2020/06/19 のログ
ご案内:「路地裏」に227番さんが現れました。
■227番 > 時間を置いて、また外をうろうろしている。
一度隠れ家に戻ったものの、隠れ家は明かりが無く、そもそも読む以前の問題であった。
人の少ない時間帯。事業所などといった人の集まる場所のゴミを覗くには丁度いい時間だ。
ごみ漁りが目的ではないものの、習慣は抜けず、いつものルートを歩く。
ご案内:「路地裏」に九々端 栂さんが現れました。
■九々端 栂 > ふらりと、大通りから路地裏へ。
栂はあてもなくぶらついている。そう、あてがないのだ。
「情報と、ツテだなァいンのは…。ん…?」
なにか、いる。
小さな影の気配がこの先に。
■227番 > 気になるゴミ袋を見つけて、こそこそと開けていた所で、近づく気配に感づいた。
「……」
とりあえず警戒すべきだ。すぐに逃げられるよう低く身構えて様子を探る。
暗がりに、暗い色のフード付きマント。視認性は悪い。
■九々端 栂 > 「…アー、危険、じゃァなさそうだ。警戒してンな。」
場所柄、わずかに警戒していた姿勢を解く。
どうやらごみをあさっているだけの子供のようだと見て取り。
「腹減ってンのか。何かあったっけか…アア、いいモンがあったぜ。」
キャラメル入りのチョコレート・バーが懐から出てくる。
それを目の前にちらつかせながら、警戒させないようしゃがみこんで、ちっちっちーと声?をかけた。
■227番 > 完全に小動物の扱いだが、対応としては正解である。
227は危害を加えられることを恐れ、人を警戒する。
「……?」
しかし、初めてされる対応に不思議そうに首を傾げる。
姿勢を低くしたまま、近寄ってくる様子は無いものの、逃げる様子もない。
ゆっくりと歩めば、近寄ることは容易いだろう。
■九々端 栂 > …近寄ってこない。
見えにくいし、これで実は変な化け物でしたってだけはやめてほしいと思いながら。
「アーー… ゆっくり近づくぞ、イイな?
頼むから逃げたり襲い掛かったりしネーでくれよ…。ステイステーイ…。」
栂の長身をかがめ、膝をついてじりじりと近づく。
手に持っているものが何かわかっていなさそうだとよみ、
チョコレートバーの袋を開けて差し出したままで。
■227番 > ある程度近寄った所で、薄暗いこの場所でもお互いの姿が見えてくる。
フードに227と書かれたタグが付いたマントの下は白い髪に青い瞳。
「……くれるの?」
袋を開けたことで匂いも認識して、
意図がようやく掴めて、問いかける声を発する。
どうやらこの人も怒鳴ってくる人ではないらしい。逃げる必要はなさそうだ。
■九々端 栂 > 栂はほっとする。
ちゃんとしゃべれるし、物騒な相手でもないようだ。
「アア、食ってイイぜ。
腹減ってンだろ?」
地面に座り込み、ちゃんと手に取れるように差し出して見せて。
じっくりと相手を観察する。
妙な数字のタグ、見た目はまあそこまで奇妙でもないようだ。
フードの下がどうなっているか、までは…
「…たぶん隠すようなモンがあるんだろうが。」
じっとみて、考え込むようにつぶやきつつ。
■227番 > 確かに空腹だ。ゴミ袋が気になったのもおそらくこれのため。
隠れ家に帰れば、備蓄はあるものの、なるべく残したい。
ここで貰えばおそらく今日は凌げる。
「……ありがとう」
恐る恐る受け取ろうとして、ふとじっと見る視線に気づく。
慌てて片手でフードを抑える仕草をして、見上げるように視線を合わせる。
片手はバーに触れたままだ。食い意地。
■九々端 栂 > つい言葉にしてしまっていたらしい。
少し警戒されてしまったかと思いつつ、それでも見つめてくるのは
敵か味方か探られてもいるのだろうと思う。
こういう生き物は純粋だ。経験則から。
苦笑しつつ。
「無理にはぎ取ったりはしネエよ。
見せたくねえ何かがあンだろ?それより離すぜ、落とすなよ。」
うけとりそうなので、そっとバーから手を放してやろうとする。
逃げられるかもしれないがそれはそれ、まあ奇妙な出会いだと思うことにしよう。
逃げないような気もしているが。
「言葉も通じるし、礼も言えンだ。
どういたしまして。まあでも、タダってわけじゃねえ。そいつはよくないからな。
だからちょっと、話しようぜ?」
話代だ、と続ける。
■227番 > 「っとと」
案の定バーを落としそうになり、慌てて両手で持つ。
落としても多分食べるだろうが。ゴミ産よりは衛生的だ。
「……わかった」
227に餌付けはかなり効果的だ。食べ物、しかも甘味が自分のものになった今、警戒心はかなり緩和されていた。
いつでも逃げ出せるようにと低くしていた姿勢も元に戻っている。
両手でバーを持ったまま、話ってなんだろうと、首を傾げる。
■九々端 栂 > どうやら少しは味方と思ってもらえたらしいと見て取り
栂は軽く微笑んだ。
「食ってイイぜ。
マ、そいつはもうおまえのモンだからな。それでだな、とりあえずは…。」
背中に手を回し、異能で拳銃をその手のひらに生み出す。
吃驚させないようにの配慮だから、その手を前に戻すのもゆっくりとして。
「こーゆう…鉄の筒に取っ手がついたようなのいっぱいあるトコ、知らねえか?
