2020/10/18 のログ
ご案内:「落第街大通り」に角鹿建悟さんが現れました。
■角鹿建悟 > あの異界から、成り行きと己の意志で怪異を風紀委員の『師匠』と共に討伐してから相応に時間が経過した。
両腕と肋骨の骨折もほぼ完治し、目出度く退院となったその足で出向いたのは――落第街だ。
「―――ここに足を運ぶのも久しぶりだな…。」
少なくとも、体感時間的にはかなり長い間足を運んで居なかったように感じてしまう。
自分がとある先輩に”圧し折られて”最初に入院した時から、と考えると長いようで短いような…。
相変わらず、この大通りは落第街全体で見ればまだマシとはいえ混沌としている。
当然、崩れ掛けた建物なども自然と目に留まる。以前なら片っ端から己を文字通り削りながら直し回ったものだ。
勿論、あの『呪い(やくそく)』は覚えているし違えたつもりも一切無い。
…今は仕事もクビになり、手首に嵌められた黒いリストバンドのお陰で能力も自由に使えない身だ。
かろうじて生活委員会そのものには留まっているとはいえ、直す事に時間を割く事は難しくなってきている。
(―――それでも)
この街を直すと約束した…まだ折れる前だったが、それでもあの時の言葉と気持ちに嘘偽りは無い。
今はまだ、完全に立ち直れて居ない体たらくではあるが…必ず、また直し屋に戻ってやる。
――そして、また同じ事の繰り返しにならないように…自分を削るだけにならないように。
そういう自戒と反省も込みで、改めてこの街をこうして歩き回っている。
生憎と、戦闘能力という点では一般学生とそう大差は無いので今回は大通りを歩く程度に収めているが。
■角鹿建悟 > 時々、声を掛けられるのは自分の事を多少なり見聞きした事がある人たちだからだろう。
とはいえ、残念ながら自分は彼ら・彼女らの顔を”覚えていない”のだ。
仕事第一だったとはいえ、どれだけ周りを見て来なかったのか、というのを改めて痛感させられる。
「――自分と向き合う…人と向き合う……しっかりやらないと、な。」
今の所、幸いというべきか絡まれたり変に因縁を付けられたりする事は無い。
まぁ、せいぜい物好きなヤツが勝手に直して廻っている、程度の認知だろう。
別にそれはいいのだ、自分がやりたいから――いや、今思い返すとそれは違うか。
ともあれ、声を掛けてきた人達に一人ひとり、何時もながらの仏頂面だが彼なりにちゃんと応対する。
相手の目を見て、言葉に耳を傾けて、そして自分の言葉を返す。当たり前で基本的だけど。
自分はそれすら出来ていなかったのだから、一歩ずつだ…やり直し、なんて何度も出来るものじゃない。
「……けど、仕事道具くらいは持って来るべきだったな…。」
こう、やっぱり壊れたままの物を見るとやや落ち着かない気分になる。
能力が使えなくても、工具などは一通り扱えるので最低限直したい衝動についつい駆られてしまう。
ただ、入院中に何人かの人たちと対話して、改めて思ったのは…本当は、『直す』だけでなく『創りたい』という根底。
そして、その源泉。単純に『誰かを救いたい』という、幼稚に過ぎる思いだ。でも、大事な初心でもある。
■角鹿建悟 > しかし、生活委員会の仕事に専念、となると修繕部隊の時に比べれば若干時間に余裕は出来る。
もっと建築関係の本を読み漁ったりするべきかな…と、思う。知識は経験と同じく決して無駄にはならない。
特に、能力に制限がある自分にとっては、今後は工具なども多用する機会が必然的に増えるだろう。
なら、尚更にそういう知識や技術をもっと磨いておくに越した事は無い、
「――と、なれば…。」
大通りを歩きながら、ちょいちょいと工具やそれに類する物が置いてありそうな店を覗いてみる。
先ほど、仕事道具とはいったが、もう修繕部隊をクビになったので自前で何とかするしかない。
一応、自宅に最低限の工具は置いてあるがそれだけでは心許ないのも事実。
(――まぁ、流石に工具の専門店とかは落第街とはいえ無いだろうが…)
むしろあったら常連になるだろう。間違いない。直す仕事の依頼は矢張り落第街が多かったし。
ご案内:「落第街大通り」にF.U.R.Yさんが現れました。
■角鹿建悟 > 「工具といえば、あのハンマーは凄かったな――…いや、アレは武器だったが…。」
確か、風紀委員会の特別攻撃課、だったか。自身の友人兼師匠が所属している部署だった筈。
あの後、簡単に聞いた話では風紀でも選りすぐりの部隊らしいが…。
(緊急事だったとはいえ、プロテクターと特殊な武装を拝借してよくクビだけで済んだな俺は…)
今更ながら、自分は何をやらかしたのやらと呆れるしかない。反省は勿論している。
――ただ、また同じ場面に出くわしたなら自分は今度はさっさと退避するだろうか?
