、あと、探し物を受け付けたりしてるんだ。ほら!」
ぱ、と端末を見せればそこには『探し物依頼受け付けます。お財布からペットまで!』
と書かれた掲示板が映っている。
「だから、何か失くしたモノとかあったら連絡してね。
力になれると思う!」
こくこくと、頷いて。
助けてくれた恩返しがしたいと思っている。
■桑原 梅乃 > 「へぇー、探しもの。
結構やってるのかな?すごいじゃん」
さっきの異能が直接役にたつ、というのは考えにくいから、単純に得意なんだろうか。
異能や魔術以外の特技があるのはちょっとうらやましい。
「ん、わかったよー。何かあったらお願いしてみよっかな。
その時はよろしくね!」
取り急ぎ探してる特定の物は思い当たらないので、
このことはしっかりと覚えておくことにしよう。
「さって、光奈ちゃんはこれからどうするのー?
もうすこしこの辺り歩くなら、ついてくけど。
あ、帰るならもちろん入り口まで一緒だよ」
■修世 光奈 > 「へへー。結構これは自慢だよ」
むん、と胸を張り。
実績もあるのか掲示板には多数の書き込みを示す数字がある。
「うん。よろしくよろしくー♪、直接でもいいし掲示板に書いてくれてもいいからー」
最近は色々とあったものの。
やはり、探し物は好きな事なのだ。
だから…その依頼主が増えるのも素直にうれしい。
「あー、どうしよう。
もうちょっと探したい…かな?
ありがとー…!ほんと言うと迷いそうだったんだー…。
お礼に、入口の所のスイーツとか奢るよ!」
既に相手がクレープ屋に寄り道していたことは知らないため、そう提案しつつ。
後は…ゆったりと高架下を見て回り。
最後に案内してもらって、無事、その場を離れることができるだろう。
■桑原 梅乃 > 「おっけー。んじゃ、お供するねー。
あんまり裏とかじゃなければ案内もできるかも」
二人で居ても声をかけてくるたくましい商人をあしらったり、
ちょっとした小物を見つけて買ってみたり。
そんなこんなで底下通りを巡るのだろう。
それから、入り口で。折角奢ってもらえるんだから、
カロリー低そうなやつなら大丈夫かな……なんて思う梅乃が居たりした。
ご案内:「常世渋谷 底下通り」から修世 光奈さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 底下通り」から桑原 梅乃さんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」にエコーさんが現れました。
■エコー > 気付くと己は森の中にいた。
ドローンを利用した立体投影技術で三次元的出力を行ったのが原因なのか、無機物によるアクセスが祟ったのか。渋谷を小型機で動き回っていたら『こちら』に引き寄せられてしまった。
ドローン三基による解像度の荒い、一昔前のビデオ再生のようにノイズ交じりのエコーははたと瞬きしながら周囲を見渡す。
森、森、どこまで見ても森ばかり。
「おーい、誰かいな~い?」
己の声の反響ばかり響いて、答える声は非ず。
ちょっとしたホラーゲームの導入のようだと非現実的な空間に巻き込まれて実感する。
■エコー > 獣も鳥も虫もいない。木を叩けばその形と違って随分鋼鉄めいた音が帰ってくることだろう。叩く真似だけしてみるが、己は非実在的な存在だから実際に触れられるわけでもない、あくまでも真似だけ。
手を後ろに組んで足を伸ばし、ぐっと伸びをする。膨らんだ胸は不安を抱えるよりも期待感に寄せられていた。
「ここ裏渋ってトコロだよね!? うっわー本当にあったんだ!!
動画投稿サイトは繋がらない?! あ、繋がらない」
己の存在だけでも表示しようとインターネットにアクセスを試みるが、この場所からは届かないらしい。
まあ森だし、圏外かもだし。
ドローンの内一基に積んだカメラでビデオ撮影を試みつつ、ザラついた解像度のエコーは森の中を進んでいく。随分と霧が濃くて前が見えづらい。
足場の悪い獣道だが、歩いているフリをするだけのエコーには無関係。さくさくとサンダルで進んでいく。
■エコー > 「電話はダメ? アナログは? モールスは……」
ごごっご……ごごごっ、ごごっ、ごごんごん。
木をドンドンと叩いてみる。硬い金属音が森の中に響き渡る。
無駄に音が良いのがどことなく腹が立つ。この木を伐採して持ち帰れないだろうか。研究所に売り渡せばお小遣いにはなりそうだのに。
「なんてこと! ネットに繋がらないんじゃ私はおしまいじゃない!」
ネットに依存する弱者、ここに至る。自分の等身大の分身を作り出して、手を繋いで抱き合いながら、おーいおいと泣く動作。
■エコー > 「なんとかなるかなぁ……なるといいなぁ」
泣くエモートもそこそこに。裏渋谷をドローンが行く。
深淵をより回帰する為、エコーが霧をかき分ける。
泣き言なんて口にしている場合ではない。彼女はそのまま前へと進み――。
出力された上半身の映像が、ぞっ、と大きな何かに一閃されて掻き消された。
後にはドローンが一基、無残に破壊された残骸が残っていた。
ご案内:「裏常世渋谷」からエコーさんが去りました。