2021/09/09 のログ
■黒髪の少年 > 「……行こう。」
フードを深くかぶりなおして、前を向く。
今は少しでも時間を稼がなければ。
同じ貼り紙を見かけ次第、千切っていきながら、
少年は光明を待つことにして、路地裏の闇へと消えていった。
ご案内:「落第街 路地裏」から黒髪の少年さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に謎の男さんが現れました。
■謎の男 > 月が雲に隠れる夜。
街灯も消えかける路地裏には怪しい匂いと
腐臭が立ち込めている。
整備されていない道に埃が無秩序に舞い
奇妙な静けさに包まれている。
そんな薄暗い場所に革靴が地面をたたく音。
この場所には似つかわしい小綺麗なスーツに身を包んだ男が
一人この路地裏を歩いていた。
その目は虚ろでまっすぐ前一点のみを見つめ、
一切の姿勢の乱れすら見せない不気味さを併せ持っていた。
■細身のごろつき > 今日も今日とて獲物が一匹やってきた。
服装からして中々の上物。
「おい、スーツ男。ここでそんな格好してたら危ないぜ?」
格好の獲物を前に薄ら笑いが止まらない。
追い詰めるべく徐々に近づく。
■筋肉質のごろつき > 相棒が先に仕掛けたか。
右手に金属バットを握りしめて獲物のスーツ野郎に近づく。
「よう、命が惜しけりゃ金目のもん置いていけや。」
バットを奴に見せつける様に構える。
裏に慣れてねえ綺麗な格好の奴は
これにビビッて色んなもんを出す。
■謎の男 > 下品な笑いを浮かべる2人のごろつきが奇妙な男に近づき
恐喝を行う。
しかし、この奇妙な男は動じない。
その虚ろな瞳がじろりと目の前の2人をゆっくり順番に見つめる。
「持っていない。」
死人のような顔が口を開き、淡々と抑揚のない声でそう呟いた。
ご案内:「落第街 路地裏」から謎の男さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に謎の男さんが現れました。
■筋肉質のごろつき > 「うっせえや!」
出そうが出さまいがどっちにせよ潰すんだ。
生意気な野郎には教育を施してやる。
手に持った金属バットを思い切り振り被り
スーツ野郎の顔面へと叩き込む。
■謎の男 > 鈍い音と共に振られたバットが奇妙な男の頭部へと炸裂する。
何の声も上げないまま、その男は与えられた衝撃に逆らうことなく
地面へと倒れた。
地面に転がる男は動かない。
倒れた男に何度も何度も金属バットが振り下ろされる。
■細身のごろつき > 「おいおい、いくらなんでもやりすぎなんじゃねえか?」
相変わらずこいつはやり過ぎる。
何度もバットでボコボコにしている相棒に一声かけた。
■筋肉質のごろつき > 「念のためだよ。生きて保護でもされたら面倒じゃねえか。」
何をビビッてるのかは知らないが
そんな相棒を横目にスーツ野郎の漁りを始める。
ポケットをあちこち探しまわるが何も出てこない。
「畜生、こいつマジで何ももってねえじゃねえか。」
舌打ちをしながら相棒に愚痴る。
■細身のごろつき > 「それにしてもあんだけボコボコにしたのに
血の一滴も出てねえってなんかおかしくねえ?」
言いようのない違和感に気づく。
同時に何故か寒気が背中を駆け巡った。
■謎の男 > ぴくりと倒れた男が動く。
腕を動かして地面に手を付いてゆっくりと起き上がる。
顔が上がるとまたあの虚ろな目が二人のごろつきを捉える。
地面に倒れていたはずなのにその服装には一切の汚れが無い。
それどころか、あんなに殴られていたのに顔面に傷一つ付いていなかった。
■筋肉質のごろつき > 「っ!何だよこいつ・・・」