…残念ながらそれは無理だ。いい加減、自分の性分を少しは見返すようにはなっている。
「……時と場合により無茶も必要…だが、自分もきちんと大切にしないといけないな。」
それを達成するのが凄く難しい。少なくとも自分の場合は。考える時間が増えると課題が本当に多いな自分は。
大通りを歩きながら、時々店に立ち寄りながらも目ぼしい物は特に目には留まらず歩き続け。
■F.U.R.Y >
「………」
そうしてうろついていれば、随分と家屋が損壊している区域に入るかもしれない。
瓦礫が周囲に散乱しており、人もあからさまにそこを通るのを避けている。
そんな家屋に、めり込むようにしたまま動かない男が一人。
酷い傷、暴れたような跡。
息はあるようだが気を喪っているらしく、動く気配はない。
■角鹿建悟 > 「―――…?」
職業柄――いや、今はもう修繕部隊はクビになっているが…建物の損傷や倒壊にはかなり目ざとい。
直ぐに損壊が激しい区域に目が止まれば、自然とそちらへと足を踏み入れてしまうだろう。
――と、そんな区域の一角にある家屋の一つ。そこに文字通り”減り込んで”ぴくりとも動かない男の姿があった。
…そちらへと駆け寄れば、軽く息を確かめるがどうやら大丈夫らしい。ただ、気絶しているようで全く動かない。
(…ただの喧嘩騒ぎ、とは言い切れないが…どうしたものか)
こういう厄介そうな場面は出来るだけ穏便に関わらないのが鉄則。
とはいえ、放っておく訳にもいかないので、直ったばかりの両腕で減り込んだ男を家屋から引っ張り出そうとする。
筋力は相応に衰えてしまっているが、リハビリや筋トレは欠かしていない。
少々苦戦したが、何とか家屋から男の体を引っこ抜く事だけには成功したかもしれず。
■F.U.R.Y >
「‥‥…、ァ‥‥…?」
引っこ抜かれれば意識を取り戻したように、瞼が開く。
煌々と燃える炎のような赤い目。
睨みつけるような瞳には荒くれもの特有の威圧感を感じさせるやもしれない。
ただ相当消耗しているのか、暴れるような事はない。
勿論、何等かの害意を見せれば話は別かもしれないが……
「…、……誰だ、テメェ…
………ずいぶん、小奇麗なカッコじゃねェか……”風紀委員”か…?」
睨みながら、男は青年に問いかける。
■角鹿建悟 > 「……目が覚めたみたいだな。何をやったのかは知らないがあんな状態で気絶していたら風邪を惹くぞ」
意識を取り戻したらしい男へと、何時もの仏頂面と落ち着いた声色でそう話しかける。
煌々と炎のように赤い瞳、睨み付ける様な視線は荒々しいが男は慣れたものだ。
特に動じた様子も無く、彼が意識を取り戻したので軽く腕を摩りながら少し離れようか。
「学園1年の角鹿建悟だ。――残念だが俺は生活委員であって風紀委員会の所属じゃあない」
男の問い掛けにも、名前と学年、所属する委員会を答えながらもきっぱりと否定する。
風紀委員会の知人友人は何人か居るが、そこを喋る事は流石に控えておこうか。
「――で?アンタは?別に名乗りたくなければ構わないが、何で家屋に減り込んでたのかくらいは聞かせて貰いたいものだな。」
■F.U.R.Y >
「セーカツ…イイン?