知らねえならイイんだ。そのうち見たらでもイイんだけどな…。」
拳銃の形を見せて、ダメもとで聞いてみる。
手からは銃は基本離せないので、しっかりと握ったままその手を差し出した。
■227番 > 会話に支障が出ない程度で、ちびちびとかじりはじめた。
空腹の割にがっついたりはしないようだ。
背に回した手を目が追う。そして戻ってきた手に握られる拳銃を見ても
特別驚く様子はなかった。それが何なのか、よくわかっていないのだ。
「てつのつつ……?いっぱいあるとこは、知らないけど
……似てるのがゴミに有るのは見た、かも」
しかし、見たことはあるようだ。それはバラバラの状態だったが。
■九々端 栂 > ひとしきり見せた後、手を背に隠し拳銃をしまった。
やっぱり知らないが意外とみたことはあるんだなと感心する。
「いろんな形があるンだ。似てるのもそれ…銃っていうンだが、そいつかもしれねえな。
やっぱ結構出回ってンだな…。
ああ、ちゃんとしたのを集めたら金にはなるンだが、危険なモンだから気をつけなよ。」
にっと笑って見せて、一応の注意を促しておく。
「あと…知らないやつに銃を向けられたら、物陰に逃げな。
あの筒から危険なものが飛んでくるぜ。」
ぴゅーんとな、って
「と、脅しすぎたか?あんまりにも知らなさそうだったからな…
ウーン、ええと…名前はあるか?あとちょっと抱えてみてもイイか?」
そっと両手を出して、わきの下を抱え上げようとするような仕草を見せる。
■227番 > 「じゅう……あぶないもの……わかった」
過去に向けられていたことも有ったのかも知れない。
逃げると決めたときは相手の姿はよく見ていないのだ。
どれくらい危険か想像つかないものの、命に関わりそうな気がしたので、
なるべく覚えておこうとする。
「名前は、……これ」
227と数字の書かれたフードのタグを引っ張る。
抱え上げるのには抵抗しないだろう。餌付けですっかり気を許している。
体重は、非常に軽い。
■九々端 栂 > 「やっぱそれだけか。
これで呼ぶとしたらニニナとか…いや捻らねえほうがイイか。」
見せられたフードのタグを相手…227番にも見せて
「こいつは数字だ。2がに、2がに、7がなな。
まあそのまま読むとニニナナ、だぜ。それでイイか?」
教え込むように丁寧に、一つずつ指さしながら
呼び方を確かめる。
「ヨッシャ、それじゃちょっと抱えるぜ。
よっと… やっぱ軽いな。えーと…」
栂はその長身で高々と227を抱え上げた。高い高いの構えといおうか。
予想通りに軽く、小さい。年齢を確かめてみようと考えたが
これは10歳前後だろうか。
ついでにマントの下も覗き込むが少し迷ったが、
どちらでもあまり関係はない気はしたのでやめておいた。
保護するなら、とも思ったが栂自身の部屋に子供を急に連れ込む余裕はなかったのだ。銃だらけだし。
■227番 > 「……うん、それで、いい」
相手が自分をなんと呼ぶかさえ分かっていれば呼び方は何でも良いらしい。
「わ」
抵抗はしないものの、ちょっとびっくりはしたようだ。
無表情のまま抱えあげられる。さながら猫。
フードはそのままだが、見る見ないに関わらずマントが部分的にめくれる。
下はうっすら透けるぐらい薄手の衣服のようだ。服と呼んで良いのかも怪しい。
それに対して、227は特に羞恥の反応はしなかった。
■九々端 栂 > 想定以上に服の防御力は薄かったらしい。
とはいえ、さすがにマントの下に何も、というわけでなかったことには少し栂は安心した。
「少女、か… 少女かァー……。」
保護へのハードルが少し下がる。とはいえ、今どうにかはやはりできないだろう。
そっと抱え上げた227をゆっくりと地面に降ろす。
相手の足が地面につけば、そのまま同じ目線になるようにしゃがみ込み。
ぐしゃぐしゃっと、ついその頭を撫でようとした。
「…また会うようなことがあったら、だろうな。」
