2020/06/19 のログ
■フィーナ > 「さて」
相応に効果があった。同じ手を何度も繰り返せば相手は確実に死ぬだろう。
だが、千日手では面白くない。
次はこうだ。
ごぽり、と。また杖から水が発生する。今度は、それが薄い膜となって上空を覆う。
■アーヴァリティ > 「魔術使えばこれぐらい防げるんだけど…
今日の僕は魔術なんて知らないからね」
最初に身体強化使ってた分際で何を、と言う話なのだが。
それにここまで魔術を縛って、最後に逆転するのがその思い込みをひっくり返すのが戦術というものだろう。
全身火傷自体は実はそこまで問題ではないのだ。
一時的に...やりたくないが全身から痛覚を消し去る。
この体は消し飛ばされた時か首が飛んだ時か、意識が無くなった時。
それぐらいしか実は弱点がない。
あくまで感覚を模倣しているだけだ。その模倣を無くして...
全身から触覚が失せる。
これで頼りになるのは目と耳だけだ。
だが何ら問題ない。僕の触手は元から何の感覚もないのだ。
上空を覆おうとする水の膜には目もくれずひたすら、先ほどの威力を、先ほどの数倍の触手が魔力の障壁に向けその威力を繰り出す。
おそらく先ほどよりも圧倒的に短い時間でシールドは砕けるだろうしそれでシールドが消えればその威力はそのままフィーナに向かうであろう。
ー1発なぐるー
ただただ逃げで終わってたまるか。
■フィーナ > 「んー…」
ちょっとまずいな。これだと間に合わないかもしれない。
ピキピキと水の膜を凍らせつつあるが、ソレよりも先に障壁を破壊されそうだ。
避弾経始の原理を使いながら、受け流そうとしている。
■アーヴァリティ > 触覚を無くすと叫べないのだ。
口の感覚もなくなり、非常に喋りづらいのに叫ぶなんてできる訳が無い。
それでも、一発お見舞いする。
それだけの為にここまでダメージを耐えて。
その上で打ち込む1撃は嘸かし気持ちいいのだろう。
口元が歪んだ気がする。
実際歪んでいる...本人には分からないのが残念だが。
さて、魔術師のシールドがこちらの攻撃をどうにかして防ごうとしているが、その程度、攻撃の向きを変えればいい。
今まで視覚と聴覚で扱ってきた触手。
余計な痛みも何もなければ、むしろ普段より扱える。
そして、障壁を破り切った。
一発お見舞いしてやろう。
速攻でテレポートの術式と身体強化の術式を組み立てる。
超近距離テレポート。右手だけの身体強化。
そして触手で自分の前方にドームを作り出せばー
フィーナの目の前にテレポート。
障壁を貼り直す隙も、思考の隙すら与えない。
僕のだせる最速で、最高の拳を左の頬にぶち込んでやる。
触手がドームを作り逃げ道などない中。
右の拳を全力で振りかぶった。
■フィーナ > 「…参った」
対応出来るスクロールがない。デコイは視認されてる今は効果がない。
テレポートはこの状況では壁に埋まる目算のほうが高い。
指向性爆破もこの閉鎖環境だと間違いなく自分を巻き込む。
だが、あの右手に当たるよりかはマシか。
「勉強代」
避けられもしない拳を避けるために、スクロールを発動する。
触手のドームの中が爆風に包まれ、同じくフィーナも吹っ飛んだ。
■アーヴァリティ > 「...」
爆風を間近で受けたが、ここで止まるほどこの執念は浅くな...
「気絶しちゃったか」
そう呟いた気でいるが、実際はその声は出ておらず、心の声で止まった。
振りかぶった右手の身体強化を解除し、爆風で吹き飛び檻代わりの触手に引っかかって気絶している魔術師を見下しながら、異能で体の中身、外殻の順で体を再編する。
「はあ...これどうしたらいいのかなあ...」
爆風だったり水蒸気爆発だったりで消し飛んだ服代わりのボロ布。それの代わりに一枚の大きめの布で体を覆い、気を失っている魔術師の首根っこを掴んで持ち上げ、軽くその頬を握った拳で殴った。
軽くだ。
「次はゴリ押し以外で戦うから。またやろうね」
再模倣された綺麗な顔に、疲れた笑顔が浮かぶ。
強力な魔術師の襲撃を彼方に有利な状況で二度も退けてやったのだ。きっとこの魔術師も気に入らないと思っているだろう。
そうであるなら、また挑んできて欲しい。
そうでなくては僕もつまらない。
油断を後ろからつく勝利も、ゴリ押しの果てに引き分けで逃げられるのも、納得がいかない。
次こそは、勝ち負けを堂々はっきりさせてやろうじゃないか。
ゴリ押し以外で勝ってやるんだ。
「はあ...魔術以外で戦う方法かあ...何か考えないとなあ...」
ため息をつき、疲れ切った体で、月の光の届かない影へと姿を消す直前。
「いい夜だね」
皮肉気味にそう呟いて、退場した。
ご案内:「スラム」からアーヴァリティさんが去りました。
■フィーナ > 「…………」
爆風でボロボロのまま、気絶している。
■フィーナ > 「…………」
起きる様子がない。
ぼろぼろすぎて色々はだけている気がする。
■フィーナ > (乱入歓迎です)
ご案内:「スラム」に紅月 純さんが現れました。
■紅月 純 > 迷惑になっているチンピラを討伐していたら爆発音がした。
かなり近くで起きていたらしいので、危険人物の確認をしようと野次馬に来てみたが。
「……フィーナか?」
見つけたのは知り合いで、しかも倒れている。
周囲を警戒しつつ、様子を見に近寄ろうとする。
■フィーナ > 「…………」
爆風でやられたのか、煤だらけだ。
立派だったドレスも爆風に引き裂かれ、いろいろなところがはだけてしまっている。
■紅月 純 > 爆発を起こした相手と戦っていたのだろうか。
ボロボロなドレスに目を向けないようにして声をかける。
「……おい、起きろ」
■フィーナ > 「…………ん…」
見えもしないのに、薄目を開ける。
灰色の、何も見えない瞳が、純を写す。
「…………だれ?」
■紅月 純 > 「……初めて、目を見た気がするな」
目が合う。が、何か違和感がある。
「俺だ。紅月だ……公園で猫を探した」
誰と言われてしまった。
忘れられてそうな気がしたので、彼女が興味を持ってうごいていた方の話題を出す。
■フィーナ > 「……………?」
どうも、反応が鈍い。
目も、純を見ていない気がする。
それもそのはず、魔術を行使し忘れて五感が失われているからだ。
■紅月 純 > 「……?聞こえているか?」
目の前で手を振ったりしてみるが、何かがおかしい。
「……おい?」
あまりに反応がないので、彼女の頭に触れてみる。
■フィーナ > 「……あー、あー…」
確かめるように、声を出す。触れられても、何も反応できない…どころか、そのまま横に倒れてしまった。
自分の声が聞こえないことを知って、術式を走らせる。
僅かに刻印が輝いて、五感を取り戻す。
「…………あ、猫好きの。」
■紅月 純 > 「ん、やっと反応したか」
そして覚えられていて一安心。
「……おう、猫好きのな。つーか大丈夫かよ」
周囲にまだ敵がいるのでは?と警戒しつつ彼女の安否を問う。
こっちからは大丈夫そうに見えてない。
■フィーナ > 「んー…」
ぐ、ぐ、と身体を動かしてみる。
「数本、折れてるかな」
左腕と、肋が数本。あとなんか妙に頬が痛い。
■紅月 純 > 「折れてるかな、は大丈夫じゃねぇ……爆発があった場所にいる時点でアレだが。
行きつけの病院とかあるのか?」
あるなら肩を貸すが、と提案。
(……それ以前に動けるのか?)