……ハッ!
学園の犬が、ここに何の用だってんだ……
テメェラのナワバリじゃねェだろうが、ここは」
そう言いながら立とうとして、ふらっと体制が崩れかける。
「ァ…? 名前なんざねェよ……めりこんで…、…ただの、ケンカだ。
学園のセーカツイインサマが知ってどうする、ンな事をよォ」
落第街は学園から”無い”という扱いをされる街だ。
だからこそこの街に住む人間も”無い”ものとして扱われる。
それは後ろ盾がない事を意味するが…同時に制約もないという事だ。
無論、それは落第街の中で、落第街の連中だけで回している事に関しては…だが。
…その筈であるにも関わらず、近年増加する”学園”側の人間の警邏などの活動。
恩恵もないのに、制約だけを押し付けようとしてくる。
落第街の住人の中では、男のように学園システムを嫌う者も…少なくはない。
「…風紀委員じゃねェなら用はねえな。
イッパンセートが落第街なんざ来るんじゃねェ、さっさと帰り……、……」
そう言いながら、ふらふらとしてそのまま突っ伏すように倒れる。
■角鹿建悟 > 「――別に学園の犬呼ばわりはどうでもいいし、縄張りだの何だの俺には興味は無いし関係無いな。」
落第街が表向き無い事になっているのも、風紀委員会のあれこれも知ったこっちゃない。
自分はただ、直す仕事で落第街に頻繁に訪れていただけであり、そして一つの『約束』をした場所でもある。
「――そうか。で、その喧嘩相手は姿が見えないようだが?…それと、別に他意は無い。家屋に人が減り込んでたら普通は気になるもんだろう。」
少し前の自分だったらどうかは知らないが。ともあれ、刺々しい彼の態度も意に介さず、といった態度を保つ。
荒事はさっぱりだが、そもそも一度圧し折られた事に比べれば威圧的な態度などは可愛いものだ。
「一般生徒じゃなくて一応は生活委員会の所属だ。風紀が嫌いなのは勝手だが――…おい。」
そろそろ引き上げるつもりでもあったし、その言葉に異存は無いが。
だからといって、倒れた男を放置する薄情さも趣味も無い。再びそちらへと歩み寄れば助け起こそうとして。
「…取り敢えず何処かで一休みでもしておいた方がいいぞ、名無しの旦那。大きなお世話は承知だが、このまま倒れられても寝覚めが悪い。」
とはいえ、この辺りは倒壊や損壊が激しい区域だ。雨露を凌ぐのが精一杯そうな場所しかない。
■F.U.R.Y >
「………‥‥‥‥」
男は動かず、言葉に返事もしない。
代わりに……
ぐぅ~~~~~~~~~~~~~~…‥‥
腹 が 返 事 し た 。
■角鹿建悟 > 「…俺の心配を返せ名無しの旦那。」
■角鹿建悟 > 盛大な腹の虫に、一瞬きょとん、と目を丸くしてからはぁ~~…と、盛大に溜息を一つ。
仕方ないので、彼に肩を貸しながら一度その区域から出て手近な落第街の大通りの一角にある屋台へと立ち寄ろうか。
「――親父さん、何か適当にこの旦那に食い物を頼む。…あぁ、俺は今は腹は減って無いからいい。代金は――先払い?じゃあ、このくらいで。」
と、手早く財布を取り出して代金を支払いつつ、男を屋台の席の一つに座らせておく。
その隣に腰を下ろせば、取り敢えず水だけは貰っておこうかと。
ちなみに入ったのはラーメン屋台である。
■F.U.R.Y >
「ウルセェ…
こちとら6日メシ食ってねェんだよ……何かモンクあっか…」
口を動かすのも億劫な程に腹が減った。
衝動的に動いて回り、それで大分無茶はしたが…最後の追い打ちは傷でもなんでもなく空腹だった。
人間、食えなきゃ死ぬモンだな。トーゼンだが。
そうしながら引っ張られ、屋台まで連れてこられ、飯を振舞われる。
「…何のつもりだテメェ……テメェらの助けなんざ要らねえよ……」
そう言いながら何度か拒もうとしたが……
……‥‥
■F.U.R.Y >
ズルズルズルズルズル
むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ
バリバリバリバリバリバリ
ガツガツガツガツガツガツ
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ
ゴキュゴキュゴキュゴキュ
「親父、コイツオカワリだ!!