■227番 > ゆっくりと降ろされ、首を傾げて見上げる。
持ち上げられた本人はその意図もよくわかっていなかった。
「うん?……また?…??」
相手がなにを考えているのか、全く読めていない。
生存に必要な食さえ得られれば、と考えているのだけで、
保護を受けるとか、そういった事は発想すらない。
マントの痛み具合からして、ここに居る期間が長いのは想像できるだろう。
急ぐ必要は無いのかも知れない。
頭を撫でられれば、ふるふると身体を揺すった。
■九々端 栂 > 何も知らない子供の動作に微笑む。
その中には少し苦笑も混じっていたかもしれない。
この環境になじみ切って、そこ以外の世界は知らないのだろう。
不思議そうな様子にこたえるように口を開く。
「アア、また話に付き合ってほしいンだ。
今度も何か食うモン持ってくるよ。」
撫でてもこれは…嫌がっている、というわけではないのだろうか。
少しいびつなふくらみを感じるような気もする。
頭を触らせてくれたということは、完全に味方と思われていると考えていいだろうか。
「イロイロ付き合わせたな。もう行っていいぜ。」
笑ってもう一度わしわしと撫でて、手を放す。
できれば227が死ぬようなことがないといい。
■227番 > 「……わかった。また」
また何か食べれるのなら、願ったりかなったりだ。
すこし期待を含んだ目で見上げて、頷いた。
「……甘いの、ありがとう。帰り、気を付けて」
改めて礼をして、くるりと振り向き、足音もなく駆け出す。
あっという間に闇に紛れて見えなくなるだろう。
■九々端 栂 > 「…早ェな。
逃げられたり襲い掛かられたりしなくてよかったぜ。」
消えていく様子を見送って。大通りへと一度、戻っていった。
ご案内:「路地裏」から九々端 栂さんが去りました。
■227番 > 隠れ家への帰り道に考えことをする。
先日チョーカーの彼女に会ってから、やけに人に会う。
最初に伝言を伝えた相手の反応で、
どういう人に伝えるべきなのかをなんとなく理解した。
これは直感的なもので、理屈はよくわからない。
なにはともあれ、人と会うことで生活が改善されていく。
警戒して怯えてばかりも考えものかもしれない。
■227番 > やがて昨日自身の物となった隠れ家の場所にたどり着く。
教えてもらったとおり、ノックを2回と1回。
すると壁に穴が空いて入り口が開く。
甘いものを食べられたので、今日は備蓄は手を付けなくても大丈夫そうだとか、
明日の徘徊ルートはどうしようだとか、思いを巡らせながら、隠れ家の中に消えていく。
ご案内:「路地裏」から227番さんが去りました。
ご案内:「路地裏」にフローレンス・フォーさんが現れました。
■フローレンス・フォー > 「……こんな感じね。っと……」
散々な失敗からの再調整と再設定。
今のボディ、そして仲間に合わない戦い方を修正しての実演。
その場所には路地裏はまさに打って付けの場所。
少々髪型を変えれば気が付かないチンピラが向こうからやって来ては丁度いい練習相手。
覚え直した近接戦闘方で多少やり過ぎたかもしれないが動作に問題がない事を確認でき。
「これだけ出来ればもう失望されないわね」
落としていた感情の設定を元にまで戻せば満足そうに笑みを浮かべ。
恒例の財布集めをはじめて。
ご案内:「路地裏」に紅月 純さんが現れました。
■紅月 純 > 「……」
相変わらずガラの悪い男が歩いている。普段と少し違うのは、首から肩にかけて貼られている湿布。
自分の拠点周辺を掃除しに来たが、どうも普段より少ない。
さてどうしたものかと、獲物を肩に担いでブラついている。
■フローレンス・フォー > もうある意味作業と貸した財布の回収。
中身を抜き終えても大して懐が温まらないのが不思議だが気にしない。
空になった財布を捨て獲物を探すか戻るかと思考を巡らせ。