■フィーナ > 「…お構いなく」
ふわ、と浮いて、動く右手で地面に方陣を書き記していく。
法術の復元回復術だ。地脈の力も借りるために、地面に書き記している。
魔力を通わせると、みるみるうちに目に見える傷は癒えていくだろう。
■紅月 純 > 「……相変わらず、ずりぃなぁ」
まともな攻撃手段は物理だけだし回復なんかできないので。
「無事ならいいが。爆発起きるとか何があったのやら……。
無駄かもしれんが気をつけろよ」
絶対関わってるだろお前、と半目になりつつも一応注意の声を上げた。
■フィーナ > 「…流石に、折れたの治すの、時間かかるから。周り、見ておいて欲しい。」
そう言って壁にもたれる。
周囲を見渡せば、フィーナの偽造学生証が見つかるだろう。
■紅月 純 > 「損傷がひどいとやっぱそうなるのか。……おう。了解」
彼女の回復していく様を見て、彼女の素肌も見ていたので慌てて周囲に目を配る。
少し離れた所に何か落ちていて、見に行けば、彼女の学生証。
「そういや他のヤツのなんて見たことなかったな」
自分のを取り出し、拾った学生証と見比べようとする。
■フィーナ > 「……ふぅ…」
回復させるのに集中していて、純の動きには気付かない。
学生証の紋章が、微妙に差異がある。文字の配置も、重ねてみれば微妙に違って見えるだろう。比べて見て初めて分かるレベルだ。
■紅月 純 > 「……?……ふむ」
印刷ミスか?と思ったが、全体で少しずつ違うことに違和感を覚える。
ふと、島の噂で偽装学生証とか二級学生とか聞いた覚えが。
歓楽街やスラムでは頻度が多い。
「……こいつがそうなのか?」
本人に聞けばいい。
他に何かないか探しつつ、回復が終わるまで彼女を眺めて待っていることにした。
■フィーナ > 「……よし。ありがとう。助かりました。」
とりあえず動ける程度には癒着してくれた。後は自分の住処で直せばいいだろう。
す、とまたも浮いて、この場を後にしようとする。
■紅月 純 > 「あぁ、おい、待て」
彼女を呼び止め、学生証を渡そうと。
「忘れもん。聞くのはアレかもしれんが、こいつは……」
特に責めるとかそんな気はなく、なんとなく聞いてみた。
■フィーナ > 「返して」
とてつもない威圧感を、純が襲う。
これは、殺意だ。
■紅月 純 > 「っ……!!、 」
突然の重圧。この世界に落ちたおかげで久しく浴びていなかったもの。
チンピラばかり相手していたおかげで鈍っていた。
ひとまず、だ。
「お前のなんだから返すに決まってんだろうが」
手を出せと、フィーナをみながら学生証を揺らす。
■フィーナ > 「……」
殺意を抑え、手を出す。
内心穏やかではないが。
■紅月 純 > 殺意が消え、安心する。
こちらの視線も剣が抜けた。
「ほら」
彼女の手の上に学生証を置く。
これで用はお終い、と手をひらひら。
「別にそれを持ってたからって、こっちは何も気にしねーからな。
普通に話も通じてるしよ」
事情は聞きたい、とは今の様子を見て言えなくなってしまったが。
「……あと、ちゃんと服直せよ」
■フィーナ > 「…ん?あぁ。家に戻ったら直す」
特に気にするでもなく。はだけた場所からも刻印が見える辺り、全身くまなくあるのだろうと推測できるだろう。
「ありがと。とりあえずは、助かった。」
■紅月 純 > 「おう。じゃあな。
また猫探しでもしようぜ」
これ以上は特になさそうだ、と手を振って立ち去ることにした。
■フィーナ > 「ん」
こちらも手を降って、踵を返し、住処へと戻っていった
ご案内:「スラム」からフィーナさんが去りました。
ご案内:「スラム」から紅月 純さんが去りました。
ご案内:「スラム」に萌良 さだめさんが現れました。
■萌良 さだめ > (スラムの一角、廃ビル。 数人の風紀と公安が入り口に集まっていた。
大規模な魔術行使の予兆が見られるため、鎮圧すべく訪れたのである。
通常であれば人が集まりもするだろうが、選んだタイミングは早朝。
人通りもほとんどなく、狙うなら今である。)
目標は102号室だ。 目標はおそらく3人。
ドアの前についたらチェックして、ゴーが出たら突撃だ。
魔術探査は俺がやる。よろしくな。
(風紀委員、そして公安委員と作戦を確認する。
102号室に突入し、人員を確保、そして魔術の中断処理というわけだ。
時計のタイミングを合わせて、迅速に102号室の前に移動し、
そのままドアの横にひたりと張り付く。 探査要員と眼で確認し、探査を開始した。)
■萌良 さだめ > (そっとドアに手をかざす。 魔力の流れを伝い、中の人員を確認。気配は3つ、人型。
ドアノブ、ドアをチェック。 ドアノブに反応式の召喚術が仕込まれている。
不用意にノブを握れば何かが出てきて大騒ぎということである。
ドアそのものには何もないようだ。 別の探査をしていた相手にも確認。
問題はなさそうだ。 ドアのヒンジ部分に、限定的な爆発魔術を込めた札を貼り付ける。
指を3本立て、全員に目配せ。 うなずいたのを確認して、カウントダウンを開始する。
3,2,1…。 カウントが終わった瞬間に、魔術を発動させる。
ぱん!という甲高い音がほぼ同時に2発響き、ヒンジが粉砕された途端に全員で部屋になだれ込んだ。)
■萌良 さだめ > 「動くんじゃねえぞオラァ!公安だ!」「御用改めだ!神妙にしろ!」
(堰を切ったようになだれ込む突入要員と一緒に自分も飛び込む。
部屋にはだれもいなかった。 巧妙に魔力で練りあげられた形代が3つ。
そして、床で青黒く発光する魔法陣。 ひと目見ただけで状況を判断する。
先程自分が使ったものと同じ、「爆発」の印章だ。それも、比べ物にならないぐらい大きい。)
退避――ッ!!!!