あとそこのタマゴもつけろ!!
肉もだ!!!
あと三杯!!!」
■角鹿建悟 > 「――別に文句は無いが?アンタの食事事情まで俺が知る訳ないだろう、そもそも」
如何にもぐったりしている様子の相手に、最初は怪我か体調不良を疑っていたが…ただの空腹らしい。
とはいえ、一週間近く空腹なのは普通に命の危険も出てくるレベルだろうに。
「別に助けたつもりもないし、恩を着せるつもりも無いが?ただ、アンタが食わないならそのラーメンとかは無駄になるな。
俺はそもそも空腹じゃないし水だけで十分だ。」
と、用意されたラーメン、ついでに餃子セットを指差してみつつ淡々と答える。
単純に、空腹のまま行き倒れみたいになられてもこっちの気分がよろしくない、それだけだ。
ちらり、と屋台の親父さんを見る。彼はこちらを交互に見て「早く食え」と言わんばかりの仁王立ち腕組みスタイル。
まぁ食べる・食べないはお隣の名無しの旦那の勝手なのでこちらはちびちびと水を飲むとしよう。
■角鹿建悟 > 「おい、しっかり食べてるじゃないかアンタ実はわざとだろ」
■F.U.R.Y >
「うるへェ!!ほひほらいひるかひぬかのへほひははっはんはひょ!!!!!ふいほんへのまへにはされへはまんへひっは!!!!」
ズルズルズルズル
むしゃむしゃむしゃむしゃ
食べながら話す。
行儀が悪い。
■角鹿建悟 > 「食いながら喋るな、何を言ってるかさっぱり分からん。…やれやれ。」
財布の中身を確認する。玉子と肉のトッピング増量に三杯お変わり分…まぁ、払えるだろう。
あまり遊興費とかは使わず、生活費くらいしかお金を使っていないので蓄えは地味に多い。
それに今回は救われたな…と、内心でホッとする。支払いが足りない、とかなったら、流石に親父さんに何を言われるか分かったものではない。
隣で豪快に食べまくる名無しの男を尻目に、こちらは水をちびちびと飲みながら何処か呆れたような眼差しで隣の男の豪快な食事風景を見ていたが。
(…まぁ、いいか。)
中々面倒そうな男だが、根っからの悪人だとかそういう感じも不思議としないし。
■F.U.R.Y >
ごっくん。
「げっぷ」
山ほどあったラーメンをぺろりと平らげ、満足したのか男は大きなゲップを一度した。
「はァー……不本意ながら食っちまった。
チッ……感謝するぜセーカツイインのガキがよ…ッ!!」
何故かキレながら礼を言う。
暴れる事はないが口が悪い。礼を言う態度では決してない。
そうしながら何か悩んで…キレる。
「だー…クソがッ!!
オレは学園の野郎どもは気に入らねえが、だが受けた借りは何でも返さねぇと腹の虫がおさまりゃしねェ……
おいクソガキ…ァー、ケンゴか。
おいケンゴ!
