2020/09/11 のログ
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に宇津木 紫音さんが現れました。
宇津木 紫音 > 黒街(ブラック・ストリート)。
渋谷の中で最も治安の悪いと言われるその町で、身長2m近い男に壁際に追いつめられている哀れな美女一人。
カジノとやらに入って見回っていたところ、風紀だとか公安だとか、調査に来たあれそれに間違えられて店の外に連れられてきた。
ああ彼女は一体どうなってしまうのか。

宇津木 紫音 > 「おやすみなさい、ボクちゃん。」

屈強な黒スーツの男が、膝から崩れ落ちて、そのまま顔面から地面に崩れ落ちる。
ちゅぱ、っと唇から舌をのぞかせて、ふふ、と見下ろす。

"ドクウツギ"と呼ばれた毒使い。
軽く唇を重ねるだけで、その唾液は毒にも薬にも。

男の後頭部を踏みつけながら、ぐり、っと足をねじる。
どれだけ顔の良い男でも、こうやって踏んでいれば全て等しく只の無様な人形でしかない。

「はぁぁ……っ」

それが快感だった。身を抱きしめてぞくぞくと震える女。

宇津木 紫音 > 「ああ、そうそう。
 私を脅して暴力を振るおうとした罪は大罪。 死をもって償え、と言いたいところですが。」

「私は優しさに溢れた一般学生。 そこまでは致しません。」

そ、っと男のポケットから財布を抜き取って。
中身を改める。 現金少な。 ふん、と鼻を鳴らして。

宇津木 紫音 > 必要な金品をあらかた抜き取れば、そ、っと手を開いてその財布をぱさりと落として。

「正当防衛として受け取っておきますわ。
 まあ、聞こえてはいないでしょうけれど。」

くすくす、と笑いながら、周囲を見回す。
万が一だ。 誰かに見られていたら、正当防衛であると"説明"しなければなるまい。

誰もいなければ、それはそれ。 "平和"でよかった。 島は今日も平和です。

宇津木 紫音 > 彼女の体液は毒となり、薬となる。
できるだけ濃く、相手の身体に入り込むことで相手の身体を、神経を、脳を、心を支配する。

唾液で間に合わなければ、血液の入った注射器も持っている。
これを相手に突き立ててれば、大概の相手は一撃。生殺与奪の権利を奪える。

とはいえ、キスだけで切り抜けられなかった場面は、今のところないが。

宇津木 紫音 > お金も手に入ったし、カジノは良いところですね。
鼻歌交じりに、するりと路地裏から出ていく女。

ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から宇津木 紫音さんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」に持流 童男さんが現れました。
持流 童男 > ここは裏常世渋谷、
そこに一人の大男が一人、ドウオだ。
噂程度にしか聞いてなかった裏常世渋谷に、目的があってきた。
風紀委員のつてで、この裏常世渋谷に入れるアクセサリーを手を入れた

風紀委員の中島君には感謝だ。

さてその目的とは、自分自身と向き合い、自分の弱さと向き合うことだ。
自分の弱さを、受け入れなければ自分はロベリアさんに惚れられるような英雄になれない。
不器用な自分にはこんなことでしか自分を見れない。

自分から、自分の足で動かなければ。
情けない自分を。受け入れて前に進まなければ。
弱さを醜さを受け入れなければ。

そうしっかりと意を決して、裏常世渋谷に入ってみれば。

持流 童男 > 中には、豪勢なヒーローショーの舞台。

小学生の服をきてヒーローの仮面をかぶり、涙を流しながら、全身に傷を負いながらもヒーローごっこをしており、
周りに何か女性のようなものを侍らせて、優越感に浸っている自分のような影がいた。
そしてその下には泣いている女性のようなものと、怪物の死骸。

そしてその自分のような影は言う。

「よぉ!!俺ぇ!」

ノイズがかかったような声で、某に、僕ににこやかに嘲笑うかのように。
そう声をかけてきた
何だこれは、これが・・周りから見た某だっていうのか。
思わず動揺する。なんせ、自分がこんなに醜いものだと思っていなかったから。
そしてそれに気づいたかのように笑うもう一人の僕。

「なぁ!?今まで何も聞かずに、人を助けた気になってたごっこ遊びは楽しかったか!?
自分さえ、僕さえ助けれない。お前は!自分をほっぽいて楽しかったか!?
だけどそれを人に取られるのは悔しいよなぁ。だってそうしないと誰もお前のこと見てくれないもんなぁ!」