(言うが早いか、己の力を開放する。 全身が淡い光に包まれ、背中に蜻蛉にも似た4枚の羽が生じた。
姿を変えた瞬間、大気中にある魔力のすべてが、まるで煙が漂うがごとく”見える”。
それらをかき集めて練り上げながら、魔法陣の中心に飛び込む。
防護の印章を魔法陣の中心に叩きつけ、己の持つ魔力を一気に注ぎ込んだ。)
■萌良 さだめ > (どごん、と建物が震え、衝撃に自分ももんどり打って転がった。
ぱらぱらと頭の上に構造物のかけらやら、剥げた塗装が落ちてくるが、うまくはいったようだ。
建物は崩れておらず、建物の外からは突入チームの怒号が聞こえる。
そのままふわりと飛び上がり、自分も怒号の方へと向かう。
たどり着いたところで妖精化を解除した。)
すまない。 探査はうまく出来ていたはずだが、相手のほうが一枚上手だったようだ。
(魔術、そして探査の異能を持つメンバーすらも欺く欺瞞能力を見るに、こちらの敗北と見るべきだろう。
とはいえ、突入そのものはうまくいったと評価するしかない。
魔術に関して出し抜かれたコトについては、公安の担当者と風紀の担当者に素直に頭を下げる。)
形代は無事だし、あれを解析すれば実行犯の手がかりになるかもしれない。
それは戒魔局の方でやりますよ。
(なにか言いたげな公安の担当者を尻目に、押収品の形代をそっとしまい込む。
とりあえず、騒ぎに人が集まると厄介だ。 全員で素早く撤収するのだった。)
ご案内:「スラム」から萌良 さだめさんが去りました。
ご案内:「スラム」に黒龍さんが現れました。
■黒龍 > (一時期は学園に偽造学生証を利用して所属したりしていたものの、それも今は辞してこちらに逆戻り。
まぁ、こういう場所のほうが己の気質にはおそらく合っているのだろう、と再確認できたのは無駄ではない。
何だかんだ学園という場所にも色んな面白い連中は居たし、まだ見ぬ奴らもきっと面白いのだろう)
「――で、まぁ相変わらずだよなここらは。」
(煙草を蒸かしながら、スラムの廃屋の一つ…正確には崩れ落ちそうな屋根に座り込んで一服中。
黄金色の鋭い双眸は、遠くの違反部活だか違反組織だか知らないが、その小競り合いを眺めており)
ご案内:「スラム」にメアさんが現れました。
■メア > 「~~♪」
鼻歌を歌いながら、退廃したスラムに似つかわしくないドレスの女性が、ステップを踏んで道を進んでいる。
なにか目的があるわけではない。ただの散歩だ。
■黒龍 > 「―――あん?」
(鼻歌が不意に男の耳に届く。チンピラじみた姿勢で座り込んでドンパチを見物していた視線が、胡乱げに鼻歌の主を探して瞳を彷徨わせる)
「――何だありゃ、スラムにガキ?」
(いや、浮浪児も珍しくは無いのだが。格好とその暢気な散歩ペースのステップに疑念が過ぎる。
少なくともそこらのガキ、とは思えないが。自然と気が惹かれたのか、ドンパチから完全に少女へと視線が注がれており)
「――おい、そこの小娘。こんな場所をふらついて何してやがる」
(と、廃屋の屋根の上から無造作に声を掛けてみようかと)
■メア > 「あら?」
振り向いても姿が見えない。暫くキョロキョロと周囲を見渡して…
「あら、そんなところに。ごきげんよう。ただの散歩ですよ。ついでに買い物を。」
といってもスラムで開かれているバザーで目についたりんごを一個買った程度だが。
■黒龍 > (声を不意に掛けたのと、そもそもが屋根の上に居たからか視線を彷徨わせる少女。
こっちだこっち、と、更に声を掛けて補足しておきつつ、視線が合えば少女を観察するように眺めており)
「――ただの散歩、ねぇ。落第街とかならまだ分かるがスラムってのもなぁ。
つぅか、お前みたいな乳がデカい小娘なんて良い的だろうによ…。」
(と、彼女の顔や体を観察した結果、直球で身体的特徴を把握して言及する。
無遠慮で失礼でデリカシーは無いが、そんなのこの男には意味が無い。自由気儘とはそういうもの)
■メア > 「あら、注目を浴びるというのも悪くはありませんよ?」
くすり、と微笑んで。まるで危機感がない。
現実と剥離したような錯覚を感じるかもしれない。
「貴方こそ、そんなところで何をしていらっしゃるのかしら?」
■黒龍 > 「――何だ、見られて悦ぶタイプか?小娘っつぅか小悪魔みてーだなぁオイ」
(全く動じた様子の無い少女…訝しげに目を細めるが、危機感が無いのは相応の理由があるのか。
はたまた、そういう性格なのか…初見でそこまで察するのは難しい。
ただ、一つ気付いたのは現実味がやや薄い。まるで御伽噺か何かのような浮世離れした空気を感じる)
「――別に、暇潰しに一服して遠くのドンパチを眺めてただけだ」
(と、煙草を口元から離しつつ、紫煙を吐き出しながらあっち、と煙草を持った手でとある方角を指差す。
まぁ、見て面白いかどうかは兎も角。暇潰しの足しにはなった)
■メア > 「理解し合えないのは悲しいことよね」
んー、と口元に指を当てて、喧騒を見て考え込む。
黒龍の方を見ておらず、無防備に見える。
「ああいうのって、ものがないからああなるのかしら?」
■黒龍 > 「相互理解っつーのも色々な形があるんだろ、多分。俺にゃその辺りの小難しいあれこれはわっかんねーが」