借り返させろや。メシの駄賃分は何でも手ェ貸してやる。
不本意だがな!!」
■角鹿建悟 > 「…あぁ。まぁ腹一杯になったなら何よりだな…。」
彼の清々しいまでの豪快な食べっぷりに後半は殆ど閉口気味に眺めているだけだったが。
礼とはとても言えない態度の礼に、そりゃ良かった、とばかりに何時もの仏頂面で頷きを一つ。
追加の分の支払いは手早く済ませて置きつつ、残り半分ほどとなった水を飲みながら。
(…この旦那はキレ芸…だったか。そういう傾向でもあるのか?)
と、彼の事情をよく知らないので、そんな見当違いの推測をしてしまうのだけれど。
ただ、彼が少なくとも学園の人間を毛嫌いしており、特に風紀委員が一番気に食わない、いや敵視しているというのは初対面の自分でも何となく分かる。
「――いや、別に貸しにするつもりは全く無いんだが…。
と、言ってもアンタ聞きそうに無いし……取り敢えず今の所は特に何も無いぞ。
この後はさっさと”あっち”に帰るつもりだし――あー…そうだな。」
口も態度も悪いが、義理堅いのはよく分かった。そこは素直に好感が持てるので、彼の申し出も無碍には出来ない。
とはいえ、別に貸しにするつもりも無かったのだが…さて、どうしたものか。
「じゃあ、こうしよう。俺も色々あって偶にこの辺りに足を運ぶ事がある。
で、その時に…そうだな、アンタとばったり会ったらでいい。一度だけ手を貸してくれ。それで貸し借り無しだ。」
■F.U.R.Y >
「ハッ、テメェみてぇなヒョロガリが近寄るコトじゃねェよここらは。
クソ物好きが‥‥…」
ケッ、とつまようじで歯に挟まったものをとろうとしながら、口悪くそう言う。
「だが借りは借りだ。しかたねェから覚えといてやる。
だが忘れんじゃねェぞ、テメェがこのままオレに借り返させねぇでトンズラしたらタダじゃ済まさねぇ…ッ!!
ブッ殺すから覚えてろや…ッ!!」
ガンを飛ばしながらそういう姿は、言葉の意味とあべこべだが。
ともあれ借りは返させてくれと言う事だろう。
その言葉が何故怒り方面で出されるのかは、意味不明だが。
「それと細かいコトを期待すんじゃねぇぞ…!!
オレぁそういうのがクソほど嫌ェなんだよ……
やんならケンカかブッ壊す事だ。
そいつなら、好きなだけやってやらぁ」
■角鹿建悟 > 「ああ――確かに”物好き”だな、違いない…。」
結局また壊れていくだけなのに直す。
存在しない扱いの街を直して何の意味がある?
むしろ、住人からすれば余計なお世話、とも十分取られよう。
――だが、知った事か。今はまだ中途半端なままだが、俺は”必ず直す”と決めた。
そして、あの白い少女に誓ったのだ――『落第街を直す』と。その約束は絶対に譲れない。
自分と向き合って、他人と向き合って、直すだけじゃない答えを見出しても。
直す事を止めたりはしない。それは呪いでも強迫観念でもない…『直し屋』は”死んでいない”。
だから――…
「当たり前だ、貸し借りは苦手だが約束した以上はきっちり守る。
――それと、そっちこそ覚えてろ。俺がそんな事で逃げる訳が無いだろう。」
ガンを飛ばされても真っ向からがっちり受け止めてこちらも返す。
彼の義理固い面は信用できる。別にこちらを信用しろとは言わない。
だが、こっちも彼が借りを返すと言った以上は、何らかの形で一度だけきっちり返して貰うと決めた。
「分かってる、頼むとしたら一日用心棒みたいな感じだと思ってくれればいい。――さて」
コップに残った水を飲み干して立ち上がる。それから旦那のほうへと視線を向けて。
「俺はそろそろ引き上げる。次は空腹で倒れてないようにしろよ、”憤怒”の旦那。」
最後のそれは、彼の喧嘩越しみたいな…怒りのイメージから、何となく口にしたものだ。
