2020/07/14 のログ
ご案内:「落第街大通り【鉄火の支配者】前 廃ビル」に城戸 良式さんが現れました。
城戸 良式 > 「……ストップ、待って」

白面を被った黒コートの男が、廃ビルから出ようとした子供を手で制す。
子供は両手に持った荷物を落としそうになりながら、静止に応じて足を止めた。
廃ビルの入口から大通りを伺うと、いつの間にやら神代理央の隣に人影が増えている。
どこから現れたかは知らないが、確かにさっきまでは存在しなかった。

「………」

となると、思ったよりも、というよりは見た目よりも【鉄火の支配者】の軍勢は、
多い可能性がある。だとするならば、もしかしたらこちらの存在も気取られていて、
こちらから『仕掛けた』場合あまり面白い結果にならないかもしれない。

少しだけ、自分の危機感を信じて作戦を先延ばしにすると、
子供が何が起こっているのかわからないという顔で見上げてきた。

ご案内:「落第街大通り【鉄火の支配者】前 廃ビル」にエインヘリヤルさんが現れました。
城戸 良式 > 子供は、身なりからも分かる通り落第街の孤児だ。名前は知らない。
先ほど落第街の中で知り合い、仲良くなった少年だ。
落第街の住人にしては素直で、そしてこの歳でここに堕ちなければならない事実は、
結構悲劇的だとも思った。

その少年は、俺が持っておいてと頼んだ包みを両腕の中に大事そうに抱えて、こちらの『お願い』を待っている。
『行け』というお願いが『待て』というお願いに上書きされて待機状態を維持していた。
しぃ、と白面の口元に手を当てて静かに、と声を落とさせる。
思った以上に、もしかしたらあの凱旋自体に『法則性』や『慣習化』が成されていないのならば、
或いは今回の行脚に結構なランダム要素が加わっているのならば、今日はやめておいた方がいいかもしれない。

ふう、と小さく息を吐くと、少年の小包をこちらに渡すように指示する。
少年は素直に、さきほど俺が渡した小包を両手で返してくる。

「いい子だ」

静かに言葉を投げた。

エインヘリヤル > ……始まった。

多脚の異形が廃ビル群を練り歩き、その威容だけで心を踏みにじっていく。

都合がいい。
そう、とても都合がいいし痛快でもある。

踏まれる方にとってはたまったものではないだろうけれど、踏む側にしてみれば、至極予定通りで。
そして心地よい一歩である。
……そうでなくてもそうあるべきだ。でなければそもそも、最初からするべきではない。

こちらとしてもファミリアを展開させ、影からフォローする。

ファミリアには表部隊と裏部隊がある。
目に見える連中と、紛れて出てこない連中だ。

中途半端な抵抗は事前に表で摘むし、雰囲気作りは裏でやる。

まあ色々と周辺で何かがあるみたいだが。
今回はカリスマを分散しないようにするため、あまり目立たず、神代の女狐程度に収まったくらいの対応でいいだろう。

名乗らず、並び立たず。
陰ながらフォローに徹する。

城戸などの行動にはまだ気づいていない。

城戸 良式 > 受け取った小包の中には、トリニトロトルエンに似た反応をする『爆薬』が入っている。
起爆剤となる雷汞などを遠隔で起動する装置と共に箱の中に封入された、
簡単に言うなら手製の爆弾である。

その爆弾を投擲するよりも、
確実に目標にそれを届ける方法は複数あり、
その中で一番手軽な方法を採ろうとしていたわけだけれど。
どうにも今のタイミングには『ナシ』がついた。
ただ、今が好機であることも事実だ。
どうせ、支払うべきチップはタダで手に入れたようなものだし。
これに対して、神代理央がどんな反応をするか、どういう対処をするのかだけでも知っておいた方が無難だ。

箱を手に取り、中を開いて遠隔起動装置の種類を確かめた上で、
有効範囲を割り出す。そのうえで少年にそれを返し、小さく言伝をした。

「僕は少し、ここを離れるよ。
 あっちの建物の方に移動して、そちらから合図するから。
 そこからは、さっき言ったとおりに」

少年は俺が言うと小さく頷いて俺の目を見る。
本当に――素直でいい子で、助かる。


――俺はその場から移動をし、廃ビルの陰を這うようにして移動し、
大通り反対側の建物の3Fに潜んだ。
そこから、少年に向けて、『行け』という指示を出した。

――『爆弾』が、廃ビルの陰から【鉄火の支配者】に向けて、元気よく駆け出した。
――忘れ物を、届けてあげるという善意を懐に抱えて。

エインヘリヤル > ファミリアから、妙な動きがあるとの報告。
これはまあ、さすがに俯瞰とセンサーで見ていないとわからないモノかしらね。

……放置するのも手だけれど。
今の段階でつまらないケチがつくのも面白くない。

考えられる抵抗としては基本的に、狙撃、ブービートラップ、テロの3つが可能性が高い。
確かに叩きどころとしては彼の弱点をついておくのは常道だけれども、そういうのはもっと重要な局面にして欲しい。

今はまだ早い。
それに、正面切って明確な抵抗勢力がないままに行われる対応は正直、無粋に思う。

だからやるなら……今ではない。

そして……神代に向かって人影。
子供との報告。

即断即決。


たたん。


廃ビルの上から、神代のもとに駆け出した子供に向かって、無慈悲な軽い音がした。

城戸 良式 > 視界の端――唐突に子供が横に倒れる。
いや横薙ぎの衝撃――狙撃か。

「へえ。
 見た目以上に慎重だな……。
 行軍が大げさに振舞ってるのはそういうことか」

恐らくではなく、確実に。
第三部隊の存在がある。
派手に動いてみせて、大声で民衆を煽っているのもこういう対象を炙り出すためか。
子供の倒れた方向からして、廃ビルの上からの狙撃か。
やばいな、この位置も下手するとバレる恐れがある。

窓から少年の方を見ると、少年の息がまだあることに気づく。
成程、定石を踏んでいる。狙撃した対象を生かして炙り出すわけか。
でも、だとしたら少年がこちらに助けを求める可能性はある、身を潜めて移動を開始する。
廃ビルを横に横に移動する。
と、同時に窓に差し掛かるたびに少年の方を眺める。
近くに寄る者があれば、起爆して混乱を招いた方が『やり得』だ。

あっちとしても、対象の誰何は危険性とトレードオフに知りたいだろうし、
ここから先は我慢比べになるかもしれないな。

と、思った瞬間、少年が大声で叫んだ。

助けて。
助けてお兄さん、と。

「ごめんな。
 君のことを、助けることはできないんだ」

何もかもを、覆さない限りは。

エインヘリヤル > 「ああ、もったいない。それとも仕込みという可能性は……あの様子ではないわね」

まあ、そもそも。
少年を使う以上、どう考えても黒幕がいる。
子供は己の正義を規定できない。
故に、大義名分を与えられる必要がある。

誰もが、人間を道具にしか思っていないからこその対応なあたりが滑稽だけれど。

ファミリアたちが、少年が助けを求めた周囲を索敵に入る。
基本対象は若い男性。

変装はどうあれ、素性はそうだろう。
学生かもしれない。

熱源、生体、動体反応をチェック。
カモフラージュしていなければどれかに掛かる可能性が高い。
索敵にかからなければ、相応に装備を整えていると、そういうことでもある。

まあ、それはさておき。

私自身としては、そういう勢力そのものには興味がある。
抵抗勢力は、それはそれで使いみちもある。

潰すだけが利用法でもない。