(肩を竦めつつ、喧騒を眺めながら何やら考え込んでる少女は無防備だ。
…無防備なのだが、浮世離れした空気がある種の独特の存在感じみたものを感じさせる)
「…あ?単に縄張り争いとかそういうのだろ、多分。好きにやれとしか俺は思わねーが」
(よっ!と、屋根から飛び降りて地面に着地。少女とは当然ではあるが、かなりの身長の開きがあり)
「…んで、散歩は好きにすりゃいいがそもそもこの辺りの地理とか把握してんのか?」
■メア > 「ある程度は。」
地図は頭に入ってる。変な道にさえ入らなければ迷うことはない。
「へぇー。のっぽさんなのね」
手を伸ばしてみる。頭に届かない。
■黒龍 > 「……オマエ、それは迷う可能性も大いにあるって事だぞ…危なっかしい小娘だな」
(やれやれ、と吐息混じりに煙を吐き出しつつ、思い出したように懐から携帯灰皿を取り出して吸殻を捻じ込む。
ポイ捨てはしないだけの最低限のマナーはあるようだ。見た目はチンピラだが)
「…あ?のっぽというかオマエが小せぇだけだろ…。」
(まぁ、乳はデカいがこの小娘は。と、思いつつ面倒そうに身を屈めて彼女の手が届き易いようにしてみた)
■メア > 「あら、ありがとう」
ふわり、と甘い香りがする。
蜜の匂いだ。
屈んでくれたおかげで、手が届く。そのまま、頭を撫で始めた。
「ちゃんとマナーを守って、いい子ですね」
■黒龍 > 「別に礼を言われる事でもねーだろ……つーか、こりゃ香水か何かか?甘ったるい匂いがすんだがよ」
(生憎、そういうのは全然詳しくない。例えるなら…蜜の匂いというものだろうか?
香りそのものは別に嫌いではないが、何か変な作用が無いだろうな、と思う辺りは癖みたいなものだ)
「マナーとか関係――いや、良い子言うなついでに撫でるな。何なんだオマエは」
(どうにも、見た目が小さな小娘には調子が狂わされ易い。自分が甘いのか…丸くなったモンだ、と。
ロリコンだどうだという性癖は無いのだが…ああ、乳は認めるが)
「…おい、気が済んだならその辺りでいいだろ…つーか、オマエ名前は?」
(そこまでにしとけ、と右手で少女の撫でる頭をやんわりと止めながら名前を尋ねて)
■メア > 「ん、私?」
撫でるのをやめ、くるりと回って、距離を取る。自分の姿が見えやすいように。
回ると同時に、花のように甘い香りが舞う。
「メア。メア・ソレイシャスよ。貴方は?」
■黒龍 > (花のような甘い香りは、香水なのかそれとも体の匂いなのか。そんな些細な事を何となく考えながら、少女の名乗りにふぅん、と緩く頷いて)
「…俺か?ニグ――あー黒龍でいい」
(最近、名乗る事が無かった為か、つい本名で自己紹介を返しそうになる。
別に、本名が露呈して困る事も無いが…少なくとも、己の居た世界の者がこちらに居なければ、の話。
取り合えず、この蜜のような少女の名前は覚えておく事にしよう)
「――んで、メアっつったか。オマエ、香水か何かでも付けてんの?」
(香水か体臭か、どっちか判断が難しいので本人に聞いてみるのが手っ取り早い、と)
■メア > 「香水はつけてないわ。黒龍さん――――」
また、舞うようにくるくると。す、と止まり、挑発的な笑みを浮かべ…
「ねぇ、黒龍さん。私ね、どっちかって言うと貴方のほうが怪しいと思うのよ。こんな『掃き溜め』に、そんなキレイなスーツなんて着てねぇ?ヤのつく稼業の方かしら?」
クスクスと。笑みを浮かべながら、見据えている。
ご案内:「スラム」に黒龍さんが現れました。
■黒龍 > 「そうかい―――あ?」
(なら、そういう体臭なのだろうとさっさと結論付けた所で回るような動きをしていた少女が止まる。
挑発的な笑みを浮かべて、こちらの方が怪しいと指摘するその言葉に――)
「生憎と、そっち方面とは関係ねーな。単に黒い服装が好みなのと、こういうのが楽なだけだ。
ついでに言えば、落第街やスラム(こっち)の方が性に合うから住み着いてるっつーだけの話」
(それに、綺麗なのは単に魔術で補修や洗浄をしていたからだ。
とはいえ、魔術は今は厳重に封じているのもあり、それこそ今後はクリーニングか新しいスーツを仕入れる必要がある。
くすくすとした笑みに、まぁメアというこの小娘がただの人間の少女、ではないのは察したが)
■メア > 「そういう事。私は好きでここに来てて、貴方は好きでその服を着てここに居る。こんなところに用がある人間なんて、ソレこそ…」
ぶわ、とスカートを靡かせて。
「愛が、足りないと思うのよ」
頓珍漢なことを言い始めた。
■黒龍 > 「――また、頓珍漢な台詞が出たなオィ…。」
(愛?愛情の愛?…スカートを靡かせ、いきなりすっ飛んだ事を言い始める少女に露骨に怪訝そうな顔で。
愛情が理解できないという訳ではないが、そういうのとはどうにも縁が薄い)
「――愛が足りないとして、だ。メアはそれでどうしたいっつーんだよ。
愛が足りないから周りを愛で満たす、とかそういうノリじゃねーだろうな?」
(見た感じ、戦闘力という意味合いのものは彼女からは感じ取れない。だが、人間離れした空気…まるで『人形』みたいな――)
「――ってか、そもそも…その愛がどうのっつーのはオマエの中から生まれたモノか?