持流 童男 > そう言われて動揺する。
違う。違うんだ。こんなの・・
動揺する僕に、追い打ちをかけてくるもう一人の僕

「だって、裏切られて、傷ついて、いじめられて、自分が悪いと思わないとお前は、
壊れちまいそうだったもなぁ!だから仮面をつけた!これで傷つく必要はないから!
これで!お前は、誰にも解かってもらえないようにした。傷つかないために!!」

やめてくれ・・・
嘲笑う調子で某を追い込んでくる、もう一人の僕

「それでこの様だ。三次元を信じれないで、二次元を信じた結果。
何も信じれなくなってる!!!。」

視界がゆがむ、こんな・・・それは・・・・
心が崩れる。


「過去に絶望しろ!!!、未来に絶望しろ!!現在に絶望しろ!、お前には幸せになる権利なんてないんだよ!!!
僕を捨てた、お前にはな!」


視界が真っ黒に塗りつぶされて、意識が混同する。
そして暗い意識のなか無数の自分が某を苛める。

持流 童男 > 「自分さえ救えない。」
「向き合ってくれる女性にさえ裏切られて」
「いじめられて、苦しくて人を信じられなくなって」
「その結果、自分が悪いと思って、お前になにができる?」
「そして親身にしてくれた人たちを信じれなくなって仮面をかぶって逃げてきた。」
「おまえは、 なにも  すくえない」
「むきあわずに、ことばも かんがえずに、とりこぼしてきた、おまえになにができる?」

視界が暗くなっていく。
自分自身の言葉に、自分の言葉に襲われる。
某は・・‥某は・・!

「自分が、悪いと、すべてしょい込んだ気になってるお前は、何もできない」
「何も感じれない。」
「感じる、言葉さえない」


意識が沈んでいく。

沈んでいく。

そしてーーーーーーー

持流 童男 > 意識が・・、場面が変わる、いじめられてた自分を見る。
引きこもってる時の某だ。
弱い某だ。
ちょうど魔法少女ブルーが、敵の幹部に追い詰められてたシーンだ。
何だ結局彼女も・・ノイズがかかる。

持流 童男 > 「だけど・・・る」
持流 童男 > そう魔法少女が言う。
持流 童男 > 「やれば!!!できる!!!!!」
持流 童男 > その言葉に、思考が急速に帰ってくる。

ーーーそうだ。

・・沈み切った意識の中誰かの声が聞こえる。

ご案内:「裏常世渋谷」にロベリアさんが現れました。
ロベリア >  
歓楽街にある童男のアパートで彼を見送ってから数刻後。
こっそり後を追いかけて常世渋谷を訪れたロベリアだったが、肝心の童男を見失ってしまった。

「むぅ。こんなことなら最初からイッショにいくというべきだったか……
 いやいや、何をばかなことを。べつにモテルがシンパイなわけではないのだぞ」

などと自分に言い訳しながら途方に暮れていると、一匹の蝶がひらひらと目の前を横切った。
淡い燐光を纏いながら舞うその蝶に不思議と興味を惹かれ、後を追いかけている内に───周囲の景色が一変する。
それが"裏"に入り込んだのだということをロベリアは知らない。

ロベリア >  
「…………うん? あれは……」

なおも蝶を追いかけて"裏側"を進んでいくと、開けた場所に出た。
何やら舞台のようなものが整えられ、壇上に人の姿が見える。
一人は探していた童男。その場に膝をつき、頭を抱えてうずくまっている。
その対面にいるのは……これも童男。珍妙な格好で醜い生き物を侍らせている。

「なんだ、これは……? どうなっているのだ?」

そういえば、彼は"自分と決着を付ける"ようなことを言っていた。
目の前に繰り広げられている光景が、文字通り"自分との戦い"なのだとしたら───
あの、追い詰められている(ように見える)方がロベリアの知る童男と見て間違いはないだろう。

ロベリア >  
「おい、モテル! なにをしている!」

無人の観客席を走り抜けて舞台へと駆け寄っていき、声をかける。
しかし、何か術にでもかかっているのか……返事はない。
そうこうしている内に、もう一人の童男がロベリアに気付くだろう。