そのまま、軽く何時もの無表情で右手を挙げてから屋台を出て表の街へと戻っていくだろう。
■F.U.R.Y >
「あァ?分かってるってテメェ今オレをバカだと思いやがったな?」
めんどくさい。
■角鹿建悟 > 「アンタぶっちゃけ面倒臭いな…!!」
思わず突っ込みを入れてしまった。
■F.U.R.Y >
「あァ…ッ!?」
実際めんどくさい男である。
そうこうしつつ、憤怒と言われれば。
「―――ハッ、いいね、言いえて妙だぜ、ソレ。
憤怒ね………」
憤怒。
怒りって意味だ。
実際”左腕”を手に入れてから、オレは確かに”怒り”みてェなモン。
前の名前はもういらねェ。
なら……
「―――――F.U.R.Y…
ヒューリィだ。
オレの名前を呼ぶなら、そう呼びやがれ。」
そう、名乗った。
初めて、ニィ……と獣のような笑みを浮かべて。
■角鹿建悟 > 憤怒(ヒューリー)…成程、自分で何となく口にしただけだが、彼は存外気に入ったらしい。
実際、怒りというものは人間の感情でも特に強い、時として行動の原動力の一つになると思っている。
だから、本当に去り際に一度振り返れば、その獣のような笑みに…こちらも笑みを返して。
「ああ、じゃあ今度からは遠慮なくそう呼ばせて貰おう――ーまたな、ヒューリィの旦那。」
彼の怒りのように、自分にも強い想いが、衝動があるだろうか?――いや、確かに”ある”。
――だから、俺はこうしてここに中途半端でもしっかりと立っているのだから。
笑みを引っ込めれば、後はもう振り返らずに憤怒の男へと軽く後ろ手に右手をひらり、と振って立ち去るとしよう。
――これが、”憤怒”と”直し屋”の出会いの顛末である。
ご案内:「落第街大通り」からF.U.R.Yさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から角鹿建悟さんが去りました。
ご案内:「落第街」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
■芥子風 菖蒲 >
幽世の深き深き、根の国より。
落第街と呼ばれし常世島の暗部。
其処に在って無き蜃気楼に悪の気配在れば
黒の風が浮世の塵を運ばせし。
「コイツで終わりか……。」
落第街、某所。うち捨てられた瓦礫と廃墟群が立ち並ぶ
何とも侘しい場所に、少年は立っていた。
此処は犯罪の温床。叩けば埃所か、蛇も鬼もまろび出る地獄の一丁目。
如何なる人種であろうと、先ず自ら煉獄の窯は覗きはしない。
但し、風紀とも成れば別だ。
とある違反部活の尻尾を掴めば例え地の獄だろうと飛び込みはする。
この瓦礫の上に転がず違反者の数々。
赤い血が瓦礫を染め、身を凍えさせる夜風が血の匂いを運ぶ。
「結構てこずったけど、まぁいいか。」
是は既に、事を終えていた。
違反部活動の鎮圧。本来は確保が主目的であれど
"抵抗されれば、止む無し"である。
少年は、加減が出来る力量は持ち合わせていない。
確かに斬った。斬り捨てた。何人かは命を断った。
数名は生き残った。運が良かっただけに過ぎない。
頬についた返り血を袖で拭い、溜息を吐いた。
「……応援待ちか。オレ一人じゃ、運べないと言っても、暇だなぁ……。」
思わぬ理外の待ち時間。
ご案内:「落第街」に虚無さんが現れました。
■虚無 > 「中々、派手に壊したな」
そんな空間に足を踏み入れる。本来風紀委員が大規模な戦闘を行った直後に足を踏み入れる人間など同じ風紀しかいないはずである。だが彼はどう見て同じ風紀委員ではないだろう。
壊れたラジオのようなくぐもった声の向こう。目深にかぶったフードと黒鬼の半面からは中の人物の表情を伺い知れない。
「ああ、別に攻撃にきたわけじゃない。返答次第……だがな」