それとも――誰かに叩き込まれたモンか?」
ご案内:「スラム」に黒龍さんが現れました。
■メア > 「満たしてあげたいのよ。そう、いろんなことが足りていないのよ、ここは。モノも、お金も、住む場所も、幸せも、何もかも。」
くるり、と回る。踊るように。
「この林檎もその一環。私は本当に良い品しか買わないけど…そのちょっとしたお金でも、市場に流れればそれを資金としてお金が回る。満たされる人が増えていく」
そして、林檎を差し出すように、前に出して。
「それって、愛だと思わない?もちろん、睦み合いやまぐわいなんかがわかりやすい愛だとは思うけど。」
■黒龍 > 「――足りないだらけなのは否定しねぇが、そういうのを与えたがりもどうかと思うがね」
(スラムが肥溜めで屑なのは否定しない。劣悪な環境も困窮するガキや年寄りどもも。
犯罪者には都合がよく、魑魅魍魎も紛れ易い。落第街はまだその辺りはマシだが、ここはある種の『墓場」だ。
踊るように回り、語る少女を眺める視線は冷めてはいないが熱も無い)
「――経済や流通のあれこれは俺の専門外だからどうとも言えねーが。
まぁ、俺としては後者の方が分かり易いな。単なる性欲処理とも生殖行動とも言えるが」
(愛が希薄というか、その辺りがいまいちピンと来ない男に、彼女が望む答えが言える訳も無い…が)
「んで?メアはそういうまぐわいやら何やらで愛を与えた事もあると?」
■メア > 「えぇ、勿論。『その必要があって』、求められた時は、そうしてるわ?」
当たり前のように話す。それが彼女にとっての『当たり前』だから。
「林檎、おひとつどうですか?甘いものは気分をよくするわよ?」
差し出したまま、提案してみる。
ご案内:「スラム」に黒龍さんが現れました。
■黒龍 > 「――成る程、オマエのことが少し分かった気がする」
(彼女にとっての当たり前…その内容を彼なりに察したが、それが彼女の生き方ならばどうこう口煩く言う気も無い。
自由気儘を尊重する男は、他者の生き方にいちいち口を出さない。
愛なんてやっぱりピンと来ないが――まぁ、そこはしょうがない。そういう人生だったのだから)
「――いや、それ買い物でわざわざ買ったもんだろーが…まぁ、どうせなら貰うが」
(と、差し出された林檎を右手で受け取る。無造作にそのまま齧りついて。
煙草の匂いが林檎の酸味と甘みで洗い流されていくような感覚だ)
「――スラムの林檎にしちゃわるくねーな」
■メア > 「でしょう?そこの角の爺さんから頂いたのよ。」
指を指して。
爺さんが自分の頬を触って幸せそうにしている。キスでもされたのだろうか。
「気に入ったのなら買ってあげたら?スラムのだからそこまでお金はかからないし」
■黒龍 > 「――何かジジィが今にも昇天しそうな顔をしてるんだがよ?」
(黄金の瞳を半眼にしつつ、自らの頬を撫でてだらしない顔になっている爺を冷めた目で一瞥して。
まぁ、買う買わないは兎も角、味は悪くは無かったのは嘘では無い)
「ま、俺がメアを求める時がありゃ、そん時はよろしく頼むとするかね…良い乳してるしな」
(と、林檎の芯までゴリッ!と、齧って咀嚼して飲み込みながら右手で彼女の胸元を指差す。
見た目と身長は兎も角、そこだけ明らかに発育が良いし単純に見た目が良い。
ジジィがでれでれになるのも無理は無いだろう)
■メア > 「んー……でも貴方。それじゃ満たされなさそうなのよね。『少なくとも今は』。どっちかって言うと戦って満たされるタイプじゃない?ああいう諍いを見物出来る程度には。」
だからこそこんなところにいるのだろうな、と推測する。
「まぁ、『渇いちゃった』ときはお相手するわ。勿論、危なくないコトで、ね?」
人差し指を口元に持っていって。まるで内緒の約束をするかのように。
ご案内:「スラム」に黒龍さんが現れました。
■黒龍 > 「――別に戦闘狂って訳でもねーんだがなぁ。そういうのは昔、散々やらかしたし、こっち来てからも多少は暴れたし。
あと、あの手の馬鹿騒ぎはここらじゃ日常茶飯事…あくまで暇潰しでしかねーって」
(戦いを楽しむ面や、好き勝手暴れたい衝動もあるにはあるが、昔に比べれば落ち着いている自覚はある。
とはいえ、彼女の推測は外れ、という訳でもない。その洞察は中々だと思うべきだろう)
「当たり前だ、やるならじっくり楽しむのは当然だろうが。俺もオマエもな」
(と、肩を竦めつつもニヤリ、と笑ってみせる。まぁ、それこそ…『渇いたら』メアと楽しむ事にしよう)
「…んで、メアはこの後も散歩か?」
(ふと空を見上げる。少し日が傾いてきたようだ。何時の間にか喧騒も治まり静かなほどで)
■メア > 「んー、そうねぇ。特に所用もないし…」
そのまま、考え込むように空を見上げる。
「まぁ、気ままにそこら辺ほっつき歩いてようかしら。」
■黒龍 > 「…そうか。んじゃ途中まで俺の散歩に付き合え。
っつっても、適当にそこらで飯とか済ませるだけだがな」
(と、考え込みながらもそう答える少女に、どうせなら俺の暇潰しの散歩に付き合え、と告げる。
それに応えるかどうかは彼女次第ではあるが)
「まぁ、スラムで暢気にダベるのも久々だしな。オマエにもちょっと興味沸いたし」
(少なくとも人間のようで何かが違う、のは理解できたし、それも含めて中々に面白い、と)
■メア > 「えぇ、構わないわ。それじゃあ、エスコート願える?」
手を差し出して。
■黒龍 > 「…エスコートとか、そういうのは柄じゃねーんだがなぁ…まぁ、いい。無作法でも文句は言うなよ」
(と、言いつつそっと彼女の手を取る。左手は黒い義手でごつごつしているだろうから、こちらが伸ばしたのは生身の右手。