直ぐそこの路地から新たな足音をセンサーが捉えると追加と笑みを浮かべ。
人影が見えるタイミングで問答無用で拳を振りぬいていく。
■紅月 純 > 「ぁ―――?」
油断していた。
視界の隅に何か見えたと思ったら顎に一撃。
飛びかけの意識で、敵のいる方向にバット振る。
■フローレンス・フォー > 振りぬいた拳が相手の顎に当たる感触。
これで更に追加と言う笑みは殴った相手が顔見知りと気が付き凍り付く。
「純……すまな……っが!」
知り合いをいきなりに殴りつけてしまったという動揺。
それにより振られたバットに気が付かずに頭部に直撃を受け、片方のアンテナが曲がるのを感知しながら衝撃にAIが一瞬フリーズしバランスを取れなくなり。
■紅月 純 > 「が、ぁ」
視界がチラつき、片膝をつく。
知り合いの声が聞こえたきがして相手を見ようとするが、向こうは体が傾いており。
立っている膝を伸ばし、彼女を抱きとめようとして。
■フローレンス・フォー > やってしまった。調子に乗り知り合いを殴るという失態。
謝らないといけないが頭部への衝撃に思考だけでなく動作も停止。
そして運の悪い事に感情を最大に戻していたためにダメージが痛みと別の物に感じてしまっていて。
そして倒れていく身体を抱き留めようとする彼に全体重を預けて崩れ落ちてしまう。
■紅月 純 > ドサリ、と音を立てて地面にぶつかり、バットは壁まで転がっていく。
「っ……て」
体がつい動いてしまったが、こいつはいったい誰なのか。
頭がボーっとしていて、うまく考えられない。
抱き留めたであろう腕を動かして、相手を確かめようとする。
■フローレンス・フォー > <システム、再構築中……残り……>
相手に身を預け押し倒すようにして脱力。
衝撃で停止したAIの再稼働手順が始まりカウントが進んでいく。
全く意識がないままに柔らかな膨らみを押し付けては動かず。
腕が動けば長い髪や細りとした身体つきが判る筈で。
■紅月 純 > 何度か腕を操作して、髪の長さを認識して。
体の細さや弾力を感じたところで女子だと気づく。
(あー……。さっきの声からすると、フォーかな……)
こいつフォーなのか……と目を閉じる。
(滅茶苦茶痛かったな……こんな柔らかいのに)
この柔らかさで、と確かめていたところで静止。
(ちょっと待て。今の状況は)
まずい。一気に目が覚めた。
■フローレンス・フォー > <再起動まで後………>
頭の中では静かにカウントが進んでいく。
今は触れられると意識こそ落ちてはいるが他は正常。
触れられるたびに小さく身体は反応をして震え。
目を覚ませば角度によれば片方が曲がったアンテナや光のない瞳が見れるかもしれず。
■紅月 純 > 「……ぁー……」
開けた視界には、自分にのったアンドロイドとその破損個所、やロボットらしい瞳。
自分の腕の方までは見ないようにした。
気絶というか機能停止をしているかのように見える。
「フォー、起きろ。起き……起きろー」
彼女を揺すって起こそうとして、留まり、肩まで手を動かしてから揺さぶった。
■フローレンス・フォー > <再起動まで後……>
段々と数字が進んでいきシステムが再起動を進めていく。
そうして数字が100に到達すれば再起動を果たし瞳に一瞬光が走る。
「………ぁ……?」
再起動後に最初に感じたのは身体の揺れ。
何事かと視線を動かすと直ぐ近くに知った顔、そして直ぐに思い出し。
「純……ごめんごめん。チンピラと思って殴っちゃった…」
まだ少しエラーが出はするが稼働には問題なく。
謝り起き上がろうとするがまだバランサーは再起動中、直ぐにバランスを崩して圧し掛かってしまう。
■紅月 純 > 「やっと目が覚めたか……」
ため息をつきながら挨拶。
彼女が倒れているときのことなど知らぬ。
「出会い頭じゃねぇか……相手を見てから襲撃ぉおぅっ!?」
このポンコツ、と言おうとしたら降ってきた。
(このポンコツ……!!)
