2020/10/04 のログ
芥子風 菖蒲 >  
「─────……」

熱と衝撃が、一瞬意識を奪ったらしい。
硝煙に視界が遮られている。斬れはした。
だが、爆発は防ぎようがない。全身が痛い、熱い。まともに受けたらしい。

「いった……」

しかし、体は"動く"。
手足もまだ、付いている。幸い、地面に落ちることはなかったようだ。
断崖の淵、瓦礫の上で寝そべっているとは、"幸運"だ。
未だ、青空は曇らない。淡い光を保ち、よろめきながら立ち上がり……。

「……アイツ……煩いな……!」

怪鳥を、見上げ、青を見開いた。視界は赤く、染まっていく。
怒りに頭が冴えた。良くもやったな。
腸を煮詰める闘争心に同調するように、青空の光が陽炎の如く揺らめいた。
仕留めそこなった事は、此方にとって僥倖だ。
慢心は無い。躊躇など、初めから無い。
あれだ。あの夜空へと飛ぶんだ。そのためには何だ。何が邪魔だ?


────嗚呼、あれだ。あの怪鳥だ。


月への旅立ちへと憧れた黒兎。
跳ぶ為の足に、青白い光が大きく、大きく、夜風に揺らめく。

鉄鳥『朧飛車』 >  
地を焦がす怨嗟の炎。
轟音と焦土が摩天楼を包み込もうと、硝煙に陰る青空は消えていない。

『──────』

なればこそ、そこに慈悲も容赦もない。
鉄火の驟雨が、無慈悲に嵐と襲い掛かり────。

芥子風 菖蒲 >  
 
          ───────兎は、跳ねる。
 
 

芥子風 菖蒲 >  
翼は持たずとも、其処に"足場"があれば鳥と成る。
嘘から出た実。翼の代わりに脚を以て砲弾を蹴り、夜空を舞う。
差ながらそれは水上の船。八艘如く、飛び跳ねて魅せる。
陰の下、上へ上へ、爆風に翻る黒衣を、焼ける身を諸ともせず
ただひたすら空は天を見上げた。ついに──────……。

鉄鳥『朧飛車』 >  
 
            『──────!』
 
 

芥子風 菖蒲 >  
 
            「追いついた……────!」
 
 

芥子風 菖蒲 >  
 
        般若の目前。驚愕に面が歪んでももう遅い。銀を覆う青空の光が、鉄の怪鳥の体を通り抜けた。
 
 

芥子風 菖蒲 >  
空に舞う、黒兎。空を滑空する事は出来ずとも、地に足付けば歩く事が出来る。
飛ぶも歩むも出来るなんて、贅沢な生き物だ。
一息吐いて振り返れば、不愉快な金切り音と燃え上がる紫紺。
暗雲の如き紫の太陽が墜ちる傍ら……。

「……綺麗だな」

朧月は、満天に輝く。

芥子風 菖蒲 >  
辺りに残るのは残り火の焼ける音。
嫌な気配は、もうしない。あれが最後だったらしい。
改めて自分の体を見れば、嫌に焦げ臭いし、痛いし、視界が赤く染まっている。

「……ん。切れてたか」

額が切れて、滴る鮮血。吹き飛ばされた時に出来た傷。
真っ赤に視界を染め上げているのに気付いたのは、事が終わった後だ。
強引に袖で血を拭えば、また一息吐いた。

「はぁ、つっかれた……」

すっかり脱力だ。刀身を肩に担ぎ、月夜を背に千鳥足。

芥子風 菖蒲 >  
 
                 千夜一戦。今宵の朧車の怪は、これにてお開き。
 
 

ご案内:「裏常世渋谷」から芥子風 菖蒲さんが去りました。
ご案内:「クラブ「CLACK-CLACK」に萌良 さだめさんが現れました。
萌良 さだめ > (裏渋谷に「朧車」出没の報あり。
 すわテロか、もしくは外患か…その一報に公安委員会は打ち震えた。
 それを調査するのは大事だが、裏渋谷に直接赴くのはリスクが高い。
 となれば、取れる手段は若干迂遠ではあるが、表渋谷からの調査である。
 すなわち、鏡合わせの存在…”表”渋谷に急に発生するようになった怪異を探し、
 その研究を以て朧車に対する武器となそう、という考えである。)

えーと、ジンと、トニックと…はいー。 次。
コーラに、紹興酒? 合うのかこれ。 まあいいや、次。
ドランブイにウォッカを? ……はい。次。
(霊的なゆらぎが強いいくつかの”候補地”のうち、さだめが調査を命じられたのは
 クラブハウスであった。 店主に話を通し、店員という形で入ってはいるものの、
 今のところ調査に進展はなく、ただただお酒を作る日々である。
 さらには性別を説明したにも関わらず、バニーの格好だった。)

まあいいところではあるけどねー。
(どごどごという重低音が速いテンポで鳴り響く。
 下の熱気が吹き抜けからこっちにまで届きそうなぐらいだ。
 一瞬客の動きが止まったのを見て、冷蔵庫から炭酸飲料の瓶を取り出し、
 勝手に開けて飲む。 店員だって水分を補給したくもなる。)

萌良 さだめ > (フロアを覗き込むようにして、オーディエンスをじっと凝視する。
 もちろん色々な人物がいるが…”ゆらいで”いるような気配はない。
 こういうときに特殊な道具を使わなくても、ある程度魔力と親しい
 妖精の血は便利だ。 …外見がだいぶ年齢とそぐわないのはともかく。)

うーん……。 建物そのものにも今の所は怪しい気配はなし…。
あっ、やっべ! はいはい、お酒今やりまーす。
(観察を続けはするものの、散発的に来る注文に応えながらでは
 きっちりと調査できるわけもなく、更にはDJ交代のタイミングで
 お酒を頼む人が増える。 おおわらわだ。)

萌良 さだめ > (えっさほいさとドリンクを作っているところで、
 クラブの人に呼び止められる。
 バックヤードに来てくれ、というジェスチャーだった。
 とりあえずドリンクが落ち着いたところで、
 言われたとおりにバックヤードに移動する。)

どうしたんですか? えっ、児童労働の疑いがあるって警察に連絡された?!
今日はもうカウンターはいいから、警察に説明してほしい?
いやあ、いいっすけどね…。
(こんなナリでも大人なのだが、ということをクラブの人にしても仕方ない。
 とりあえず今日の調べ物は諦めて、おとなしく説明のために
 バニースーツから普段着に着替えて、警察を待つことにしたのだった。)

ご案内:「クラブ「CLACK-CLACK」から萌良 さだめさんが去りました。