ほっそりと白い指先を手に取れば。彼女の歩調に合わせて、スラムの何処かを二人で歩いていくのだろう)
■メア > 「えぇ、構いませんわ」
そう言って、手を引かれるままスラムを練り歩くだろう。
ご案内:「スラム」からメアさんが去りました。
ご案内:「スラム」から黒龍さんが去りました。
ご案内:「スラム」に227番さんが現れました。
■227番 > 辺りも薄暗くなってきた頃……ふっと目を覚ます。
昼の行動は目立ってしまうから、必然的に夜型になるというものだ。
路地裏の拠点で背伸びを数回して、ふらふらと外に出てきた。
今日は何処を回ろうか。
ご案内:「スラム」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
■227番 > 思えば、昨日はテンパっていて、伝言を伝えそこねている。
頼まれた事なのだから、ご飯のためにもちゃんとやらなければ、と思った。
どうして自分に頼んだのだろう。教養の無い227には、よくわからない。
ただ、伝えて相手がよくわからなければ、それでおしまい、ということでいいのだろう。
……ぼんやり考えながら歩いていると、いつもの徘徊ルートに向かっていた。
やはり習慣は抜けないものだ。
■紫陽花 剱菊 > スラム夜。日陰者が動き始める宵闇の頃合い。
今や自らもその一部であり、当てもなく彷徨っていた。
眠るには未だ早く、どちらかと言えば月明りを眺めていたい気分だ。
さて、今宵はどう動くか。
そうこう考えているうちに、向かい側から人影が見えた。
随分とみすぼらしい格好を少女のようだ。
スラムにとっては、珍しくもない格好だろう。
不愛想な仏頂面をした男が、くすんだ瞳を少女へと向ける。
「……どうも。迷い子か?其れとも、何か私事がおありかな?」
軽く頭を下げて会釈し、男は少女に話しかけた。
■227番 > 不意に声をかけられ、2歩分ほど跳び下がって、姿勢を低く構える。
会釈をする相手に対し失礼な行動ではあるが、227はそれを理解していない。
227は危害を加えられるのを恐れ、他人を警戒する。
しかし、怒鳴られたわけではないので、すぐに逃げることはしなかった。
「迷子じゃ、ない」
深く被ったフードから青い瞳を覗かせ、相手の出方を伺っている。
■紫陽花 剱菊 > 「…………。」
見るに、驚かせてしまったようだ。
男は再び、静かに頭を下げた。
謝罪だ。ゆっくりと顔を上げ、口を開く。
「……済まない、脅かすつもりはなかった。其方の様な手弱女が如き女性が、月夜に出歩くのは物珍しかった故。」
仏頂面とは裏腹に、穏やかな声音だ。
敵意は無く、表裏も無い。男は酷く真面目な性分だった。
「……其方に手出しはしない。お為ごかしのつもりも無いが、そう見えるのであれば済まない。私は、人の心の機敏に疎いようだ……。」
■227番 > 「……?」
難しい言葉を使われてすこし混乱するが、少なくとも敵意がないことは理解できた。
今にも逃げ出しそうだった低い姿勢をやめ、相手の姿を見上げる。
「だい、じょうぶ」
許すとか気にしないでとか、気の利いた言葉を返せる教養もない。
自分は問題ないということだけをたどたどしく伝える。
■紫陽花 剱菊 > 「……忝い。」
たどたどしい言葉遣いだ。
それでも彼女の意図は伝わってくる。
少しばかり、胸を撫でおろした。
「……然るに、迷い子でなければ……其の格好、其方も此処に流れ着いた次第……、……」
と、問いかけた時ふと思う。
「……もしやとは思うが、私の言葉は、其の……余り伝わっていないのだろうか……?」
此の島に来て何度か人々と邂逅した。
そして、大よその人間は初めに彼女と同じ反応をする。
ここにきてもしや、と思った事を男はおずおずと尋ねた。
■227番 > 「ちょっと、むずかしい、かも」
全部が全部わからないというわけではないので、わかる部分で予測して補っている節はある。
こちらとしては、初めて見るタイプの相手だ。
見た目こそ怖いが、むしろこのスラムには相応しくない雰囲気を持っている気もする。
見定めるように、青い瞳が見つめている。
■紫陽花 剱菊 > 「…………左様か。」
明らかに落胆したかのように、肩を落としている。
「……否、私は故合って此の島の住人では無く、私の世界ではすべからくこうで在ったが故……いや、面映ゆい限りだ……。」
言葉が通じる事を良しにずっとそう喋っていた。
喋っていたのだが、如何やら此の島に自分の世界の言語はやや難解のようだ。
困った表情を浮かべるのは、そんな自身の厚顔無恥を恥じているからだろう。
「然れど、此れ以外の言葉と成ると余り覚えは……、……如何致した?」
見定める視線を、くすんだ黒い瞳が見返している。
曇り硝子のような、淀んだ黒。
如何にも何かに疲れたかのような目線だが、裏腹に言動はそれとなく普通で、穏やかだ。
■227番 > 「わたし、もともと、ことば、よくわからないから」
慰めのつもりで言葉をつくる。基本的に長い言葉を作るのは苦手のようだ。
これが普通の生活を送っていれば、古風でかっこいい、とか言えたのだろう。
敵ではないとわかっても、見慣れぬ相手。
完全に警戒を解いたわけでもなかった。
生気のない視線に得体のしれなさを覚えつつも、
視覚による情報より、猫の特性でよく聞こえる耳から感じる情報を優先した。
「えっと、あまりみない、と、思って……」
正直に思ったことを言おうとするが、言葉は足りない。
■紫陽花 剱菊 > 「……言葉が分からない……、……。」