シャドウ童男 > 「おいおい、また僕のファンかい?まぁいいや僕の物に成れよお前」

そう嘲笑いながらも、泣きながらもロベリアさんに近づいていく
触手をはやしながらも、仮面の内側で泣きながらも

触手でロベリアさんを捕まえようとするだろう

持流 童男 > ・・・何やってんだ某は。

誰かに心配されている・・だけど体が動かない。

うごけ・・!うごけって・・!動かそうとするが動かない。

ロベリア >  
「はん、ふざけたことをいうな。だれがキサマのファンなものか!
 ワレはいずれ魔界をすべる大悪魔だぞ」

涙を流しながら下卑た笑いを浮かべる異形の童男を鼻であしらう。
あれはもはや人の形を成しておらず、化け物と呼ぶに相応しい。

「……さしずめ、ヒトであることをやめた"英雄"のなれの果て、といったところか」

童男が抱いていた歪んだ英雄願望を体現したものが、あれだ。
まさしく彼が決着を付けなくてはならない存在と言えるだろう。
ここで悪魔の力を解放し、奴を粉砕してしまうこともできるが……きっと、それでは意味がない。

ロベリア >  
「モテル、おい、モテル! きこえているならヘンジをしろ!」

異形の童男から目を離さないようにしつつ、蹲る童男の前に立って背中越しに呼びかける。

持流 童男 > あれ‥この声は・・・この声は知っている。

そうだ、この声はよく知っている。応えたい。この声に

わがままで、強くて、大悪魔が夢な、そんな悪魔の声だ。
ロベリアの声だ。
そして勇気づけてくれる。悪い声だ。

やれば、できる。

心の中に、悪魔のわがままな声と、魔法少女の声が聞こえてくる。
きっとそうだ。勇気が、満ち溢れる。心の闇を照らす。
心のマグマがあふれる。魂の光があふれる。
魂が震える、魂が吠える。推しの言葉に。

そして

この言葉を大声でいえば!!

心が燃える!!!!!悪魔の声に!!応える!!!!

体が動き出す。

持流 童男 > 「やればできる!!!!!!!」
持流 童男 > 魔法少女ブルーの決め台詞と、
ロベリアさんから受け取った言葉とともに
自分の影をぶんなぐる。


ブルーだって、アニメの中の苦難の壁に立ち向かって折れそうになってきたのを、
ダメな時は仲間を頼ってた。

どれだけつらくて苦しくても、辛い状況でも、愛と友情と平和をうたいながら
「やればできる」そう奮い立たせてた。

だから、今度こそ僕は、ロベリアさんに頼った
だってきっと僕は一人じゃないから。一人じゃなかったから

シャドウ童男 > 「ぐっへっばぁ!!!!!」

そう言いながらも殴られた自分は倒れる

泥をまき散らしながら仮面を、割られながら地面に倒れる。

ロベリア >  
「なっ───」

突然の大声にロベリアが驚いたのと、動かないと思っていた童男が立ち上がったことに異形が驚愕したのはほぼ同時。
直後に拳が打ち込まれ、取り巻きと共に吹き飛ぶ異形を見て笑いが込み上げてくる。

「ク……ククッ、ハハハハハ! キサマ、やればできるではないか!」

童男にとっては目が覚めたらロベリアが傍にいたことになる。
置いてきたはずなのに……と驚くかもしれない。

持流 童男 > 「はぁ・・はぁ・・・ロベリア殿・・・なんでここに?」
そう呆然としながら驚き顔をしつつも
疲労困憊だ。

いや・・そんなことはいい

「ありがとう」

なんだか言わなきゃいけない気がした。ロベリアさんに
そして仮面を割られた異形の影の中から、泣いてる子供が一人出てくる。
幼いころの僕だ。
醜い顔をして泣いている。ずっと泣いてたのか、

ロベリア >  
「だから───礼はいらんといってるだろうが!
 ヘンな光る蝶をおいかけてきたらキサマがいただけだ。カン違いするな」

ふん、と腕組みをして鼻を鳴らす。
そういえば、ここまでロベリアを導いた蝶は姿が見えなくなっていた。
まぁ今はそんな事はどうでもいいと異形の方へ視線を向ける。

「しかし、こんなモノがキサマのココロに巣くっていたとはな。
 チリものこさず消しとばしてやることもできるが……どうする?」

掌に闇の魔力を集中させながら問う。
もちろん、本気で手を下すつもりはないのだが。

持流 童男 > 「いや、この子は、某が、助けなきゃいけない子でござる。」
と手で制する。
自分自身を消し飛ばしてしまっては元も子もない。
ロベリアさんを止めようとする
そして、子供に、もう一人の自分に近寄っていき

「どんなに醜くても、辛くても、苦しくてもきっと、僕は僕だったんだ。
見栄っ張りな。そんな誰かに見てほしくて愛してほしかった僕。
傷つきたくなくて、誰かに優しかった。いや優しい僕。」