敵対者の獲物が剣ということを考え青年が足を止めるのは剣の間合い。その数歩向こう。
指を2本立て突きつける。そして1つをゆっくりと折り曲げた。
「ひとつ、どこの者だ?」
風紀ならば赤い制服を着ているはずだが見たところ違うように見える。だが小綺麗なその恰好はここの住人ではない。そう思っての質問だ。
そしてもう一つもゆっくりと折り曲げる。
「ふたつ。どこかの組織だとして……上の命令か? お前の意思か? 事故か?」
■芥子風 菖蒲 >
「…………」
気配を感じる。夜風と血の匂いに紛れる人の匂い。
目深のフードに鬼面の表情。風紀の腕章も見えなければ、同じ風紀委員でないのは明白だ。
宵闇でもよく目立つ、青空のように青い瞳をぱちくり瞬かせ、相手を見た。
「それ、前とか見づらくないの?」
鬼面の修羅。かつての武士成れば珍しくない。
剣の道を知る少年は理解はするが、いざ対面してみれば色々おかしさが勝る。
地面に突き刺した刀、漆塗りの柄を掴み抜き取った。
「何処の者?ヘンな事聞くんだな、アンタ。オレはオレの仕事をしただけ。
落第街だろうと、オレ達風紀は連中を見逃すわけにはいかないでしょ。」
落第街の内側で悪事を働けばいざ知らず
此処で斃れる者々は表の陰に隠れて悪事を働く悪党共。
大人しく勧告に従えば、"補習"程度で済んだであろう。
落第街に逃げ込んだが最期、"制圧"の手段を取られたに過ぎない。
余り感情を表に出さない、口元を一文字に結んだ少年は淡々と抑揚のない声音で応える。
「オレはオレの意思で仕事をしてるってだけ。
アンタは、もしかしてコイツ等の仲間?」
■虚無 > ほんの僅かに笑うような音を出す。
「心配無用だ、見えているし……そもそも目に頼るような戦闘スタイルじゃない」
自身の使う流派は対異能対魔術。視覚外の攻撃や不可視の攻撃。目を超えた速さの攻撃など当たり前の世界なのだ。
「なるほど風紀……たまに大規模な破壊をする奴もいるが。その一派というわけでもなさそうだ……そうだな」
仲間かと聞かれれば少しだけ押し黙る。立場として言えば何とも言えない。
同じ組織というわけではないのだから明確に味方ではない。しかし。
「……敵ではない。とだけ答えておこうか」
明確に敵というわけでもない。あくまでこの町の一部として見逃していただけの話。
「それで、剣を握っているが……俺もお前のいう見逃すわけにいかない連中に含まれるのか?」
距離は変えない。相手の間合いの数歩向こうから見つめる。フードの下、ほんの僅かに黒い瞳が見えるだろうか。
■芥子風 菖蒲 >
「そうなんだ。昔の人も、そう言う風にしてたんだな……。」
温故知新……とは、些か異なる。
戦闘スタイルの心配など微塵もしていなかったが、それは良しとしよう。
ああいう仮面、何時かちょっとつけてみたいと思うのも少年心だ。
「"鉄火の支配者"って奴?噂では聞いてるけど
一緒に仕事をしたことはないし、あんな"面倒な事"したくないしなぁ……
ねぇ、やっぱりあのやり方って、反感買ってるの?聞くまでも無いと思うけど。」
勿論、大規模な組織の風紀。やり方も十人十色だ。
それぞれがそれぞれ、何かしら上手くやっているのだろうが
生憎、他人の仕事に少年はそこまで興味はない。
第一、後から面倒ごとが起きそうなやり方、よくもまぁ実行しようと思うものだ。
あれこそ、実直なバカのやる事に違いない。溜息交じりに応えれば、刀身を肩で担いだ。
「敵とか味方とか、どうでもいいよ。」
ノイズを上書きするように、言葉が被せられた。
「アンタがオレの邪魔をするなら戦うし、そうじゃないなら戦わないだけ。
……けど、コイツ等の仲間なら見逃すわけにはいかない。