「卒爾乍ら……、……失礼、其方は……誰かに言葉を、勉学を教えて貰った覚えは……?」
なるべく、今迄聞いた言葉を上手く頭で互換し口にする。
それでもまだ、幾ばくか堅い喋りだが、前よりはましになったはず。
確かに、まさに"浮浪者"とも呼べる風体。
捨て子の類とは思ったが、勉学さえ修めてはいないのだろうか。
まじまじと少女の全身を見定めるように視線をゆっくり上下させる。
「……嗚呼……私は、先も言った通りだ。此の島の人間ではなく、気づいたら此処に流れ着いた。今や、表に出れぬ日陰者と言う訳だ。」
「……其方は、如何だ?確かに、あの学園の生徒には見えないが……ただの捨て子、と言う訳でもなさそうだが……?」
■227番 > 「べんがく……?」
それはなんだろう、といった様子で声を上げる。
これを以って、疑問に対する回答は得られるだろう。
会話に必要な最低限は生活していれば身につくが、それ以上は無い。
「そう、なんだ」
表を歩けない。ここ落第街では、珍しくない。
しかし、それとはなんだか違うような気もする。
流れ着いた人間自体はこの島全体でも珍しくないはずなのだが、
227は落第街の外のことは知らない。
「わたしは……ずっと、ここにいる。いつからか、わからない」
227は日付の感覚が希薄だった。どれくらいの期間かを説明することが出来ない。
■紫陽花 剱菊 > 「…………。」
嗚呼、成る程。
彼女は"何も知らない"んだ。
きっと彼女は勉学所か、幼子のように何も教えられていない。
これらの拙い喋り方も、今の姿も、彼女が懸命に生きている証なのだろう。
……何と、憐れな。
胸中呟けば、男の表情は悲しみに僅かに歪んだ。
「……済まない。」
それは、自然と口から漏れた謝罪だった。
男の心根に兆す優しさが漏らした言葉。
憐れみを以て等と、傲慢な感情だろうか。
「……ずっと、此処にか。其方の傍には、初めから誰もいなかったのか?」
本当に一人で生きてきたのだろうか。
少女に対する疑問は尽きない。
ふと、フードについているものに気が付いて、目を細めて凝視した。
「……二……二……七……?其の数字に覚えは……?」
■227番 > 「……?」
突然謝られて、不思議そうに首を傾げる。
憐れみの感情を向けられても、今の227が理解することはないのだろう。
そういう感情を持つ余裕は、短期間の食料を確保できた今日でも存在していない。
「……おぼえて、ない。きづいたら、ここにいて、それより前は、わからない」
その時からゴミを漁ることを覚え、食いつないでいる。
本人の感覚ではわからないが、数年はこうしている。
「に、に、なな……私の、名前」
本当に名前かどうかは定かではない……と言うか違うだろう。
しかし、227はこれが名前だと認識している。
自分が知る、唯一の自分のことを指し示す記号だ。
■紫陽花 剱菊 > 「…………。」
察するに、今の感情さえ理解出来ていないようだ。
この少女は、余りにも物を知らなすぎる。
男は静かに、首を横に振った。
「いや、何でもない。……しかし、そうか……何も知らぬ、と……。だが、其方を見る限り、幾ら此処に身を預けているとはいえ、良い生活をしているようには見えないな……食事は?寝床は?」
記憶障害か、或いは何かあったのか。
何にせよ、ロクな生活はしてないのは自明の理。
静かな足取りで、少女へと歩み寄る。
「名……名と言うには、余りにも素気ない。差し詰め、名とは言えまい。……其方は此れを気に入っているのか?」
所感ではあるが、名と言うよりは最早個体名。
何者かが意図してつけた管理すべき番号。
だとすると、彼女の出生に疑念は尽きないが、其れは一旦置いておこう。
かくも、このままでは不便だと、男は思った。
まずは、彼女がこの数字に執着があるかどうか、確認した。
■227番 > 「……ご飯は……誰かにもらったり、なければ……」
路地裏に点々と存在するゴミ箱やら袋やらに視線を向ける。
「ねるところは、もらったから、ある」
と、寝床の話をするときは、声のトーンが少し上がった。
この点については、生活が大幅に向上したからだ。
それから、歩み寄られれば、少し身じろぎをするものの、逃げたりはしない。
「気に入る……ううん、私には、これしか、ないから」
227。記憶がなくても、どうしてかこれだけは、自分のことだとわかる。
故に、手放せない。取り上げようとするならば、嫌がるだろう。
「呼びにくいなら、すきなように」
人を番号で呼ぶことを忌避するのも227にはよくわからないが、
話した人は皆そうしている。それは構わないらしい。
■紫陽花 剱菊 > 「……左様か……。」
此処は日向から外れた場所。
自力で何も出来なければ、手を差し伸べてくれる人間のが稀だ。
誰も彼も、今を生きる為に必死になっている。
そんな余裕はないはずだ。
「……其れは、喜ばしい事だな。私も少しばかり安心したよ。」
だが、その中にも稀有な人物はいたようだ。
言葉に偽りはない。
自然と、一文字の口元が緩く綻んだ。
その場で逃げられる事は無かった。
男は静かに、膝をつく。
少女と目線を合わせるために。
「…………。」
"これしかない"。
そうだ、彼女は何も知らなければ何もない。
だったら、唯一残されたそれが例えただの数字であっても、手放せないはずだ。
失念していた。静かに男は、首を横に振った。
くすんだ黒い双眸が、青い瞳を見つめている。
「……綺麗な青だ。二二七。……しかし、そうだな。些かやはり呼びづらい。七……菜々……菜花からとって、菜々……捻りがないか?」
人差し指で空に文字を描く。
菜々、こう書くのだ、と。
だが、単調と言えばそうだ。