そう言いながらも抱きしめてやる



「ごめん。もう離さないから。」



そう言ってから思いきり抱き締めてやる。自分を愛する。

ひどく醜く泣いてた顔をしていた幼いころの自分が初めて、自分自身を好きになれたのか
笑った。

その瞬間、光の粒子になって自分の中に入っていく。
弱さを初めて自分で受け入れたらきっとその先には、知られざる英雄ではなくて。

ロベリア >  
「そうか」

期待通りの答えだ。あっさりと魔力を収めた。
そのまま再び腕を組んで顛末を見守る。
幼い姿の童男は笑みを浮かべながら、光と化して童男の中に消えていった。
弱い自分を、英雄になりきれない自分を認めたからだろう。

「……それで、答えは出たのか?」

持流 童男 > 「うん、僕は僕だった。それ以上でもそれ以下でもなかった。
どれだけ醜くても、辛くても。それでも前に進む。
それが某だったんだ。
だから知られざる英雄じゃなくても誰かを助けることはできたんだ。
前に言われた言葉なんだけどね。」

そうロベリアさんに、しんみりした顔をした顔を見せながらも

どくん

と心臓が脈打つ

知られざる英雄を否定して、自分の弱さを、いやなところを受け入れ、思い出が、つながりが、それらが『知られざる英雄』を否定した。知られざる英雄は知られないから知られざる英雄だ。
だが彼はつかんだ。
自分自身を救った。
藻掻いた末に。
足掻いた末に。


日の光、あたたかな光が。
豪勢なヒーローショーの空間を、夜明けの光のように照らす。

「知られざる英雄が変わったのを感じるでござる。・・多分」

三肢が明るくなる。太陽の様に。義手も輝く
夜明けを告げるように、暗い夜を抜けるように
明るく太陽の輝きの幻影が見える。心の火が消えない限り消えないだろう。
だけど今はすっと消えさせるまぶしい

知られざる英雄の異能がなくなり。忘れられてた記憶が呼び覚まされる。
世界を渡る、記憶の干渉がなされる。
そこにあるのは悲劇かも、知れないし喜劇かもしれないだけど、仮面を破った
もう後には引けない。引くつもりも、逃げるつもりもない。

そうにっと、運命に笑って

「ロベリア殿、手握ってもいいでござるか?
こう、一緒に歩きだしたいので。」
そう言った。自分に我慢するのはやめよう。

ロベリア >  
「ふん……いったはずだ。英雄たるもの、名をのこさずして何とする、と。
 このセカイに、人びとのキオクに名をのこしてこそ英雄よ」

これでようやく張り合いが出るというものだ。
童男の体が輝きを纏い、ひと回り大きくなったように見える。っていうか眩しい。
光が消えるまで手を翳していると、手を握っていいかと訊かれた。

「たわけたことをいうな。英雄と手をとりあう大悪魔がどこにいる」

その申し出を一蹴して鼻を鳴らす。
やれ愛してるだの、やれ一緒に歩き出したいだの……どこまでお気楽なのだ、この男は。

「キサマの手をとるときが来るとしたら、それはケットウの申し出のみ。
 変わったというなら行動でしめしてみせろ。ワレを惚れさせるほどの英雄になるのだろう?」

ニッ、と挑戦的な笑みを浮かべ、ショーのステージを飛び降りた。

「ほら、帰るぞモテル」

持流 童男 > 「っとふられたでござるか。」

そう少しだけ友人に笑いながら。
その笑顔は仮面をつけていなかった
そしてこちらもショーから飛び降りる。

もうショーの時間は終わりだ。
<うん、それでいいよ。きっとこれで君は進める。>

どこかからこの声が聞こえてきた。
見知った声、だけど、今は振り向かない。
静かにうなずいて

「・・・うんロベリア殿。帰ろう」
そう言って、裏常世渋谷から、出ようとすれば
いつの間にか出ているかもしれない。

ご案内:「裏常世渋谷」から持流 童男さんが去りました。
糸目の女性 >  
二人が裏常世渋谷を立ち去った後。
燐い光を帯びた蝶がひらひらと舞いながら姿を現し、一人の女性の指先に止まる。

「くふふ……これにて一件落着、ってな」

口元に弧を描き、もう片方の手に持っていた扇子を閉じると、女性はその場を後にした。

ご案内:「裏常世渋谷」からロベリアさんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」に桑原 梅乃さんが現れました。
桑原 梅乃 > 路地裏のビルの壁に貼られた、鳥居が書かれた御札。
それにそっとタッチすれば、久那土会のお守りの効果が働いて、裏渋谷に"侵入"する。