あんだけ首を殴りつけたのに平然と起き上がってきやがった。
その不気味さに足がすくむ。
「気持ち悪りい!さっさと寝てろや!」
起き上がった奴にもう一度バットを叩き込む。
■謎の男 > もう一度振り被られたバット。
それを前にしたこの男の行動は先程とは違った。
人間とは思えない速度で腕を前に出したかと思うと
振り下ろされた金属バットを片手で掴んでいた。
男の外観からは想像できない異様な力で
バットが徐々に歪んでゆく。
異変はそれだけに留まらない。
バットを掴んでいる片手が真っ黒に変色したかと思えば
その色がバットに移っていき
まるで腐って朽ちる様に金属バットが崩壊してゆく。
■筋肉質のごろつき > 「ひぃっ・・・」
思わぬ光景にバットを放して後ろへ下がる。
非常識的な光景に呼吸が荒くなる。
得体の知れない奴相手に固まって動けなくなる。
■謎の男 > 下がったごろつきに対して奇妙な男はいつの間にか距離を詰めていた。
バットを掴んでいたその手でごろつきの首を握りしめ
倍近くの体格のごろつきを軽々と持ち上げた。
■筋肉質のごろつき > 「ぁ・・・ぁっ・・」
首の骨が悲鳴を上げる。
声を出そうとしても空気が漏れるだけ。
奴の不可解な握力のせいで
首が曲がってしまうような錯覚を覚える。
目の前が赤黒く滲む。
■謎の男 > 「人間社会に溶け込むには、もう少し調整が必要だ。」
ごろつきを持ち上げる男がぼそりとそう呟いた。
間もなくして持ち上げていたごろつきを捨てるような手振りで
道端へと投げる。
投げられたごろつきは死んではいないものの泡を吹いて気絶し
首は正常な範囲からは逸脱して曲がってしまっていた。
■細身のごろつき > ごみのように捨てられた相棒を見て恐怖心に包まれる。
身体には自信があったような奴なのに
あの奇妙な野郎に一瞬でボロボロにされた。
崖っぷちに立たされた精神はいつの間にか
服の隙間から拳銃を抜いていた。
目立つ上にバレた時の言い訳が出来ないから
使ったことのない代物。そんな事今の状況じゃ関係ない。
■謎の男 > 残ったもう一人のごろつきが拳銃を構えて
男を睨んでいた。
致死的な武器を前にしても男の表情が変わる事は無い。
しかし、その口は開いた。
「拳銃。威力に優れた武器。
良い機会だ、僕に向かって撃ってほしい。」
感情はおろか心すら籠っていない声色で
怯えるごろつきに言い放った。
■細身のごろつき > 「何だよ!意味わかんねえ!」
半狂乱になりつつ拳銃の引き金を引く。
撃ったのは3発、乾いた音が路地裏に響いた。
反動を抑える余裕などなく、相手の野郎もあまり見ていなかった。
■謎の男 > 放たれた3発の9mm弾。
それは男の額と胸部を撃ちぬいた。
3つの弾痕が男の体にくっきりと残る。
「なるほど。」
しかし、銃弾を受けた男は倒れることも
うめき声をあげることもなかった。
弾を受けた場所から出血することもなく
あろうことか穴が開いた状態で平然と喋っていた。
■細身のごろつき > ありえない光景に言葉は出てこない。
恐怖心に煽られながらも足を動かした自分を褒めてやりたい。
気付けば拳銃を放り出して、野郎とは逆の方向へ
勢いよく走りだしていた。
あれは怪異だ、関わってはいけないものだ。
落第街に伝わる幾つもの怪異と巻き込まれた人々の結末を知っている。
■謎の男 > 逃げてゆくごろつきを男が追う事は無かった。
それよりも捨てられた拳銃の方に近づいた後に、
ゆっくりとしゃがんで拾い上げる。
「これは、丁度良い。」
様々な角度から拳銃を眺めた後に
スーツの中へと収める。
そして奇妙な男は何時の間にか
薄暗い路地裏から忽然と姿を消していた。
ご案内:「落第街 路地裏」から謎の男さんが去りました。