男は低い唸り声を上げる。意外と凝り性っぽい。
■227番 > 口元が緩んだのをみて、また首をかしげた。
他人のために一喜一憂する感覚を理解するのは、まだ当分先の話だ。
近くで目を見つめられると、本能が警告を発する。
しかし、目の高さを合わせられたためか、不思議と耐えられた。
「なな……?」
指のジェスチャーが、文字を示していると理解するのに時間がかかった。
ひらがなはおろか、2と7以外の数字もよくわからない。
漢字の概念もまだわからない。同じ発音の違う字があるのだろうか。
そういえば、先日貰った全く読めないしんぶんとやらには難しそうな文字が並んでいた。
「……ナナって呼ぶ人は、いた、かも」
ぼんやりとだが記憶している。直接呼ばれれば思い出すのだが、
そうでないときは記憶の片隅に追いやられている。優先度が低かった。
■紫陽花 剱菊 > きっと少女は何も知らない。
だからきっと、強い警戒心はあるはずだ。
こうして目を合わせて、身振り、手ぶり、そして
「……胸襟を……嗚呼、いや、私を警戒するなとは言わない。だが……私は"其方の敵ではない"。危害を加える気は、微塵も無い。」
口で、示す。
自分は決して少女の敵ではないのだ、と。
「……左様か。然すれば、菜々。ナナ。そう呼ばせて頂く……。」
そう呼ばれていたのなら、自分もそうしよう。
数字で呼ばれるよりかは、名前らしい方が良い。
「……其の記憶、もう少し思い出せたりは出来ないか?」
彼女事を、彼女自身が知る糸口になるかもしれない。
そう思い、男は尋ねる。
■227番 > 「……うん」
227は単純だ。餌付け以外の方法で、警戒心を解くのは難しい。
けれど、逃げ出したくなるような感覚はもはや残っていなかった。
光の入らない瞳に、青い瞳が向き合う。
「……わかった」
呼び方を了承する。
「……思い出す……きのう?おととい?……ちょっと前に、呼ばれたから。
話す人に、ひとこと伝えて、って言ってた」
記憶の手がかりにはならなさそうだ。
多分、この人も関係ない、と思うが、一応伝えてみようか……?
■紫陽花 剱菊 > 「……うむ……。」
頷いた。
いきなり全てが上手く行くとは思っていない。
少なくとも、ある程度警戒が解けたなら、今は其れで良い。
「……其方は此処で活動していると言ったな?ナナ。寝床は……流石に教えれんか?いや……何時でも食事に在り付けるようには見えなんだ……。こう見えて私は、生きる程度には困ってはいない。其方が良ければだが、食事位は毎日持ってくるのは吝かではないと思ったのだが……如何かな?」
自分のようなものでも、明日を生きる為の食事、賃金に在り付ける術は探せばある。
特に、此の様な場所においては、意外と仕事に困らないものだ。
世話を焼く位の余裕はあるつもりではあった。
「……言伝か……如何様な内容なのかな?其の人物の名は?」
当ては外れたが、気になったようだ。
■227番 > 「教えるのは、いいけど……どうして?」
数日前までは路地裏の適当な所で丸まっていたためか、
人に寝床を教える危険性を理解していない。
そして、提案に対してありがたい気持ちはあるが、そこまでしてくれる理由がわからない。
ただより高いものはではないが、手放しで享受できる227ではなかった。
自分がわかる感情によるものか、あるいは損得の関係か。とにかく納得が必要なのだろう。
名前を問われたが……名前は出てこない。
227は名前を覚えるのが苦手だ。これまで必要なかったから。
しかし伝言は覚えている。
「『日ノ岡あかねが会いたがってる』……よく、わからないなら、大丈夫」
自分から直接伝わらなくても、伝わるべき人に間接的に伝わる可能性がある。
誰にでも伝えておくべきなのだ。この時、227は気づいた。
■紫陽花 剱菊 > 「……何故?……私は其方を助けたいと思った。深い理由は無い。今の其方の姿を見るに堪えぬと思った迄の事。……とは、納得しがたいか……。」
其れは男の純粋な優しさだった。
だが、彼女はそれを理解出来るかは別だ。
ともすれば、何か"納得"出来る要素が必要だ。
感情以外の何か、所謂打算的考え。
男は暫し思考を巡らしたが、ついつい噴き出すように、苦笑を浮かべてしまった。
「……いや、済まなんだ。其れ以外何も思いつかん。とってつける程の事を考えれる程でも無く、幾ら善意とは言え、嘘を吐ける程器用では無い……。」
素直な言葉だった。
それ以上は証明したてもなく、男の苦いはにかみ笑顔がそこに残る。
「強いて言えば……少しは良い暮らしをすれば、其方も少しは良き事を学ぶ機会に恵まれるやもしれんな。其方の成長の為……と言うのも、些かこじ付けだな。」
「…………。」
さて、次いで出た名前には聞き覚えがあった。
いや、忘れる事も無い名前だ。
笑顔が消え、神妙な顔つきに戻る。
「……あかねが?よもや、あかね本人の言葉か?会いたがっているとは、誰に?」
■227番 > 「……わかんない」
あまりに親切な人だ。落第街に合わないと感じた正体はこれなのだろう。
227は、それを素直に受け止めることが出来なかった。
「他の人は……ご飯の代わりに、お願いだとか、貰うことが、お願いだったり、とか。
わたしが、もらったら、助かるの?」
妥協点を探ろうとする。相手は本気で困っている。騙そうとしているとは思えない。
だから、227も困ったような表情をする。
「……誰に……わからない。私と、話せる人に、伝えてって」
伝言はそれだけだ。227を経由する接触は明らかに期待値が低い。
噂にするためなのか、あるいは他の意図があるかもしれない。