視界が歪み……ノイズが走り……辺りが虹色に光りだした。
地面が、建物の壁が、空が、目に悪い色に光っている。

「うわっ……出たよ」

先日常磐ハイムにある自宅で"呑まれた時"に存在を確認した、
前後不覚になりかねないゲーミング裏常世渋谷。

桑原 梅乃 > こんな空間で怪異なんかに遭遇したら、
距離感を見誤ってしまって大変なことになりかねない。
目の前に鳥居の札がまだ存在してるなら、あるいは久那土の札を持っているなら、
すぐに利用して帰ったほうが身のためだろう。
だが……梅乃は部活「久那土会」の部員で、調査員だ。このサイケデリック空間も、調査しなければ。

「ということで……秘密兵器!」

ハズレを引いたので、気分を高めるべく一人で虚空に向かって説明をする。

「じゃん!『照魔眼鏡』!」

以前自宅で巻き込まれた時に起きた現象を纏めて、部活に報告。
その情報を元に久那土会が作り上げた、メガネ型の装備品だ。

「ということで、装着!」

スチャッ。虹色で道の形もおぼろげだった視界が
ただの薄暗い裏常世渋谷に変わっていく。

「ん、ばっちり!」

なんだか定番な感じもする。なんだろうね?

桑原 梅乃 > 『照魔鏡』。
様々な伝承に登場する鏡で、妖怪や悪魔の正体、
そういった分野の魔術などを照らし出し暴くとされている。
もしかすると祭祀局などはそれそのものを持っているかもしれない。

そこに着目して作り上げた特別製のメガネ。
付けることによって、靄があればある程度クリアになり、
さらに脳に負担がかかる情報を軽減するというすぐれものだ。
まぁまだ試作品なのだが。これを試すのも、部員の役目。
問題がなければ、久那土会で買うことが出来るようになるだろう。

ということで、探索を開始する。
ついさっきまで虹色に光っていた裏常世渋谷は、
よく見る薄暗いだけの裏常世渋谷になっていた。
前回は不意打ちだったのでろくに調査出来なかったが……
今回はちょっとぐらいは調べられそうだ。
こういう場所には、特有の怪異が要る可能性が高い。

先日遭遇したような、粘体質の奴とか──

桑原 梅乃 > いたわ。すぐ近くに。
黒い粘体がいた。

眼鏡越しに見れば虹色には光っていない。
代わりに、目玉がいくつか有るのがわかる。
常人の感性でいけば、非常に悍ましい様相をしている。

梅乃はというと、それを凝視して動きを見極めようとする。
こんなことで驚いて居ては久那土部員は務まらない。

しかし……相性は最悪だ。
粘体相手に、刀はまず通じない。
質量攻撃であれば飛び散らせて弱らせる事ができるだろうが……。
梅乃は刀しか持っていない。つまり魔術戦を強いられる。

桑原 梅乃 > そういえば。
前回出会った時は風の魔術で吹き飛ばせたな。
壁もろとも、ではあるけど。

「えいっ」

刀を抜いて、魔術を纏わせ振り下ろす。
鈍重な動きの粘体はこちらに気づいても居ないようで、
緑色の風の斬撃が黒い粘体を両断する。

両断された断面はすぐにくっついたが……
その部分に浮いていた目玉は黒い灰になって消滅していた。

「なるほど」

つまりこいつは集合体。
全部潰してしまえば倒せる、ということだ、恐らく。

呑気に考察をしていれば……粘体の目が全てこちらを向いた。

「うわっ」

なかなか正気を失いそうな、ひどい光景だ。

桑原 梅乃 > 種がわかれば話は早い。
目玉を斬撃で破壊できるのなら……。

一気にバラバラにしてしまえばいい。
今日は巻き込んで困るようなものもない。

粘体が動き出す。
高速で粘体の腕を伸ばしてくる。かなり細くて鋭い。
受けたらひとたまりもなさそうだ。

刀に風をまとわせながら、次々と襲いかかる腕を避ける。
避ける。跳んで避けて、跳んで避ける。

「よし……いっけえぇ!!」

黒い風の渦が刀からまっすぐに吹き荒れる。

《星紋魔術》──龍刃。
黒い風が龍の様に襲いかかり、さらに命中した場所を中心に
無数の風の刃が切り刻むという、刀専用の魔術だ。
数年前に白い髪の女性に教えてもらった。今あの人はどうしているのだろうか。