もし、アンタがコイツ等の仲間だって言うなら、大人しく"補習"受けてくれない?」
ごちゃごちゃとした面倒なやり取りをする気は無い。
刃のように鋭利に、そしてシンプルな答えを以て制する。
風紀の与えられた仕事を全うするのみ。敵意も悪意も無い。
真っ直ぐな青空が鬼面を見据えていた。
此の刃が振るわれるかどうかは、その返答次第だ。
■虚無 > 「場所によってはな……他の奴の意見はともかく、俺は始末するべき対象だと認識している」
鉄火の支配者の名前が出れば少しうなずくようにする。目の前の人物が風紀なのにも関わらず風紀の一人である人物を始末するべきだと断じるのは危険かもしれないが。
そして相手の言葉を聞けばこちらも笑うような声を投げかけた。
「すまないな、それはこちらのセリフになってしまう。さっきも言ったように俺はこいつらの敵ではない。だが味方でもない……だがな」
パチッと手に紫電が走る。相手も刀と抜いているのだ。こちらも抜いておかねばならない。これからするのはそういう答えだ。
「お前はさっき言った。この大規模な破壊を”オレの意思”だと……それはこちらにとっても都合が良い事じゃない。だから問う」
手をわずかに後ろに引く。古武道のような構え。
「今後もお前の意思で大規模な破壊をするか否か。それ次第で俺はこいつらの味方ではなくとも……お前の敵にはなりえる」
■芥子風 菖蒲 >
「そっか。まぁ、頑張って。」
素気ない。興味は無いと答えた。
元より治安維持組織たれば、自ら虎穴にこの様に飛び込みもする。
ともすれば、逆怨みであろうと怨まれる事も必定。
だからこそ、あのやり方は"面倒"なのだ。
それを止める気も無いし、とやかく言う気は無い。
鉄火の支配者とやらも、それを承知の上でなければ本当にただの馬鹿だ。
自分の蒔いた種を、一々組織ぐるみで刈り取る面倒等、するはずも無い。
「…………」
宵闇を照らす紫紺の雷。
肌を電流のように撫でる敵意の感覚。
思わず、面倒くさそうに眉を顰めた。
「大規模な破壊って……確かに、人数は多かったけどさ……。」
廃墟群を根城ににしなければ
この人数は収まらなかった。
違反部活の連中が、そこに倒れている連中が今こうして血を流したのは自業自得。
命を断てば即ち、破壊ではあるが……さて。
「一々大袈裟な言い方をするな、アンタも。ただ、自分が気に入らないだけじゃないの?まぁいいけど……。」
刀身を肩に乗せたまま、瞬きもせずじっと見据えている。
「風紀として"見過ごせなく"なれば、オレの意思で仕事を受けるだけ。
別に敵でも何でもいいけど、そんなに敵になりたいなら速く仕掛けたら?」
■虚無 > 「自分が気に入らないか。そうだな、そうかもしれない」
彼の言い分を聞けば構えを解く。手の紫電も消えた。
こちらから仕掛ける意思はないというのをこちらは示した形となる。
「俺から仕掛けるつもりはない。風紀委員は無意味に破壊活動をする集団じゃない見過ごせない事態と約束してくれるのなら……ここで敵対する必要性はない」
数歩前にでる。無防備で剣の間合いに入る。そしてこちらとしては体術使いというのを見せた後だ。つまり完全に自身が不利な立ち位置。これで意思表示には見えただろうか。
「個人的な意見でいえば……悪党なんていない方がいいのは事実だ。そう簡単にいかないのも事実だろうが」
その悪党がいなければ死んでしまう命など無数にある。自分自身もそうだった内の一人だ。
だがノイズ交じりとはいえその声はどこか寂し気に聞こえたかもしれない。
「風紀として見逃せない場合は致し方ないかもしれない。だが極力大規模な破壊は控えてくれるとありがたい……例の人物じゃないが余計な混乱を招く。風紀委員だって、休みが欲しいやつが多いはずだろう?」