またのしかかっているコイツをどーするか、と半目で見上げる。
■フローレンス・フォー > 「……正確には再起動。頭に衝撃を受けてフリーズしたみたいね」
その原因、直前のデータがショックで吹き飛んでいて判らず。
ハッキリと認識できてきるのは殴ってしまった事。
「追加が来たと思ったのよ。次から気を付けるわ……」
人のマネを始めてからポンコツ度が増しているが全く気が付いていない。
そのせいで今の状況なのだが自覚はなし。
「そのね、迷惑じゃないなら安全な場所に運んでくれない…?
ここに置いて行かれると……困った事になるのよね」
視線は転がるチンピラたち、置いていかれればどうなるかは一つで。
■紅月 純 > 「油断していたこっちも悪かった」
相手がフォーだとわかっていれば自分が吹き飛ぶだけで済んだのだ。
結果、アンテナを壊してしまっている。
「マジで頼む。……安全な場所なぁ。大分歩くぞ」
それでもいいならどいてくれないか、と背中あたりを叩く。
■フローレンス・フォー > 「なら、お相子って事にしましょ。次はお互いに気を付けるで」
盛大にやらかし、そして再調整で少しはマシになったはず。
しかし今度は確認をせずに知り合いを殴るという失敗にバランサーがくるっていなければ肩を竦める事態。
アンテナの破損程度なら直ぐに直るはず…。
「それは構わないわよ。ただ……肩を貸してくれる?」
もう一度身体を起こしていき、倒れる前に地面に座り込んで。
バランサーの再起動と調整にはもう少しだけ時間が欲しく肩をを頼んで。
■紅月 純 > 「あぁ、それでいい。……肩貸してやるから、バットくらい持て」
倒れている自分の体を起こし、彼女の腕を肩に回す。
寄せられた彼女側の腕は脇腹に回し、転ばないようにする。
そのまま立ち上がり、バットを頼めば目的地へ向かうだろう。
■フローレンス・フォー > 「それぐらいなら持てるわよ」
彼に肩を借り、脇腹に腕をまわされ支えられる。
その途中にバットを支えられた反対に持ち杖の代わりに。
そして立ち上がって彼と共に目的地へと向かって。
ご案内:「路地裏」から紅月 純さんが去りました。
ご案内:「路地裏」からフローレンス・フォーさんが去りました。
ご案内:「路地裏」に城戸 良式さんが現れました。
■城戸 良式 > 風紀委員の本庁に要人が集まる今。
定例報告会の隙間を狙って、路地裏に現れる。
城戸が現れると、
そこかしこの物陰から人が集まってきて、
お互いに背を向けてタバコや飲み物をやりだした。
集まった人の中には子供も混じっており、
細い木の枝で地面に絵を描いている様は、
路地裏の「いつもの風景」に見えるだろう。
■城戸 良式 > 「………」
黙って懐に手を突っ込み、一つずつ朽ちたテーブルに薬品を置いていく。
異能開花薬――『PAS-S』と名付けられたそれは一つとして同じ薬ではないが、
暗黙のルールとして右に置くものほど効果が強く、
また扱いが難しいものとなっている。
曇天の空を眺めていると、肩が二回叩かれる。
その指の本数に首を横に振ると、追加で靴の端を蹴られる。
頷くと取引が成立する。
男が携帯端末を弄ると、こちらに指定の金額が振り込まれた。
異国の電子貨幣でのやり取りなので、金の動きを洗われることもない。
監視の少なくなっている今、わずかな時間で行われる取引が、
このコミュニティを形成していた。
■城戸 良式 > 異能の有無は、そして強弱は、この島では見えない差別を生む。
差別という表現を使わずにいうなら、区別と言ってもいい。
能力の不足は表立って語られることではない。
この島では『可能』に目を向けられることはあっても『不可能』に目を向けられることは少ない。
「インフラを整備できるほど力の強い者」の陰には「道具を使わねばそれが成せない者」がおり。
「空が自由に飛べる者」の陰には「陸を這って動かねばならない者」がおり。
「独力で争いを収められる者」の陰には「力及ばず守れぬ者」がいる。
そのヒエラルキーは、この島で暗黙の裡に存在していて、
それは例外なく風紀や公安といった自分たちが所属する組織の中にもクラスタによっては蔓延しているものだ。
俺もまた、そのクラスタの中に存在する以上、それを意識せざるを得ない。
■城戸 良式 > 肩が叩かれる。足を蹴られる。煙を吹きかけられる。
それぞれの価格の上昇に首を振って答え、
一つずつ、薬物が売り払われていく。
それはけして、違法なものではない。
個人が許可さえ取れば重火器を所持できるこの島で、
誰もが異能を使用できるこの島で、異能を開花・変化させる薬だけが取り締まられる謂れはない。
ただ、この取引が公になれば、あるいはそれを取り締まる法律ができるかもしれない。
そうなってしまえば、自分にとっても、彼らにとっても面白くないことになる。
ゆえに、この取引は数年先を見据えて闇の中に存在しなければならないものだった。
一つ、また一つと拾い上げられていくそのアンプルを眺める。
それは最後の一つに至るまで、一度も淀みなく取引を行われ、
それぞれの懐に入っていった。
地面に絵を描いていた少年すらも、どこから手に入れてきたのか、
相応の貨幣を対価に一つのアンプルを手に去っていった。
その背中を見ながら、俺は静かに電子タバコに灯りをともした。
■城戸 良式 > 後に残るのはただの怠惰な公安委員の姿だ。
風紀がざわついている今、路地裏で仕事をさぼっている。
何か問題があれば身を挺して解決しようとするし、
足りない力で市民を救おうとする公安委員の鑑である姿だ。
ただ、それと同時にこの島の在り方に不満を持つ者の一人でもある。
それを突き動かしているのは劣等感でもあり、敗北感でもあり、虚無感でもある。
最初は己が何者にもなれない悔しさであったり、
自分が苦悩の中成そうとすることを手に入れる者への苛立ちだったり、
己の才覚のなさに対する懊悩であったりしたはずだ。
だが、今は少しだけ違う気がする。
少年らしいそんな青臭い葛藤はいつしか焦げ付き、
今はただただ漆黒の憎悪のようなものが、
表に出すわけにはいかない、破滅への願望だけが存在している。
それには、明確な理由がない。
誰かを納得させられるほどの正当性がない。
ただ漠然と、この島に存在する暗黙のヒエラルキーや、
己の存在意義を確立しているような立場に胡坐をかいた連中や、
明日が変わらず訪れると思っている平和ボケした奴らが。
泡を吹いて命を乞うところが見たい。
痛みを代償に異能を授ける自分の薬は、
痛みを生じさせずに異能を授けることもできる。
でも、そこに痛みを付与したのは、
己と同じような破滅願望の中に存在している者の怒りに、
理不尽な指向性を持たせるためだ。
力なきことにより抑圧される怒りに、方向性を持たせるためには『痛み』が必要だ。
■城戸 良式 > 自分は異能を持っていない。
だが自分を弱者というつもりもない。
方向性なき悪意を束ねたとき、それは紛れもない力となりえる。
恐らく、日ノ岡あかねは自分のそういう部分を見抜いており、
だからこそ何の特徴もなく面白みもない自分に時々声をかけるのだ。
それもまた、己の扱える刃であるのならば、
こちらの手が切れない程度に触れてみたいものでもある。
形は違うが首輪をつけられた者同士、見ることのできる風景があるのならばそれも面白い。
力なき者の悪意を束ね。
痛みを以って世界に傷を作り。
音もなく臓器を抜き去ることができればきっと。
今の日常の臓腑のいくつかを止めることができるはずだ。
高みで会議をしている風紀や公安を司る者たち。
止めることができるなら止めてみるといい。
持つ者の蹂躙で、持たざる者の鼠化の足音を止めてみろ。
純粋なる悪意は、いつかその首に牙を立てるだろう。
「なんてな」
電子タバコを消して胸に仕舞い、
フレーバーくさくなった口の隙間から笑みをこぼした。
■城戸 良式 > まあ、今のところ何かができるわけもなく。
電子タバコを胸にしまって大きく伸びをした。
今日もいい働きをしてくれた『PAS-S』の製造元の異能犯罪者には感謝している。
ただひたすら、俺のために異能を使用して指定の薬を作ってくれる異能者。
――名前はなんて言ったっけな。
ろくに話もしないまま『箱』に詰めたから、聞くのを忘れてたな。
どうでもいい話か。今日も生きてる限りは誰もが万々歳だ。
さて。
公安委員としての仕事を続けよう。
殺してもいい犯罪者は、いなくなっても誰も困らない犯罪者は、
どこかにいないか探しに行こう。